朝比奈秋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
面白かった。意識と身体性だったり抽象的なものを取り扱うあたり、没入しないと中々難しいモチーフではあるけどそれが楽しい、これぞ芥川賞というような読書体験。
正解のない自分の輪郭を他者や社会を使ってなんとか形作ろうとする人間の根源的な奮闘や葛藤を結合双生児という切り口で描いているのが新鮮で、読み手の価値観を揺さぶる話だった。人との境界と繋がり、自己の確立と承認欲求、生と死などの現代的かつ普遍的なテーマを改めて問い直させられる。
人工物はもちろんのこと、生き物も種の繁栄ていう目的として本質が先にあるんだけど人間は自分を対象化できるから種の繁栄以外の選択肢もたくさんあって、だから実存は本質に先立つん -
Posted by ブクログ
生まれてからずっと、意志疎通が取ることができないまま親子であることとは?
本帯にそう書かれているとおり
主人公の美桜の母は出産以降植物状態となっています。
美桜の成長を通して母の感じているだろう世界が時折描かれていた。
そこからとれる母や同じ病室の人は実はこう感じているのかな?と考えさせられる場面も沢山あった。
母が植物状態であれど、ちゃんと甘えていたり、母の存在を感じていたりと、
意志疎通ができないからこそ、毒さえも受け止めてもらえるそんな、親子関係になぜか羨ましさを感じる部分もあった。
始まりに「母はどんな人間か」とあるけれど、
私は美桜がちゃんと答えを出せていると思っています。
そして、 -
Posted by ブクログ
杏と瞬がどのような人間なのか口絵が欲しい…と思ったのが本音。しかし、どの部分でどう違うのか、2つあったり、肥大している臓器の描写が今後どのように生きてくるのか。想像は人それぞれになるところが面白い。杏と瞬、見た目は1人の少し歪な人間なのに、意識は2人分。多重人格ではなく、身体があるところ、意識と身体は一体なのかという哲学的な問いが陰陽図と表現されていた。陰陽図、授業で出てきて、ペプシのロゴみたいだなぁと思っていたのでタイムリーで既視感あった。凹凸が上手く噛み合い、白と黒、表裏一体のような関係。サンショウウオという題名から、魚が出てくるのかなと思ったが、伯父の勝彦も父の若彦を体内に魚として飼って
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「移植」という行為に抵抗を感じてしまうのは、日本人ならではなのでしょうか?
臓器提供意思表示カードには、すべての臓器に◯をつけていますが、提供する側はもう生きていないので、あまり深く考えることはありませんでした。でも、移植される側は、その後も生きていかなければなりません(いゃ、生きるために移植するんですもん、当然です)。内臓なら目には見えませんが、目に見えて常に意識させられる部位の移植は、肉体的だけでなく精神的にも感覚的にも受け入れるのに相当な負荷を乗り越える必要があるのでしょう。とても想像が追いつきませんでした。
国境の争いや人種間の摩擦を、移植になぞらえて描いていくこの物語は、時に吐き気を -
Posted by ブクログ
医師作家9人によるアンソロジー作品。
どの作品も50頁程なので、スピード感がある。
研修医 精神科医 救急医療 現場医療 研究者 認知症等 医療1つとってもジャンルが違い、心理描写の加減に手に汗握ってハラハラしたり、淡々と読み進めたり、一冊で何度も美味しい読み応えのある本でした。
医師(著者)が実際に経験しているであろうリアリティがそこにある。
認知症対応を生業としている身としては、何度も見た光景で「あーー大変さの中に、いくつも希望が見いだせるんだよ」「怒ったらダメダメ」と逆の意味でハラハラさせられた。
現代はサービスが揃っているので、抱え込まず使える手段を利用していくのがお互いの -
Posted by ブクログ
はじめは、あまりに過酷な労働環境に、お医者さんて大変だなあ、たまに行く総合病院のお医者さんも、皆疲れていて、お休みあるのかなあ、なんて思っていたので、同情するような気持ちで読んでいましたが。
だんだんとみんなが狂ってきて、怖くなってきて、これからどうなるの?と気になって、あっという間に読み切りました。こんなに早く読んだのは久しぶりです。
確かに、医者が昼も夜も働き続けるドキュメンタリーやドラマって、医者をヒーロー化して、医者は特別な人として捉えていて、こんな働き方おかしい!って思ったこと無かったかもしれません。
私が年老いた頃には、もう医者が少なすぎて診てもらえなくなるかも、と怖くなります。
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレ日本で生まれ育ったら、感覚的に国境を理解するのは難しい。島国ゆえの呑気さがたしかにあるのかもしれないと気付かされた。
厳しい言葉でありながら日本人の本質を突くドクトル・ゾルタンの考えは、日本という国と日本人を客観視する目線を与えてくれた。自らのことや身の回りのこととなると思考の偏りがどうしてもあるものだ。
他者とのコミュニケーションによって思い込みが取り払われることが往々にしてあると思う。それを、一冊を通してゆっくりと浸透させていくように読者に語りかけてくれるので拒絶反応は起きない。
「移植はな、君らみたいな、切り取ったら終わりの治療とは違うのだよ」ゾルタンのこの台詞には、過去も未来も、国や人