朝比奈秋のレビュー一覧

  • あなたの燃える左手で

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    ネタバレ

    日本で生まれ育ったら、感覚的に国境を理解するのは難しい。島国ゆえの呑気さがたしかにあるのかもしれないと気付かされた。
    厳しい言葉でありながら日本人の本質を突くドクトル・ゾルタンの考えは、日本という国と日本人を客観視する目線を与えてくれた。自らのことや身の回りのこととなると思考の偏りがどうしてもあるものだ。
    他者とのコミュニケーションによって思い込みが取り払われることが往々にしてあると思う。それを、一冊を通してゆっくりと浸透させていくように読者に語りかけてくれるので拒絶反応は起きない。
    「移植はな、君らみたいな、切り取ったら終わりの治療とは違うのだよ」ゾルタンのこの台詞には、過去も未来も、国や人

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    2025年05月09日
  • あなたの燃える左手で

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    読み始めは少しきついかな?と思ったけど、読後は、読んでよかった、という感想になりました。
    こんな内容の本に出会ったことがありませんでしたが、一度読んでもらいたい本です

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    2025年03月10日
  • あなたの燃える左手で

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    朝比奈さんの話は2作目。
    面白かったです。心が揺さぶられて私の今年ベスト3入りしそうな予感です。

    まず、フィンランド語の訛りを日本の方言で表しているところ。フィンランド人が「ごめんやでー」と言っているの最高だった。フィンランド語を聞いて日本人である主人公が脳内変換してると面白い。静かに、この物語を緩くさせるような効果があった気がする。

    次に移植のこと。
    自分がいかに移植について深く考えた事がなかったことに気づいた。手は生活する上で大事な場所で、そしてよく目に入る。
    私は車で信号待ちしているときに手荒れや爪の伸びが気になる。人によっては綺麗にネイルして顔の次におめかしする場所かもしれない。

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    2025年02月08日
  • あなたの燃える左手で

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    純文学を読み慣れていないせいか、普段読んでいるような小説に比べると読みづらさはありましたし、深く考えずに淡々と読み進めてしまったところもあるのですが…。それでも読んでいてハッさせられる部分は多くあり、読み終えてみての感想は「読んでよかった」というものでした。
    語られる言葉の全部を汲み取れなくとも、自分の中にはない知識や感情、価値観、経験を、主人公の言葉を通して文字で知ったり、想像したりすることが出来る。そういう面白さを、今回の読書で少し体験できたように感じました。
    また、作品の主軸である手の移植から話が波及し、国や民族、歴史、社会情勢など多くのことに触れていく構成には非常に驚きました。
    頁数は

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    2024年12月28日
  • あなたの燃える左手で

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    ネタバレ

    朝比奈秋、3冊目。作品としては一番荒削りかもしれないが(構成やテーマ、それに対する回答など)、私は本作が一番好きだ。端正にまとまっていない、言語化しきれていない、繋がりきれていない、かもしれないが、それでも私は最も心を動かされた。
    前作2作品は日本での医療を取り扱ったものであり、それはそれで新しい視点を提供されて面白かった。一方で、今回はウクライナ侵攻が起きる中、ウクライナ人を妻にもつハンガリーで働く日本人看護師・アサトを主人公に、誤診により切断された手、その後移植された手を、国境や領土を巡る紛争と同化のプロセスになぞらえると、場所もテーマも大きく転換したというか、拡大した、著者にとっても意欲

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    2024年12月09日
  • あなたの燃える左手で

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    左手の移植をメタファーに、国の併合への苦しみを描いている。国境線のない日本人と常に領土争いに巻き込まれてきた東ヨーロッパの人々の意識の違いを肉体感覚の深い部分で抉ってくる。
    最初の意識が朦朧した状態から、徐々に現状が明らかになるストーリー運びもうまい。妻への電話も埋められない喪失感として左手への幻肢痛とともに描かれてて、なんとも言えないもの悲しさを感じた。
    読後感は良くないが、戦争や自国が奪われることの理不尽な不気味さを肌で感じることができるすごい作品だと思う。

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    2024年11月11日
  • あなたの燃える左手で

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    «左手の移植»に詰まった著者の平和への願い。島国に住む日本人の国民性や、この世界の現状を«左手»を中心に巡り描いた祈願と受け止めた。受け止めるだけで次への有益な行動に移れぬのがもどかしい。純文学はメッセージ性が強いから弱った現在の身にはキツイけれど、今作は150ページを越えた辺りからのめり込んでしまった。ちょっとしたホラー要素はあるものの移植した左手と会話するファンタジーではない。そこは現実的。とても惹き付ける因子を持った作風。気になるなぁ。

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    2024年11月04日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    フィクションなんだけど
    現実にあってもおかしくないくらい
    リアルなストーリーばかり。

    医療は全てが完璧じゃないから
    理想と現実にギャップがありすぎて
    理不尽過ぎることを言われることもあるし
    誰のために頑張ってるのか
    よく分からなくなることもある。

    だけどこの本を読みながら
    自分の捉え方次第かましれないとか
    もう少し頑張ってみようかなぁとか
    前向きに考えられるような気がしました。

    背中を押してくれる本って素敵ですよね。

    医療に関わる人も関わらない人も
    ぜひ読んで欲しい1冊です。

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    2024年08月15日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    最後の短編は感動致しました!素晴らしい。
    題名は、峠を越えてきた命、です。皆さんもぜひお読みになって下さい。

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    2024年07月14日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    現役の医師たちが綴る医療小説ということでどれも手に汗握るような臨場感で溢れていた。
    まだ読んだことのなかった作家の方も含まれていたので、また読みたい本が増えて嬉しい。

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    2024年06月16日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    定年後勤めだした仕事が少なからず医療に関係しているので、一つ現役医師の小説家が書いた小説を読んでみようと思い、手始めに新潮文庫にある『夜明けのカルテ』という9人の医師小説家の短編を集めたアンソロジーを読んでみた。収録されていたのは下記の作品である。

    牛島志季『研修医ヒナノの洞察』
    朝比奈秋『魚類譚』
    春日武彦『パイナップルのある光景』
    中山裕次郎『救いたくない命』
    佐竹アキノリ『春に綻ぶ』
    久坂部羊『闇の論文』
    遠野九重『言葉が消えるまえに』
    南杏子『空中テント』
    藤ノ木優『峠を超えてきた命』

    それぞれ主人公が外科医だったり産婦人科だったり研究職だったり患者を抱える家族だったり。自分に身近

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    2026年05月03日
  • 受け手のいない祈り

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    ネタバレ

    医師でもある著者が凄まじく多忙な緊急医療の医師達を描いた作品
    ただし、単なる医療現場の悲惨さだけでなく、医師の命に対する想い、葛藤や、友情、恋愛まで踏み込んだ異色な作品だ
    現実と妄想が入り乱れて、一見読みにくい作品だが、つい引き込まれて一気読みした
    それにしてもやはり、医者の多忙さは異常だ
    月に100時間を超える残業、72時間の連続勤務、今どきは一般企業ではありえない過酷さだ
    我々は当たり前のように医療を受け入れられると信じ込んでいるが、それは綱渡りなのだろう

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    2026年04月29日
  • サンショウウオの四十九日

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    結合双生児の杏と瞬。全てが半分ずつ結合して身体は一体だが、一人ではない。思考や感覚は混じっても、意識は混じることはない…。想像もしたことない、見知らぬ世界が描かれた小説だ。

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    2026年04月26日
  • 受け手のいない祈り

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    以前オオサンショウウオを読んでからの朝比奈秋さん。現役お医者さんなんだ〜読んでて切なくなった。こんなにも身を削って削って、判断もままならないまま日々診療してもらっていると思うと。日本の医療の崩壊も近いのかも。深刻に国にも考えてほしいし、なんならAIでお医者キット(ドラえもんみたい)のやってくれないかな…

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    2026年04月22日
  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    興味深い一冊だった。
    ハッキリと他者から見て結合双生児とわからないことによる杏と瞬の生きていく上での難しさを感じた(私は結合双生児と言えばベトちゃんドクちゃんしか知らなかった)。
    特に瞬と周囲が「瞬」を認知するまでに5年かかったのが辛い。
    とはいえこの作品はあくまでも杏と瞬の日々の生活のお話しであり、また彼女らの死生観について描かれているのかなと思った。彼女たちにとってはこれが「普通」なのだから。

    どうでもいいことだが私のような先天性心疾患の子が生まれる割合は100人に一人。
    誰の隣にも、マイノリティは存在する。

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    2026年03月20日
  • サンショウウオの四十九日

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    ひとつの体を(共有)している主人公を用いて、意識の死と体の死これらに違いはあるのか、私たちの意識はどこからくるのか、思考している。結局のところ意識はどこから生じるのか、答えは書いていないけど、臓器の全てにあって同時にどこにもないものなのかなと思った。最後の文章を読んで、意識も内臓のひとつに過ぎないし、私たちも人類の命の流れの中の一つに過ぎない。それを虚しくは感じず、どこか安心して感じた。

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    2026年03月02日
  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    芥川賞受賞作とのことで手に取りました。事前情報ナシで読んでびっくり。冒頭、「胎児内胎児」だった父親の話に圧倒されながらもなんとなく主人公の女の子ふたりの描写に違和感を感じ…ふたりが「結合双生児」と分かった時の衝撃。はじめは正直その稀有な障害が興味深くて読み進めていましたが、しだいにその特異性は気にならなくなり、自分とはアイデンティティとは何か…と哲学書を読むように夢中になりました。瞬が死にかける終盤は、本来体験不可能なはずの死の感覚を体験したようで、不思議な気持ちに…。これはすごい作品ですね。

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    2026年02月25日
  • サンショウウオの四十九日

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    難しいことが書かれているようでいて、読みやすい文章だった。
    観念的な感じが村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を思い出して、そうか芥川賞候補ってこんな感じだよね、みたいな感想を抱いた。

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    2026年02月24日
  • サンショウウオの四十九日

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    芥川賞受賞作品ということで読んだ本。
    結合双生児のお話だが、普段気がつかないことに気づかされたような内容でした。
    夢のシーンが過去の回想シーンがいくつも出てくるが、それをどう読んで理解したらよいのか、そのまま受け取るだけでよいのか、読解力の乏しい私には分からなかったけど、インパクトは大きな本でした。

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    2026年02月15日
  • サンショウウオの四十九日

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    なんともいえない読書体験

    身体(脳含め)は一つだが、2つの意識がある杏と瞬。
    決して二重人格というわけでもなく、2つの意識
    ということである。

    精神医学的な「二重人格(1つの身体に1つの意識が交代で現れる)」との最大の違いは、「意識が同時に存在し、常に隣り合っているか、交代する(入れ替わる)か」という点らしい。

    途中までは、うつ症状に悩む人の脳内はこんなかんじなのかな

    とか思いながらの読書だった。(めちゃくちゃ勝手な感想。)
    もう一方の神経症的な意識が永遠に議論を脳内で続け、もう一方は強制的に眠るしかないような…


    最後はなんだかほんとうに混ざり合いすぎて一読しただけでは理解できなか

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    2026年02月10日