朝比奈秋のレビュー一覧
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朝比奈さんの話は2作目。
面白かったです。心が揺さぶられて私の今年ベスト3入りしそうな予感です。
まず、フィンランド語の訛りを日本の方言で表しているところ。フィンランド人が「ごめんやでー」と言っているの最高だった。フィンランド語を聞いて日本人である主人公が脳内変換してると面白い。静かに、この物語を緩くさせるような効果があった気がする。
次に移植のこと。
自分がいかに移植について深く考えた事がなかったことに気づいた。手は生活する上で大事な場所で、そしてよく目に入る。
私は車で信号待ちしているときに手荒れや爪の伸びが気になる。人によっては綺麗にネイルして顔の次におめかしする場所かもしれない。
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Posted by ブクログ
純文学を読み慣れていないせいか、普段読んでいるような小説に比べると読みづらさはありましたし、深く考えずに淡々と読み進めてしまったところもあるのですが…。それでも読んでいてハッさせられる部分は多くあり、読み終えてみての感想は「読んでよかった」というものでした。
語られる言葉の全部を汲み取れなくとも、自分の中にはない知識や感情、価値観、経験を、主人公の言葉を通して文字で知ったり、想像したりすることが出来る。そういう面白さを、今回の読書で少し体験できたように感じました。
また、作品の主軸である手の移植から話が波及し、国や民族、歴史、社会情勢など多くのことに触れていく構成には非常に驚きました。
頁数は -
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ネタバレ朝比奈秋、3冊目。作品としては一番荒削りかもしれないが(構成やテーマ、それに対する回答など)、私は本作が一番好きだ。端正にまとまっていない、言語化しきれていない、繋がりきれていない、かもしれないが、それでも私は最も心を動かされた。
前作2作品は日本での医療を取り扱ったものであり、それはそれで新しい視点を提供されて面白かった。一方で、今回はウクライナ侵攻が起きる中、ウクライナ人を妻にもつハンガリーで働く日本人看護師・アサトを主人公に、誤診により切断された手、その後移植された手を、国境や領土を巡る紛争と同化のプロセスになぞらえると、場所もテーマも大きく転換したというか、拡大した、著者にとっても意欲 -
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ネタバレ読んでいる最中から、やばいやばいやばい、と焦燥感が湧きあがった。
「わたしは今、とんでもない本を読んでいる!」
この小説は、喪失と受容の物語だ。
主人公アサト(日本人)は、左手を失い、脳死した人の左手を移植される。
「喪失」も「受容」も、比喩や仮託ではなく、そのものずばり、アサトの失われた左手を示す。それを諦める過程、新しい左手を得たものの、それは激しい拒絶反応を起こす。
そしてこの「左手」は、ウクライナ・ハンガリー・ロシアの「国境線」ときっちり重ね合わせて描かれている。
アサトが最初に失った左手は、80年代・ウクライナが強硬に併呑したハンガリー領土だったクリミアだ。ひじょうに理不 -
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表題からは想像できない他人の手を移植する物語で、東部ヨーロッパの複雑な背景もあり、奇妙な読後感を得た.アサトは左腕に浮腫ができ、悪性と診断され切断を余儀なくされた.その後、白人の手を移植することになり物語が急展開する.ドイツ語、ハンガリー語、ウクライナ語、ロシア語が飛び交う場面を想定した話があり、多くの人が交錯するので、前後関係を確認するため、何度も戻りながら読んだ.ハンナとのやりとり、移植医のゾルタンとの会話、手術後に現れる夢の数々、幻肢痛への対処、同僚との会話などなど、ばらばらに出現する事項が何故か一点に収束する感じを得たのは不思議だった.ただ、ウクライナのクリミヤ半島のドライブは、複雑な
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林芙美子文学賞受賞作がどんな作品なのか気になったので手に取った本。なので併録の「塩の道」を先に読んでから「私の盲端」を読みました。結果的にこの順で読んで良かったと思うのは、「私の盲端」のインパクトが強すぎたからです。
「私の盲端」
オスメイト(人工肛門)をつけることになった女子大生の物語。オスメイトの男にナンパされるところから物語は始まるのですが恋愛物語には一切発展せず、ひたすら大便の話が展開されていきます。確かに、健常な生活を送っていた人間が、突然オスメイト生活になれば、頭のなかを占めるのは便のことでしょう。オスメイトになった衝撃、便の処理、オスメイトとして社会に復帰する日のこと等がリアル -
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第171回芥川賞受賞作。
インパクトのある設定だったが、父親と伯父の設定にも驚く。
想像していたモノとは異なり、物語自体は淡々と進む。
私とわたし、主語が入れ替わるごとに姉妹の思考が入れ替わる。
2人の過去の出来事や記憶が思い起こされ、両親は当たり前のように2人を感じ取り、1人がもし亡くなったらどうなるのか……
何となく姉妹の片方は伯父に似、もう片方は父に似ている気も。
意識はすべての臓器から独立しているのかどうかなど、哲学的要素もあり、ただラストは物足りないような、これでいいような、不思議な読後感。
最初のインパクトが大きすぎて、朝比奈秋作品なら、他のものの方が、とも思う。 -
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第171回(2024年)芥川賞受賞作品。朝比奈秋は史上6人目、男性作家としては初となる純文学新人賞三冠(芥川龍之介賞・野間文芸新人賞『あなたの燃える左手で』・三島由紀夫賞『植物少女』)を達成した。現役、消化器内科医師として働きながら二刀流で執筆。
(帯より)伯父が亡くなった。誕生後の身体の成長が遅く心配された伯父。その身体の中にはもう一人の胎児が育っていた。それが自分たち姉妹の父。体格も性格も正反対の二人だったが、お互いに心を通わせながら生きてきた。その片方が亡くなったという。そこで姉妹は考えた。自分たちの片方が死んだら、もう一方はどうなるのだろう。なにしろ、自分たちは同じ身体を生きている