【感想・ネタバレ】あなたの燃える左手でのレビュー

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Posted by ブクログ

某本紹介インフルエンサーの方の紹介で気になって手に取った本です。
自分の勉強不足で、途中まで読むのが少しキツかったのですが、読み切れたことで、自分の狭い世界が一回り広がったような感覚を覚えています。

キツかった理由、それは自分が日本で生まれ育った生粋の日本人であるからに違いありません。
隣接する国を奪うこと、奪われること、奪われる痛み、取り返したいという渇望、不可逆な現実への絶望。領土を奪い合う複雑な歴史を紡いできたヨーロッパ諸国のような土地で生きる人々の意識に当然のようにあるナショナリズムの強靭さ。これらの感覚を心の底から理解できる日本人がどれほどいるでしょうか?恥ずかしながら、自分自身、北方領土問題や竹島問題などのニュースも全く危機感なく眺める程度のものです。でも、同じような人は多いのではないかなと思います。

この本ときちんと向き合うために、中ほどまで読み進めた段階で一度読書から離れ、ウクライナ、ハンガリー、ロシア、クリミアの歴史をざっと学びました。これが大正解で、登場人物たちの抱える葛藤や、アサトの手が理不尽に奪われたことに込められた物語的なメッセージを深く理解することが出来たと思います。
序盤で読むのがしんどくなって来た方、軽く歴史の勉強をしてみるのをオススメします。

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2024年04月09日

Posted by ブクログ

こんな小説は初めて読んだ。
誤診で切断された左手。つなぎ合わされた白人の手が、自分を侵食していく。自分の体はそれを受け入れ、また拒否する。
移植の話だったのに、それはいつしか文化や民族の受容の変容とは何かという話へと移っていく。
舞台はハンガリー。執刀医はハンガリアンのナショナリストのゾルタン医師。ゾルタンには日本人であるアサトが左手を受容できないのは、ヤワな島国独特のものに映る。

「宗教でも、文字でもなんでも受け入れるのが島国文化、などとほざいてはいても、陸続きの国境を持たない彼らにとって、他国の宗教や文化を受け入れることと、他国を受け入れることは常に別個なのだ。移民も頑なに受け入れていないところをみると、日本というのは実のところ、どの国より何も受け入れてこなかった国なのかもしれない。」
「大陸よりもはるかに矮小で、しかし、島国というには長大な、日本列島。小さな領土のふりをして、西ヨーロッパのほとんどの国よりも大きく人口も多い。ぼんやりとした領海に囲まれて国境を知らず、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民…。」

しかしそのようにアサトを断罪するゾルタンもまた、偏狭なナショナリストなのだった。
アサトの手の受容への変化がゾルタンをも変えていく。

文化も歴史も習慣も民族も違う手を繋ぎ合わすという医師ならではの驚くべきモチーフで、分断された世界を表現する著者の発想と、完成度の高さに感嘆。 

この人の他の著作も読みたいと思った。この人すごい。
この本も、賛否あるみたいだったが、豊崎由美のオススメだったので読んでみたが、やはり、豊崎の読書眼は流石。

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2024年01月02日

Posted by ブクログ

久しぶりに読後引きずる本だー。
重く、考えさせられる、内容だった。
「手の移植」と聞いて、ただ手術的なコトしかとらえていなかったけど、自我であったり、国民性(島国とかの)であったり、支配したりされたり、その辺の綴りが興味深かった。
ハンガリー、ウクライナ、ドイツ、ロシア、今起こっているコトなのも、リアルな感じ。

読み初めはちょっと苦戦したけど、読むにつれ色々考えながらずっしり読めた。
最後の章がよかったー。

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2023年12月19日

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大陸ヨーロッパと島国日本の風土が造る人間の性質の違いについての記述が興味深い。
ウクライナ紛争も絡んでいて、全体的に重く暗い空気に、読んでいる間中囚われる。が、おもしろく、やめられない。
私自身、後遺症で右腕に麻痺が残ったこともあり、身体の苦痛の表現に共感できる。
最後がよくわからなかった。本当は、私が今、理解していることはカケラで、もっともっと深い意味が表現されている、と思う。もう一度読み直してみたい。

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2023年12月02日

Posted by ブクログ

ききみみ、ききひだりてにて、なやむひといるよ!なにか、けさくちゃいとか、けさらんだだんだだんくちゃししゆうる、なにわたのどんでぶうなど、てぐせさきくさらんだらんらむうあとか、なに、かぬくさまにあっくさとか、げえむはらみはらんでたんじゆんには、すうしのはんだんがだめでどうしたのかな、つとむじようたいはんざいに、なっちやう、なちまちるどはんにんはんていぬるからねえ

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2023年06月30日

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無意味な切断による幻肢痛から始まって、臓器移植と違い肉眼で確認できる左手の移植。異物に対する違和感と不快感と拒絶感と、そこからの受容までの葛藤と苦悩の顛末がとても新鮮で生々しくてワクワクしながら読んだ。

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2024年01月17日

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移植された他人の手と自分の手の境界が国境のよう。クリミアの問題、ロシアとウクライナの闘い、地続きのヨーロッパ諸国と島国である日本に生まれたことによる意識の違いなど。少し難しかったけどウクライナとロシアの問題が身に迫って感じられた。
『植物少女』と同じ作者だと読み終わってから気がつき驚いた。かなり雰囲気が異なるけど医療に関する記述の確かさは医師ならでは。

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2023年10月18日

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2回読んで やっと 読んだ気になった。国境や民族とか文化の考え方、わかっているようで わかっていないんだなぁと認識した。この小説が全ての答えを示しているとは思わないけど、世界は広くて深いんだなぁと思った。ページをめくる手はかろうじて自分の手で安心した。

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2023年10月16日

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ネタバレ

国境や領土問題をドナーとレシピエントの臓器に例えたのが秀逸

ハンガリー人医師の日本人観には妙に納得させられた
日本人が色んな文化を受け入れられるのは侵略される心配がなかったことの裏返しでもある、と。

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2023年10月02日

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誤診により切断された左手。そして移植され見た目は左手も回復したように見える。自分の左腕と、他人の掌、指。その境界と国の境界の話へと広がっていく構成が自然で上手い。確かに繋がった手に振り回されるような、感情が追いつかない日々と、ロシアとウクライナの問題がリンクしていくように語られる。そこを隔てているものは何か。国や国境とはなにかまで問いかけてくる。前作の『植物少女』同様に今作もすごい。

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2023年07月19日

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ネタバレ

この作品は私には何がいいたいのかよくわかりませんでした。
ストーリーも実はちんぷんかんぷんでした。
自分の読書の記録としてわかったことのみを書きます。


ハンガリーの内視鏡センターで働く看護師で日本人のアサトは左手を切断する必要のなかった手術で癌と間違えて切断されてしまいます。

ハンガリー人のドクトル、ゾルダンは誤診をしましたが、アサトに別人の手を移植します。

アサトには元ジャーナリストで、看護師のハンナというウクライナ人の妻がいます。
ハンナは関西弁のような言葉で話します。


P105ページのハンナの言葉にはっとしました。
「日本は大きな国やわ。ハカタには新幹線で四時間以上かかったし。ヨーロッパなんてユーロスターに四時間乗ったら三か国は跨ぐで。ロンドンから、リール、ブリュッセル、アムステルダム。ああ。四つか。列車がな、国境を超えるたび、空気がふわっとかわるねんで。外気じゃなくて、ユーロスターの中の空気がやで」
「いいなあ、島国。大きな列島、どこまで行っても自分の領土」
「自分だけの山、自分だけの河。陸から他の国は見えるん?」

そして、ハンナは身に危険が降りかかった時、自爆テロで亡くなります。
アサトはハンナの手が自分の左手に移植されたと思い込みます。

ハンガリーでは温泉は混浴で水着を着て入るというのは初めて知りました。

ドクトルたちは、日本が手の移植手術を行わないのは日本に国境がないからではないかと言い出します。


一体何の話なのかやっぱりわかったようで全然わかりませんでした。

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2023年07月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もちろん、表現とか、国境・国に関する話とかは素晴らしいと思いますし、なぜか自分も左手がなくなったように感じてしまうほどですが


主人公があまりにも救われなさすぎて読み終わってしんどい本でした。


でも、主人公の手が暗喩するものが国なのであれば、ウクライナ戦争は誤診ってこと…?

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2024年05月16日

Posted by ブクログ

肢痛や拒絶反応などの左手をめぐる術後の肉体的・精神的描写に圧倒されながら、転がるように何とか最後まで読み切る。勉強不足な日本人である故に到底理解が及んでいない場面もありますが、この小説内で何か凄まじいことが行われているのは解る。まさに必読。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

手の移植から、こんなに色々なことを考えさせられるとは!

他人の手を、自分の腕に、移植する。
他人と自分。
その違いを知り 受け入れることについて、考えさせられた。

描写についてはちょっとややこしくて…どこまでがアサトの現実で、どごまでが妄想?!みたいな部分もあったので、集中して読まないと置いていかれそうになる(笑)
島国育ちだからこそ、国境についてそこまで日常の中で深く考えない。その部分を突いてくる本でした。

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2024年04月22日

Posted by ブクログ

「国」に対する意識、その境界を侵されるということ。おそらく現代日本では想像しがたい事象を、そんなふうに喩え表現するのかという衝撃。出会えてよかった一冊。

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2024年04月06日

Posted by ブクログ

ハンガリーの病院で内視鏡技師として働くアサトは、とんでもない誤診の結果、左手を手首から失ってしまう。何年もの間、幻肢痛に苦しめられた彼は、他人の左手を移植する手術を受けるが……。
現役医師である朝比奈さんならではの作品である。理不尽に体の一部を奪われ、さらに他人のパーツにすげ替えられた主人公の苦しみが全篇を覆う。
そして、ロシアによるウクライナ侵攻直前という時代設定、地続きであるハンガリーとの歴史や国民感情、冒頭に置かれた自爆する女性の謎などが重層的に絡む。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

圧倒されちゃった!
左手を移植したことによって、肉体的、精神的にも境界が曖昧になっていくような話。
手術後の他人の手との接合部をウクライナ国境に例えているところ、意識の視野が広げられていくようで面白かったです。
でも、ちょっと難しいね。

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2024年02月27日

Posted by ブクログ

苦手なんだよなこの類の本…
なんて読み始め15分くらいで思ってしまったので、せめてざっくりでも読み終えようなんて思ったら、読み進めるうちにいや面白いなと思って読んでました笑


国境と手の移植による境目の比喩っていうのかな?これがすごく面白かった。改めて日本という島国に生きる人間として考えたけど、確かにどの国よりも何も受け入れてこなかった国と言われればそうかもしれないし、一見謙虚なようで、つまり、ひどく傲慢なのだ。という表現は腑に落ちるとこがあるなと感じた。
読んだ後には国外での手の移植について調べて、面白いな〜と色々ネットの記事を読み漁りました笑

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誤診によって左手を切断されたアサト。幻肢痛が一向に改善されないため、異国の男性の手を移植する。しかしその手はアサトになかなか順応しなかった。

本作のキーワードは「境界」である。
上記のあらすじを見るとその「境界」は日本人の体と移植されたハンガリー人の体を指すと思うだろうが、本質は国にある。

目が覚めたらいつも通りにあるものである身体、そして国。それがある日、突然奪われる。
島国である日本に住むわたしには少し想像しにくい事柄だった。だからこそ朝比奈さんは身体の境界を国の境界のように見立てた本作を執筆したのだと思う。
そうすれば少しだけでも、その恐ろしさや痛みが理解できるような気がするから。

アサトはウクライナ人の妻・ハンナを持つ。そして彼女はロシアとの戦争の中で亡くなった。現実とリンクしているのである。
ハンナは自分の住んでる場所を他国の奴に取られたと怒る。そして元々住んでた人も別国の人間になったと嘆く。誰彼が可哀想だとかなんだとか大義名分を掲げるが、ゾルタンが「怒れ怒れ。それが国境を押し返す力だ」と言うように結局怒りが行動の源であり、戦争の核心なのだろう。

終始、題名の意味を考えていた。
「体の全ての細胞が左手を拒絶して燃えていた」と本文にある。
題名の『あなたの燃える左手で』って誰目線なのか、そして燃える左手で何をするのだろうか。拒絶するのか。受け入れるのか。もしくは他の答えか。

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2024年01月23日

Posted by ブクログ

受け入れがたい喪失、受け入れがたい存在。それと自分が地続きであること。それに人は向き合えるのか。耐えられるのか。特に地続きの国境を持たない私たちは。そんなことがテーマなのかなと思うが、何せ読みにくい。主人公の妄想が混ざるので致し方ない部分はあるが、せめて単なる場面描写や時系列だけでもすんなり入ってくる書き方をしてほしい。

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2024年01月10日

Posted by ブクログ

自分の体の一部の喪失と
ウクライナ、クリミア、ロシア周辺で起こっていること
どこまでがほんとでどこまでが幻想なのか読んでて混沌として不思議な世界に迷い込んだ感じだった。

島国と大陸の国民性の違い、そういう見方したことなかったので新鮮。

異国の友人がいればそういう会話をする機会があるのかなとか…妄想してる。

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2023年12月17日

Posted by ブクログ

現役医師が書いているので、情景が細か過ぎる程細かい

ハンガリーに住んでいて、ウクライナ(クリミア半島)出身の妻がいる日本人男性が主役

現代のある日、医師の誤診で主人公の左手が切断される

看護師の妻がウクライナ東部での戦闘に巻き込まれ、亡くなる

主人公にポーランド人の左手が移植され、その左手の意思があり、馴染めない

担当医のドイツ人医師のドクトル視点が時々、混ざる

すごく面白くはないのだけれど、最後まで読ませる

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2023年11月09日

Posted by ブクログ

国境、民族、言語、歴史的背景、争う事なく穏やかに過ごせる世界でありたい。おもわず自分の左手手首を握りしめてしまいました。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

島国である日本と、繋がっている大陸の国々では国境の捉え方は確かに違うのだろうと思う。
移植された左手の繋ぎ目がまさに国境のように描かれていて、そこに日本人としてのアイデンティティが感じられた。
臓器移植でも拒絶反応はあるけど、「左手」という自分で見える部分の移植は、精神的な拒絶反応も出てしまうと思う
ハンガリー、ウクライナ、ロシア…との政治的な問題も絡んで、なかなか重たいテーマ。
難しかった。

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2023年10月05日

Posted by ブクログ

左手を誤診で切断、他人の手を移植だなんて考えられない。最初の切断の時点で衝撃が大き過ぎるのだが。
切断が決まったときの周りの反応があまりにもあっさりとしていて驚いた。所詮、他人のことだからなのか。

国の侵攻と人の手を移植すること。少しだけ似ている。
主人公の左手のドナーがまだ生きていることが、侵攻されて相手国に従属する形になっても、国民は生きていくのだと叫ばれているような気持ちになった。

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2023年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ハンガリーの病院で手の移植を受けた日本人のおはなし
奥様はウクライナ人
舞台はまさしく今現在で、ウクライナの状況ヨーロッパの状況が一個人の身体と重ねて論じられている

一度切り落とされた手はもう戻らない
移植され繋がれる手は、同じ手であっても元の手とは別の誰かの者

それを、どう受け止めるかということを問われている話なのかなと
思ったけれどどうなんだろう。主人公の悩みや困惑が夢現のようで少し複雑な印象。

土地を奪い奪われの陸続きの大陸のひとと島国日本の人間には考え方や受け止め方に違いがある、というのはわからなくもないと読みながら思ってしまったけれど、それでも失っている島はいくつかあるのだよな。そこに痛みがない訳はないし、でも我が事と捉えられているかといえば微妙なところで、勉強して知らなければなぁと、作品とは直接関係のないところかもしれないれどそう思った。

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2023年08月10日

Posted by ブクログ

ラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」で出演されていて、プロフィールや小説を書くきっかけ、スタイルに興味を持って。

本の帯にある3人の識者によるコメントがしっくりくるのだろうが、なかなかに難しい本であった。

遡って、著者作品を染み始めよう。
読み解くことで、少しずつもやもやしている部分が理解できるかもしれない。

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

久々の休みの日に読みたかったものから選んだ本です。
今読むべきではではないと、読み始めに感じた
読後、痛み、苦しさ、衝撃ばかりで後悔しました。
多少時系列に救われたかな、
つらい現実を乗り越えなきゃいけない事が起こるのが怖い。重い休日でした。


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2023年07月14日

Posted by ブクログ

植物少女がとても良かったので、朝比奈さんのこの本も読んでみたかった。
他人の手を移植することは、どんな感じなのか?
とてもよく書いてあって怖いくらいだった。
日本では手の移植が行われたことはない。
幻肢痛に立ち向かう様子が細かくて、痛みが伝わってくるようだった。
左手でトンカチを持って釘を打つリハビリは、
利き手ではないし、普通の人でもやりにくいと思う。
むすんでひらいて
日本の手遊び。これもリハビリ。
激しい拒絶反応で真っ赤に腫れる左手。
この本は、初めから最後まで、なんというか左手がじんじんする感じがすごい。
現役医師だからこそ知り得る情報があちこちにあり、描写が生々しい。
すごかった。

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2023年07月11日

Posted by ブクログ

麻酔から覚めると、見知らぬ他人の手が移植されていた。 
ハンガリーの病院で、内視鏡センターで技師をしている日本人のアサトは、ある時、自分の左腕に
腫瘍が見つかりすぐに切断しなければならなかった。そして左腕は切断されたのだが、まさかの
医療ミスで本当は切断しなくても大丈夫な症状だったのだ。なんとも言えない気持ちに陥ったアサトだったが、そこに現れたのが、新しい主治医の
ゾルダンだった。ウクライナにいる最愛のハンナを思いながら、現在起きているウクライナとロシアの問題をリアルに届けていると思います。
少し歴史を知った方が楽しめると思います。

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2023年07月05日

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