無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
ロシアにとられたクリミア、ウクライナにとられたハンガリー…
地面は繋がってるのに、線の向こう側は違う国で、勝ち取った土地は力ずくで支配下におくのが常。
私達島国民には、ない感覚なんだろうな。
そんな感覚を、絶妙な表現で言い当てていると思った。
何も悪いところはないのに理不尽に体の一部を切り落とされ、他人の身体を繋げられて、他人の血管を通った血がめぐる。境界線で筋肉や神経が引っ張り合い、自分が優位にたつよう主張する。他人の記憶や臭いが身体に染みついてくる…。
共存はできるんだろうか。
お互いを許し受け入れられたら、怒りやせん妄、思い込みや被害妄想が減るのだろうか。
会話レコードから、優しい妻だったことがわかって、ほっとしたし悲しかった。
Posted by ブクログ
左手移植をめぐる小説でありながら、単なる医療小説ではなかった。手の移植を通して、自己と他者の境界、死者を受け入れること、国境や移民、夫婦、記憶、欲望までが重ねられている。
作品全体に、「自己/非自己」という構造が敷かれていた。移植された手を身体が拒絶することと、主人公が他者の手を自分として受け入れられないことが重なる。さらにそれが、ロシア、ウクライナ、クリミア、移民、国境、夫婦関係へ広がっていく。他者を受け入れるとは、「相互理解」でさえないのかもしれないと思った。
「人間が手の使用によって高い知性を獲得したのなら、手の移植によって受け継がれるのは知性ということになる。しかし、実際に受け継がれるのは人間を最も人間たらしめるものではないか。」
このように、手と個を強固に結びつけながら、「どのように受け入れるべきか」を探っていくが、ある出来事を境に、生理的嫌悪を抱き、それは身体反応を生じ、受け入れがたくそこに存在している、という構成、読めば何通りにも読める物語の重ね方はすごく引き込まれた。
Posted by ブクログ
朝比奈さんの話は2作目。
面白かったです。心が揺さぶられて私の今年ベスト3入りしそうな予感です。
まず、フィンランド語の訛りを日本の方言で表しているところ。フィンランド人が「ごめんやでー」と言っているの最高だった。フィンランド語を聞いて日本人である主人公が脳内変換してると面白い。静かに、この物語を緩くさせるような効果があった気がする。
次に移植のこと。
自分がいかに移植について深く考えた事がなかったことに気づいた。手は生活する上で大事な場所で、そしてよく目に入る。
私は車で信号待ちしているときに手荒れや爪の伸びが気になる。人によっては綺麗にネイルして顔の次におめかしする場所かもしれない。
その手が他人の、しかも人種も違う手になったら…。金髪の指毛が生えていたら…
他人に触られているような気分になるだろうし、常に違和感との戦いだろう。
ふと職場の隣の人の手を見てみた。私と全く違うのだ。色も大きさも厚みも。その人のことはすごく好きだけど、その手が私の手と入れ替わると思ったら拒否感が出てしまう。また、自分の手が誰かについていることにも拒否感が出てしまった。
もう一つ、国境や紛争の問題も扱われている。島国の日本で生まれ育った自分には他国と地続きという事がピンとこない。それが場所によってソ連だったり独立したりウクライナになったりロシアに取られたり…
国民性というのがあるのは当然だと思った。
短い話の中に過不足なく詰まっていた。足りない感じも間延びした感じも全くない。すごい一冊です。
Posted by ブクログ
純文学を読み慣れていないせいか、普段読んでいるような小説に比べると読みづらさはありましたし、深く考えずに淡々と読み進めてしまったところもあるのですが…。それでも読んでいてハッさせられる部分は多くあり、読み終えてみての感想は「読んでよかった」というものでした。
語られる言葉の全部を汲み取れなくとも、自分の中にはない知識や感情、価値観、経験を、主人公の言葉を通して文字で知ったり、想像したりすることが出来る。そういう面白さを、今回の読書で少し体験できたように感じました。
また、作品の主軸である手の移植から話が波及し、国や民族、歴史、社会情勢など多くのことに触れていく構成には非常に驚きました。
頁数は少ないですが、考えさせられることが多々ある、とても読み応えのある一冊だと思います。
Posted by ブクログ
表題からは想像できない他人の手を移植する物語で、東部ヨーロッパの複雑な背景もあり、奇妙な読後感を得た.アサトは左腕に浮腫ができ、悪性と診断され切断を余儀なくされた.その後、白人の手を移植することになり物語が急展開する.ドイツ語、ハンガリー語、ウクライナ語、ロシア語が飛び交う場面を想定した話があり、多くの人が交錯するので、前後関係を確認するため、何度も戻りながら読んだ.ハンナとのやりとり、移植医のゾルタンとの会話、手術後に現れる夢の数々、幻肢痛への対処、同僚との会話などなど、ばらばらに出現する事項が何故か一点に収束する感じを得たのは不思議だった.ただ、ウクライナのクリミヤ半島のドライブは、複雑な物語の中で唯一の息抜きのような感じがした.
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸