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ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサト。だが麻酔から醒めると、繋がっていたのは見知らぬ白人の手で――。自らの身体を、そして国を奪われることの意味を問う、傑作中篇!
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Posted by ブクログ
ヨーロッパで暮らすアサトは、左手を失ってしまうが、他人の手を移植される。 自分ではない異物との戦いを、ヨーロッパの人種や国境問題と絡めて描く。 私たちは、自分を守るため、細胞レベルで、個体レベルで、生まれついた人種として、あるいは国として、他者と戦わなければいけないのか。それとも、受け入れて共存で...続きを読むきる道を探さないといけないのか。 理論や科学、理想を超えた我々に染みついている感情をどう落ち着かせていけるのか。 傑作。
読み始めは少しきついかな?と思ったけど、読後は、読んでよかった、という感想になりました。 こんな内容の本に出会ったことがありませんでしたが、一度読んでもらいたい本です
朝比奈さんの話は2作目。 面白かったです。心が揺さぶられて私の今年ベスト3入りしそうな予感です。 まず、フィンランド語の訛りを日本の方言で表しているところ。フィンランド人が「ごめんやでー」と言っているの最高だった。フィンランド語を聞いて日本人である主人公が脳内変換してると面白い。静かに、この物語を...続きを読む緩くさせるような効果があった気がする。 次に移植のこと。 自分がいかに移植について深く考えた事がなかったことに気づいた。手は生活する上で大事な場所で、そしてよく目に入る。 私は車で信号待ちしているときに手荒れや爪の伸びが気になる。人によっては綺麗にネイルして顔の次におめかしする場所かもしれない。 その手が他人の、しかも人種も違う手になったら…。金髪の指毛が生えていたら… 他人に触られているような気分になるだろうし、常に違和感との戦いだろう。 ふと職場の隣の人の手を見てみた。私と全く違うのだ。色も大きさも厚みも。その人のことはすごく好きだけど、その手が私の手と入れ替わると思ったら拒否感が出てしまう。また、自分の手が誰かについていることにも拒否感が出てしまった。 もう一つ、国境や紛争の問題も扱われている。島国の日本で生まれ育った自分には他国と地続きという事がピンとこない。それが場所によってソ連だったり独立したりウクライナになったりロシアに取られたり… 国民性というのがあるのは当然だと思った。 短い話の中に過不足なく詰まっていた。足りない感じも間延びした感じも全くない。すごい一冊です。
純文学を読み慣れていないせいか、普段読んでいるような小説に比べると読みづらさはありましたし、深く考えずに淡々と読み進めてしまったところもあるのですが…。それでも読んでいてハッさせられる部分は多くあり、読み終えてみての感想は「読んでよかった」というものでした。 語られる言葉の全部を汲み取れなくとも、自...続きを読む分の中にはない知識や感情、価値観、経験を、主人公の言葉を通して文字で知ったり、想像したりすることが出来る。そういう面白さを、今回の読書で少し体験できたように感じました。 また、作品の主軸である手の移植から話が波及し、国や民族、歴史、社会情勢など多くのことに触れていく構成には非常に驚きました。 頁数は少ないですが、考えさせられることが多々ある、とても読み応えのある一冊だと思います。
左手の移植をメタファーに、国の併合への苦しみを描いている。国境線のない日本人と常に領土争いに巻き込まれてきた東ヨーロッパの人々の意識の違いを肉体感覚の深い部分で抉ってくる。 最初の意識が朦朧した状態から、徐々に現状が明らかになるストーリー運びもうまい。妻への電話も埋められない喪失感として左手への幻肢...続きを読む痛とともに描かれてて、なんとも言えないもの悲しさを感じた。 読後感は良くないが、戦争や自国が奪われることの理不尽な不気味さを肌で感じることができるすごい作品だと思う。
«左手の移植»に詰まった著者の平和への願い。島国に住む日本人の国民性や、この世界の現状を«左手»を中心に巡り描いた祈願と受け止めた。受け止めるだけで次への有益な行動に移れぬのがもどかしい。純文学はメッセージ性が強いから弱った現在の身にはキツイけれど、今作は150ページを越えた辺りからのめり込んでしま...続きを読むった。ちょっとしたホラー要素はあるものの移植した左手と会話するファンタジーではない。そこは現実的。とても惹き付ける因子を持った作風。気になるなぁ。
表題からは想像できない他人の手を移植する物語で、東部ヨーロッパの複雑な背景もあり、奇妙な読後感を得た.アサトは左腕に浮腫ができ、悪性と診断され切断を余儀なくされた.その後、白人の手を移植することになり物語が急展開する.ドイツ語、ハンガリー語、ウクライナ語、ロシア語が飛び交う場面を想定した話があり、多...続きを読むくの人が交錯するので、前後関係を確認するため、何度も戻りながら読んだ.ハンナとのやりとり、移植医のゾルタンとの会話、手術後に現れる夢の数々、幻肢痛への対処、同僚との会話などなど、ばらばらに出現する事項が何故か一点に収束する感じを得たのは不思議だった.ただ、ウクライナのクリミヤ半島のドライブは、複雑な物語の中で唯一の息抜きのような感じがした.
戦争、国境、人種の違いを移植という形で対比して描いたのは、医師ならではの目線だと思う。 ある日移植した他人の手に、自分の血が流れて、だんだんと同化していく。境界線が、吻合部があいまいになっていく。 ヨーロッパの動脈であるドナウ川は何ヶ国も通過し、ハンガリーからウクライナへ。周りと同化することが自然な...続きを読むことなのか、違ったままで生き続けるのか。はるか昔から川は巡るけれども、今日も戦争は終わらない。
ハンガリー在住の日本人の内視鏡技師の、 失ってしまった左手。 そして新たに、移植された他人の左手。 ウクライナ、ロシア、ハンガリー、ドイツ、 ポーランド、そして島国の日本。 移植の前後の肉体感覚と、昨今の国際情勢、 特にクリミア併合以降のウクライナ情勢が重なる。 読みごたえありました。
あなたの燃える左手で 2025.08.10 怒りを恥じること、他人を想って涙を流すこと、それが弱さでなくて美徳とされるあの列島、そして、そこに住む平和で呑気でシャイで、親切にされると恥ずかしそうに礼義正しくお辞儀をする人たち。 この文章によって日本人の在り方を客観視できて、なるほどなと感じた。ど...続きを読むこか愛おしいと感じてしまった。このような日本人であり続けたいと思うのは愛国心の表れなのだろうか。 島国である日本とヨーロッパ大陸のちがいを手の拒絶反応で表しているのが印象的。読みながら自分の神経も痛むような感覚を得た。移植をテーマとして国際関係に繋げるのは新鮮だった。 私もアルバイトをしていて外国人観光客の態度や食べ方、マナーについて体の内なるところから、どこか違和感や隔たりを感じることがある。日本にいて、殻にこもっていては気付けないことだと思う。このような違いを乗り越えていかなければ本当の国際協力は難しいのだなと実感させられる。
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