朝比奈秋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あらすじを読んだ際には、別の人の左手を誤診により移植された主人公が、それを乗り越えるような医療系の割とありがちな話かと思った。国境や民族意識、戦争も一つ大きなテーマになっており、その視点と片腕の移植を絡めていて面白かった。
普段何気なく使う体も、全て自分のものだからこそ違和感なく使えることを実感して、ありがたいなと感じた。
「日本人は謙虚に見えて傲慢」という箇所が印象的だった。国境の意識がなくほとんど同じ民族で構成されている国であり、だからこそ身内には親しいが外の人には排他的になりがちである。普段の自分の価値観、認識の仕方を改めていきたいと思った。 -
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読書備忘録899号。
★★★★。
芥川賞作家朝比奈さんの2023年作品。
サンショウウオ・・・は見かけ上1人の人間でありながら結合双生児という特殊な状況における心の物語でした。
正直、どのように捉えて良いのか難しい作品という印象でした。
この作品はサンショウウオに比べるとテーマが分かりやすい。
①国境を巡る紛争。侵略行為。一方、国境に縛られない民族という括り。
②生体移植。失われた人体機能を取り戻すために行われる生体移植。他人の一部を移植する。
国境という境目。生体移植の境目。この2つは実は同じなんだという物語。
そして、領土侵略、生体移植が成功するかどうかは境目を跨る相互意思に掛かって -
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医師でありながら小説家でもある9人の短編小説が詰まった作品でした。あんなに忙しそうなのに、いつ小説書いてるんだろうって不思議に思う凄い方々。
医師であるからこそのリアルな感じが伝わってきて、とても面白かったです。
特に空中テントは、認知症の家族を介護したことある人なら誰しも共感出来る部分がたくさんあると思いました。施設の入所は、家族を見捨てることではなく、プロがみてくれる安全な場所にいれるという考えが広がったらいいな。
私も主人公のお母さんにとても同情しました。介護する人は、自由が奪われて当然なのか、当事者じゃない人達から見捨ててるなんて文句言われる筋合いはほんとにない。文句を言うなら1週 -
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朝比奈秋さんの初読になります。
もしも自分の左手が他人の左手に移植することになったら。
舞台はハンガリーの病院での移植。
アサトは日本人、移植の手はヨーロッパ人の左手。手の肌の色が違うし、皮膚にあるうっすら生えているうぶ毛はブロンズ。そして右手と左手を見比べると指の長さ、掌の厚みなど部分的に大きさが違う。それだけでも気味悪くなるのに、そんな手術が誤診移植だったようでクラクラしてきます。
今度は移植後の幻肢もなかなか経験出来ない貴重なものでした。馴染んできたり、拒絶反応が出てきたりの繰り返し。
幻肢痛に、もがき続けるアサトの悩みが、経験者じゃないと描けないだろうと思い、ネットで朝比奈秋さんの -
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ハンガリーの外科医によって、左手を失った日本人患者に他人の手を移植手術する場面を軸に展開される話。
他人の手の移植にあたり、日本人は終始微笑して受け入れているように見えるが、徐々に本人にも耐え難い術後拒否反応が繰り返されることになる。
その反応を比喩として、ハンガリーの外科医は、日本人は健やかに笑っていているように見えても、何も(外国人を)受け入れない国民性に結びつける。
さらに、移植した手と本人の腕の境目を国境に見立て、日本人は四方に他国との国境があるヨーロッパとは異なり、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民との印象を受ける。(移植した -
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医師でありながら作家でもある方々の医療小説9編。
私の知っている作家さん以外にこんなに多くの医師作家さんがいることに驚きました。どれも医師であるだけに小説の内容は臨場感が溢れていて迫力がありました。
中山祐次郎さんの『救いたくない命』は救急で運ばれてきた患者が犠牲者15人以上を出した通り魔事件の犯人と知り、葛藤をしながらも必死に命を救う姿に京アニ事件を思い出しました。
南杏子さんの『空中テント』は家族の介護の経験がある人は共感出来るはず。
どれも本当に良い作品ばかり。若手医師の過酷な労働時間、医療ミスの隠蔽、不都合な論文を闇に葬る等、医療小説が好きな人なら興味のある内容ばかり。でも朝比 -
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すごい作品だと思いました。
楽しいかと言われると、楽しくはないけどすごい。
硬質で、ドライで、知的。遠藤周作とか、大江健三郎と似たものを感じました。それってものすごい。雰囲気に圧倒されて、ストーリーがどうこう言いたくならない。
これと『受け手のいない祈り』を読んだら結構違っていた。『受け手のいない祈り』は本作に比べると感情的に思える。作品によって色々変えているのかもしれない(共通しているのはやっぱり医療関係というのと、グロいというかナンセンスというか、ちょっと胸が悪くなるような気持ち悪いシーンが入れてくるということ…)。
デビュー作と芥川賞受賞作も気になる。