朝比奈秋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
定年後勤めだした仕事が少なからず医療に関係しているので、一つ現役医師の小説家が書いた小説を読んでみようと思い、手始めに新潮文庫にある『夜明けのカルテ』という9人の医師小説家の短編を集めたアンソロジーを読んでみた。収録されていたのは下記の作品である。
牛島志季『研修医ヒナノの洞察』
朝比奈秋『魚類譚』
春日武彦『パイナップルのある光景』
中山裕次郎『救いたくない命』
佐竹アキノリ『春に綻ぶ』
久坂部羊『闇の論文』
遠野九重『言葉が消えるまえに』
南杏子『空中テント』
藤ノ木優『峠を超えてきた命』
それぞれ主人公が外科医だったり産婦人科だったり研究職だったり患者を抱える家族だったり。自分に身近 -
Posted by ブクログ
なんともいえない読書体験
身体(脳含め)は一つだが、2つの意識がある杏と瞬。
決して二重人格というわけでもなく、2つの意識
ということである。
精神医学的な「二重人格(1つの身体に1つの意識が交代で現れる)」との最大の違いは、「意識が同時に存在し、常に隣り合っているか、交代する(入れ替わる)か」という点らしい。
途中までは、うつ症状に悩む人の脳内はこんなかんじなのかな
とか思いながらの読書だった。(めちゃくちゃ勝手な感想。)
もう一方の神経症的な意識が永遠に議論を脳内で続け、もう一方は強制的に眠るしかないような…
最後はなんだかほんとうに混ざり合いすぎて一読しただけでは理解できなか -
Posted by ブクログ
母親が植物状態になってしまった娘の視点から、母親が亡くなるまでの26年間が描かれた小説です。出産の際に植物状態になってしまったため、主人公は一度も母親と会話したことがありません。
父親と祖母が知る生前の母親は、主人公にとって知らない人のようです。
空っぽの母親に主人公は何でも話すことができます。学校の愚痴、父親が別の女性と付き合ってること、祖母と父親が仲が悪いこと…。
主人公が母親を扱うときの乱暴さが結構衝撃なのですが、生まれたときから植物状態の母親を小学生の子どもが人形のように扱うのはしょうがないよなぁ…。
本当につらい状況なのですが、つらいという言葉で簡単に表現できないというか、当事者たち -
Posted by ブクログ
ネタバレ□ストーリー
「植物少女」を読んだ後に「なんだこの得も云えぬ読味は!?」という感想を持っていて、それがよかったので本作も読んでみることに。
その時には言語化できなかった感情の正体だけど、調べていくうちに腑に落ちたものがあったので記載。
エモーショナルライン(Emotional Line)とは、物語やコンテンツにおける登場人物(キャラクター)の感情の動きや変化を、時系列に沿ってグラフや線で視覚的に表したもので、「感情曲線」とも呼ばれる。
基本的には負の状態(問題を抱えている状態)から始まるのが読者を惹き込みやすいようで、朝比奈秋作品は生命倫理みたいな問題を取り扱っている性質上、
感情曲線が -
Posted by ブクログ
第171回芥川賞受賞作です。
技巧的な部分が高く評価されているようですが、私はそういったところは全然分からず…ですが、とても面白く興味深く読みました。
胎児内胎児を父親に持つ結合双生児のお話です。頭も身体も一つを共有するという極めて珍しい結合双生児の杏と瞬の姉妹が主人公です。
意識とは何か、二人で身体を共有するとはどういうことなのか…この辺りの描写がとても面白かったです。一つの身体に意識が二つあるというのは想像もできない不思議な事象に思えるのですが、二人からしてみたら自分の身体を自分だけのものだと考えている私たちこそが、何言ってるの?的に思えるという…。普通とは何かということを考えました。 -
Posted by ブクログ
表題からは想像できない他人の手を移植する物語で、東部ヨーロッパの複雑な背景もあり、奇妙な読後感を得た.アサトは左腕に浮腫ができ、悪性と診断され切断を余儀なくされた.その後、白人の手を移植することになり物語が急展開する.ドイツ語、ハンガリー語、ウクライナ語、ロシア語が飛び交う場面を想定した話があり、多くの人が交錯するので、前後関係を確認するため、何度も戻りながら読んだ.ハンナとのやりとり、移植医のゾルタンとの会話、手術後に現れる夢の数々、幻肢痛への対処、同僚との会話などなど、ばらばらに出現する事項が何故か一点に収束する感じを得たのは不思議だった.ただ、ウクライナのクリミヤ半島のドライブは、複雑な
-
Posted by ブクログ
林芙美子文学賞受賞作がどんな作品なのか気になったので手に取った本。なので併録の「塩の道」を先に読んでから「私の盲端」を読みました。結果的にこの順で読んで良かったと思うのは、「私の盲端」のインパクトが強すぎたからです。
「私の盲端」
オスメイト(人工肛門)をつけることになった女子大生の物語。オスメイトの男にナンパされるところから物語は始まるのですが恋愛物語には一切発展せず、ひたすら大便の話が展開されていきます。確かに、健常な生活を送っていた人間が、突然オスメイト生活になれば、頭のなかを占めるのは便のことでしょう。オスメイトになった衝撃、便の処理、オスメイトとして社会に復帰する日のこと等がリアル -