朝比奈秋のレビュー一覧

  • サンショウウオの四十九日

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    身体や精神、生と死。区切りが曖昧であれば、確かにこんな感じなのだろうと思う。
    その境界の位置はどこからどこなのか、何が定めるのか、そもそも定める意味があるのか。これまで考えたこともなかったことに思考を巡らせた。

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    2025年09月02日
  • 受け手のいない祈り

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    地域の基幹病院に掛かっているが、ほぼ予約診療でありながら、待って待って…ものの2、3分で終わる診察。もっと話ししてほしい、聴いてほしい、と不満だが、医師のワークライフバランスに思いを馳せると言えない。
    救急医療の大変さは、それどころではないようだ。いっそ病に倒れた方が、死んでしまった方がマシじゃないか、と医師が思うのが不思議ではない過酷な勤務状況の描写。重く苦しい読後。
    関西弁がナチュラルで、そこが救いなところ。

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    2025年08月15日
  • 植物少女

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    装丁に惹かれて購入してしまった一冊

    こう、上手く共感もしきろうにもしきれない、
    こういう病気モノは実体験してるかどうかが
    とても大きな鍵になってくると思う。
    少なくとも、この小説に救われる人は多い気がする。

    なんとも表現し難い、
    登場人物の苦しさがジワジワと伝わってくる。
    どのような状況下でも、
    主人公ミオは強く、逞しく、母性なのか、
    カッコよく見えた。誇らしく感じた。

    きっと、お母さんもそう感じてたと思うよって
    声を大にして言いたい。

    現に、植物状態なのはお母さんなのに、
    タイトルにあるように「植物少女」となっている
    というところにセンスもすごく感じる。
    実際に主人公ミオは植物状態

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    2025年08月12日
  • あなたの燃える左手で

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    あなたの燃える左手で
    2025.08.10

    怒りを恥じること、他人を想って涙を流すこと、それが弱さでなくて美徳とされるあの列島、そして、そこに住む平和で呑気でシャイで、親切にされると恥ずかしそうに礼義正しくお辞儀をする人たち。

    この文章によって日本人の在り方を客観視できて、なるほどなと感じた。どこか愛おしいと感じてしまった。このような日本人であり続けたいと思うのは愛国心の表れなのだろうか。

    島国である日本とヨーロッパ大陸のちがいを手の拒絶反応で表しているのが印象的。読みながら自分の神経も痛むような感覚を得た。移植をテーマとして国際関係に繋げるのは新鮮だった。
    私もアルバイトをしていて外国

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    2025年08月10日
  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    結合双生児が主人公のお話。感想をどう書いていいか、わからない。でも、透明感を感じる文章・文体が好き。自我とか自意識って、なんだろうね。興味深く、あっという間に読み終えました。

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    2025年08月01日
  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    第171回芥川賞受賞作品。

    主人公は29歳の結合双生児、濱岸杏と濱岸瞬の姉妹。
    皆さんは、1つの体に2人の人間が宿っている状態を想像できるだろうか。
    ある2人のベトナム人、「ベトちゃん」と「ドクちゃん」の名前をあげれば解像度を上げることができるかもしれない。

    しかし当作品の主人公との決定的な違い、それは頭も腕もそれぞれ自身のものを有しているということである。つまり、主人公の2人は完全なる1人の人間としてのひとつの体を持つ中で、2人の意識が存在しているという事である。

    そんな複雑性を抱える主人公が、自我と自己に対する葛藤やそのような状態にあるからこそ生まれる心情を描く。


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    2025年07月27日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師が書いた小説。もう読んだ本もあるが、すべて興味深い。ここから知った医師作家の本を読んでみたいと思う。

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    2025年07月15日
  • 受け手のいない祈り

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    朝比奈秋、ハズレが無い!
    やりがいに搾取され、逃げ場のない労働者が、睡眠をもぎ取られるとどうなってしまうか。
    それを医師という職業で、表現してくれた、ということだ。

    追い詰められた人間がどうなっていくか、公河の内面を追うことで読者に見せてくれる。
    恐ろしや恐ろしや。
    医師って、子どもたちが目指すいい仕事のはずなんだけど…。直美(ちょくび)もわからなくはないね。

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    2025年07月04日
  • あなたの燃える左手で

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    ネタバレ

    意外と難しくて、読み終わるのに時間がかかった

    なんの説明もなく過去の話になったり、話し手が変わったり
    いつのまにか考え事をしてる時はそんなものが知れない 国語の試験の課題文を読み解くみたいな気持ちで読み進めるのが疲れた

    誤診で左手を失った喪失感は直接描写されていないのに、幻肢痛の描写リアル そり、考え事しちゃったり、妄想の世界に入ってしまったりするよなぁ

    ロシアに攻め込まれたウクライナ市民の描写、隣国ハンガリーの市民の気持ち、シチュエーションによって言語を使い分けることが要求される生活、日本にいたら分からない
    この本に書かれていることが全てじゃないだろうけど、それなりの真実は含まれている

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    2025年06月22日
  • 受け手のいない祈り

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    予備知識なしで読み始めたのだが、、、つらすぎる。
    医師の芥川賞作家が、救急病棟の医師の過酷な労働環境をひたすら綴っている。
    仮眠、徹夜、過労死、退職、廃業、
    街に救急病棟がなくなる、でも急患はなくならない。
    地獄だ。

    若い医師を犠牲にする今の医療体制。
    この小説を読んで思う。
    日本でトリアージが当たり前になる日は近い。
    いや、もう始まっているのかもしれない。
    119で救急車を呼んでも助からない急患はこれから増加することだろう。
    自分の命は自分で守らなければならない。
    健康でいなければいけない。
    事故に遭ったら後は運任せだ。
    若い医者は圧倒的に足りない。
    増える見込みもない。
    老人は増え、若者

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    2025年06月21日
  • 私の盲端

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    林芙美子文学賞受賞の「塩の道」と表題のデビュー作、全2篇収録。僻地医療と人工肛門がテーマ。死ぬ怖さはもちろん、生きる怖さも味わえた。

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    2025年06月19日
  • 受け手のいない祈り

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    医療現場の過酷さは、想像を絶するものだった。ここまでに、医師が命を削って、心身共に病んでしまうとは。
    内臓や手術の表現が、映像よりも生々しく、ちょっと抵抗はあったものの、この表現が医師の心の中を写しているようでもあり、気分は良くないながらも惹き込まれてしまった。
    これが現実に近い医療なのか‥。

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    2025年06月03日
  • 受け手のいない祈り

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    どこの医療現場でも医者不足、看護師不足はよく耳にするけれど、ここまで切迫した医療現場を覗かせてもらう体験は初めてだった。
    いや、覗くというよりも、主人公に憑依してその現場に居るような感覚で読み進めてしまっていた。
    朝比奈さんの作品は初めてだったけど、これだけ読者を引っ張り込むことができる文章表現は、現役の医者だけが理由じゃないんだろう。

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    2025年06月01日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医療にかかわる方たちの文体の素晴らしさに感心します
    小説家とはまた別に作ろうとしているのではなく
    日々の中でおこった事象に文体が多いついていく感覚
    健康であるという妄想を当たり前のように支えてもらっていることに
    改めて感謝です

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    2025年05月29日
  • 受け手のいない祈り

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    救急受け入れの減っている現状,残っている病院にかかる負担の過酷さに言葉が無い.同期の過労死や自分も仮眠すら取れない状況で神経を蝕まれていく.
    背骨が持つ熱や爛れていく内臓描写に気持ち悪くなりながらも惹き込まれた.

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    2025年05月27日
  • あなたの燃える左手で

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    あらすじを読んだ際には、別の人の左手を誤診により移植された主人公が、それを乗り越えるような医療系の割とありがちな話かと思った。国境や民族意識、戦争も一つ大きなテーマになっており、その視点と片腕の移植を絡めていて面白かった。
    普段何気なく使う体も、全て自分のものだからこそ違和感なく使えることを実感して、ありがたいなと感じた。
    「日本人は謙虚に見えて傲慢」という箇所が印象的だった。国境の意識がなくほとんど同じ民族で構成されている国であり、だからこそ身内には親しいが外の人には排他的になりがちである。普段の自分の価値観、認識の仕方を改めていきたいと思った。

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    2025年05月03日
  • 受け手のいない祈り

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    過酷すぎる医療現場で心身をすり減らし、少しずつ体にも精神にも異常をきたしていく医師たち
    祈りは誰のため、何のため
    「背骨がたったまま」と繰り返し使われる
    背骨を立たせて生活するのは人間だけ、背骨を横にして眠る時間は死に近づくのか、原始に戻っているのか
    治療する側が健康でなければ、というのがおためごかしなのが分かる
    そうしたいわけでもないのに、自分を犠牲にして患者を受け入れる虚しさ
    医師である作者の実体験なのかもと思うと苦しい

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    2025年04月27日
  • 受け手のいない祈り

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    芥川賞作家。激務のために肉体も精神も病んでしまう若い医師の話。

    周りはなぜ気が付かないのだろうか。人手不足の職場だと、誰もが自分のことで手一杯になってしまうのか。

    誰の健康も害することなく回っていく仕組みが作れたら良いのに。

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    2025年04月19日
  • 受け手のいない祈り

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    総合病院で医師として働く公河は、別の医院で産科医だった同期が過労死したことを知る。
    公河もまた、昨日と今日の境目がわからないくらいに働き続けていた。
    近隣の病院が夜間救急から撤退し、公河の病院が最後の望みであるためか、徹夜での治療や手術が寝る間もなく延々と続いていく。

    外科手術の様子が仔細にある場面や睡眠がとれなくて麻痺している状態がこれでもか…と。
    あまりにも過酷すぎる救命の現場に人の命よりも自分の命は考えられないのか、とさえ思ってしまう。
    ここまでくると限界を通り越して、考えることすら停止してしまう怖さを感じた。
    医師としての経験があるからこそ、すべてがリアルに思えて余計に衝撃の度合いが

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    2025年04月14日
  • あなたの燃える左手で

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    読書備忘録899号。
    ★★★★。

    芥川賞作家朝比奈さんの2023年作品。
    サンショウウオ・・・は見かけ上1人の人間でありながら結合双生児という特殊な状況における心の物語でした。
    正直、どのように捉えて良いのか難しい作品という印象でした。

    この作品はサンショウウオに比べるとテーマが分かりやすい。
    ①国境を巡る紛争。侵略行為。一方、国境に縛られない民族という括り。
    ②生体移植。失われた人体機能を取り戻すために行われる生体移植。他人の一部を移植する。

    国境という境目。生体移植の境目。この2つは実は同じなんだという物語。
    そして、領土侵略、生体移植が成功するかどうかは境目を跨る相互意思に掛かって

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    2025年03月07日