朝比奈秋のレビュー一覧

  • 私の盲端

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    主人公の成長や感情の変化などの描写あまりない
    そんな単純なものではなく人生は無常で
    淡々と受け入れる
    情景描写が多彩で他の作品も読みたくなった
    書き出しが最高

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    2026年09月09日
  • サンショウウオの四十九日

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    芥川賞受賞作。胎児内胎児と結合双生児の「生」と「死」がテーマの本書。本書は、私に死生観について再考するきっかけをくれた。瞬は、5歳まで誰からも見つけて貰えず、存在すら認知されなくて淋しかっただろうなと思った。ラストは、不穏なようでいて希望の可能性を示唆しているように思った。また、文体がなめらかで個人的に好み。著者の経歴(数々の受賞歴&医師)も凄すぎる。著者の他の作品も読みたい。

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    2026年09月03日
  • サンショウウオの四十九日

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    結合双生児といえば、ベトちゃん、ドクちゃんの知識くらいしか持っていなくて、まして、胎児内胎児を初めて知った。

    読んでいて、不思議な感覚に襲われた。

    主人公の瞬、杏は、パッと見1人なのに、
    左右で別人どおし。

    著者は医師であり、表現がとてもリアルで、
    主人公の心模様の描き方が繊細に書かれている。
    医師だからこそ、この本が書けたと思う。

    ある意味不幸な家族のようだけれど、
    ところどころ、くすっと笑える場面もあり、
    明るいストーリーになっている。

    勝彦が亡くなることで、
    生と死、体と心、双生児の不思議を、しみじみと考えた。
    1人で生まれた子を、単体児と呼ぶことに、この本の中ではしっくりくる。

    読み終わって、表紙の絵を、じっくりと見てしまった。

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    2026年07月28日
  • 受け手のいない祈り

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    傑作だと思います。めっちゃくちゃ面白かった。人はどのように壊れていくのか。医療はどのように崩壊していくのか。それが余すところなく書かれています。安部公房「砂の女」みたいに、「総体としての患者の恐ろしさ」を感じます。一粒の砂は砂なのに、無数に集まり壁となる。掘っても掘っても砂、みたいなかんじで、1人の患者は患者なんだけど、総体となって壁となり、治療しても治療しても患者、って感じです。

    制度批判や過重労働への怒りは作品の根底にある。しかし、それを直接主張するのではなく、公河という一人の身体を徹底的に壊していくことで読者に経験させる。その構成が見事だなと思います。その地獄の羅列は壮絶で、身体的苦痛、心理的苦痛、倫理的にも霊的にもあらゆる苦痛を公河先生は味わいます。これほど多様な地獄に身を置いた主人公を、今まで他に何か読んだっけな、と思い返しましたがちょっと見当たりませんでした。まさにもう全人的苦痛。朝比奈先生が医師だけに身体的描写は細かいんですが、その身体と精神、感情が全て絡まり連なって転げ落ちていく様子は圧巻で、こちらに思考する暇さえ与えないように畳み掛けてきます。

    以前から、過労死のニュースに触れるたび「どうして辞めないんだろう」などと人ごとながらに思っていたりしたのですが、作中にその理由は名言はされないんですけど、「いつか終わると思うから」なのかなと思いました。夜が明けたら。冬を過ぎたら。誰かが死ねば。状況が変わるかもと思うから人はその状況でも働いてしまい、そして降りるべき場所で降り過ごすのかもしれません。

    さて、現在多くの病院で人手不足は起きていて、医師の過労死のニュースも聞かれるところです。個人的には、病院の中で医師だけが、個人であり続けているように感じます。責任の大きさが桁違いであることを否定するものではありませんが、外国では医師も時間に帰るって聞きますし、日本の医療文化が、医師という役割に『個人で最後まで背負うこと』を期待しやすいのでしょうね。ただそこには、医師という職能が“個人で抱えること”によって権威と責任を成立させてきた側面もあるのではないでしょうか。特定行為看護師やNP的なワークシフト・タスクシェアも、医師は諸手を挙げて大賛成しているわけではないのは、医師自身が個人であることを手放そうとしない、といった側面もあるのではないかなあと思っています。

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    2026年07月09日
  • あなたの燃える左手で

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    ロシアにとられたクリミア、ウクライナにとられたハンガリー…
    地面は繋がってるのに、線の向こう側は違う国で、勝ち取った土地は力ずくで支配下におくのが常。
    私達島国民には、ない感覚なんだろうな。
    そんな感覚を、絶妙な表現で言い当てていると思った。
    何も悪いところはないのに理不尽に体の一部を切り落とされ、他人の身体を繋げられて、他人の血管を通った血がめぐる。境界線で筋肉や神経が引っ張り合い、自分が優位にたつよう主張する。他人の記憶や臭いが身体に染みついてくる…。

    共存はできるんだろうか。
    お互いを許し受け入れられたら、怒りやせん妄、思い込みや被害妄想が減るのだろうか。

    会話レコードから、優しい妻だったことがわかって、ほっとしたし悲しかった。

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    2026年07月04日
  • あなたの燃える左手で

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    左手移植をめぐる小説でありながら、単なる医療小説ではなかった。手の移植を通して、自己と他者の境界、死者を受け入れること、国境や移民、夫婦、記憶、欲望までが重ねられている。

    作品全体に、「自己/非自己」という構造が敷かれていた。移植された手を身体が拒絶することと、主人公が他者の手を自分として受け入れられないことが重なる。さらにそれが、ロシア、ウクライナ、クリミア、移民、国境、夫婦関係へ広がっていく。他者を受け入れるとは、「相互理解」でさえないのかもしれないと思った。

    「人間が手の使用によって高い知性を獲得したのなら、手の移植によって受け継がれるのは知性ということになる。しかし、実際に受け継がれるのは人間を最も人間たらしめるものではないか。」
    このように、手と個を強固に結びつけながら、「どのように受け入れるべきか」を探っていくが、ある出来事を境に、生理的嫌悪を抱き、それは身体反応を生じ、受け入れがたくそこに存在している、という構成、読めば何通りにも読める物語の重ね方はすごく引き込まれた。

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    2026年06月28日
  • 受け手のいない祈り

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    読んでいる間出るのはため息ばかりだったくらい重いけど、傑作だと思う

    誰かの命を救うために自らの命を削って働いている医師のために、病気にならないように生活習慣を見直そうと思った

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    2026年05月30日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師作家のアンソロジー。自分の好みの医師作家の発掘のためには最適な一冊。私もやはりこの人は好きだな〜。この人はちょと苦手かも〜。などと楽しみながら読みました。好みはあれどどれも読み応えの医療短編でした。

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    2026年05月30日
  • サンショウウオの四十九日

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    面白かった。意識と身体性だったり抽象的なものを取り扱うあたり、没入しないと中々難しいモチーフではあるけどそれが楽しい、これぞ芥川賞というような読書体験。
    正解のない自分の輪郭を他者や社会を使ってなんとか形作ろうとする人間の根源的な奮闘や葛藤を結合双生児という切り口で描いているのが新鮮で、読み手の価値観を揺さぶる話だった。人との境界と繋がり、自己の確立と承認欲求、生と死などの現代的かつ普遍的なテーマを改めて問い直させられる。

    人工物はもちろんのこと、生き物も種の繁栄ていう目的として本質が先にあるんだけど人間は自分を対象化できるから種の繁栄以外の選択肢もたくさんあって、だから実存は本質に先立つんだなあ とサルトルの主張を改めて思い出して納得し直したりした。ある意味で人間讃歌的な話なのかも?人間の定義にも言及していくところも面白い

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    2026年05月23日
  • 受け手のいない祈り

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    流れるような文章で一気に読めた。救急医療に携わる医師の過酷さに胸が縮む思いがする。生と死の狭間に漂うように生きる主人公に未来はあったのか、その先が気になる終わり方だった。

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    2026年04月17日
  • 植物少女

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    生まれてからずっと、意志疎通が取ることができないまま親子であることとは?
    本帯にそう書かれているとおり
    主人公の美桜の母は出産以降植物状態となっています。
    美桜の成長を通して母の感じているだろう世界が時折描かれていた。
    そこからとれる母や同じ病室の人は実はこう感じているのかな?と考えさせられる場面も沢山あった。
    母が植物状態であれど、ちゃんと甘えていたり、母の存在を感じていたりと、
    意志疎通ができないからこそ、毒さえも受け止めてもらえるそんな、親子関係になぜか羨ましさを感じる部分もあった。
    始まりに「母はどんな人間か」とあるけれど、
    私は美桜がちゃんと答えを出せていると思っています。
    そして、ラスト今まで静かな気持ちで読んでいたものが、急に明るさのようなものを持ち出すように感じた。

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    2026年04月16日
  • 受け手のいない祈り

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    ネタバレ

    基幹病院が崩壊し医療崩壊した地域の唯一、救急を受け入れる病院に外科医・公河が勤務している。

    長時間の連続勤務による極度の疲労で狂気を表出。天体の運行、そして本能と生理に逆らった労働に脳髄が消耗、何十時間も横にならなかったら縦になっている内臓が押しつぶされていくのだ。
    患者は見捨てられないが、院是の『誰の命も見捨てない』の中に医者の命は含まれていない。患者は弱さを振りかざして自分の命を搾取してくる。

    奥内は自分より悲惨なミイラ少年のために働くことができていた。あらゆる境界を見失い震撼する二元性が表されている。

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    2026年04月08日
  • サンショウウオの四十九日

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    杏と瞬がどのような人間なのか口絵が欲しい…と思ったのが本音。しかし、どの部分でどう違うのか、2つあったり、肥大している臓器の描写が今後どのように生きてくるのか。想像は人それぞれになるところが面白い。杏と瞬、見た目は1人の少し歪な人間なのに、意識は2人分。多重人格ではなく、身体があるところ、意識と身体は一体なのかという哲学的な問いが陰陽図と表現されていた。陰陽図、授業で出てきて、ペプシのロゴみたいだなぁと思っていたのでタイムリーで既視感あった。凹凸が上手く噛み合い、白と黒、表裏一体のような関係。サンショウウオという題名から、魚が出てくるのかなと思ったが、伯父の勝彦も父の若彦を体内に魚として飼っていた。相手が死んだら自分も死ぬのか。自己が亡くなることが死なのか。1人は孤独だと言うが、孤独が嫌なら2人分の意識を植えれば良いのか。でも、自分で決めたい。なんという身勝手な生き物、人間。最後に祖母に抱きしめられた回想のところは私も祖母との記憶が蘇り、久しぶりに会いたくなった。熱にうなされ、藻をかき分けて池に入っていく瞬。段々サンショウウオになっていく描写なのかと人魚のようなイメージを抱いた。自分の身体は自分の意識でしか生きられず、死ぬという定義はあるものの、突き詰めると死とはなにか、生きるとはなにかという問いに繋がっていった。

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    2026年01月26日
  • 受け手のいない祈り

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    読んでて苦しくなった。
    ほぼ、似たような真実なんだろう。
    外科医も産婦人科医も、段々居なくなる。
    美容系医師は増える。
    地方では病院集約しか道がないのであれば、もっと住民にその意味を知らすべきだし、時代が変わっていることを自覚すべき。

    自分で自分の首を絞めるようなことになるぬように。

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    2026年01月20日
  • あなたの燃える左手で

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    ネタバレ

    「移植」という行為に抵抗を感じてしまうのは、日本人ならではなのでしょうか?
    臓器提供意思表示カードには、すべての臓器に◯をつけていますが、提供する側はもう生きていないので、あまり深く考えることはありませんでした。でも、移植される側は、その後も生きていかなければなりません(いゃ、生きるために移植するんですもん、当然です)。内臓なら目には見えませんが、目に見えて常に意識させられる部位の移植は、肉体的だけでなく精神的にも感覚的にも受け入れるのに相当な負荷を乗り越える必要があるのでしょう。とても想像が追いつきませんでした。
    国境の争いや人種間の摩擦を、移植になぞらえて描いていくこの物語は、時に吐き気を催すほどでしたが、心の奥深い場所に刺さりました。加えて身体、特に左手にもこれまで感じたことのないザワザワした感覚が残りました。身の回りに様々な国にルーツを持つ人が増え、常識や価値観の違いを意識させられることが増えてきた昨今、痛みを伴っても折り合わなければならないことを覚悟せよと迫られていることを分からせてくれました。

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    2026年01月07日
  • 受け手のいない祈り

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    人の命を救うことを生業とするならば、自分の命を惜しまず働けというのは、それは戦時中の兵士だよな、まじで。この比喩がどんぴしゃりだった

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    2025年12月21日
  • 植物少女

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    素晴らしかった。最近読んだ中でも群を抜いて好きな作品だった。生と死という境界をあらゆる角度から立体的に描かれていた。病室という空間、息、周りの人々、鼓動。空っぽの中に注いでいく美桜。素晴らしかった。

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    2025年12月05日
  • 植物少女

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    母と娘との静かな会話

    物言えぬ母とのなんとも言えない会話

    この作者だからこそ表現できた作品。

    もっと読んでみたくなる作者ですね。


    ぜひ〜

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    2025年11月26日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師作家9人によるアンソロジー作品。
    どの作品も50頁程なので、スピード感がある。

    研修医 精神科医 救急医療 現場医療 研究者 認知症等 医療1つとってもジャンルが違い、心理描写の加減に手に汗握ってハラハラしたり、淡々と読み進めたり、一冊で何度も美味しい読み応えのある本でした。

    医師(著者)が実際に経験しているであろうリアリティがそこにある。


    認知症対応を生業としている身としては、何度も見た光景で「あーー大変さの中に、いくつも希望が見いだせるんだよ」「怒ったらダメダメ」と逆の意味でハラハラさせられた。


    現代はサービスが揃っているので、抱え込まず使える手段を利用していくのがお互いの心の安定を図るが、未だに長男が!とか、嫁が!とか他人事の様に話す親戚がいるのも事実。

    「介護者は生き方を選べないのか?」に胸つまされる。

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    2025年11月05日
  • 私の盲端

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    ドサリ、ドサリ。
    全体的に、温度の低い描写がよい。色々なことが起こるのに、どこか一歩引いた目線というか。
    一度で内容を深く読みきれず、すぐに2回目も読み込んだ。

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    2025年10月29日