朝比奈秋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
医師でありながら小説家でもある9人の短編小説が詰まった作品でした。あんなに忙しそうなのに、いつ小説書いてるんだろうって不思議に思う凄い方々。
医師であるからこそのリアルな感じが伝わってきて、とても面白かったです。
特に空中テントは、認知症の家族を介護したことある人なら誰しも共感出来る部分がたくさんあると思いました。施設の入所は、家族を見捨てることではなく、プロがみてくれる安全な場所にいれるという考えが広がったらいいな。
私も主人公のお母さんにとても同情しました。介護する人は、自由が奪われて当然なのか、当事者じゃない人達から見捨ててるなんて文句言われる筋合いはほんとにない。文句を言うなら1週間でいいから、在宅での介護を経験してみたらいいと思う。どれだけ大変かはやったことのある人にしか分からない。
あとは救いたくない命も面白かったです。医療従事者であれば、色んな患者がくる。犯人であろうと、被害者であろうと、どんな人であろうと病院に来たら、全力で治療をしなければならない。そこに差別はあってはならないけれど、医療者も人間だから色んな考えが浮かぶよなと改めて考えさせられました。たくさんの人の命を奪った人を救うことは、正しいのか。でも真相解明のためには、犯人に生きててもらって動機を聞き、罪を償ってもらうのがいいような気もする。難しい問題だと思いました。
こんなにたくさんの医師が書いた作品をたくさん読めて楽しかったです。
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Posted by ブクログ
朝比奈秋さんの初読になります。
もしも自分の左手が他人の左手に移植することになったら。
舞台はハンガリーの病院での移植。
アサトは日本人、移植の手はヨーロッパ人の左手。手の肌の色が違うし、皮膚にあるうっすら生えているうぶ毛はブロンズ。そして右手と左手を見比べると指の長さ、掌の厚みなど部分的に大きさが違う。それだけでも気味悪くなるのに、そんな手術が誤診移植だったようでクラクラしてきます。
今度は移植後の幻肢もなかなか経験出来ない貴重なものでした。馴染んできたり、拒絶反応が出てきたりの繰り返し。
幻肢痛に、もがき続けるアサトの悩みが、経験者じゃないと描けないだろうと思い、ネットで朝比奈秋さんの手はあるのか?と疑って検索してしまうくらい、あまりのリアルさでこっちまで幻覚のような眩暈がおきます。
そんな左手移植をベースにしながら、ヨーロッパの国際情勢がミックス。数年前のハンガリー、ロシア、ウクライナ、クリミアの領土争いの悪化。移植手術のゾルタン医師はアサトの故郷、国境のない日本が羨ましいと言う。
そんな領土争いと移植手術に対する知識や考え方はヨーロッパと島国では、こんなにも違うのかと平和な島国に居るわたしたちも考えさせられます。
地政学的な視点と移植手術をこんなにもスマートにミックス表現しているのも素晴らしいのですが、一番気になっていたウクライナ語にハンガリー訛りのある、アサトの妻ハンナの存在です。
ハンナへ愛する気持ちで左手の幻覚シーンがなんとも生々しかった。
回りくどいところもありましたが、かなりいろんな要素があるので何度も読み返しがしたくなる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ハンガリーの外科医によって、左手を失った日本人患者に他人の手を移植手術する場面を軸に展開される話。
他人の手の移植にあたり、日本人は終始微笑して受け入れているように見えるが、徐々に本人にも耐え難い術後拒否反応が繰り返されることになる。
その反応を比喩として、ハンガリーの外科医は、日本人は健やかに笑っていているように見えても、何も(外国人を)受け入れない国民性に結びつける。
さらに、移植した手と本人の腕の境目を国境に見立て、日本人は四方に他国との国境があるヨーロッパとは異なり、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民との印象を受ける。(移植した手を体が受けつけないことから連想したものと思われる。)
読む人により、かなり賛否が分かれると思いますが、その考えには自分自身にも思い当たる節が所々にあり、痛いところをつかれるような思いでした。 -
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医師でありながら作家でもある方々の医療小説9編。
私の知っている作家さん以外にこんなに多くの医師作家さんがいることに驚きました。どれも医師であるだけに小説の内容は臨場感が溢れていて迫力がありました。
中山祐次郎さんの『救いたくない命』は救急で運ばれてきた患者が犠牲者15人以上を出した通り魔事件の犯人と知り、葛藤をしながらも必死に命を救う姿に京アニ事件を思い出しました。
南杏子さんの『空中テント』は家族の介護の経験がある人は共感出来るはず。
どれも本当に良い作品ばかり。若手医師の過酷な労働時間、医療ミスの隠蔽、不都合な論文を闇に葬る等、医療小説が好きな人なら興味のある内容ばかり。でも朝比奈秋さんの『魚類譚』はちょっとホラーぽくて異色でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ9人の現役医師による医療小説アンソロジー。
医師作家でしか表現できないと思われる臨場感あふれる詳細な描写、ヒューマンでミステリアスなストーリーが魅力の作品集だ。
1〈研修医ヒナノの洞察〉
上司からパワハラを受けている研修医が患者の膠原病を見つけ上司を見返す痛快な話
2〈魚類譚〉
封建的で理不尽な医大の内部構造、詳細な手術シーンにミステリーとホラーの要素を取り入れた作品
3〈パイナップルのある光景〉
同じような引きこもり系の精神疾患でも、一方は入院治療、一方は家族による対処という示唆をする精神科医。専門的な見解が押し付けなく、ふわっと伝わってくる秀作
4〈救いたくない命〉
救急外来に運び込まれてきた瀕死の男はとんでもない犯罪者。しかも、手術助手を務める医師には憎むべき理由があった。救急救
命手術場面の描写がすごい
5〈春に綻ぶ〉
コロナ病棟で働く内科医の日常と苦悩をリアルに描く。苦闘の果てに主人公はかすかな希望を見出だす
6〈闇の論文〉
がんを見極める生検の際、傷ついた血管からがん細胞が侵入し、転移を招くことを証明した論文。これが世間に知れた場合の混乱を避けようと医療界の重鎮は論文を闇に葬る。現実世界ではどうなっているのか気になる
7〈言葉が消えるまえに〉
過去に同じ脳神経外科の医局員だった男の裏切りで医局を追放された主人公。そこへ、その男がグリオーマ患者としてやって来る。主人公のヒューマンな姿勢が光る
8〈空中テント〉
唯一、医師の視点ではなく、女性看護師を主人公にした作品。肉親が認知症になった時の介護を巡って、エゴむき出しの親族や主人公に訪れる修羅場、介護サービスを考えるまでの経緯がリアルに描かれる
9〈峠を越えてきた命〉
伊豆半島にある産科救急に特化した病院の若手医師が主人公。切迫早産の妊婦が救急車で揺られながら険しい天城峠を越えて病院に向う様子、待機して万全の体制を取る医療スタッフ、分娩室での対処の様子が実に生々しく描かれる。危険にさらされる新しい命を懸命に救おうとする産科スタッフの努力と救急隊との密接で的確な連携が読み手の心を打つ。秀逸で感動的な人間ドラマだ
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Posted by ブクログ
「植物少女」から「あなたの燃える左手で」を通り 「サンショウウオの四十九日」を読んで、ここまで辿り着いた。朝比奈秋から 逃がれることができない。すっかり どハマり中!ざらりとした手触り感が なんとも言えない読後感で クセになる(個人の見解ですが笑)
人工肛門と共に生きることの戸惑いと衝撃もそうだけど ヒトもまた 生々しい生物なんだなと 認識させられた。「塩の道」は読み始めは 方言についていけなくて(笑)半分過ぎたあたりから するすると わかってきた。それぞれの看取りは それぞれで 正解も不正解もない。
再読したら また 別の思いがでてきそう! -
Posted by ブクログ
ネタバレ植物状態というのをみたことないし身の回りで起きたことないから言葉でしか知らなかったけれど、周りの人はどんな気持ちなのか…。生きて元気だっだ姿をいつまでも思ってしまう父や祖母に共感する一方で、呼吸だけして生きてるお母さんを受け入れ恋しく接するみおをみて、生まれたときから植物状態だった母がいるとはその状態が彼女にとって当たり前で、その母こそが愛しい存在というのを目の当たりにしてそうだよなぁとおもった。反面私ならみおとおなじよう状況でも同じように母の見舞いに通うかと言われると、わがままな私は自分の人生の楽しさにかまけて、中学生とか以降は足が遠のくだろう自信がないなと思った。マカロンを無理やり食べさそうとするシーンはなぜ??と正直その言動の根源にある気持ちが理解できなかった。母と同じ年で出産するみおが出産中一瞬植物状態になった?と感じるところで、ドキッとした。植物状態とは対岸の火事のような縁遠い話に思ってたけどもし自分も妊娠したらそのリスクを背負うのかと思うとゾッとした