朝比奈秋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ最初は普通の姉妹の物語だと思って読み進めていたのに、一人称が「私」と「わたし」で入り混じっていることに気づいた瞬間、一気に物語に引き込まれた。
著者が医者だと知っていたので、少し構えて読み始めたが、医学的な専門知識はほとんど登場せず、医学に明るくない私でもとても読みやすかった。
姉妹や兄弟で性格が違うのは当たり前のことで、例えば「頭は二つで胴体が一つ」の有名な結合双生児たちの例はすんなり受け入れられるのに、「頭からつま先まで一つの頭に一つの胴体を共有している」となると、なぜか途端に特別な設定のように感じてしまう。その自分の感覚が不思議だった。
でも、その違和感こそがこの物語のカギであり、姉妹の -
Posted by ブクログ
これまで感じたことがないような読後感。
この作品がどうというより、なぜ著者はこの作品を書いたのか、書けたのかのほうが気になる。
自分が当事者でないことで、想像することすらできない領域(というか、安易に想像してわかった気になってはいけない領域)があるような気がするのだけど、私にとって結合双生児とはまさにそこに位置する。
これついては、数年前に市川沙央著のハンチバックを読んだときに強く感じた。障がいを持つ著者が、苦痛や葛藤を当事者にしか分からない言葉で生々しく綴り、「障がいを持たない側の人たちにこの痛みを分からせてたまるか」といったような強い感情を作品の至るところからひしひしと感じた。
この -
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Posted by ブクログ
気になった文章はざっくりこんな意味のことが書かれていた。
誰の身体も、人の精神とは繋がっていないという話。
それをこの結合双生児の2人が、
他人を見て思うということ。
私にとっては一つの救いになった。
普段受け入れられないでいた
自分が思い通りに行動できないこと(例えば目標を立てたのに守れないとか、本当は明るく親切に振る舞いたいのに、、、とか)を受け止めてあげるきっかけを貰った。
この文に辿り着くまでは、
読んでいて勝手に心配していたのは
瞬と杏は一つの身体を思うように動かせなくて
大変だな、更にはかわいそうだなとさえ思いかけていたけど、
そんな考えは、自分の奢りなんだと目が覚めた。
この -
Posted by ブクログ
手のひらの温もりとその静かな呼吸は、肯定も否定もせず、あるがままに受け止めてくれるもの。
植物状態の母しか知らない美桜だからこそ、物心ついた頃から、2人だけのやり方でコミュニケーションを取り、唯一無二の関係性を築いて来た。
それは、社会的には普通ではない親子関係だと言われるだろうし、可哀想に思われるかもしれない。
でも普通って何だろう。可哀想と決めるのは大抵、表面的な部分しか見えてない周囲であって、当事者にとっては日常であり普通なのだ。
母の髪を金髪にしたり、ピアスを開けたり、愚痴や不満の掃きだめにしたり、リアクションがないからこそ過激になっていく、美桜の甘えの描写に胸が苦しくなった。
だが