朝比奈秋のレビュー一覧

  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    最初は普通の姉妹の物語だと思って読み進めていたのに、一人称が「私」と「わたし」で入り混じっていることに気づいた瞬間、一気に物語に引き込まれた。
    著者が医者だと知っていたので、少し構えて読み始めたが、医学的な専門知識はほとんど登場せず、医学に明るくない私でもとても読みやすかった。
    姉妹や兄弟で性格が違うのは当たり前のことで、例えば「頭は二つで胴体が一つ」の有名な結合双生児たちの例はすんなり受け入れられるのに、「頭からつま先まで一つの頭に一つの胴体を共有している」となると、なぜか途端に特別な設定のように感じてしまう。その自分の感覚が不思議だった。
    でも、その違和感こそがこの物語のカギであり、姉妹の

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    2025年11月28日
  • あなたの燃える左手で

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    現実の日々のなかの、正しさを強いられ続ける世相。感情を抑えつけ、なだめすかして、間違いのないように制御するために思考し続けることを強いられるような毎日の繰り返しに、本能的な嫌悪感が加速していくわたし個人の心象風景と、主人公アサトの身体反応、健常と障害、国家と国境など、異質や隔絶、分断のその先の景色と、シンクロするような人ごとで済まされない物語を見せてもらった。

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    2025年11月25日
  • 植物少女

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    見てはいけないものを見たような、なんとも形容しがたいお話でした。
    共感できるような境遇じゃないものの、生々しい感情が散りばめられてるなと感じた。

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    2025年11月21日
  • 受け手のいない祈り

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    ネタバレ

    しんど過ぎて途中何度も挫けそうになった
    でも極限状態の人間の狂気的な描写はかなりリアルなんだと思う
    私の父も外科医で、幼い頃はそれこそ当直もあり、論文書きながら、手術もこなし、幾度となく夜呼び出されて、家族旅行の思い出なんてほぼないし、学校行事に来たことなんて一度もない…結局急逝する2年前、79歳まで医師として仕事を続けたけれど、父が読んだらどんな感想言うだろうなぁ〜とふと思った

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    2025年10月27日
  • 植物少女

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    題材が題材だけに“共感”を得ることはなかった。
    人の想いの奥底にある“何か”を感じとれれば良かったんだろうけど、私にはわからなかった。

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    2025年10月22日
  • サンショウウオの四十九日

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    3.5/5.0

    全く読んだことのない、想像したこともない世界だった。
    一つの身体を二人で共有する、という状態を、どんなに懸命に想像してみても今の自分には全く分からなかった。

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    2025年10月21日
  • サンショウウオの四十九日

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    読書復帰、一作目となりました。

    結合双生児の父と叔父、その子供もまた結合双生児と言う杏と瞬。作品の中で主観も入れ替わり、割と私は戸惑いました。
    半身だけだなく精神までも半分、よくある本当のわたしって…ではない。
    想像しても私は出来ませんでした。
    親族としてもずっと自分の中に別の主人格がいる、それをお互いが認めながら終わりについて考えるところはなんと言うかある意味スリリングに感じました。
    読書復帰戦にはかなりハードル高い、難関なタイトルだったような気がしますが興味深く読ませていただきました。

    2025年7月20日

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    2025年10月05日
  • サンショウウオの四十九日

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    物語というよりは、どちらかというと言葉遊び。
    もう一人の私ってどういうことだろうと思っていたけど、なるほど確かに普通に生きていたら思いもしないことでした。

    身体を共有する感覚っていうあたらしい視野を教えてもらった気がします。

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    2025年10月04日
  • サンショウウオの四十九日

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    初めての読後感。とても不思議な感覚。結合双生児の感覚って考えたこともなかった。でもこの世界には本当に存在していて私には思いもしないような大変な生き方をしているんだろうな。この世界には私の考えなんて及ばないようなことが存在する。この地球に生まれてきた偶然に感謝して明日も生きていこう。なんて、思ってしまった。

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    2025年10月03日
  • サンショウウオの四十九日

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    これまで感じたことがないような読後感。
    この作品がどうというより、なぜ著者はこの作品を書いたのか、書けたのかのほうが気になる。

    自分が当事者でないことで、想像することすらできない領域(というか、安易に想像してわかった気になってはいけない領域)があるような気がするのだけど、私にとって結合双生児とはまさにそこに位置する。

    これついては、数年前に市川沙央著のハンチバックを読んだときに強く感じた。障がいを持つ著者が、苦痛や葛藤を当事者にしか分からない言葉で生々しく綴り、「障がいを持たない側の人たちにこの痛みを分からせてたまるか」といったような強い感情を作品の至るところからひしひしと感じた。

    この

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    2025年09月30日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師作家アンソロジー。専門が違うことでこんな風に違う広がりがあるのかという驚きと、医療やそれを取り巻く人々の色々な悩みを小説を通じて想像すると自身に何かあった時に受け止め方が変わるかもしれないと、解説にも感銘を受けた。

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    2025年09月26日
  • 植物少女

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    話の内容は、共感するには難しいものであったが、生きるとは何か。自分にとって相手がどんな存在であるのかということを非常に考えさせられた。
    病室で半生を生きることになった母と、そこに向き合う娘の姿。静かだが、誰よりも全力で人生を歩んでいるようにも思えた。

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    2025年09月24日
  • サンショウウオの四十九日

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    ネタバレ

    芥川受賞作。『わたしの全てのわたしたち』のような結合性双生児を題材としたもの。何冊か読んだ朝比奈さん作品ではこちらが一番合わなかった……

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    2025年09月23日
  • サンショウウオの四十九日

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    同じ身体を生きる彼女たち、周りから見ると、1人に見える、でも、隣には彼女がいる

    彼女たちはお互いを感じ、お互いを意識しあう

    読み進めるうちにこんがらがった糸が少しずつ、解けはじめ、やがて真っ直ぐに…

    不思議な感覚に…

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    2025年09月22日
  • サンショウウオの四十九日

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    気になった文章はざっくりこんな意味のことが書かれていた。
    誰の身体も、人の精神とは繋がっていないという話。
    それをこの結合双生児の2人が、
    他人を見て思うということ。
    私にとっては一つの救いになった。
    普段受け入れられないでいた
    自分が思い通りに行動できないこと(例えば目標を立てたのに守れないとか、本当は明るく親切に振る舞いたいのに、、、とか)を受け止めてあげるきっかけを貰った。

    この文に辿り着くまでは、
    読んでいて勝手に心配していたのは
    瞬と杏は一つの身体を思うように動かせなくて
    大変だな、更にはかわいそうだなとさえ思いかけていたけど、
    そんな考えは、自分の奢りなんだと目が覚めた。

    この

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    2025年09月11日
  • サンショウウオの四十九日

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    導入の父と伯父の話からぐっと惹きつけられ、さらに姉妹の話になってさらに深く惹きつけられた。
    小説的技巧も素晴らしく、これはとんでもない名作では?と思いながらページをめくりつづけた。

    杏の哲学的思考の難解さはいいのだが、似たようなことが繰り返され、さらに気づくと主語が瞬になっていて、と混乱することも。それも狙いなのはわかる。

    後半にかけて失速したように思ったが、ラストはとても好きだった。

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    2025年09月07日
  • 受け手のいない祈り

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    この主人公は、作者ご自身であると決めつけている。
    テレビで観た朝比奈さんの印象そのものだった。

    医療現場の労働環境がここまで来ているとは。同情なんて申し訳なさすぎるほど。
    「一日」という単位の繰り返し。睡眠がその単位を区切っている。
    その区切りなく、人の生死に関わらざるを得ない人間。その人たちがいるから安心して「一日」を生きている俺。治してもらわないと困るけど、当たり前と思ってはいけないな。勝手なもんだ。

    「何十時間も横にならんかったら、縦に連なった内臓がな、重みで潰れていくんや」

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    2025年09月07日
  • サンショウウオの四十九日

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    特殊な状況の描写を通して、自我や自己への問いや、そもののの輪郭を明らかにしようとしているかもだが、これが文学的なのかな???とはおもいつつ、ちょっと私はついていけなかった。

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    2025年09月06日
  • 受け手のいない祈り

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    コロナ禍で地方のいくつかの病院が崩壊した現実があった。今でも、地方では医師不在、救急病院不足の現状がある。
    舞台は大阪近郊の総合病院。近隣の病院が次々と夜間救急から撤退、この病院でも医師が次々といなくなり、青年医師の公河は徹夜に次ぐ徹夜で70時間を超える連続勤務で肉体、精神ともに蝕まれていく。
    限界を過ぎても断れない救急。患者の命は救われるが、医師の命は捧げなければならないのか。医療との免罪符を手に無数の患者の生命と向き合い続けた罪悪感が精神を追い詰めていく。
    私たち全員が向き合うべき現実がここに存在している。衝撃の問題作。

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    2025年09月01日
  • 植物少女

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    手のひらの温もりとその静かな呼吸は、肯定も否定もせず、あるがままに受け止めてくれるもの。
    植物状態の母しか知らない美桜だからこそ、物心ついた頃から、2人だけのやり方でコミュニケーションを取り、唯一無二の関係性を築いて来た。
    それは、社会的には普通ではない親子関係だと言われるだろうし、可哀想に思われるかもしれない。
    でも普通って何だろう。可哀想と決めるのは大抵、表面的な部分しか見えてない周囲であって、当事者にとっては日常であり普通なのだ。

    母の髪を金髪にしたり、ピアスを開けたり、愚痴や不満の掃きだめにしたり、リアクションがないからこそ過激になっていく、美桜の甘えの描写に胸が苦しくなった。
    だが

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    2025年08月29日