劉慈欣のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中華SFの傑作である三体の前日章のSF小説。
三体と同一世界線の話であり、三体に登場した人物も1人登場するが、基本的には三体の話とは関係がない、雷の球のような現象についての小説。
(あとがきに記載されていたことだが、中国版の三体ではこの雷球のことが元々書かれていたそうで、翻訳の際に書き換えられたそう。なので、前日章というのは間違いではないらしい)
現実には存在しない科学技術も登場するが、科学的な理由付けも素人にはかなりそれっぽく思えるほど話が練られているので、非現実感はそれほど無く没入感を得られる。
もちろん、そんなもんあるかいというような物も出てくるのてSF感は感じられる。
科学や技術を突き詰めていくと突き当たる、兵器への転用ということについて、科学者から見た景色がリアルに書かれており、その知への欲求と殺人への加担の葛藤が興味深い。
三体が好きな人はもれなく好きな小説だと思うので、是非とも読んで見てほしい
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Posted by ブクログ
我らが大劉、再びのバカSF炸裂。(←褒め言葉)
「流浪地球」と同時刊行された、劉慈欣のバカSF短編集です。(←褒め言葉)
劉慈欣のSFの特徴は、長編でも短編でも、笑える話でもしんみりする話でも、どこかに必ず「バカ」の要素が潜んでいることだと、鴨は思います。
この場合の「バカ」とは、頭が悪いという意味ではなくて、えっ、そんな発想、常人にはとても出せないけど!?という畏敬の念を込めた「バカ」です。代表作「三体」なんて、これ以上なくスケールの大きなバカSFだし。
本作「老神介護」も、人類を作った神様が宇宙船に乗って介護を要求しにきたり、中国から南極まで通じる巨大な穴をマントルもコアもぶち抜いて作ったり、その中を人間が行ったり来たりとか、もぅその発想だけ見たらバカそのものなんですけど、バカをキープしつつ見事なハードSFを成立させ、ついでに普遍的な詩情さえ感じさせてしまうという、とんでもない力技を披露しています。ちなみに、「流浪地球」に収録されている「呪い5.0」みたいな、本当の意味でバカなSFは本作にはありません(笑)
スケールの大きなバカSFを堪能するには最適の短編集です。が、鴨が一番感動したのは、巻末に収められているエッセイ「我々はSFファンである」。中国SFの現在位置と、それに関わる劉慈欣の覚悟がビシバシと伝わってくる名文です。SF者たるもの、すべからく読むべし。 -
Posted by ブクログ
三体が面白すぎたので、劉慈欣短編集も読んでみた。全13遍漏れなく面白かったけど、印象深かったの作品は以下の通り。三体のモチーフにもなってる作品もあるから、好きな人は是非読んでほしい一冊。
郷村教師…あとがきでも触れてたけど、広大な宇宙と小さな個体の描き方がえぐい。2つが交わった瞬間は痺れた。
カオスの蝶…バラフライ効果の意味は知ってたけど、それが物語になるとこんなに面白いのかと。
詩雲…これがダントツ好き。テクノロジーが芸術を超越することはないというのがよく分かって痛烈。
栄光と夢…2国間オリンピック。ありそうで怖い笑
月の光…何度も歴史が動いたようで結局何も起きてないのが面白い。1エンジニアとして、化石燃料依存を救うアイデアが面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中国の方である劉慈欣が描くSF短編集。『三体』も文庫化されたらすぐ書いたいと思う。「鯨歌」「詩雲」「円」が特に面白かった。
「鯨歌」鯨にチップを埋め込むことにより外部からの制御ができるようになった世界。その技術を利用して薬物の密輸をするマフィアとその技術者。密輸自体は成功したものの密猟者たちによって鯨が狩られて2人とも死んでしまうというもの。新旧の価値観の皮肉が描かれていた。
「地火」石炭労働をメインとした話。技術革新により炭鉱夫の仕事が楽になるはずであったが、技術を過信しすぎたために自然にやられてしまう。父親と局長の言葉が刺さった。
「郷村教師」中国の農村地で一生を終えようとしている老教師。周りから変な目で見られても彼は農村地の少年少女たちに学問を教えることをやめなかった。一方で、天の川銀河の中心地では超高度に栄えた文明があった。彼らは宇宙間戦争で疲弊しており、新たな火種が生まれないように宇宙を整理しているところであった。
老教師の最後の教えが、地球を救うことになるというのが、教育の大切さを説いており、また、超高度文明の人たちが純粋さ、素朴さに気付いたのも作者が伝えたかったことなのかな。
「繊維」量子力学に基づく平行世界がたくさんあり、その世界が一堂に介してしまう話。いろんな地球の色があったり、同じだが違う人がいたりと面白かった。
「メッセンジャー」アインシュタインの過去を元にした話。彼が未来の人と交信した、という話を元にしているのだろう。
「カオスの蝶」バタフライ効果を解明し、一種の気象兵器として用いる話
「詩雲」高度に発展したテクノロジー文明に飲み込まれた地球文明。その高度に発展したテクノロジーよりも発展したテクノロジーを持つ神との邂逅。精神的な文化はテクノロジーによって越えることはできない、と伝えてている。将棋などのAIの進化も一手の評価は教えてくれるが、全体としての評価や価値は教えてくれない、というのと似ている。
「栄光と夢」オリンピックが戦争の代わりになった世界。競技での勝利が戦争の行方を左右するというもの。1人のアスリートにより国が一つにまとまるも、競技での勝利が戦争での勝利という勝者の理論には響かず、泥沼化していってしまう。
「円円のシャボン玉」シャボン玉が好きで美しいと感じる円円が科学者となってシャボン玉によって街を救う話。他に比べて暖かい話だった。
「2018年4月1日」改延という遺伝子的な延命ができるようになった時代にその手術を受けるという決断をした主人公の話。IT共和国なるものが建国され、実社会に宣戦布告をした。が、これはエイプリルフールのネタであった。この話のどこまでが虚実なのかがわからないのが、この話の面白さなのだろう。
「月の光」未来の自分から科学のアドバイスをもらうもそれを実行に移そうとすると、さらなる悲劇的な未来になってしまう話。最初に呈示されたせんたくしがやはりベストだったのかもしれない。それを知るためには、他の時間線を旅するしかない。どんな決断にも後悔があるというこれが真理であろう。
「人生」前世の母親の記憶を持った胎児と母親と研究者が会話をする話。『ドグラ・マグラ』の胎児の歌のような話に感じた。
「円」円周率には不老不死が宿っているとされるため、秦の始皇帝により、円周率を求めよ命令される。人間を使って0と1の二進法によって円周率を求めようとする。それは、コンピュータの先駆けであったが、人間コンピュータにも裏があったという話。