伊藤典夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最初に出てきた宇宙船の船長はチャンドラー。ハルを開発した博士もチャンドラーじゃなかったっけ?親戚かな?とハルの生みの親の方のチャンドラーをぐぐってみると、本名はシバサブラマニアン・チャンドラセガランピライだった。たぶん誰もインド系の人の本名をきちんと発音できなかったので、チャンドラー博士と呼ばれていたんだろうな。
3001年には握手という習慣は失われていて、英語はラテン語レベルの死語になっているらしい。特別教養のある一握りの人だけが読み書きできる。おもしろいな。
stir crazy 長い刑務所暮らしで気が変になること。
これは拘禁反応と関わりのある言葉なのかな?
3001年宇宙の旅は2001年と同じくらいおもしろい。
科学的にも社会的にも道徳的にもあらゆる分野で現代よりも遥かに進歩した時代が描かれているけれど、医師や高度な技術者は必ず男性で補佐的な立場の看護師などは全員が女性など、この話が書かれた90年代のジェンダー規範を、作者自身が乗り越えられていないことが透けて見えるところも含めてなかなかおもしろい。
アーサー・C・クラークがスタートレックの大ファンだということがわかった。見たことはないけれど、題名はよく聞くドラマだ。ドラマだよね?
おもしろいのかな?
読み終えてみると、やっぱり2001年が完成度高過ぎた。
奇跡の復活を遂げたプールが、31世紀の世界での生き方を学んで、愛する人を見つけ、社会的役割と地位を手に入れるところまでで本の9割が終わった。
このままめでたしめでたしで終わるのかと思ったら、モノリスを設置した知的生命体が、千年前の情報をもとに人類は野蛮すぎて生きる価値が無いので滅ぼそうと決めたという知らせがフランク・ボーマンとハルの集合体からもたらされる。
人類はその脅威に対して、封じられたコンピュータウイルスで対抗することに決め、とりあえずは千年の猶予を得た、という所で終わった。
全体を通して淡々とスムーズに話が進み、未来の人類は超科学のおかげでものすごく賢くなって感情に振り回されたりしないという設定なので感情的なぶつかり合いなどの描写もなく…だしはしっかり取ってあるけど薄味のおかゆを食べていたら、お椀の底にエビが一個あったという感じの読後感だった。
つまり…めでたしめでたしだということだよね?少なくともフランク・プールにとっては。 -
Posted by ブクログ
あの頃、未知なる未来は希望に輝いていた。
映画「2001年宇宙の旅」が封切られた時、評判は真っ二つに分かれた。
「意味がわからない、独りよがり」
「なんだかわからないけど、なんか凄い」
小説は映像とは違う。
当然、感じ方も異なって当たり前とは思うけど、あまりに映画に感化された者にとっては、文章で説明されてしまうとなんだか……。
あの頃、文明は限りなく進歩するものと思った。
映画を見て、さらに現実にアポロが月へ行き、さらにスペースシャトルが宇宙を飛びまわる。
21世紀に入って、何が進歩しているのか?
確かに、パソコンからスマートフォンへの技術革新、ネットワークの広がりと速度の進歩、画像解析やGPS技術などの精度と応用スピードなど、数えたらきりがない。
でも、この本に書かれたような「未知なるものへの期待」が、人の心にあるとは今は想像できない。
この本を読んで、改めて「希望」の重要性を考えるべきか、それとも「しらけてしまう」のか……。 -
Posted by ブクログ
読み終えて、少したって、収録されていたタイトルを眺めてみる。どれも味がある小説で「あぁ、面白かったなぁ」と密かに幸せな気分になれる。もちろん読んでいる最中も楽しめるのですが、じわじわと染み込むおもしろさ、と評した方が、なんだかしっくりきます。
そんな不思議で奇妙な物語19篇を収録した本書は、R・A・ラファティのベストコレクションその1。その1ということは、その2もあるようで、本書は「アヤシイ篇」で、その2は「カワイイ篇」とのこと。カワイイ篇も超気になる。
「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」をはじめ、本書では<不純粋価額研究所>シリーズが計3篇収録されている。このシリーズ、ばからしくてとても好き。
表題にもなっている「町かどの穴」は、その癖の強い文体もあって、アヤシイ篇の幕開けを飾るに相応しい作品かと。その他、「どろぼう熊の惑星」や「山上の蛙」、「世界の蝶番はうめく」、「いなかった男」、「つぎの岩につづく」あたりも印象的。もちろんそれ以外も。
カワイイ篇もぜひ読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
★だが、そのうち思いつくだろう。(p.321)
読んでよかったようなよくなかったような。映画は十回くらいは観てるので読んだ気になっていたが未読だったことに気づいたので読んでみました。映画ほどではないがドライでクールな印象。旧きよきSFで尖ったところがなく読みやすいです。映画版の、混乱をもたらす終盤が小説版ではあるていど理解できるかたちになっています。でもじつのところこれが正解ともいえないのでしょう。謎は謎のまま置いときましょう。
▼簡単なメモ
【一行目】干魃はもう一千万年もつづき、恐竜の治世はとうに終わっていた。
【アリエス1B型月シャトル】宇宙ステーションと月を往還する。三十人乗り。
【移動研究所】月面で活動できる移動基地と呼べるもの。八つのフレックス車輪を擁し少しなら飛ぶことも可能。
【宇宙】《宇宙ではこわい思いはしても、悩むことはない》p.91
【宇宙ステーション1号】三百二十キロの高度にありいまだ地球の重力圏内。直径三百メートル。円盤部は人工重力をつくりだすために回転しておりその中央部は逆回転して見かけ上は静止している。
【クラビウス基地】直径二百三十五キロメートルで月の表側では二番目に大きなクレーター、クラビウス内に作られた基地。男性千百人、女性六百人の研究者や技術者が暮らしている。非常時には百パーセント自給自足可能。
【高傾斜角探測機21号】黄道面からゆっくり高みにのぼる。
【ジミトリ・モイセーウィチ】ヘイウッドの親友。ソ連科学アカデミー所属。五十五歳。
【周回衛星M15号】火星を一日にニ周する。
【深宇宙モニター79号】火星から一億五千万キロ、小惑星帯を漂うモニター装置。
【人工彗星5号】冥王星の彼方をさらに進んでいる。
【新聞】「ニュースパッド」で読むことができる。《コミュニケーション手段が発達するにつれ、その中身がますますくだらなく、けばけばしく、陰惨に見えてくる》p.95。もっとも、フロイドはそれを悪いこととは思っていない。《ユートピアの新聞はおそろしく退屈なものにちがいないからだ。》p.95
【スペースポッド】ディスカバリー号に三機搭載されている球形の船外活動ユニット。直径二・七メートル。操縦席の前には展望のよい窓がある。飛行姿勢制御ノズルで舵取りを行う。ウォルドーと呼ばれる二対の腕があり一方は重労働用、もう一方は微妙な作業用。各種工具を揃えた伸縮自在のタレット台もある。三機の愛称はそれぞれアナ、ベティ、クララ。大活躍します。
【世界情勢】世界人口六十億、三分の一は中国。飢餓の危機にある。
【ダイアナ】ラルフの娘。宇宙生まれの人類の第一世代。
【大温室】クラビウス基地の地下深くに埋設され空気の浄化と副産物として食料のいくばくかを生産する。
【月を見るもの】直立石(モノリス)に選ばれたヒトザルのひとり。
【ディスカバリー号】宇宙船。全長百二十メートル近いがクルーが占有するのは先端にある直径十二メートルの与圧球体の中。その球体には赤道部に回転する鼓輪が設けられており月程度の人工重力を生成しそこに生活空間が置かれている。まず木星に向かいスイングバイにより土星にたどり着き観測し五年後にやってくるディスカバリー2号が乗員を回収する予定。乗員は五名で必要ないときは人工冬眠で眠っている。
【デイビッド・ボーマン】ディスカバリー号の首席キャプテン。応用天文学とサイバネティックスと宇宙推進システムの専門家といってよい能力を持ちながらひとつことにのめりこめない性格からまだまだ学び続けている。
【TMA・1】ティコ磁気異常1号。月面で観測された磁場の異常。クラビウス基地から3百キロの地点で発見された。黒いモノリスが原因でかつそのものを指す。
【ティコ】平原生成後の月面クレーター。直径八十六キロ。
【HAL9000】ディスカバリー号のコンピュータ、というより人工知能。Heuristically programmed ALgorithmic computer(発見的プログラミングをされたアルゴリズム的コンピュータ)の略。一文字ずつ前にずらせばIBMになるというのは有名な話。ほんとか偶然かは知らないが。人工知能が自動的に脳になるための学習方法をミンスキーとグッドが発見しそれにより成長している。地球にも同型機が二機ありディスカバリー号のHALと答え合わせをしたりしている。
【標識のコレクション】地球上各地から集められ月面のクラビウス基地の広間に展示されている。懐かしむためだろう。
【フリンク・プール】ディスカバリー号の乗組員。宇宙生物学方面ではなんでも専門家と言えるレベル。全人類の中で土星に一番乗りしたかも?
【ヘイウッド・フロイド】アメリカ宇宙飛行学会議議長。月に向かう。本来は惑星生成の研究をしていた。
【直立石/モノリス】透明で大きな石。食べることはできそうになかった。映画とは異なり触れただけで知恵がつくわけではなかった。精神をこじ開け学習させる夜毎の儀式を必要とした。
【ラルフ・ハルボーセン】月面の南部地方の行政官。
【ロイ・マイクルズ】月に駐在する科学部長。ハルボーセンとは常に意見を異にするが特に仲はわるくなさそうなのであえてそうしていると思われる。ディベートみたいなものか。 -
Posted by ブクログ
映画でカットされたナレーション部分が補足されてて、頭の中のハテナが解消された。
特に第一部の猿人類がモノリスによって人類へと進化した過程は、1章丸々割いてくれてる。「現在だけしか知覚しない動物とは異なり、ヒトは過去を手に入れた。そして未来へと手探りをはじめた。」という文章が象徴するように、進化前の猿人類は出来事をすぐに忘れる。米印のように、この記述は今の私たちの感覚であって、彼らは覚えてすらない...という内容の文章がちょこちょこ挟まっているのが、面白かった。
HALが暴走した動機も書かれていたので、映画に比べてHALへの憎らしさは少ない。同情できる分、最期のシーンは切なかった。「チャンドラ博士...今日の...最初の...授業を...はじめて...ください...」が最期のセリフなのは健気すぎる。
想像できないから、想像したことの無いような感覚がいくつも表現されていて新鮮だった。低重力下の基地では、心と体がゆったりした状態になる。宇宙空間で生まれた子供は、転ぶと怪我をするからという理由で地球に行くことを嫌がる。HALは眠ったことがなく、また目覚めが来ることを知らないので、接続を切られることを異様に恐れる。海洋船は沈没するが、宇宙船は沈没できない...など。
訳者の伊藤典夫の解説が興味深かった。映画の色調の話で、白=骨の色、死の色であり、赤=血の色、生の色という考察だ。HALのレンズ、脳中枢が赤いのは物語の中で1番人間らしいからだという解説には興奮した。また、ボーマンはHALを殺すことでしか人間性を回復できなかったとあるが、これは猿人類が人間性を獲得した段階でも同じことが言えるのではないかと思った。道具の導入=進化が前面に出されているが、人類史上では、殺人も、二次的に進化と深く結びついている。実際今でも、道具を使わない、人間以外の動物は、同族を殺すことが無い。殺しこそ人間的な行為であると言える。
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Posted by ブクログ
鴨は旧版「無常の月」も持っていまして、被っている収録作は2作のみ。現在絶版の短編集「中性子星」からもセレクトされており、ラリイ・ニーヴンをまんべんなく知るにはちょうど良い短編集だと思います。
バリバリのハードSFからファンタジーまで、ぱっと見はとっ散らかった感じですが、バックボーンに当時最先端のハードSFとしての筋が一本通っているところが、ニーヴンの面目躍如。軽いタッチの見た目とは打って変わって、相当考え抜かれた理論派作家なのだろうと思います。
・・・が、まぁ、軽いですね(^_^;
SFという文学ジャンルの中でも特に、ハードSFはアイディア一本で勝負できるジャンルです。SF的アイディアと舞台設定がしっかりしていれば他は多少浅くても問題なし、というのがハードSFの特徴ですが、そんな特性を踏まえても、今読むとニーヴンは軽い。面白くないわけじゃないんですけどねー。
鴨的には、旧版「無常の月」の方が、収録作品にバリエーションがあって面白かったかな、という気がします。いずれにしても眉間に皺寄せて読むタイプの作品ではないので、気楽に楽しんでください。