水上勉のレビュー一覧

  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    『雁の寺』、『飢餓海峡』、『金閣炎上』などの社会の現実を重厚に描く小説でよく知られている著者は、数多くのエッセイも残していますが、それらのエッセイの中でもこの本は少し異質で、十二ヶ月の章立てで構成され、執筆時、軽井沢に居を構えていた著者の生活を描いたものです。雪に覆われる冬には秋に貯蔵した芋などの穀物、春になれば山菜・筍、夏には茄子・大根、年の瀬には栗・根菜など、手に入る食材と、自らの「料理の心」に従って作られた料理が、鮮やかに描き出されているのです。◆この本で特に学ぶべきは、作者が若き日に京都の禅寺で学んだ食材に対する慈しみの心です。食材に上下の差などないと考える、その根底にあるのが、禅の教

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    2025年09月14日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    こういう暮らしを良いなあと感じるけど、それは要は何を良いと思ってるのか
    ほんの数十年で気候も暮らしのあり方も変わった、数十年前もそれより前からずっと変わってきた、
    あるタイミングの生活を、特段良いなあと感じるのは、懐かしさ以外に何か?とか思う
    時代性がこの生活が素敵である本質ではないけど

    芋、梅干し、大根、山椒

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    2025年08月23日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    とても良かった。
    人はみんな『想い』を抱えて生きている。
    その想いが周りの環境にマッチする場合もあるし、
    いちばん身近な愛する人にすら伝わらない場合もある。
    伝えようとせずに殻に閉じ籠る場合もあるし、
    伝えようとしてもうまく伝えられないもどかしさもある。
    愛する人と想いを共有していると信じながらも、
    その信じている気持ちに対して懐疑的になったり、
    相手を想うあまりに深読みして空回りしたりもする。

    たまたま見つけた本だけど、読んで良かった。
    時代背景も含めて、この湿度の高さは嫌いじゃない。

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    2025年04月30日
  • 飢餓海峡(下)

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    二桁年振りの再読。なんと言ったらいいのか、ストーリーがゆったりというか堂々というか壮大?ちょっと違うかもしれないけど、そんな感じ。

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    2025年03月11日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    土の匂い、手触りが伝わってくるような文章。四季の食材を実体験を通してじっくりと描いてくれる。とにかく野菜が食べたくなる。

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    2024年11月26日
  • 故郷

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    1997年に刊行された水上勉晩年の長編。もともとは、1987年から京都新聞や福井新聞などに連載されていたとのこと。水上の故郷・若狭が舞台であり、原子力発電所の林立とともに大きく変貌した故郷への愛憎が描かれている。

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    2024年11月05日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    幼い頃に京都の禅寺で精進料理の作り方を教えられた著者の暮らしと料理のエッセイ。
    貧乏寺だったと表現される少年時代はそこにある物で食事を作るしかなく、工夫を重ね作り上げた料理は文章からでも美味しさが伝わってきます。
    今のように何でもかんでも手に入ることはもちろんなく、逆に今の時代の方が豊かではないと感じてしまうほど、ありきたりな世の中になってしまったかもなと考えさせられました。
    追い詰められることもなく、責められることもなく、それではモチベーションや意欲は正直保ちにくく本人の意思に委ねられ過ぎている気がします。どの時代が良いとか関係なく今生きているので色々と頑張らなきゃと思いました。
    作中に何度

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    2024年10月16日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    自然の恵みをいただいて、調理をして食べるということ。頭でわかっていても日々の忙しさに、調理することと食べることそのものが雑になりがちだけど、丁寧に向き合おうと思わせてくれる本。定期的に読みたい。

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    2024年09月16日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    水上勉氏は、少年自宅に禅寺に預けられ、そこにて修行体験をする。16歳からは、京都の等持院にて老師の隠侍、すなわち食事、洗濯、掃除などをおこない、数々の教えと共に精進料理について学ぶ事となった。
    スーパーやネット販売などなく、何もない台所から絞り出し、料理をするのが、精進料理。旬なもの、畑から出ていりものを食べるのであり、畑と相談して決める、つまり土を喰うのである。
    土から出てきたものには、平等の価値があり、根っこでも、無駄にはしない。
    何もないら台所から、客の心を忖度し、料理をすることは、修行であり、哲学でもあるのだ。
    季節の精進料理が紹介されており、教え、教訓的なものもあり、読んでいて楽しい

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    2024年08月08日
  • 飢餓海峡(下)

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    ネタバレ

     東舞鶴の海岸で東京都亀戸の娼婦 杉戸八重と、地元の名士 樽見京一郎宅の書生 竹中誠一が遺体で見つかる。樽見の証言もあり当初は心中と思われたが、舞鶴東署の味村時雄警部補は状況の不自然さから他殺を疑う。さらに杉戸八重の身元照会を機に、彼女が10年前の未解決事件--北海道岩幌町の大火を引き起こした質店強盗殺人放火と、青函連絡船「層雲丸」転覆事故現場での乗客ではない男2人の変死体発見--の容疑者 犬飼多吉の関係者と判明。関西訛りの大男という犯人の特徴から味村は樽見が犬飼であると推理、元・函館警察署警部補の弓坂吉太郎と共に事件の謎及び樽見の正体を追う……。

     戦後間も無くの、誰であろうと多少は手を汚

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    2024年07月26日
  • 飢餓海峡(上)

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    ネタバレ

     昭和22年9月20日、青函連絡船「層雲丸」は颱風の影響を受けて転覆。854名の乗員乗客のうち半数が死亡する大惨事となった。対策本部がある函館警察署の弓坂吉太郎警部補は、乗客名簿に該当しない男性2名の遺体があることに注目する……。
     同日の朝、函館から20㎞ほど離れた岩幌町にて全町の⅔が焼失する大火災が発生。火元と見られる質店の一家強殺犯による放火が原因と推定された。警察は同年3ヶ月前に仮釈放された受刑者2名と、彼らと行動を共にしていた大男“犬飼多吉”による犯行と断定。その行方を追うも捜査はなかなか進展しなかった……。
     青森県大湊の娼婦 杉戸八重は軌道車で知り合った関西訛りの大男を客に取った

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    2024年07月12日
  • 櫻守

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    ネタバレ

    『櫻守』と『凩(こがらし)』の中編二作を収録。どちらも、死場所を求めて旅を重ねる物語のように思える。
    「死にたい」という意味ではない。
    どちらの主人公も、己の生業(なりわい)に真摯に生きた人生の「上がり」の場所を定め、そこで静かに眠りに就きたいのだ。
    変わってゆく世の中への嘆きや不満はある。しかし、自分の人生を生ききればそこで潔く終わる。
    作者の死生観があらわれている。
    どちらも自然の描写がとても美しく、葉ずれの音、その色、風や光、水の流れを近くに感じる。

    【櫻守】
    木樵であった祖父について小さな頃から毎日のように山に入っていた、北弥吉(きた やきち)。
    山桜の散る中で見た、母と祖父の姿が目

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    2024年02月27日
  • P+D BOOKS 海の牙

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    水俣病と経済成長の要となる『工場』をテーマとした推理小説
    工業化が加速し、成長を加速する都市とその犠牲となる村落を舞台に起きた奇妙な殺人事件
    工場が水銀の排出を始めてから奇病で死ぬ人間が現れ始めた。そんな明白な問題を抱えていても、そこに明快な答えを出すことの難しさ、社会のしがらみを感じさせる
    推理小説としても面白く、読み応えがあるので読んで欲しい

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    2023年12月09日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    2編とも日本的な美や伝統の中で描かれる物語が谷崎に通ずる印象を受けた。実際谷崎は『越前〜』を高く評価したそうだ。心で深く通じ合った喜助と玉枝に深く感動した。

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    2023年12月08日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    映画『土を喰らう十二ヵ月』のDVDを観て(映画の料理監修が、土井善晴先生なので、ちょっと気になっていたのだ)気に入り、原作を読みたいと思った。
    元の本はけっこう昔に出版されていたらしいけれど、映画の情報が出た頃に再版されたのだと思う。
    令和3年12月10日 32刷の本。
    長く読まれているのだなと思う。

    文章のテンポがまさに映画での沢田研二さんの語り口で、いい気持ちで読み進める。
    映像も目に浮かび、またDVDを見たくなる。
    原作はエッセイなので、女性編集者との関係などのストーリーは無い。
    けれど、映画での物語は原作の雰囲気を壊していないし、おばあさんと山椒の佃煮のエピソードなどは人物の続柄を少

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    2023年11月04日
  • 金閣炎上

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    偶然みたNHKアナザーストーリーという番組の再放送で、「金閣寺放火事件」が取り上げられ、そこでこの作品が紹介されていました。

    戦争という時代背景、両親との関わり、自分の吃音障害、貧困、金閣寺での生活、理想と現実の大きな隔たり、様々な要因が重なって、この放火事件を起こしてしまったのだろうと推察されます。
    確かに放火、という犯罪は決して許されないけれど、この犯人林養賢のことを考えるとその苦しみが痛いほど伝わってくる、そんなドキュメンタリーでした。

    どうしても親目線で考えてしまう自分もいて、林養賢やまたその母志満子のことを思うと胸が痛みます。

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    2023年10月28日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    トノサマがえるのブンナは、ある日椎の木のてっぺんに登った。しかし、そこは鳶が餌を貯蔵するところだった。雀や百舌、鼠、へび、牛がえるが次々に運ばれてきて、誰もが生きたいと泣き、後悔し、あがき、そして鳶に食べられた。ブンナは恐ろしくて降りられなくなった。そして、生と死について考えるようになった。果たしてブンナは生きのびて木から降りられるのだろうか。水上勉が子どもたちのために、そして大人たちのために編んだ童話。

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    2023年07月20日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    禅寺の小僧と僧の愛人の女、二人の出会いとそれぞれの悲しみを描いた「雁の寺」。越前の雪深い里で竹細工を作る男のもとへやってきた美しい女、清らかな愛の結晶ともいえる竹人形を軸に二人の運命を描いた「越前竹人形」。どちらも水上勉の傑作だ。

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    2023年05月21日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    月毎に違う食材が書かれているので、どの月から読んでも楽しめる。

    食を通した人との交流が丹念に紹介されているのが良い。個人的には、六月の章の梅干しの話がジンときた。

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    2022年12月11日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    純粋な少年の目に映る、性愛に溺れる堕落した僧と愛人。その果てに待つ恐怖(『雁の寺』)。過度に性愛を遠ざける夫と、それに寂しさを覚える妻が迎える悲劇(『越前竹人形』)。溺れても遠ざけても性愛は哀しい。

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    2022年08月20日