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樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった……。そして、功なり名を遂げたとき、殺人犯犬飼多吉の時代に馴染んだ酌婦、杉戸八重との運命的な出会いが待っていた……。
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Posted by ブクログ
時代は戦後間もない昭和29年。舞台は「もはや戦後ではない」の言葉には程遠い、荒涼たる北海道・函館。実際に起こった青函連絡船 洞爺丸沈没の海難事故に想を得て描く、上下巻合わせて1000ページの壮大なミステリー。
今や立志伝中の人物となった主人公の完全犯罪を老練な刑事が足を使った執念の捜査で切り崩していく。極貧と出自が犯罪に深く影を落とす下りは松本清張の砂の器同様の匂いがする。でも、まったく古さを感じさせないミステリー。昭和40年に内田吐夢が映画化。三國連太郎・左幸子・伴淳三郎らが出演で、当時の映画賞を総なめ。著者は三國連太郎を執筆時からイメージしながら書き進めたのではないかと思える程、当時48歳の三國連太
郎のキャスティングはピッタリと、観てもないのに確信する。秋の夜長に不朽の骨太ミステリー。睡眠不足必至です。
Posted by ブクログ
昭和22年9月20日、青函連絡船「層雲丸」は颱風の影響を受けて転覆。854名の乗員乗客のうち半数が死亡する大惨事となった。対策本部がある函館警察署の弓坂吉太郎警部補は、乗客名簿に該当しない男性2名の遺体があることに注目する……。
同日の朝、函館から20㎞ほど離れた岩幌町にて全町の⅔が焼失する大火災が発生。火元と見られる質店の一家強殺犯による放火が原因と推定された。警察は同年3ヶ月前に仮釈放された受刑者2名と、彼らと行動を共にしていた大男“犬飼多吉”による犯行と断定。その行方を追うも捜査はなかなか進展しなかった……。
青森県大湊の娼婦 杉戸八重は軌道車で知り合った関西訛りの大男を客に取った。“犬飼多吉”と名乗った男は返礼に6万8千円の札束を渡して去る。戸惑う八重だったが曖昧宿への借金返済と、上京・再出発への資金に用いんと決意する……。
戦後間も無い、ヤミが跳梁跋扈する日本社会が舞台のミステリー作品。ヤミに頼らねば生き残れぬ都市部の厳しさと、ヤミすら手に入らぬ地方部の貧しさ、そして双方の住民たちの生存への執着の描写が凄まじい。また内田吐夢監督の映画版と比べ、本作では弓坂の執念の捜査や、八重の苦難と強かさがより詳細且つ叮嚀に描かれている。これは下巻にも大いに期待できる!
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