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波濤荒れ狂う荒涼とした海峡で発生した殺人事件を執拗に追い続けた、函館署の弓坂吉太郎。そして十年の後、杉戸八重殺人犯の捜索にあたることになった舞鶴東署の味村時雄。両刑事の執念が実を結んだ時、謎の人物、犬飼多吉こと樽見京一郎の実像が浮かび上がる……。青函連絡洞爺丸沈没の海難事故に想を得て、雄大な構想で人間の宿命を描き切った長編ミステリー小説。
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Posted by ブクログ
号泣。
全人類読んで。
八重ちゃん殺されたのがあまりにもショックすぎて
「作者許すまじ手紙にカミソリ入れてやる!!!」
って思ったし、犯人絶対バチゴリに追いつめられて欲しいって思ったの。
でも、どんどん犯人の過去や想いが明かされて、
だからといって罪が消えるわけではないんだけど、
あんなつらい境遇や尊い志があったなんて知ったらさぁ、
もう責められないよ生きててほしいよ。なんで…なんで……?
正しく生きようとすればするほど、罪の意識に押しつぶされて、
逃れられなくなっていく地獄があそこにあったんでしょ?
つら……
戦後のさぁぁ……
あんな、あんな貧しくてどんなに頑張っても這い上がれない中でさぁ、
村を豊かにするんだ!ってさぁ、
生きるためにあんなに足掻いた人が居て……
人間って何?
真実を明らかにするって、どういうこと?
ほんとつらい。
はやく読んで、人類。
Posted by ブクログ
戦後すぐ、台風が迫る中青森を出航した青函連絡船層雲丸が転覆する。この事故で何百名という乗員と乗客が海に投げ出され、帰らぬ人となった。
そして、この遭難で回収された遺体の中で二体だけは引き取り手が現れなかった。
この二名は一体誰なのか。
一方で同じ日、海峡を挟んだ北海道の岩内では大火が起き、街が灰燼に帰した。しかし、その焼けた中の質屋の家屋からは、火事ではなく強盗にあって亡くなったのではないかと思われる遺体が見つかった。
この大火は殺人犯が火を放った放火だったのではないか?
青森の大湊の娼家で働く杉戸八重は六尺もあろうかという大男と一夜を過ごすが、彼は八重に新聞紙に包んだ大金を渡して去っていく。
連絡船の引き取り手のない遺体の正体を探そうとする警官、強盗放火殺人の犯人を追い求めて関連する土地を転々と回る警部補、大金を残して姿を消した男性にもう一度会いたいと思い上京する八重、何人もの視点で物語が進行してクライマックスへと進んでいく。
山間の寒村て暮らす人々の逃げ場のない生活が語られていて衝撃だった。
貧しいので、娘は幼くして家計助けるために働きに出され、勝負となる場合もある。男性の場合、長男は家を継ぐが次男、三男は家に余裕がないのでやはり外へ働きに出る。
しかし、それがうまくいかなかった時は分家として本家(長男)の家のそばに小屋のような家を建ててもらう。しかし田畑は一番遠い場所が分け与えられる。遠いので日々働きに通うのが大変な上に、山間部の場合、田畑は山肌に作られており、分家にはその上の方が分け与えられる。
そうすると分家は田畑に必要な肥や水を上の方まで運ばなければならない。それはまた重労働になる。しかも、そういうものは結局は下に流れて本家の田畑を潤すことになる。
このようにして分家は疲弊し早死にしてしまい、本家が安泰になるように構造設計されているのが驚きだった。
Posted by ブクログ
1963(昭和38)年刊、昭和のミステリの名作ということなので、読んでみた。作者の水上勉はミステリ作家というより普通小説の作家のイメージで、以前読んだものにはあまり魅力を感じなかったので興味を抱けない作家だった。
本作は全体としてミステリの大枠を持つ。殺人等の犯人は最初から分かっているが、具体的な行為や背景の真実を求める形のミステリである。
しかし、下北半島出身の娼婦杉戸八重の境遇の変化が上巻の後半で延々と語られ、人間の生き様や運命をヒューマニスティックに描く普通小説としての側面が強い。単純にミステリを読みたいと思ったこんにちの読者なら、本作を長すぎて退屈なものと感じる可能性があるだろう。刑事たちが試行錯誤を繰り返しながら捜査を続けるさまも、延々と続く。
昭和22年あたりから物語は進み、その頃の東京などの風俗が丁寧に描かれ、同じ時代を扱いながら横溝正史作品などとはやはり違う観察があって、私にはとても興味深かった。
巻末の作者あとがきに書かれているように、娼婦杉戸八重の人物像には、ドストエフスキー『罪と罰』のソーニャのイメージが、確かに重ねられているが、魅力的だ。もっとも、彼女は上巻の最後で死んでしまう。
昭和22年の殺人放火事件を北海道から東北と東京にまで執拗に捜査を続け未完となった刑事の努力と、下巻の初めから描写される10年後の殺人事件を追う京都府の日本海側、舞鶴市の刑事の捜査とがやっと結び付いた場面は快感であった。さあ、いよいよ捜査が大詰めを迎え、一気に盛り上がるぞと思ったら。かなり冗長な捜査の描写が続き、辟易した。
容疑者や被害者の生い立ちを現地に行って調べる場面が長く続き、ミステリとしては緊張感を欠く。が、きっと作者はこのように書きたかったのだろうと納得する面もある。人物たちの生涯を浮かび上がらせたいという普通小説としての欲求が強いのである。しかも、それを追求する刑事たちの姿も細やかに書きたかったようだ。だが、被害者の遺族に毎度毎度強く同情する刑事たちは、ちょっと主情的すぎる感じがした。
松本清張なら冗長さを省略し、端的に事実をまとめて記述するだろうと思う。清張のドライで冷酷な傾向と、本作のウェットな文学スタイルはかなり正反対に近いようだ。
結局無駄足になる捜査の描写が延々と続くし、刑事たちの間違った推測も長々と維持される。上巻の杉戸八重を中心としたストーリー描写によって読者はとっくに知っているのに、数百ページにわたって刑事たちがずっと思い違いを続けている事に、読者は「だから、それ違うって」と苛立ってくるに違いない。おまけに、最後まで読んでも判然としない犯罪のディテールは残るし、長々と記述された推理の伏線もいくつか回収されずに終わってしまう。
これでは、ミステリとして期待して読んだ者をがっかりさせてしまうだろう。
人間ドラマとしては、杉戸八重など娼婦たちの人物像は魅力的に感じたが、「犬飼多吉」の方にはほとんど共感できなかった。戦後の風俗や僻地の貧しい村の描写については、大変よく書かれていて良かった。
が、数十ページにわたって克明に描写された捜査内容を、その後の捜査本部会議で刑事たちがまた克明に口頭報告するのをそのまま長々と書くような冗長さには、呆れてしまった。読者はとっくに知っていることなら、「刑事は調査結果を報告した」と簡潔に書けば済むのに。
とはいえ、全体としては面白く、楽しませて貰った。記憶に残りそうなイメージも多かったと思う。
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