水上勉のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最近福井県がブームとの事で、俺たちの水上勉さんをフィーチャーしてみました。
氏の作品は『飢餓海峡』のみでしたが、古い作品ながらも最高に面白かったですね。もちろんレビュー済。そして今回もよかった。私はこのような湿気を帯びた話が好きなんですね。湿気最高!でも梅雨は辛いぞ、糞!
先ず『鴈の寺』。エロ坊主が小僧に殺されるお話。しかも完全犯罪。コナン君だと直ぐ犯人を当ててしまうレベルだが、時代背景がそうさせない。小僧の生きる辛さが伝わってきます。慈念君、生き抜くんやでー。
『越前竹人形』。鴈の寺と同様に顏が残念で背が低いコミ障キャラが主人公。この時点で鬱屈とした物語が始まる予感がしましたが、最後の最後に感動したなあ、元遊女の玉枝の葛藤、そして死、大正時代だからこその生き辛さが見えました。これぞ純愛かと。南無・・・
って、どうしても気になってしょうがないのが1点。
舞台は福井県です。主人公の喜助は武生市在中、玉枝は芦原温泉勤め、玉枝はんはその前に京都の島原で働いていましたし、そもそも京都の方ですので、ゴリゴリの京都弁どすえ。しかし、喜助はんは武生市の方ですよ。でも何故か京都弁。ほんまはゴリゴリの福井便なんやぞ、おぇーっ。どういうこっちゃ?水上はん、ホンマに福井県の方でおますか?って、あゝ水上はんはおおい町出身でしたね。そこは完全に関西訛りなんですわ、福井弁が分かってなかったのか・・・・
福井市出身のワテからしますと、舞台が京都かいな?と思いますわ。ほんま。これを読んだ方が福井市に来られると、余りにも違ってショックを受けるでしょうね。
この点がどうも引っかかったなあ(ストーリーには全く影響無し)
個人的には前職で向島、中書島に毎日おりましたので、舞台全てコンプリートしてほくそ笑んでおりました。
兎に角、皆さま念願の新幹線も開通したことですし、一度福井に遊びにきてやー。 -
Posted by ブクログ
日経の春秋で「五十三年も生きていた梅干し」の話が引用されて興味を惹かれて購入。なるほど少年時代に京都の禅寺で奉公した経験を元に軽井沢で隠遁生活?をしている食と料理を中心とした月ごとのエッセイ。
『めしを喰い、その菜のものを調理するということは、自分のなりわい、つまり「道」をふかめるためだということがわかってくる。一日一日の食事を、注意をぬいて、おろそかにしていれば、それだけその日の「道」に懈怠が生じるだろう。』
これが全てかな。食材への感謝。そもそもの食材やそれを育てた土や風土の声を聞くこと。手間を惜しまず工夫を重ねる。それこそ『精進』料理であると。何かとコスパ・タイパが重視されがちな今だからこそ改めて噛み締めたい言葉も多い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「飢餓海峡」と同時期に出された作品で、上昇メロドラマ要素も強いと感じましたが、ヒロイン夕子を見守る、夕霧楼の女将のかつ枝さんが良かったです。夕子が櫟田から渡された粉薬を服用して寝込むあたりでは、櫟田が唯一とも言える自身の理解者である夕子の死期を悟りつつも失いたくないというように感じました。一方の夕子の櫟田に対する見方の中に「かわいそうな人」とありますが、優秀な頭脳を持ちながら吃音症のため、周囲に理解されない、受け入れられない彼を(精神的妹として)守りたいという意思を感じました。
本作品の16年後、三島由紀夫の「金閣寺」へのアンサーとして「金閣炎上」を発表されましたがそこへたどり着くまでの習作的要素もあったのかもしれないと考えました。
差別的な表現も出てきたり、吃音症の人物を取り上げるのはポリティカルコレクトの厳しくなった現代では共感を得にくいかもしれませんがこうした作品の存在を通して差別解消や他者の痛みに想いをはせる契機になるかもしれません。