水上勉のレビュー一覧

  • 飢餓海峡(下)

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    号泣。
    全人類読んで。

    八重ちゃん殺されたのがあまりにもショックすぎて
    「作者許すまじ手紙にカミソリ入れてやる!!!」
    って思ったし、犯人絶対バチゴリに追いつめられて欲しいって思ったの。

    でも、どんどん犯人の過去や想いが明かされて、
    だからといって罪が消えるわけではないんだけど、
    あんなつらい境遇や尊い志があったなんて知ったらさぁ、
    もう責められないよ生きててほしいよ。なんで…なんで……?

    正しく生きようとすればするほど、罪の意識に押しつぶされて、
    逃れられなくなっていく地獄があそこにあったんでしょ?
    つら……

    戦後のさぁぁ……
    あんな、あんな貧しくてどんなに頑張っても這い上がれない中

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    2022年01月15日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    子供時代に禅寺で修行していた著者が、その教えを活かし、毎月様々な料理を作る本。
    「美味しんぼ」で知った人も多いと思います(自分もその一人)。

    この本には高級料理なんて一品も出てきません。
    粗末なお惣菜ばかりです。
    けれど、どれもこれも最高に美味しそうです。

    畑で取れた旬の野菜を、手間ひまかけて丁寧に料理する。
    それがどんなに贅沢で、どんなにありがたいことか。

    作中では、以下のように書かれています。

    『出来のわるい大根を、わらう資格はぼくらにはない。
     尊重して生かせば、食膳の隅で、ぴかりと光る役割がある。
     それを引き出すのが料理というものか。』

    食材に貴賎なしということですね。

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    2021年01月26日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    ネタバレ

    慈念がこの後どうなるのか最後まで気になって面白かった。なんだか悲しい結末だったけど、読み終わったあとは嫌な気分と言うよりは不思議な気持ちにつつまれた。

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    2020年07月31日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    両物語に共通する、母を知らぬ男の姿。また自身を仮の母の姿として重ねんともがく女たちの姿には肉情が纏わり付き、巧緻な描写と相まって極めて艷やかで情緒的な物語性を生み出している。水上自身の庫裏での経験に裏打ちされた力作。必読。

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    2020年05月18日
  • 働くことと生きること

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    水上勉の小説で読んだ記憶があるのは『はなれ瞽女おりん』くらい。『飢餓海峡』も読んだことがあったかもくらいなんだけど、自分のなかの印象としては弱い者、小さき者、名もなき者に目を向ける作家という印象で、そういう人が書いたものらしい働くことに関する本だった。
    水上勉自身の職業遍歴とそこから学んだことに大部分が割かれているんだけど、禅寺の小僧さんから膏薬づくり、公務員、中国大陸での苦力監督、記者、代用教員などさまざまな仕事を転々としていることにびっくり。こういういろいろな立場を経験し、そこでいろいろな状況の人に出会ったことが彼の小説に影響しているのだろう。
    しかも戦前・戦中の話でそういった頃の職業観と

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    2019年06月09日
  • 飢餓海峡(上)

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    時代は戦後間もない昭和29年。舞台は「もはや戦後ではない」の言葉には程遠い、荒涼たる北海道・函館。実際に起こった青函連絡船 洞爺丸沈没の海難事故に想を得て描く、上下巻合わせて1000ページの壮大なミステリー。

    今や立志伝中の人物となった主人公の完全犯罪を老練な刑事が足を使った執念の捜査で切り崩していく。極貧と出自が犯罪に深く影を落とす下りは松本清張の砂の器同様の匂いがする。でも、まったく古さを感じさせないミステリー。昭和40年に内田吐夢が映画化。三國連太郎・左幸子・伴淳三郎らが出演で、当時の映画賞を総なめ。著者は三國連太郎を執筆時からイメージしながら書き進めたのではないかと思える程、当時48

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    2016年10月18日
  • 飢餓海峡(下)

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    地元の大作家でありながら未だに読んでいなかった自分が恥ずかしい。
    戦後の混沌とした世界の中に実在したであろうと錯覚すら陥る登場人物の描き方。当時は貧しかった。貧しさが当たり前だった。こんなに引き込まれたのは久しぶりだ。
    さあ明日から水上作品を読まねば…

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    2024年06月24日
  • 西陣の女

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    西陣織が関連している小説を読んでみたいと思って、検索して見つけた。
    ウィキペディアをみると、1962年の著作。
    物語は、昭和27年、西陣の帯地問屋「山地商店」の当主地引佐太郎が信濃の有明村を訪ねたところから始まる。
    有明紬の原料となる山まゆ糸をは「ヤマコ」という蚕からとれる。
    山に植林したクヌギに蚕をはなし、自然の中でクヌギの葉を食べさせまゆ糸をとる。
    厳しい自然の中で、希少な美しい生糸がとれる。

    そのヤマコから糸をとる仕事をしている少女刈田紋は18歳。京都に奉公に出たいという希望がある。山地としても、西陣は人手不足のおり、若く美ぼうの少女紋を連れて、京都へもどることとなった。

    この紋があ

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    2015年12月01日
  • 飢餓海峡(下)

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    昭和の傑作ミステリーが完結。昭和二十年代。当時としては珍しく、日本列島の北から南を舞台にし、二人の刑事が執念で、一人の男の犯罪を暴く。犬飼多吉こと樽見京一郎の犯罪がついに暴かれるが、背景にあったのは哀しい京一郎の半生だった。

    当時を思えば、これだけのスケールのミステリーを描いた努力は並々ならぬものだったに違いない。また、ミステリーの面白さと共に描かれる人間の宿命が物語に重厚感を与えている。

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    2015年06月23日
  • 飢餓海峡(上)

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    日本の戦後、昭和二十年代を舞台にした傑作ミステリーの上巻。青森の下北半島で酌婦を生業としていた杉戸八重は客の犬飼多吉と出会い、犬飼から大金を渡される。大金を手にした八重は借金を完済し、上京するのだが…

    上巻では杉戸八重を中心に物語が展開し、犬飼多吉を始めとする男たちがミステリーを紡ぎ出していく。昭和二十年代の世相が非常にリアルであり、下北半島と東京という地方と東京を舞台にした八重の波瀾に満ちた人生と、そこに影を落とす犬飼の謎に包まれた人物像にページをめくる手が止まらない。

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    2015年06月23日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    ネタバレ

    美しい日本語を堪能できる一冊です。
    目で奏でる音楽というのでしょうか。
    オルゴールのピンとなる本書を櫛の歯で読み進める私。読み進めるほどに次の頁をめくるのが躊躇されて。一日寝かしてしまいます。
    日本語を堪能できる逸品。

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    2014年10月07日
  • 故郷

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    水上作品3作目ですが本作が最も心打たれました。
    「人間はどこの空を飛んでも死ぬときは地面、故郷に帰ってくる」というテーマ。
    約25年前に、変わっていく原発銀座から鳴らされた警鐘が、今も変わらずどころかさらに重みを持ったものになっています。
    自分に故郷がある幸せと責任を感じさせたくれました。
    美しい文章で自然と人間が魅力的に描かれています。
    良い本と出会えました。

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    2014年09月27日
  • 飢餓海峡(下)

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    飢餓海峡。標題がこんなに内容に合う著作は少ないのでは。餓えているのは行きつ戻りつの人間たちなのか、
    その業なのか。
    ネタバレを恐れ書けませんが、もう少し思いやる余裕があれば、八重も京一郎も違う人生があったはず。
    どちらの人生も泣けます。自分の良く知る地名が舞台で感無量です。

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    2014年09月05日
  • 櫻守

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    高度成長真っ只中の日本で静かに桜を守り続ける「櫻守」、頑固に自分の終の住処を作る老人のお話の二本の短編で構成されている。

    個人的には、「櫻守」の方が好き。守り、伝えるというのはとても大変なことで、桜は里桜に限る、それは手入れが大変なものだから。でも、現在の有名な桜はだいたい里桜のような気がする。
    やっぱり、美しさが違うと思う。

    静かに文章が流れていく作品である。

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    2014年07月26日
  • 櫻守

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    標題の「櫻守(さくらもり)」と「凩(こがらし)」の二編。
    おそらく初めての水上勉です。
    自分が生まれる少し前の作品。
    どちらも素晴らしいですが、どちらか選ぶなら櫻守。
    正直、田舎を出ている身としては山や樹を守ることから逃げている気持ちと、木を接ぐ大変さが理解できないことからのめり込めない部分があります。けれど、無償で桜を守る、ただその行為、その行為が生んだ徳、その奇跡が心を打ちます。
    最後の一文「人間は何も残さんで死ぬようにみえても、じつは一つだけ残すもんがあります。それは徳ですな・・・」に感動。

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    2014年07月23日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    北陸と京都、著者の生きた土地に根ざした物語。「雁の寺」は、「金閣寺炎上」の修行僧を彷彿させる。醜い容姿、貧困、母性への思いが、ある事をきっかけに彼を破滅へと向かわせる。ミステリーの要素もある作品。「越前竹人形」でもコンプレックス、母性がキーワード。しかしこの作品の主人公は強い信念とたぐいまれな竹細工の才能を持ち、少年のように清らかな心で、亡き父の愛人を娶る。いびつな夫婦関係であることで、ある悲劇が起こるが、どこにも悪意がなく切ない。彼女が堕胎を決心したときに出会う船頭との場面は心を打つ。映像が浮かぶ。

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    2014年07月14日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    時々、まさにちょうどそれを必要としていたんだ、というタイミングで、そういう本に出会う事があるけれども、この本はまさしくそういう本でした。
    内容は全く知らずに、ただ単にカエルが主人公だという情報のみで手にとって読んだのですが、これはとても大事なことを教えてくれる本でした。
    こどもにも読めるような語り口調の文章でありながら、その内容は重く、せつなく、でもとても大きなメッセージを含んだものだと思います。
    「きょう一日を生きてゆくよろこび」。この命は、おおぜいのいのちの一つ。それは、ただ単に食物連鎖の話をしているだけではないと思う・・・。
    この世に何も残してゆけない私だけれど、どうか願わくば、死んだあ

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    2013年09月18日
  • 金閣炎上

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    小説だと思ってたら、ルポルタージュだった。これはひょっとして水上勉版『冷血』なのか。三島由紀夫の『金閣寺』よりちょうど20年を経てこの作品は上梓されたらしい。私も三島『金閣寺』を読んでからこの水上『金閣炎上』を読むのに、およそ25年のブランクがあった。時間的スパンを同じうしての読書は、読む側の熟成度もまた同じ進化となり、理解が深まっていると思いたい。
    次に読む本は『金閣寺の燃やし方』。

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    2013年01月29日
  • 雁の寺(全)

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    全集で読みました。金閣炎上と一緒に収録されていたので。お坊さんて、お坊さんて・・・!あぁ、お経の有り難みが薄れてゆく・・・。なんか・・・すごい世界なのね、お寺って。

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    2012年04月29日
  • 金閣炎上

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    めっさ面白い!犯人である青年がなぜ放火するに至ったか、実際の関係者の思い出話を織り交ぜつつ、丹念に取材されていました。著者自身が青年と同郷で、しかも事件を起こすずっと前に青年と一面識あった、というのがまた興味をそそります。

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    2012年04月29日