水上勉のレビュー一覧
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若いころから、禅の世界に魅かれています。禅のもつシンプルだけど力強い雰囲気が好きで、座禅を組みにお寺に通ったこともあります。
しかし実際に学ぼうとすると、書いてあることが壮大な虚構に感じられたり、難解な公案で理解不能に陥ったりと、近づくことの難しさを実感してきました。
本書は、始祖の達磨から始まり中国での発達を経て日本に移入、展開されてきた歴史を、数々の禅僧の生き方の中に見ようというもの。
筆者自身、若年のころ禅寺に預けられ、その後に離れた経験をお持ちで、禅の実践者として、また客観的な観察者として、記述を進められます。
禅は不立文字の世界。言葉ではなく全人格的な経験を重んじます。組織化、教 -
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1950(昭和25)年7月2日の未明に起きた金閣寺放火事件。犯人は同寺徒弟の林養賢という21歳の男。これだけでじゅうぶん衝撃的な事件なのに、駆けつけた母親は息子に面会を拒否され、帰宅途中の汽車から身を投じて死亡。放火の動機にさまざまな憶測が飛び交うなか、20年もの歳月をかけて調査を重ねた水上勉渾身のノンフィクションです。
自身も僧を目指したことのあった著者の水上は、貧寺に生まれた養賢にかつての自分のことを重ね合わせたのか、養賢の郷里へも足を運んでつぶさに聞き取りをおこなっています。それによって浮かび上がる、養賢の過酷な運命、事件の全貌。
文庫本の字が小さいのと(老眼が来ている身にはツライ( -
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ネタバレ幼い頃に相国寺の塔頭に小僧に出された経験のある水上勉さんらしい輪廻転生や今を生きることの大切さなどをわかりやすく物語にした児童文学です。
トノサマがえるのブンナくんが高い椎の木のてっぺんに登るんだけど、そこは恐ろしい鳶がエサを貯蔵しておく場所だったんだ。
そこで半殺しの状態で死を待つだけの状態になったかつての天敵たち:ヘビやモズなどの会話をこっそりと聞くんだけど、そこからブンナくんはいろんなことを学んでいくってお話でした。
過去の悲しみや世間の不条理は常にあるけれども、生きるよろこびを謙虚に受け止めて、今を生きていこうってお話でした。
素晴らしいお話だったよ!
ちなみに「ブンナ」って名前 -
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ネタバレ昭和25年7月2日に国宝鹿苑寺金閣が寺僧の放火により焼失。
犯人である若狭の寒村出身で当時は大谷大学の学生でもあった林養賢(事件当時21歳)の出生から、懲役7年ののちに肺結核で亡くなり、その後に彼の墓がどうなっていたかまでを綿密に調べたうえで事件の約30年後に出版されたお話です。
作者の水上さんも若狭地方の寒村出身で、若い頃に鹿苑寺と同じ相国寺派のお寺に預けられた経験があり、また犯人と1度だけ会ったこともあることから、単に「国賊」「精神異常者」と犯人の資質を一面からのみ単純に評価する当時の新聞等に疑問を持っていたらしい。
今の社会ではプライバシー等々で描かれないであろう犯人の置かれていた当 -
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ネタバレいつ読むのが正解なのだろうか。それがこの作品を読んだ正直な感想。童話のような仕立てでありながら、残酷な地獄絵図さえ見せる生き様の物語。子供のころ読んだらうなされそうな気がする。
ブンナは両親とは死に別れ、ツチガエルの仲間と暮らす孤独なトノサマガエル。特技は木登りで、椎の木のてっぺんに登って生活がしたいと考えるようになり、登ってみるが、そこは鳶のえさ場だった。次々運ばれてくる獲物たち。生への意地汚いほどの執着、死の恐怖。
学生のころ、よくこの作品がの演劇が近所の公会堂などで演じられているのを広告で目にして、題名は知っていた。恐らく教育的な内容のものだろうな、と漠然としたイメージしかなかった。鳶の -
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【本の内容】
乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧の、殺人に至る鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作「雁の寺」。
美しい妻に母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工の愛情「越前竹人形」。
[ 目次 ]
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直木賞受賞作「雁の寺」を含む中篇2編が収められた一冊。
タイトルからは想像がつきませんでしたが、「雁の寺」はミステリでした。
もちろん、誰が犯人か!?という事が主筋のものではありませんが、これは確かにミステリ!
小柄な慈念に一連の「作業」が可能なのかどうかは少し気になりましたが...。
もう一つの中篇「越前竹人形」の方が、実は気にな