水上勉のレビュー一覧
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ネタバレ幼い頃に相国寺の塔頭に小僧に出された経験のある水上勉さんらしい輪廻転生や今を生きることの大切さなどをわかりやすく物語にした児童文学です。
トノサマがえるのブンナくんが高い椎の木のてっぺんに登るんだけど、そこは恐ろしい鳶がエサを貯蔵しておく場所だったんだ。
そこで半殺しの状態で死を待つだけの状態になったかつての天敵たち:ヘビやモズなどの会話をこっそりと聞くんだけど、そこからブンナくんはいろんなことを学んでいくってお話でした。
過去の悲しみや世間の不条理は常にあるけれども、生きるよろこびを謙虚に受け止めて、今を生きていこうってお話でした。
素晴らしいお話だったよ!
ちなみに「ブンナ」って名前は、お釈迦さまのお弟子さんの名前からとったんだそうです。 -
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ネタバレ昭和25年7月2日に国宝鹿苑寺金閣が寺僧の放火により焼失。
犯人である若狭の寒村出身で当時は大谷大学の学生でもあった林養賢(事件当時21歳)の出生から、懲役7年ののちに肺結核で亡くなり、その後に彼の墓がどうなっていたかまでを綿密に調べたうえで事件の約30年後に出版されたお話です。
作者の水上さんも若狭地方の寒村出身で、若い頃に鹿苑寺と同じ相国寺派のお寺に預けられた経験があり、また犯人と1度だけ会ったこともあることから、単に「国賊」「精神異常者」と犯人の資質を一面からのみ単純に評価する当時の新聞等に疑問を持っていたらしい。
今の社会ではプライバシー等々で描かれないであろう犯人の置かれていた当時の仏教界の腐敗やらも細かく描かれており、何があろうと歴史ある国宝を放火焼失させる行為は許されるものではないと思うけれども、政治と宗教が絡んだ社会の闇はそれ以上に深かったりするのかな…と思った1冊でした。 -
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ネタバレいつ読むのが正解なのだろうか。それがこの作品を読んだ正直な感想。童話のような仕立てでありながら、残酷な地獄絵図さえ見せる生き様の物語。子供のころ読んだらうなされそうな気がする。
ブンナは両親とは死に別れ、ツチガエルの仲間と暮らす孤独なトノサマガエル。特技は木登りで、椎の木のてっぺんに登って生活がしたいと考えるようになり、登ってみるが、そこは鳶のえさ場だった。次々運ばれてくる獲物たち。生への意地汚いほどの執着、死の恐怖。
学生のころ、よくこの作品がの演劇が近所の公会堂などで演じられているのを広告で目にして、題名は知っていた。恐らく教育的な内容のものだろうな、と漠然としたイメージしかなかった。鳶のえさ場に落とされた、傷ついた獲物の姿、その言動は、まるで戦争映画の残虐な場面を集めたような生々しさで。仏教の曼荼羅のような、丁寧で鮮やかさな筆致に目が眩む。自分が子供だったら読みたくないと思う。子供にはかなりきつい内容、しかし大人としては教えたい、この葛藤。読み終わってしばらく経った今も悩んでいる。 -
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【本の内容】
乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧の、殺人に至る鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作「雁の寺」。
美しい妻に母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工の愛情「越前竹人形」。
[ 目次 ]
[ POP ]
直木賞受賞作「雁の寺」を含む中篇2編が収められた一冊。
タイトルからは想像がつきませんでしたが、「雁の寺」はミステリでした。
もちろん、誰が犯人か!?という事が主筋のものではありませんが、これは確かにミステリ!
小柄な慈念に一連の「作業」が可能なのかどうかは少し気になりましたが...。
もう一つの中篇「越前竹人形」の方が、実は気になった作品...。
男性にとっては都合が良い部分もあるのかもしれませんが、女性としては納得の行かない作品でした。
妻をどう思っていたか、死の淵で「あんな事を」告白されるなんて、酷過ぎると思いました...。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本はもう20年以上前
ある事で悩んでいるときに、偶然手に取った本です。
今でも何かの時に思い出し読み返していて
もうボロボロになってしまっています。
ジャンルは児童文学。著者は水上勉さんです。
もともとは1972年に『蛙よ木からおりてこい』という題で刊行されました。
青年座によるお芝居や、アニメ化もされているので
聞いたことがある方も多いかもしれません。、
内容のエッセンスとしては
生きとし生きるものはすべて
生命を頂いてその中を一生懸命に生きているんだ。ということ。
(ああ、文章にしてしまうとなんて陳腐)
主人公のトノサマガエル、ブンナは
自分の力試しに高い椎の木に登ります。
ある秋の日に、とうとうてっぺんまでたどり着き
「ここは天国だ」と有頂天になりますが
やがてその場所が実は恐ろしい鳶のえさ置き場だったと知ります。
ブンナはそこにあった土に隠れながら
鳶にさらわれてきた雀、百舌、鼠、蛇、うしがえる、などの
後悔、ざんげ、あきらめ、自慢、
母への思念を聞きます。
さまざまな動物たちが生への思いを語り
そして鳶にさらわれ、また息絶える。。。
ブンナそれに怒ったり驚いたり悲しんだりしながら
やがて、命の流れに気が付いていきます。
最後のページでブンナは仲間たちにこう呼びかけます。
「おーい、みんな、がんばって生きようね、きょう一日をね、
生きられるきょうのよろこびを・・・・きのうのかなしみなんかわすれてね・・・・
みんな声をあわせてうたおうよ」
この本は巻末に
「母たちへの一文」--あとがきにかえて--
という文章が付されています。
水上氏は、この文章を
母が子供たちに朗読するために書いたそうで
私も、母としての視点で読んでいたことが多かったのですが
最近はいっぽいっぽ手探りで進んでいる自分個人の視点から
読み直していることに気が付きました。
お子さんがいらっしゃる親御さん。
生きる意味を探しているお若い方。
今、悲しい報道ばかり錯綜している今の世に
心が揺れている、そんな方に。
小さなカエルのブンナからの
大きなメッセージが伝わるのでは。と。思います。 -
Posted by ブクログ
二編収録のうち、表題作が特によかった。表現が美しいのに現代語らしいテンポをうしなわず、関西弁が文字の美しさより会話の息遣いが感じられ、情景が目に浮かぶようだ。 読書中爛漫の櫻と木肌のあたたかさを常に肌に感じられる。実在の人物をモデルに二人の男の人生を丹念に描きながら、樹齢四百年の古桜を移植する大仕事、人生の終焉までをあたたかく、時に哀しく描く。 信念と技のある人が理解者をもってやりたいことをする様は清々しい。 それに比べて「凩」は人生の悲哀の色が濃すぎて、若輩の私にはつらかった。 こちらも宮大工の男の晩年を描き、丹念で素晴らしいのだが、その仕事は孤独だ。子供たちの世代の、古いものをいたずらに古いからと切り捨てるやり方に憤りを覚えながら、死への恐れを見つめて自分の技を注ぎこんだお堂を建てる。 そこにはそれを見つめる友の目線もあるが、大半にはその寂しさも心からは理解されずに終わる。映画「はなれ瞽女おりん」で水上勉を知り興味を持った。保守的な考えがハッキリとした頑固オヤジという感じだけれど、それがイヤミにならない。そこそこ厚みのあるのにするすると読まされ、郷愁と土着の雰囲気を骨太な読書でしみじみと感じさせる。
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Posted by ブクログ
三島の金閣寺が発表されてから二十余年経ち発表された小説、というよりフィクションに近い作品。
舞台が若狭(といっても、ほとんど舞鶴ですが)その土地には、愛着があるし、風習もまったくわからない訳ではないので、比較的理解しやすかったです。
この作品は、美しい金閣を自分の物としたかったという歪んだ論理が描かれた三島の金閣寺しか知らなかった私には、衝撃でした。
歪んでいたのは実は林養賢の方でなく、守銭僧侶の方ではないかと思わされる節もあり(だからといって放火は許されないし、実際本人の精神状態も普通ではなかったのだろうけれど)この事件が、仏教界に一石を投じるような結果にならなかったのは、残念です。