水上勉のレビュー一覧

  • 櫻守

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    「櫻守」と「凩」の二編からなるこの一冊。買ったのは確か2年くらい前。初めて読んだときもいいな~って思ったんだけど、つい数日前、「櫻守」をゆっくりゆっくり読んで感動。水上勉氏の方言の現し方は大変すぐれているんじゃないかと勝手に思っている。舞台になっている地方の方言を聞いたわけではないけども、その地方とその時代の独特の雰囲気が伝わってくる。
    地味な一人の男の人生を静かに力強く描いた「櫻守」。引き続き、「凩」も楽しませていただいています。

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    2011年08月24日
  • 櫻守

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    櫻守は、桜に合う土、桜の配置、桜の保存や接木の仕方
    桜の楽しみ方までをも主人公の弥吉が時に感動し、
    時に落胆しながら語ってくれています。
    師匠の竹部(モデルあり)曰く、染井吉野は日本の桜でも
    いちばん堕落した品種だそうです。
    本当の日本の桜というものは山桜や里桜だという。

    「櫻守」にしても「凩」にしても
    合理性の名の元に本来の姿を壊し、また別物を生み出し
    保存という都合の良い解釈の上に胡座をかき、
    魂の入らないモノに囲まれて満足している現代と呼ばれる時代の
    姿勢に対しての痛烈な風刺であると共に、守り継いで行くという
    本当の意味を教えてくれる作品だったと思います。

    あぁ~すごいモノを読んでし

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    2010年09月17日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    いろいろあった中学校の時、売店のおばさんにこの本を
    勧められて読みました。それから人生変わった気がします。

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    2010年05月17日
  • 櫻守

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    表題作「櫻守」が特によかった。
    表現が美しいのに現代語らしいテンポをうしなわず、情景や会話の様子が目に浮かぶようだ。
    二人の男の人生を丹念に描きながら、樹齢四百年の古桜を移植する大仕事、人生の終焉までをあたたかく、時に哀しく描く。
    信念と技のある人が理解者をもってやりたいことをする様は清々しい。
    それに比べて「凩」は人生の悲哀の色が濃すぎて、若輩の私にはつらかった。
    こちらも宮大工の男の晩年を描き、丹念で素晴らしいのだが、子供たちの世代の、古いものをいたずらに古いからと切り捨てるやり方に憤りを覚えながら、死への恐れを見つめて自分の技を注ぎこんだお堂を建てる。
    そこにはそれを見つめる友の目線もあ

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    2009年10月04日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    水上勉の書き下ろし児童文学作品!!めっちゃオススメです。木登りが得意のトノサマガエル、ブンナが木の上まで得意になってのぼると、なんとそこは、鳶のえさ置き場だったのです。えさとして運ばれてきた動物たちの話が、人間の本性を表しているようで、とっても奥深いのです。水上勉が、母親が子どもに朗読してやるように書いた作品なので、読み聞かせにはもってこいです。ウチの娘たちが3〜4歳のころに初めて読んでやりましたが、その後、何度もくり返し読んでやっています。

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    2009年10月04日
  • 金閣炎上

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    三島の『金閣寺』と比較されることが多いらしいけれど、全く別物。これを読むと三島の『金閣寺』は"物語"だったと思わされる。

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    2009年10月04日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    カエルの話。表紙で敬遠しないでください。人生の縮図がここにあります。何かを学び感じること間違い無しの一冊です。

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    2009年10月04日
  • 飢餓海峡(上)

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    ネタバレ

    な、、なんで!八重ちゃんいい子やな~幸せになってほしいな~と思ってたところで!
    網走監獄の人、がんばっている

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    2025年07月22日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    少年僧の孤独と凄惨な情念のたぎりを描いて、直木賞に輝く「雁の寺」、哀しみを全身に秘めた独特の女性像をうちたてた「越前竹人形」。

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    2025年07月16日
  • 飢餓海峡(下)

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    八重の心が、犯人の心を溶かし、自白するシーンは、どこか物悲しい。当初の犯行に至った経緯、そこで得た資金を元手に、守りたかった人々。決して、私利私欲のための犯行ではなく、歯車がそちらに動いてしまった宿命の悲しさを感じる。小説の最後は、これ以上ない終わり方だと思う。

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    2025年05月17日
  • 飢餓海峡(下)

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    戦後すぐ、台風が迫る中青森を出航した青函連絡船層雲丸が転覆する。この事故で何百名という乗員と乗客が海に投げ出され、帰らぬ人となった。
    そして、この遭難で回収された遺体の中で二体だけは引き取り手が現れなかった。
    この二名は一体誰なのか。

    一方で同じ日、海峡を挟んだ北海道の岩内では大火が起き、街が灰燼に帰した。しかし、その焼けた中の質屋の家屋からは、火事ではなく強盗にあって亡くなったのではないかと思われる遺体が見つかった。
    この大火は殺人犯が火を放った放火だったのではないか?

    青森の大湊の娼家で働く杉戸八重は六尺もあろうかという大男と一夜を過ごすが、彼は八重に新聞紙に包んだ大金を渡して去ってい

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    2025年04月09日
  • 飢餓海峡(上)

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    水上勉作の社会派推理小説。
    尤も犯人当てタイプではなく、北海道や東北の貧しい村に生まれた男女と、彼らが貧困から逃れられない仕組みを描いていると思われる。
    詳しくは下巻で。

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    2025年04月09日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    生きることとは、死ぬこととは

    弱肉強食の世界という現実の中、生き続けるわれわれ。
    すべての者に感謝したくなる。
    そんな一冊。
    子どもに読み聞かせてもいい。身近な生き物から命を学ぶことができると思う。

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    2024年06月30日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    最近福井県がブームとの事で、俺たちの水上勉さんをフィーチャーしてみました。
    氏の作品は『飢餓海峡』のみでしたが、古い作品ながらも最高に面白かったですね。もちろんレビュー済。そして今回もよかった。私はこのような湿気を帯びた話が好きなんですね。湿気最高!でも梅雨は辛いぞ、糞!

    先ず『鴈の寺』。エロ坊主が小僧に殺されるお話。しかも完全犯罪。コナン君だと直ぐ犯人を当ててしまうレベルだが、時代背景がそうさせない。小僧の生きる辛さが伝わってきます。慈念君、生き抜くんやでー。

    『越前竹人形』。鴈の寺と同様に顏が残念で背が低いコミ障キャラが主人公。この時点で鬱屈とした物語が始まる予感がしましたが、最後の最

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    2024年06月24日
  • 雁の寺・越前竹人形

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    若尾文子主演の映画「越前竹人形」を観て、その内容に惹かれ、原作が読んでみたくなった。ストーリー自体は極めて日本風でありながら、どこかしらギリシャ神話にも似た部分を感じさせるところが興味深い。娼妓に身を落としながら、変に擦れたりせず純な心を持ち続けた玉枝の生きる姿勢に胸を打たれた

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    2024年06月06日
  • 土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―

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    日経の春秋で「五十三年も生きていた梅干し」の話が引用されて興味を惹かれて購入。なるほど少年時代に京都の禅寺で奉公した経験を元に軽井沢で隠遁生活?をしている食と料理を中心とした月ごとのエッセイ。
    『めしを喰い、その菜のものを調理するということは、自分のなりわい、つまり「道」をふかめるためだということがわかってくる。一日一日の食事を、注意をぬいて、おろそかにしていれば、それだけその日の「道」に懈怠が生じるだろう。』
    これが全てかな。食材への感謝。そもそもの食材やそれを育てた土や風土の声を聞くこと。手間を惜しまず工夫を重ねる。それこそ『精進』料理であると。何かとコスパ・タイパが重視されがちな今だから

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    2024年05月24日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    舞台劇用に作られた作品ということで、舞台で演じられるところが目に浮かぶような内容だった。
    カエルでありながら、椎の木のてっぺんを目指し、そこで遭遇するトンビに連れ去らわれてきた様々な生き物の様子を描く。
    日頃、強さを装っているものでもあっても、そうした姿だけではないという一面を描くとともに、他者の気持ちを理解することと、日々生きていくことの価値を描き出す。
    舞台を見てみたいと思った。

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    2024年02月25日
  • ブンナよ、木からおりてこい

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    読む前は、童話であり、お寺近くに住まうカエルや動物たちが出てくる話だから、ホッコリするものかと思いきや、壮絶な物語でした。

    冒険大好きで跳ぶことが得意なトノサマガエルは大きな木を見つけ、好奇心から高いところまで登りますが、危険な場所にたどり着き、そこから大きく物語が始まります。
    色んな動物たちの優しさや思いやり、時には非道さや残酷さが描写され、自然ってこんなに弱肉強食の世界なんだな、でも、美しいところもあるんだなと感じました!
    少し教育じみてる部分もありましたが、改めて普段の生活では気づけない大切な事を学べました!

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    2024年01月18日
  • P+D BOOKS 五番町夕霧楼

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    ネタバレ

    「飢餓海峡」と同時期に出された作品で、上昇メロドラマ要素も強いと感じましたが、ヒロイン夕子を見守る、夕霧楼の女将のかつ枝さんが良かったです。夕子が櫟田から渡された粉薬を服用して寝込むあたりでは、櫟田が唯一とも言える自身の理解者である夕子の死期を悟りつつも失いたくないというように感じました。一方の夕子の櫟田に対する見方の中に「かわいそうな人」とありますが、優秀な頭脳を持ちながら吃音症のため、周囲に理解されない、受け入れられない彼を(精神的妹として)守りたいという意思を感じました。
    本作品の16年後、三島由紀夫の「金閣寺」へのアンサーとして「金閣炎上」を発表されましたがそこへたどり着くまでの習作的

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    2023年12月21日
  • 故郷

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    ネタバレ

     作品を読む時は、刊行年と著者の刊行時の年齢を確認し、その時代背景を思い浮かべながら読み始めています。(時代物は、作品の舞台になっている時代ですがw)。水上勉「故郷」612頁、1997.6刊行、2004.11文庫。小林一茶は年老いてから故郷(信州)に帰った。山も川も森も谷も、すべての虫や草木もが、故郷は生きている。故郷の有難さ。若狭の最西端、冬の浦。原発による辺境の近代化、経済発展、働き口、補償金・・・。一方で、昔ながらの風習や行事の変質。でも、いちばん肝心なのは「人間」人間の考え方であり、故郷への思い。

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    2023年12月09日