あらすじ
映画化もされた不朽の名作がここに甦る!
昭和20年代半ば、京都で遊郭の娼妓となった片桐夕子、19歳。貧しい寒村生まれが故、家族のための決心であった。哀れに思った女主人・かつ枝の配慮により、西陣の大旦那に水揚げされそのまま囲われる道もあったが、夕子は自ら客を取り始める。最初の客で頻繁に通ってくる修行僧・櫟田正順、夕子との仲を疑われている彼が前代未聞の大事件を起こした――。
二人の関係が明白となる結末が切なく心に沁みる。実際に起きた事件と対峙した著者が、それぞれの人物像を丹念に描いた渾身の作である。
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Posted by ブクログ
とても印象的な本。
読み終えたあと、メラメラを赤い炎を上げて燃える寺と、汚れた着物を着て絶命している夕子の様子が脳裏から離れなかった。
金閣寺 という話と似ている箇所が多いが、本作は 娼妓として店に売られ、命を削りながら生き、儚く命を散らしていった夕子の生き様がメインのようだ。
ただ、そんなふうに読んだとしても寺の炎上の事件はインパクトが大きく、読者の関心を掴んで離さない。
京都の寒村から京へやってくるというストーリーがまず良い。
薄幸そうなイメージを植え付け、男に頼らないと生きていけないという女の立場を明らかにするからだ。
小金が入ったからといって散財するわけではなく、病身の親へ送金する健気な夕子。
途中、貯金額が書かれている場面では不覚にも涙腺が緩みそうになった。
夕子の生真面目さに心が震えた。
フィクションとはいえ、こういう田舎者って多いんだろうなと想像できる。
そんな自分も田舎人間。いくつになっても浪費は怖くて出来ない。
かたや夕子はまだ19歳。
親の為に身を売って働く、立派である。
この話は夕子の内面的描写を避け、他の人物から見た彼女の姿によって、物語を進めていくところが特徴的だ。
夕霧楼の太客から嬲られていたり、問題の修行僧が何度もやってきても、作者は夕子の心情を決して描写することはない。
ただ、修行僧の正体が明らかになり、世間が彼に批判的な目を向けるようになったとき、やっと夕子の口は開かれるのだ。
失踪劇の終わりは夕霧楼の皆を驚愕させる。最後まで手を抜かないストラーリーテラーとしての水上勉が大好きだ。
Posted by ブクログ
「飢餓海峡」と同時期に出された作品で、上昇メロドラマ要素も強いと感じましたが、ヒロイン夕子を見守る、夕霧楼の女将のかつ枝さんが良かったです。夕子が櫟田から渡された粉薬を服用して寝込むあたりでは、櫟田が唯一とも言える自身の理解者である夕子の死期を悟りつつも失いたくないというように感じました。一方の夕子の櫟田に対する見方の中に「かわいそうな人」とありますが、優秀な頭脳を持ちながら吃音症のため、周囲に理解されない、受け入れられない彼を(精神的妹として)守りたいという意思を感じました。
本作品の16年後、三島由紀夫の「金閣寺」へのアンサーとして「金閣炎上」を発表されましたがそこへたどり着くまでの習作的要素もあったのかもしれないと考えました。
差別的な表現も出てきたり、吃音症の人物を取り上げるのはポリティカルコレクトの厳しくなった現代では共感を得にくいかもしれませんがこうした作品の存在を通して差別解消や他者の痛みに想いをはせる契機になるかもしれません。
Posted by ブクログ
コテコテの京言葉での会話しかありませんが、何故だかかなり読みやすい。
まだ三島由紀夫の「金閣寺」は読んでいないので、犯人側にフォーカスが当たった作品との比較はできませんが、かつ枝視点で話が進んでいくことで、放火事件後は読者たる自分も自然と内情を知らぬ「ガヤ」の1人になって話が進んでいくようで面白かった。
Posted by ブクログ
4.0昭和遊郭の様子を否定も肯定もなく描く。体の愛、精神の愛の両面を夕子を通して問われている感じがする。愛は金で買うものではない。それだけはわかる。
Posted by ブクログ
金閣寺炎上事件に関心があったので読んでみました。
古い本なので難しいかなと思いましたが、読みやすくて最後まで苦なく読めました。
愛とか性とか差別とか劣等感とか、そんなのばかりで楽しくなるような作品ではありません。
夕子さんが現実にいたならどんな人か気になります!