川上未映子のレビュー一覧
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購入済み
役立たないけれど、役立つこと達
私たちが社会に役に立つものを求めるとき、
私たちも役に立つものであることを求められる。
これはきわめて当然だけれど、
私たちは役に立つものばかりから
できているわけではない。
私は私自身の役に立たない部分を
かえって私のアイデンティティを
表すものとして、「最後まで」
愛することができるだろうか。
また、私は、私だけで私であるわけではない。
私を生み出してくれた者たちも
私の一部である。
私は、私の一部が不完全であっても
かえってそれを愛せるだろうか。
〇〇は、後ろめたくて
自分に大きな穴ができたように感じる行為
かもしれないが、意外と戦略的で
原罪とも呼ばれるものの暴発を回避して
守るべきものを守る強い力になりうるもの
かもしれない。
〇〇が怪我をして血を流すのを読んだとき、
読者としての私は、主人公に復讐や逆襲を
そそのかしたい気持ちを冷まされた。
突発的な凶事も、ないに越したことはないが、
もっと大きな取り返しのつかないことから
自分たちを守ってくれるものとなってくれる
こともあるようだ。
〇〇の凶事や、〇〇に芽生えた強さが、
勇気を持ち始めた主人公のその勇気の、さらに
先にある何かを示しているようだ。
私たちは交流する間に、たとえ
強く幸せに結びつくことができなくても
ばらばらでいるのに、それぞれが成長して
違っているのに、それぞれの成長を
なんとなく感じて安心できることが
あるように感じる。
役に立たなさそうでいて、
役に立つこともあるようですね。
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Posted by ブクログ
2015年刊行。川上未映子さんのミクロで鋭くキラキラした言語感覚が余すところなく発揮された傑作だった。言語感覚よりも倫理的問題の方に主眼が向かっていた『夏物語』よりも、私はこちらを推す。
なにしろ語り手が小学生たちなので、「コトバ」との関わり自体が頼りなく、切実だ。「○○だ、でもよくわからないような気がする」というふうに、コトバを挙げてみてはやっぱり違うかも、と首をかしげる所作が繰り返されるなかで、それでいて子もたちの無垢な心の動きが浮き彫りにされていく。コトバとの関係性の微細な揺れがそのまま芸術的な美のおののきのようでもあって、これこそまさに純文学であり、芸術小説だと思った。
最後の方の胸が裂けそうな痛切が心に残る。
光り輝く名作小説である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「対談」って手抜きで本を作ってテキトーに売ってる印象があって普通は読まないんだけど、村上主義者なのでこれは読みました。
対談じゃなくてインタビューですね。村上春樹を死ぬほど熟読して、どこに何が書いてあるかも、小説の登場人物についても知り尽くし、村上春樹がどこぞのスピーチで何を言ったかもフォローしている川上未央子氏の、一作家として、読者として、ファンとしてのすごいインタビュー。「騎士団長殺し」に出てくる「イデア」と「メタファー」についても一体何なのか(多くの読者が聞きたいところ!?)掘り下げて聞く。
…まぁ答えは例によって「僕にもわからない。」なんだけど。
一番心に残ったのは、あぁつまり、村上春樹は本当に小説のテーマとか構造とかそんなものはどうでもよくて(どうでもいいというか二の次で)、ただ単に「文章を書くのが好き」という話。「文章を書くのが好き」。「なんでもいいから何か書きたい」。「なんかフレーズが頭に浮かんで、そこから物語が発展する」。
大学で文芸サークルみたいなのに所属していたとき、みんなそういう感覚だったな、と(もちろん本物の作家とは全然レベルは違うんだけど)思った。
私も文章書くのが好き。読んで、書くのが好き。だから読書のレビューもこうしてコツコツ書くし、新聞に投書したりする。あとけっこうこまめに人に手紙を書きます。素敵な自分らしい文章をこれからも書きたいな。 -
Posted by ブクログ
たけくらべ読み終えたところ。樋口一葉を読んでいなかった(日本文学をなんとなく敬遠していた)自分の愚かさを呪う。なんだこの瑞々しさ。おっとりした、それでいて景色のわかる気持ちの持っていかれる文運びと表現(これは現代語訳の賜物かもしれないが)。あー、、、、とにかく今日読めてよかった。
三四郎読み終えた。NHKの100分de名著の漱石特集を観てうっすら冒頭は知っていたけども、そこからの印象とは違くなっていって。とても良かった。これも繰り返し読みたい。三谷幸喜さん演出の漱石を題材にした演劇、ベッジ・パードン(野村萬斎さん主演)を思い出しつつ、漱石自身の思想はどこかと想いつつ。
青年、終えた。森鷗外という人は頭のいい人だったんだなあ。初めて読んだ。いやあ、よかったな。ちょっとお風呂にでも入ってゆっくり考えてみたい。話の筋そのものではなくて(失礼)、何に惹きつけられるのかについて。
夏目漱石にしてもまあみんなそうなのだかもしれないが、この時代の若者はよくモノを吸収し、考え、悩み、自分なりの答えを出していることに改めて感服させられる。一言が、一単語が、自身から出てきていて、深く読んでも私などが自分の言葉で表現しえないだろうことを含んでいる。
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Posted by ブクログ
文庫化されたので実に3年ぶりに再読。
どんなこと書いたっけなぁと思ってレビューを読み返そうとしたら何も書いてなかった。そうだそうだ、あまりに濃密で果敢で超絶怒涛のインタビューに圧倒されて言葉が出てこなかったんだ、と思い出した。
インタビュアーとしての川上未映子さんの資質には、ほんとうに驚くべきものがある。
この本をまだ読んでいなかった2016年頃、NHKのSWITCHという番組で「君の名は。」の公開間近だった新海誠監督にインタビューをしている未映子さんを見たことがあって、彼らはイノセンスについての話をしていたのだけど、未映子さんはそのとき新海誠監督が話すイノセンスに「季節は?」ってさらに突っ込んだ質問をしたのね。
私はそれをきいたその瞬間に、全信頼を未映子さんに寄せたのを確かに覚えている。イノセンスの季節を知ろうとする人を私は絶対的に信頼する。
この本の中で村上春樹さんも言及していることだけれど、作者と読者の間に必要なのは信頼関係だと強く思う。
「どや、悪いようにはせんかったやろ?」というあれ。
それにしても3年前に読んだ時と今とでは、やっぱりあらゆる変化(成長といってもいいかもしれない)がある。
川上未映子さんの小説はすべて読んだし、村上春樹さんの猫を棄てるだってンダーグラウンドだって読んだし騎士団長殺しだって読み返したし。グレートギャツビーもキャッチャーインザライも読んだ。村上RADIOも聴いた。
とにかく前回とは比べられないほど深い次元で吸収することができた気がする。地下二階の話が特に興味深くて、あぁ私がなぜ村上春樹をこんな好きかって地下二階に連れて行ってくれるからなんだ、って気づけた。
大切な言葉はいくつもいくつもあった。
「大切なのはうんと時間をかけること、そして「今がその時」を見極めること。村上さんはくりかえしそれを伝えてくれたように思う。ミネルヴァの梟がそうであるように、物語の中のみみずくが飛びたつのはいつだって黄昏、その時なのだ。」 -
Posted by ブクログ
ラブレターと聞いて。
一番に頭に浮かぶのは好きな異性に対しての手紙。
と、いうことではないんだよって、それを教えてくれる色んな人の恋文を集めた一冊。
相手は好きな人にだけじゃなくて、恋する手紙、って広いんだなーと。
色んな生き方をされた方々の文章は、ステキで繊細で、ほのかに甘く、更に切なくて不思議という、いっぱい違う気持ちにさせられました。
でもでも。
読み終わって一番に思った事は。
メールやSNSなど直接的で一対一で、ある意味まっすぐ直線的に対人関係が可能になってきた最近。
きっと。
ラブレターを「書いて渡す」ということは、どんどんなくなってて、データでは残ることはあっても、物理的な「恋の淡い気持ち」が、こんな形で残ることは、メチャクチャ貴重になっていくんだろうな?
そんなことを読んだ後、想ってしまい、少しだけ時代の流れを感じたりした、そんな時間になりました。
恋文はなくならないかもですが、伝え方は変わっていく。
普遍的に「手書き」で綴りたいですね!
(思い込みなんでしょうけど。笑) -
Posted by ブクログ
いやはや、これは。
はぁぁあ。
なんとも。
いいっ!
カーソン・マッカラーズの「結婚式のメンバー」のあとがきで、「たけくらべ」を思い出した。だなんて村上さんが書いてたもんだから、気になって気になって文庫をペラペラとめくってみたんですが、原文はもとより、口語訳でさえなんだかちんぷんかんぷんと思ってたところ、池澤夏樹編の日本文学全集で、川上未映子が訳してるって聞いて、そりゃぁ好きだわきっとと思い、このかわいいピンクの全集を手にしました。
それがほんとに私にしっくりピッタリ!だって川上未映子の「乳と卵」も、「先端で、さすはさされるわ…」も面白いねと思ってたから、そりゃもう楽しめたし、好きだったし、これ読む前に川上未映子の普通の小説も読んでおこうと思って「ヘヴン」も読んだとこだしで、しっくりハマりすぎました。
なんて繊細で、生き生きとした物語がえっといつの時代ですか?これは江戸ですかね?一葉が書いたのは明治ですかね?まぁとにかく大昔に、私の大好きな青春文学の世界が繰り広げられていたとは…
大黒屋の軒先で信の鼻緒が切れて、声もかけられない切ない美登利のあの姿、あれを知っているのはやはり「ガラスの仮面」で読んだからですけどもww
いやぁ、美登利は、「悲しみよこんにちは」のセシルだったー!! -
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内気な人の恋
他のサイトのレビューを読んでいると、
主人公に感情移入出来なくてイライラした、
というのが結構あったが、
それは読者が外向的な性格だからだろう。
内向的で人付き合いが苦手な人なら
必ず共感出来る作品。
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Posted by ブクログ
ネタバレ川上さんのエッセー集。タイトルのルーツは、
世界クッキー、なはんて書いてみると「うふふ、世界のほうも、クッキーのほうも、ここで隣り合わせになるなんてことは、夢にも思ってなかったはず」
と、あとがきにあるように、全然別の世界の言葉の出会いと化学反応に文章を書くことの喜びを見出している作者ならでは。
章ごとに、からだのひみつ、ことばのふしぎ、ありがとうございました(文学賞受賞などの際の感謝の言葉)、きせつ、たび、ほんよみ、まいにちいきてる、ときがみえます、と、とても面白いカテゴリー分けになっている。
しょっぱなの「からだのひみつ」から、彼女の独特の感性が爆発。特に、彼女のこだわる「境目概念」。。
「唾」:口の中にあるうちはぐんぐん飲んだりしてるのに、なぜいったん口外に放出され、外気に触れた途端にきわめて汚物と認定されてしまうのか。爪とか髪の毛もそうですね。(以下略)
こんなこと思ったこともないけど、おっしゃる通り。
「世界には絶えず境目が存在し、その時々の入れ物や環境が本質を変革するのです。」
「境目を超えることになって姿勢や考え方の本質が変化するのなら、いつ何時でも信用できる主体性や本質なんてものはいったいどこにあるといえるのか。ふ、そんなものないのだぜ、と言ったほうがスマートな気持ちもするけれど、それでもやっぱり、そんなこと言わずに、やっぱり何がしかを判断するのは常に自身の中にあるブレない点の機能であってほしい、という願いもあったりして。」
このエッセイの特徴は、彼女自身の独特の感性から生じる問いを出発点としていること、そこからより普遍的な問題が抽出され、自らの感覚的なものの捉え方に従って、自分なりの解を、願望も込めて導き出していくという流れ。加えて、ときに方言や詩的な文体を用いた文章自体の持つテンポの良さ。どれも本当に素晴らしい。
いちばんすきだった話は、ほんよみあれこれ、の一節。
国語の教科書をすみからすみまでなめるように読んだのが読書の原体験であるという作者。
大人になってしまえば、限られた時間を読書に充てようとすれば自分の好みや必要性に会った本を読むことになり、逆に読みたくないものは読まないで済んでしまえるということで、いやでも出会って読んでしまうという幼少時の読書体験は、本質的に贅沢なものだったなあと述べる。国語の教科書が重いだけで憂鬱で仕方なかった自分との根本的・決定的な差異。思わずため息・・・
「自分の人生の局面を左右する出来事や決心の多くは、いつでもきっと自分の想像を少し超えたところからやってきて、まるで事故に遭うように出会ってしまい、巻き込まれてしまうものです。」
人生は自分の望みどおりにならない。自分で選べていることは実は数少ない。神経科学の研究でも、「人間に自由意思はあるのか?」というのは一つの大きなテーマだ。
作者は、数々の偶然性に支えられた人生を豊かに生きるには、「自分の知らない何かに出会うこと、自分の意識からの束の間の自由を味わってみること」が大事だという。
僕は、感受性が鋭い人は本質的に傷つくことも多いんじゃないかと思うのだが、川上さんの本を読んでいると、傷つくことを恐れていてはいかんのだと思わされる。素直で力強い。関西の女ゆえ?
そして、彼女がもう一つ大事にしていると思われる「自分と対象とのかけがえのない「一回性」の共有」ということ。その一回性のなかで生まれる感情や情景をことばにすること、に真摯に向き合っていると感じる。それは、彼女の表現方法が小説にとどまらず、詩や音楽まで多岐にわたることとも無関係ではあるまい。
傷つくことを恐れずに言葉にする勇気を持とう。