芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞のダブル受賞。
2022年「ブッカー国際賞」最終候補作。
虐めの描写が辛かったです。今まで文章で読んだ中で一番心が痛い。こんなに容赦なく人を痛めつけられるのか。
少し曖昧で哲学的な表現が多く海外文学を読んでいるようでしたが、作者が詩人でもあると知って納得。重
...続きを読むいテーマの中でも美しい表現がたくさんありました。
また、話が進むにつれて明らかになるのかと思った疑問のいくつかは解けないままでした。
バレーボールの皮を被った僕を蹴り上げたのは誰だったのか、放課後に見た百瀬と女子との関係、なぜ百瀬は病院にいたのか、コジマが僕に見せたかった「ヘヴン」の絵とは。など。
また、途中百瀬と僕で2人きりで会話をする場面がありましたが、百瀬の考えが全く理解できませんでした。
「『自分がされて嫌なことは人にもしない』が理解できない」というセリフは特に。
僕のお母さんが素敵な人でした。
コジマが僕の斜視を、それが僕を僕たらしめる大切なものだと言ったのに対し、お母さんはただの目だと言いました。それで僕が変わるわけではないとも。
僕が手術を受けることを決めたのはお母さんの後押しのおかげだと思いました。
斜視の手術代が15,000円なのには、驚きながらも拍子抜けでした。
この作品に限ったことではありませんが、一冊の本を書くのにかかった時間は作品によると思いますが、読者がその本を読むのにかかる時間は、本を書くより圧倒的に少ないはずです。
作者が長い時間をかけて書いた本を、あっさり読んでしまうのは、とても贅沢なことのように感じました。