川上未映子のレビュー一覧
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ずっと気になっていた人気の本、文庫になってようやく読むチャンスが。クライムものという触れ込みだったので身構えていたが、思いのほか上巻はそこまで暗さや悲壮さはなかった。が、下巻からはそうはいかないかもしれない、という予感や伏線ははられていた。読みやすくスピード感のある文章で、あっという間に読破。
物語は、主人公の30代の女性が、かつて深い知り合いだった年上の女性・黄美子さんの逮捕記事を見つけたことから始まる。そして過去の回想へ。90年代後半の三軒茶屋あたりが舞台の話に飛ぶ。
主人公の生い立ちの描写が始まり、母子家庭かつ貧困家庭で育つ主人公がひょんなことから30代の黄美子さんと出会い、高校生の -
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下巻。クライムサスペンス独特の深みにハマっていく体験を実感。
事の発端は火事で、失った場所は花にとって『拠り所』。彼女は中学生からそういった『安心できる場所』がなかったのではないかと思う。桃子や蘭、そして黃美子さんと一緒に過ごした時間は、花にとって青春の原石だったのかなと思う。
お金への執着が異常なぐらいまでに深く深く沈んでいく花、読み手側の心を深く沈ませる。
人間の思考・精神力は天秤にかけてもバランスが取れた状態で過ごしてるはずが、きっかけによってその天秤が一気に傾き、恐怖と不安に苛まれ精神が破壊されていく。
人間は脆い…。そういった花の変化がどんどん悪い方向へと転がっていく前、誰かが止 -
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独特な雰囲気で作中では経験したことも見たことも感じたこともない様な場面ばかりだったけど、まるでその場にいるかのように、緊張感まで感じました。心臓がどきどきしたり、安心したり、この先どうなるのか、すごく楽しみです。
「お金」に対して正直私はあまり関心がありません。
お金持ちになりたいとも特に思いません。自分と自分の周りの大切な人達が特に不自由なく、最低限のお金があればいいなと思うタイプです。でもそれは私の育ってきた環境が世の言う「裕福」だったからだと思います。決してお金持ちではなかったし、我慢する事もあったけど、服も食べ物も、学校で必要な物も、当たり前のようにそこにあって当たり前のように使って -
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_好きなシーン
・"みんな好き勝手言うけど、あなたの話しか聞かないから"
安心感 抱擁感 安堵感 信頼感
・"言いたいことがあれば何でも言って、言いたくないことは言わなくていい。"
普段から母親に感謝の気持ちがあるのに、昔から上手く親とコミュニケーションが取れない自分の申し訳なさと不甲斐なさ、情けなさが込み上げた。
頭の中で感謝と情けなさを伝えたら号泣した。進路のことだって一緒に考えてくれる姿勢にじんわりした。就職を決めないといけない自分の心の柔らかい所がお湯に包まれた感覚になった。
最後のくじら公園のシーンは斜視による幻覚を見てるのか、寝てしま -
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黄色い家。SISTERS IN YELLOW、こっちの方がしっくりくる。英語と日本語の大きな違い。
四つ打ちの音楽に身を委ね気持ちよく踊るように読み進めてしまえる、読みやすさ小気味よさがある。
でも内容は重い。何が力なのか強いのか、強さとなってくるのか。
自分で選択して生きた人生でも、積み上げてきたものが崩れ壊れてしまってやり直せないことがある。外側にある、自分の中に影響してくるものほど積み上げやすく力となるけど、弱くて脆い虚構であり崩れやすい。そしてそれは執着、依存、拘泥…となり、本当の自身の裁量や尊厳を奪っていく。
また選択したつもりでも、実はどうしようもない運命として社会に定められたもの -
Posted by ブクログ
ネタバレ大変な読書だった。嫌な汗をかきそうになる読書。普通に読んでいてつらかった。一気呵成に読んだけれど、それはどちらかというと、こんな気持ちのままじゃ眠れない、という不快感からの解放を求めていたからだ。どうか救いの展開を、と願ったが、中盤になっても終盤になっても、苛烈ないじめの描写はとどまることはなく、むしろどんどんひどくなっていった。これはフィクションなのに、どうして著者はこんな残酷なことを、とどこかで苛立つ部分もあった。けれどその筆の容赦のなさは、「僕」が自らの手で「ヘヴン」を見るための条件だったのかもしれない。
この小説のテーマの一つが「見る」ということであるのは明らかである。だからこそ著者 -
Posted by ブクログ
思考回路をそのまま写し取ったような文体で、まっすぐ進まない。ああでもない、こうでもない、これかもしれないし違うかもしれない、否定して、また戻って、ぐにゃぐにゃと澱んでいく感じがある。
読点ばかりで、句点が少ない。
区切りが少なく、息切れする感じさえある。正直、読みやすいとは言えない。でも、それがこの作品を引き立てていると思った。
今回、感想を書くのは結構困難であった。ひとまず、自分なりの見解をまとめておく。
本作の中で、巻子の「どうしても豊胸したい」という願望が強く引っかかる。自分のためだと言い切ろうとするけれど、それは本当に自分の欲望なのか、それとも見られることを前提に内面化してきた価値