川上未映子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
川上未映子さんの本はエッセイしか読んだことがなくて、なぜかこの話もノンフィクションだと思って途中まで読んでて、主人公が出したはじめての本を筆者の本かと思って検索までして、やっと気付いた(笑)
前半部分の主人公の東京の家に姉と姪が遊びに来る話は、夏の湿気が肌にまとわりつくやな感じ?を思わせる雰囲気のストーリーが面白かった。後半は人と性交できないし独身の身だけど子どもが欲しいという気持ちに突き動かされて物語が進んでいく。確かに「自分の子ども」というまだ実態のないかつ自身の意思を持つものを欲しがる気持ちってなんなんだろうって考えさせられる。エゴなのかもしれないけど、だったらその選択をした自分もその結果である子どものこともちゃんと責任持って幸せにしたい。
自分の子どもとか生育環境とか父とか母とか性とか、もうすべてがめちゃくちゃフェミニズム小説だった。 -
Posted by ブクログ
校閲を仕事としている入江冬子
人間関係にうまくいかずとも黙々と仕事に没頭する毎日だったが
会社を辞めた知り合いから、仕事の依頼をされることがきっかけで
フリーの校閲者となり、たくさんの仕事をこなすようになっていた。
けれども 心は満たされないままだった
飲めないお酒に依存しはじめた矢先、
教師と名乗る三束(みつつか)という男性と知り合う。
時々会うようになりいつしか冬子は三束さんを想うようになっていく。
恋愛というものを今までしてこなかった冬子が
異性を好きになり、どうしたらいいのかわからなくなって
仕事も手につかず、自暴自棄になっていくが。。。
人を好きになることの奥底に秘められた感情表現が
とても新鮮でリアルで不気味で恐ろしくて
そんな表現を次々に押し出してくる川上未映子作品
真夜中と光に魅了された主人公との対比が素敵だった。 -
Posted by ブクログ
川上未映子さん作品三作目。
毎回思うのが、この方の情景の描写は本当に胸に迫るというか、「すべて真夜中の恋人たち」も話の内容はあまり覚えていないけれどラストシーンの真夜中の描写がいつまでも胸に残っていて、それが作品の印象になっている。この作品でもタイトルの通りに夏の中で主人公が立ちすくんでいるようなシーンが目の前に見えるみたいで、特に第一章での姪と観覧車に乗るシーンでの夏の夕方と夜が混じり合っていく時間帯の表現がとても素敵だった。
テーマとしての「反出生主義との相対」については子を持つものとしてはとても重たく、善百合子の主張する「10人の寝ている子どもを目覚めさせる」ことについて、いかに自分が子を持つことへの責任に無自覚であったか考えさせられた。望んで生まれてくる子どもは確かにおらず、「産む側は何を賭けているの?」という問いは鉛のように胸に沈む。私は子らを存在させてしまった。反出生主義の立場に立つ立たないとにかかわらず、子を持つ人間には少なからずその自覚は必要であると感じた。他の方の感想を拝見して、筆者自身がそのような考えを提唱していた時期もあったようなので、ある意味私小説的というか、それでも出産に至ったエクスキューズ(言葉は悪いけど)のような意味合いもあるのかもと思った。
主人公の姉の巻ちゃんがなんとも可笑しく愛らしく、私はとても好きだ。「乳と卵」より先にこちらを読んだので、巻ちゃんの娘、主人公の姪である緑子が思春期に抱えていた「痛み」や「女性としての身体(容れ物)への違和」をどう克服し、あるいは克服せずとも大人になっていったかは描かれていないもののとても気になるところだった。
-
Posted by ブクログ
川上未映子さんは、いろいろな種類の感情を言葉にする能力が高い。川上未映子さんの小説を読むと、自分の感情にも言葉が与えられる感じがして、すごく好き。
何ともいえない、グレーな気持ちすら言葉になってしまう。
最近「人生はハッタリで生きてナンボやな」と思っていたところに、たまたまこの小説を読んで、ハッタリの人生についてまた考えている。
私はハッタリで生きるほどのキャパシティがない、かつ、めんどくさいので「人生はハッタリで生きてナンボやな」というのは、そうやって生きている人はうらやましいなという意味。
本当は、内心では、うらやましいというより、かわいそうだと上から目線で見ているのかもしれないけれど。
ダメな自分を嘘で取り繕うと、嘘が嘘を呼んでしまうよね。
どんな人にも「ダメ人間」な部分ってあるんだから、自分のダメなところはダメなまま受け入れていこうと、いつもの結論に落ち着く。
-
Posted by ブクログ
裏表紙には「監禁・傷害事件」、「クライム・サスペンス」、「人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのか。」という惹句があるが、これはミスリードのように感じた。
ドロドロの犯罪小説なのだという先入観を持って読み進めたが、思っていたのとは違った。
犯罪やお金そのものよりも、主人公・伊藤花の15歳から40歳頃までの生き様を描いた物語として読むと、面白さが見えてくる。
未成年の花が社会に投げ出され、手探りで生きていく中で、少しずつ危うい世界に入り込んでいく。その過程がとてもリアルに描かれている。
誰にも導いてもらえず、自分なりに一生懸命生きようとすることが、かえって自分を追い詰めていく。その姿が痛々しくもあり、同時にとても人間らしく感じられた。
「まともな生活を毎日繰り返してる人たちは、どうやってそっちの世界の人間になれたのか、誰かに教えて欲しかった。」
この花の心の中の叫びが印象に残った。欲しかったのは、ごく普通に、まともに暮らせる生活だったのに、どうすればそれを手に入れられるのかが、ずっとわからなかった。
そして最後のシーンで、花がまるで15歳の少女の様に感じられたのが印象的だった。
長い時間を経ても、花の中にはあの頃の自分がずっと残っていて、止まっていた時間がようやく動き出し、人生をやり直すような瞬間だったのではないかと思う。
終わり方が希望に満ちていて、とても良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第一部は緑子の思春期特有のうまく伝えられない気持ちが繊細に描かれていてとても面白かったです。緑子が夏子と関わることによって様々なことに気がついていくのと同時に夏子も様々なことを感じていくという構成がよかったです。最後に緑子と巻子で卵を自分の頭にぶつけてお互いに伝え合うというのがシュールでしたがこの作品の中で最もインパクトのあるシーンであるのは間違いなく、非常に面白い体験をしました。第二部は夏子がAIDによって自分の子供と出会おうとする中で逢沢をはじめとした様々な人物と出会い、生命とはなにか、結婚とは何か、独りとはなにかを感じ取っていくというストーリーでした。登場人物それぞれが色々な感情や背景を抱えていてとても面白かったです。好きなキャラクターは遊佐です。男という生き物に対してはひとつの信頼も置いておらず世間を冷笑しているように感じられながらも娘のくらや夏子のこととなると真剣に考えて好きなように生きるように手助けするという性格がよかったです。また一番好きなシーンは夏子と善百合子が夜の公園で話すシーンです。善百合子の生まれたことこそが最大の不幸であり、母親たちのエゴで辛いことばかりが待っているこの世の中に子供を生み出しているという主張を聞き、一見支離滅裂に感じながらもハッとした気持ちになりました。他にも紺野や仙川といった魅力的なキャラクターが多く登場して夏子が迷いながらも成長するというのがよかったです。
-
Posted by ブクログ
産後に読書再開しようと思い、Geminiで育児書を選書された中の一冊。
川上未映子さんの著書自体が初めてで「めっさ重たい」「むっさいかつい」「値段なんかこれもげっさ高い」などの副詞が新鮮で面白かった。
あとがきにも書かれているけれど妊娠、出産、育児の話題はとても個人的なもの且つとってもデリケート。この感想を投稿する文章を考えるだけでも書いては消してを繰り返し、いつもの倍以上の時間がかかってしまった。
育児に関して一番刺さったフレーズは
「世の中の思い込みから解放されて、自分たちにとっていいあんばいのスタンスをみつけてゆかねばならない」
マタニティブルーや産後クライシスの部分は読むのが苦しい人もいると思うくらい重たいけれど、個人的な体験や感情を晒すこと自体勇気のいることで、貴重な体験を読ませてもらった感謝の気持ちが生まれた。
次は小説を読んでみたいと思う素敵なエッセイでした
-
Posted by ブクログ
親から守られなかった子どもが、大人としての役割を背負い、自力で生きていく物語。
まだ上巻なので何とも言えないけど、読んでいてドストエフスキーと吉田修一を混ぜたような雰囲気を感じた。
生きていくために、やってはいけないことをやっている。でも、それは正しくないけれど、間違っているとも言い切れない。そんな矛盾の中で、「私の人生ってなんなんだろう」と問いかける感じは、ドストエフスキーを思わせる。
そして、「血のつながりって何なんだ」というところは、吉田修一の小説を思い出した。
最後の母親との再会の後の花の場面では、瞼の奥が熱くなった。下巻でどう狂うのか、なんだか怖い。でも、早く読みたい。