川上未映子のレビュー一覧
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表題である『乳と卵』、『あなたたちの恋愛は瀕死』、2編の短編作品。
どちらも小説というより詩に近い作品かもしれない。「女性であること」の嫌な部分やグロテスクさを濃縮還元したジュースのような。
『乳と卵』は口語の関西弁で書かれていて、若干の読みにくさはあるのだけれど、口語体であることで登場人物をよりリアルに感じられた。事態の深刻さの割に語り口はやたら軽妙なところが面白くて癖になる。
『あなたたちの恋愛は瀕死』は、主人公の見た目を想像するとかなりおぞましい姿になって怖かった。
川上未映子さんの作品は初めてだったが面白かった。また別の作品も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
苛めを受け続ける僕とコジマの話。決して親や先生には言わずに苛めを受け続ける… それは見た目はやられっぱなしで弱く見えるけれど、現状を受け入れて良い事と悪い事の区別がついていて強いから…
お互いの存在がお互いにとっての光になっていったことで、どんな苛めを受けても決して誰かに相談することはなかった… 僕の斜視もコジマの汚れも重要なしるし。どんなに酷いことを言われても残しておきたいしるし。
百瀬との会話のシーンは屁理屈並べててでも実際間違いではないからこそ苛立った。最終的に苛めが周りに知れ渡ったからよかったものの、周りに言える捌け口って大事だなと感じた。しるしや苛めを受け続けることが正義だと思い込んで生き続けることにならなくて良かったと思った。あまりにも辛くて暗すぎるので、2人には今後明るく幸せな未来が来てほしいと心から思った。 -
Posted by ブクログ
一冊を読むのに、これほど時間がかかるとは思わなかった。
長編だから、というだけではない。自分が男性であり、父親でもあるという立場から、登場人物たちの考えや感情に足場をかけ直しながら読む必要があったからだと思う。
これまで父親として子育てをしてきた中で、「子どもに会いたい」と思う気持ちは分かっているつもりだった。けれど、その気持ちの前提には、無意識のうちにパートナーの存在があった。
主人公のように、パートナーを持つこととは切り離して、それでも子どもに会いたいと願う人がいる。
そのことを、自分はこれまで十分に考えてこなかったのだと思う。考えてこなかったというより、どこかで考えないままにしていたのかもしれない。
主人公の感情の一部分には共感できた。
けれど、すべてを理解できたとは思わない。
むしろ、この作品を読んで、「分かったつもりにならないこと」の方が大切なのではないかと思うようになった。
作中には、出産そのものを厳しく問い返す言葉が出てくる。
「出産は親の身勝手な賭けだ」
その言葉には、何も言えなくなった。
この世界は、本当に生まれてくる価値のある場所なのか。
子ども本人が望んだわけでもないのに、親が命をこの世界へ送り出すことを、本当に無条件で肯定してよいのか。
考えれば考えるほど、簡単には答えられない。
それでも、自分は子どもの幸せを願わずにはいられない。
誰かの見ている世界では、子を産むことは間違っているとされるかもしれない。
それでも私は、その「間違ったまま」を選びたいと思った。
正しいと証明できたからではない。
正解などないまま、それでも自分の選択と責任を引き受けて生きていくしかないのだと思う。
男性である自分には、「産む」ことそのものはできない。
だからこそ、命が生まれることの重さや、自分には経験できない身体の出来事に、以前よりも畏れを抱くようになった。
そして父親として、その命を育てていきたいと思った。
我が子を見て、
「あなたに会いたかったんだ」
と。
ただ美しい言葉としてではなく、そこに伴う怖さも責任も引き受けた上で、そう思えるようになった。
読み終えたというより、長い時間をかけて、自分の中にあった「産むこと」「生まれること」「親になること」への考えを問い直された一冊だった。 -
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どの短編も面白かった。すべて女性が主人公だけれども、全員に好感が持てた。
さすが川上未映子だなあという、リズムのある文体に乗せられて読み進めていくと突然、あ!という場面瞬間やキーとなる言葉が入ってくる。そこからは今までの伏線回収というか、どちらかといえば淡々と進んでたストーリーと真逆に。
どのお話もびっくりする展開あります。
生きることは悲しみに満ちていて、自分ではどうしようもない出来事さえ受け入れなければならない時もある。むしろその方が多いんだろう。
悲しみを感じつつ、乗り越えようとして足掻きながら生きること。辛いことかもやけど、いつも笑ってなくていいとも言える。 -
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川上未映子さんの本はエッセイしか読んだことがなくて、なぜかこの話もノンフィクションだと思って途中まで読んでて、主人公が出したはじめての本を筆者の本かと思って検索までして、やっと気付いた(笑)
前半部分の主人公の東京の家に姉と姪が遊びに来る話は、夏の湿気が肌にまとわりつくやな感じ?を思わせる雰囲気のストーリーが面白かった。後半は人と性交できないし独身の身だけど子どもが欲しいという気持ちに突き動かされて物語が進んでいく。確かに「自分の子ども」というまだ実態のないかつ自身の意思を持つものを欲しがる気持ちってなんなんだろうって考えさせられる。エゴなのかもしれないけど、だったらその選択をした自分もその結果である子どものこともちゃんと責任持って幸せにしたい。
自分の子どもとか生育環境とか父とか母とか性とか、もうすべてがめちゃくちゃフェミニズム小説だった。 -
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校閲を仕事としている入江冬子
人間関係にうまくいかずとも黙々と仕事に没頭する毎日だったが
会社を辞めた知り合いから、仕事の依頼をされることがきっかけで
フリーの校閲者となり、たくさんの仕事をこなすようになっていた。
けれども 心は満たされないままだった
飲めないお酒に依存しはじめた矢先、
教師と名乗る三束(みつつか)という男性と知り合う。
時々会うようになりいつしか冬子は三束さんを想うようになっていく。
恋愛というものを今までしてこなかった冬子が
異性を好きになり、どうしたらいいのかわからなくなって
仕事も手につかず、自暴自棄になっていくが。。。
人を好きになることの奥底に秘められた感情表現が
とても新鮮でリアルで不気味で恐ろしくて
そんな表現を次々に押し出してくる川上未映子作品
真夜中と光に魅了された主人公との対比が素敵だった。 -
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川上未映子さん作品三作目。
毎回思うのが、この方の情景の描写は本当に胸に迫るというか、「すべて真夜中の恋人たち」も話の内容はあまり覚えていないけれどラストシーンの真夜中の描写がいつまでも胸に残っていて、それが作品の印象になっている。この作品でもタイトルの通りに夏の中で主人公が立ちすくんでいるようなシーンが目の前に見えるみたいで、特に第一章での姪と観覧車に乗るシーンでの夏の夕方と夜が混じり合っていく時間帯の表現がとても素敵だった。
テーマとしての「反出生主義との相対」については子を持つものとしてはとても重たく、善百合子の主張する「10人の寝ている子どもを目覚めさせる」ことについて、いかに自分が子を持つことへの責任に無自覚であったか考えさせられた。望んで生まれてくる子どもは確かにおらず、「産む側は何を賭けているの?」という問いは鉛のように胸に沈む。私は子らを存在させてしまった。反出生主義の立場に立つ立たないとにかかわらず、子を持つ人間には少なからずその自覚は必要であると感じた。他の方の感想を拝見して、筆者自身がそのような考えを提唱していた時期もあったようなので、ある意味私小説的というか、それでも出産に至ったエクスキューズ(言葉は悪いけど)のような意味合いもあるのかもと思った。
主人公の姉の巻ちゃんがなんとも可笑しく愛らしく、私はとても好きだ。「乳と卵」より先にこちらを読んだので、巻ちゃんの娘、主人公の姪である緑子が思春期に抱えていた「痛み」や「女性としての身体(容れ物)への違和」をどう克服し、あるいは克服せずとも大人になっていったかは描かれていないもののとても気になるところだった。
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川上未映子さんは、いろいろな種類の感情を言葉にする能力が高い。川上未映子さんの小説を読むと、自分の感情にも言葉が与えられる感じがして、すごく好き。
何ともいえない、グレーな気持ちすら言葉になってしまう。
最近「人生はハッタリで生きてナンボやな」と思っていたところに、たまたまこの小説を読んで、ハッタリの人生についてまた考えている。
私はハッタリで生きるほどのキャパシティがない、かつ、めんどくさいので「人生はハッタリで生きてナンボやな」というのは、そうやって生きている人はうらやましいなという意味。
本当は、内心では、うらやましいというより、かわいそうだと上から目線で見ているのかもしれないけれど。
ダメな自分を嘘で取り繕うと、嘘が嘘を呼んでしまうよね。
どんな人にも「ダメ人間」な部分ってあるんだから、自分のダメなところはダメなまま受け入れていこうと、いつもの結論に落ち着く。
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Posted by ブクログ
裏表紙には「監禁・傷害事件」、「クライム・サスペンス」、「人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのか。」という惹句があるが、これはミスリードのように感じた。
ドロドロの犯罪小説なのだという先入観を持って読み進めたが、思っていたのとは違った。
犯罪やお金そのものよりも、主人公・伊藤花の15歳から40歳頃までの生き様を描いた物語として読むと、面白さが見えてくる。
未成年の花が社会に投げ出され、手探りで生きていく中で、少しずつ危うい世界に入り込んでいく。その過程がとてもリアルに描かれている。
誰にも導いてもらえず、自分なりに一生懸命生きようとすることが、かえって自分を追い詰めていく。その姿が痛々しくもあり、同時にとても人間らしく感じられた。
「まともな生活を毎日繰り返してる人たちは、どうやってそっちの世界の人間になれたのか、誰かに教えて欲しかった。」
この花の心の中の叫びが印象に残った。欲しかったのは、ごく普通に、まともに暮らせる生活だったのに、どうすればそれを手に入れられるのかが、ずっとわからなかった。
そして最後のシーンで、花がまるで15歳の少女の様に感じられたのが印象的だった。
長い時間を経ても、花の中にはあの頃の自分がずっと残っていて、止まっていた時間がようやく動き出し、人生をやり直すような瞬間だったのではないかと思う。
終わり方が希望に満ちていて、とても良かった。