川上未映子のレビュー一覧
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ネタバレたいへん純粋な物語であった。
書き手には「希望を書かないといけない」という思いはない。
川上未映子さんには来年中二になる息子がいて、その子が昔「犬飼いたい」と言い、「カヌレ」という名前の犬を飼っているとのこと。
そのインタビューの中で「犬は言葉を話さないから良いのだ」といっていた。こういう無理な意図のない(正義や希望をわざわざ付け足さない)物語を書くことについて、妙に納得のいったエピソードであった。そこに存在する「ともに在る」感覚。これこそ「生」である。
世界はいつも奪う者と奪われる者、それと振り回される者でてきていること。この書物の視覚的な印象がウクライナを想起させるのは偶然ではな -
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あるニュース記事から甦る、過去の記憶。
家族でもない、ただの友達とも違う、ある女性たちと一緒に暮らした日々。
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普段何気なく毎日を過ごしているけど、本当は「生きる」ことってこんなにも難しいと気付かされる。
暖かく清潔な家があり、食べるものに困らず、一定の収入がある。自分が「普通」に受け入れているものが、実は親が道筋を引いてくれたものなんだなと、幼少期の花を見ていると感じる。
黄美子さんはそんな花に、不器用で歪ながらも生きる希望を与えてくれる存在だったのだろう。
みんな少しずつ欠けている。だけど、だからこそ寄り添って、一つの「暮らし」を作り上げ -
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花とほぼ同世代ということもあり、読んでいて共感の連続だった。登場人物のほぼ全員(トロスケは除く)に、どこかしら自分を重ねられる部分があった。特に黄美子さんのような人物が私の身近にもいるので、読んでいて胸が苦しくなった。そして、これは当たり前のことなのだけど、みんな歳をとる。すっかりおばさんになった花にとって、あの数年間は、人生を大きく左右するほど濃密で深く、忘れようとしても忘れられない時間だったはずだ。それでいて花の見ていた世界は実はとても狭かった。学校も行かず恋愛もしていない。ただ正義感が強くて優しくて愚直で、そして狭い。その狭さと深さのアンバランスが、なんとも言えない読後感を生んでいる。こ
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下巻の感想
上巻とは人間関係が全然違うように思えた。
上巻では花が守る側、他3人が守られる側の1対3のような関係だった。何も考えない3人(ヴィヴさんの言葉を借りると幸せな人たち)に対して不満はあるが、考えることができる自分が動くべきと自分で自分を鼓舞している印象があった。
しかし下巻では実際に他のメンバーも闇バイトに手を染める。そのことで守る、守られるの関係は少しずつ瓦解していく。桃子、蘭はどちらも自我を出し始めて、そのことで苦心していく花の心情が丁寧に描かれる。
上巻の感想でも書いたが、この作品は心情描写が残酷なまでに丁寧に描かれている。自分が一番頑張っているのに、なぜメンバーから不平 -
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読み終わって鳥肌が止まらないのは初めてかもしれない。
読んでる最中も、生活のいろんなところでこの本のことや主人公のことを考えた。ものすごく感情移入してたと思う。あと読んでる最中は生活の中でもやけに冷静になれた。
とりとめのない気持ちを文字にするとこんなふうになるのか。夏子の感じたことをいくつも私も感じた覚えがあって、とても愛おしく思えた。
ただ切ないとか胸が痛むとか、一言にするとそれだけの気持ちをいくつもの言葉で、私がうまく言葉にできない気持ちを全て言葉で読めることが不思議だと思った。
なんとなく読み終えた今は、この本を読めて良かったって言う強烈な気持ちと、川上さんの本を全て読んでみたいと言う -
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川上さんの作品が好きで、これまでにいくつか読んできたが、その中でも本作は特に心に残る一冊だった。
なかでも印象に残っている言葉がある。
「ある人がそう生きたい、と思うことに、思った時点でどうして他人がそのことに口を出すことができるだろう」という一節だ。
近年、女性の社会進出や医療技術の進歩により、出産年齢は以前よりも高くなり、高齢出産や不妊治療も珍しいことではなくなってきた。それでもなお、特に年齢の高い妊娠や出産に対して、心ない言葉が向けられることがあると耳にしている。しかし、妊娠や出産は、その夫婦が選び取る人生のかたちの一つであって、他人が軽々しく口を出してよいものではないのだと、改めて -
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ネタバレ読みやすい。新聞で綴られていた小説らしいので、とても読みやすい。
1997年ごろ、主人公の伊藤花が17歳のころの回想。
瞠目するのは、作者川上未映子が犯罪者の感覚的な部分を描いているところ。それは、学校の教室でいじめっ子が「この子なら言うこと聞かせられるわ」という子を探し当てる感覚に近い。主人公花の母親も、黄美子さんも映水さんのいう「金のなる木」として利用されているのだ。花の母親や黄美子さんに悪意は全く見いだせない。ただ、ユルい。
上巻出だしで、花は黄美子さんが捕まったことを知っているので下巻では二人の関係が破綻するのだろうけど、すでに決定的なのは不安を共有できないこと。人間関係を切り -
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妊娠、出産、子育てエッセイ本。
インスタで見つけ、私も妊娠したら読みたいなと思っていた本だったが、私が妊娠した年齢が物語と一緒で、私の妊娠ストーリーから子育てストーリーまで、共感という言葉だけでは済ますことができないくらいに、日々の生活を重ね合わせて読むことができました。
初めての妊娠や子育てで色々な葛藤を乗り越えつつ、子育てでしか感じられない愛おしさや幸福感を「そうそう、その気持ち」と思いながら、読み進めてました。
特に、最後のあとがきは胸があつくなってしまい、思わずノートに書き写してしまうほど、この文を自分の中に刻みたいと思える内容でした。 -
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小学6年生が主人公のお話し。
川上未映子さんって、こんなに幅広いんだ!
本当に小6の目線な気がしました。
子どもたちはこんな風に悩んで、こんな風に乗り越えていくんだなぁと、我が子を思いながら、しみじみと読みました。
子供たちに辛いことや嫌な気持ちを味わってほしくないと思うけど、そんなことはきっと無理で、どうしても大人になっていく過程では、涙が出る経験ってあるよなぁ。
それが怒りだったり、悲しみだったり、悔しさだったり、色々ある。
親が、我が子にふってくる嫌なことの全てから守ることはできない。
でもそんな辛い気持ちを味わって、それでも乗り越えていく子どもたちの方が、人に優しくなれたり、 -
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この世に生を受けることは幸か不幸か。正義か悪か。
それを評価することはその瞬間にはできない。
生まれてきて、自我が宿り、自分で物事を思考できるようになったその時に、子ども自身が幸か不幸かを判断することになると思う。
生を受けるように働きかけること自体は親のエゴでしかない。
生まれてきた子どもが親のエゴを受けてくるのは確実なこと。
そのエゴで、ある意味生まれてきてしまった子どもが、生まれてきたことに対して不幸に思うことがあるのであれば、それは親の行いは悪になるのだろうと思う。
川上未映子さんの表現は風景と感情の描写が鮮明であり、物語の中に溶け込めるので心地よい。 -
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2026/05
花ちゃんの家庭環境キツすぎる。
私は親が離婚していて、母親が父親の借金を抱える家庭で育ったので、読んでいてとんでもなくしんどくなった。
花ちゃんのお金や家への執着が、私にはとてもよく分かる。どれだけ目に見えないものが大切とはいっても、結局自分自身を生かしてくれるものってお金だと昔からずっと思ってきたし、なにがあってもお金に苦労しない人生を送ろうと小さい時から思ってきた。
でもこの本を読んで「お金に苦労しない人生」っていうのは、他の誰かに頼るんじゃなくて自分がどれだけ踏ん張って努力して頑張れるかなんだなと思った。
大人になって、結婚をして生活に余裕ができて、ちょっとした -
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この方の作品は『黄色い家』に続き2作品目。
すごく良かった。
心理描写がすごく細かく巧みで、誰もが味わったことのあるような感情を比喩を交えながら文章にしていて、登場人物に自分を重ねてしまう場面がたくさんあった。
特に物語の終盤、ヘガティのお母さんへの想いが溢れ出す描写は切なくて涙が溢れた。
「私が小さい時にお母さんはいなくなったから、お母さんのことで思い出せることはないのに、お母さんを思いだすと涙が出る」というところ。子どもはみんな、「お母さん」という存在が恋しい、大好きな対象なんだよね、ととても腑に落ちる文章だった。
子ども向けの本なのかもしれないが、私にとってはとても心に刺さる素敵な物