【感想】
あなたはコミュニケーション能力に自信があるだろうか。
私はない。というか、堂々と「自分はコミュ力があります」と答えられる人は早々いないのではないだろうか。
そうした悩みを抱えるのはなにも日本人だけではない。調査によると、会話が苦手な人の数は世界中で増加の傾向にあり、現代では若年成人の50%以上が「慢性的な人見知り」に該当しているという。人とのつながりが希薄化している世代において、半数以上もの人が「コミュ障」を自称しているというのは、何とも世知辛い話ではないだろうか。
ところで、「コミュ力がある人」とはどんな人だろうか。恐らく、ほとんどの人は「初対面の人相手でも積極的に話にいける人」「いつも明るく社交的な人」を想像すると思う。いわゆる「陽キャ」である。
だが、本書『最強のコミュ力のつくりかた』は、コミュ力とはそのようなものではないと定義する。「コミュ力とは人としての“魅力”のことであり、あなたにコミュ力が無い理由は、自分の内面が未熟であるから」だというのだ。話し方も、積極性も、外見も関係ないのである。
なるほど確かに、人徳者のもとには自然と人が集まってくる。しかし、世間一般に考えられている好かれるためのメソッド――しゃべり方やボディランゲージ、見た目を整えるといったことは、コミュニケーションに影響を与えないのだろうか?
本書では、こうした会話術等については、効果はあるものの限定的であり、それよりも「誠実か」「感情が成熟しているか」「性格が良いか」といった内面の要素のほうがはるかに重要であると述べている。
例えば2つ目の「感情が成熟しているか」について。モントリオール大学の研究で、「私はコミュニケーションが苦手だ」と考える人の大半が、実はすでに十分な社交スキルを備えていることが分かっている。
大学の研究チームは、過去のコミュニケーション実験を100以上も精査し、「会話が苦手な人は社交スキルがないのか?」について調べた。その結果、口下手を自認する人たちが、実際に社交スキルが低いことを示す証拠は得られなかった。「話が得意だと思っている人」と「話が苦手だと思っている人」を比べても、社交スキルの差は見られなかったのだ。どれだけ自分では会話が下手だと信じていても、本当は技術的に問題がない人がほとんどなのである。
この実験後、感情のコントロールのトレーニングを2~4週間続けた被験者は、コミュニケーションの指導を受けなくても、対人関係や社交スキルの向上が見られた。感情のコントロール能力が上がったおかげで、難しい会話のあいだも平静を保てるようになったのが原因である。
いくら話術が巧みであっても、嫌いな人間のメッセージは誰も聞きたくならない。また、ルックスが良かったとしても、その効果が続くのはせいぜい3か月だけで、その後は内面による評価が外見による評価を覆すという。
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本書には「魅力度テスト」が付属している。私もやってみたところ、「嘘が多い」という結果だった。素の自分を出すのが苦手だからだ。
世の人(特に男性)は、だいたいここがウィークポイントだと思う。他人に気遣いをしすぎるか、相手に好かれたい気持ちが強すぎるせいで、本心を隠す。または失敗やメンタルの不調などのネガティブな問題を人に明かそうとせず、素知らぬ顔で振る舞い続ける。この「自分の弱みを隠す」というのが「嘘」の部分にほかならず、感情を吐露しづらい男性は往々にしてコミュ力に問題を抱えていると言える。
「外交的」「陽気」と聞くと、生まれつきの性格だから変えられないような気がしてくるが、「礼儀正しさ」「誠実さ」と聞くと、自分の態度次第で変われる気がしてくる。もちろん会話術と違って小手先のテクニックで何とかなるものではないが、一歩一歩自分を改善する努力、と考えればいくぶん前向きな気持ちで取り組んでいけそうだ。
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【まとめ】
0 まえがき
あなたの言葉が伝わらないのは、あなたに人としての魅力が欠けているからである。
ニューサウスウェールズ大学の研究チームは、殺人事件の模擬裁判を開き、実験の参加者に2つの指示を出した。
①事件の調査官に対して、どれだけの魅力を感じたかを採点する
②どの調査官が提示した証拠に説得力を感じたかを採点する
すると、魅力のある調査官が提出した証拠ほど「説得力が高い」と判断された。個人の魅力は、「メッセージの説得力」における分散の80%を占めていた。
クレアモント大学の総説では、社会心理学やマーケティングのデータから数百におよぶ研究を調べ、次の結論を出している。
「かつては、メッセージを広く伝えるためには、『専門知識』および『信頼性』の2つを備える必要があるとされた。しかし、近年における複数の研究により、メッセージの影響力に関連するより大きな要素が特定されている。それは、“好感度”だ」
1 「魅力」の正体
○伝えたい内容を、よどみなく語る話術
○話したいことをわかりやすく伝えられる論理性
○誰からもほめられるような優れたルックス
○情熱的で自信に満ちたボディランゲージ
これらは、残念ながらコミュニケーションにとって重要ではない。
私たちのほとんどは、コミュニケーションに悩んだ際に、「まずは話し方を変えよう」「なるべく笑顔を見せるように努めよう」「相手をミラーリングしよう」と考えるが、全て魅力がベースにされた行動でなければ意味がない。
実は、「ルックスの重視」もさほど効果はない。見た目が良い人物が周囲から好かれやすいのは間違いなく、外見の良い人物が発したメッセージほど信じやすい現象は報告されているが、ルックスの効果は長くは続かない。ルックスが絶大な影響を持つのは最初だけで、時間をかけてお互いを知るにつれて、魅力的な人物の対象が変わっていく。心理学者のポール・イーストウィックは、「よく言われるように、時間をかけて相手を知るだけで、その人はより魅力的になる。そこで影響を持つのは見た目ではなく、各人の『ユニークな個性』こそが、長期にわたって魅力を定義する」と指摘する。
では、「魅力の正体」とはなんなのか?
それは、「この人は私の生存に役立つ」という査定結果である。
人類の祖先は、生物としての弱さを克服すべく、進化の過程で「協力」という手法を発明した。そのおかげで生存率のアップに成功したが、同時に裏切りの問題が起きたため、今度は他者の信頼性を見抜く能力を身につけ、仲間と協力しあうシステムの維持を試みた。
これは現代においても変わらず、初対面の相手とコミュニケーションを始めると、私たちの脳はすぐに査定システムを起動させ、「この人物と協力しあうべきか?」の判断をスタートする。その査定が「NO」だったときは、脳は「なんとなく不快だ」とのシグナルを発し、相手からあなたを引き離そうとする。逆に「YES」の判定が出た場合は、脳は「好感が持てる」との感覚をあなたに向けて送り、相手との関係を前に進めるように促す。要するに私たちは、「この人は裏切らない」「私を助けてくれそうだ」と本能が判断した相手を、「魅力がある人物」として感知しているのだ。
となれば、その査定システムが使う評価のポイントさえわかれば、誰もが自分の魅力を高めることができる。
評価項目は多岐にわたるが、主に次の3項目に当てはまる人が「魅力が無い」と評価されている。
①嘘が多い
②感情が幼い
③性格が悪い
2 嘘が多い
嘘ばかりつく人間が嫌われるのは、あらためて強調するまでもない。ただし、ここで言う嘘とは意図的に誰かを裏切る行為だけではなく、「実際にはよく思ってないのに、相手の服装や容姿をほめる」「相手の反応ばかりが気になって、話したい話題を切り出せない」「本当は無関心なのに、友人の悩みに共感したふりをする」なども含む。自分の価値観、欲求、感情に反した行動もまた「嘘」とみなされるのだ。
このような状態は、心理学の世界で「真正性が低い」と呼ばれ、おおよそ次のように定義される。
「個人的または社会的な結果を気にし、内面で感じたように外面で振る舞えないこと」
真正性が低い人の多くは、他人に気遣いをしすぎるか、相手に好かれたい気持ちが強すぎるせいで、本心を隠す。または失敗やメンタルの不調などのネガティブな問題を人に明かそうとせず、素知らぬ顔で振る舞い続ける。真正性が高い人は、姿勢がブレず、感情と思考に透明性があり、長期的な視野で動く。
相手の興味や期待に応える戦略を取らず、自分を偽らない人ほど他者からの評価が高まるのだ。
●改善方法
・メタトーク…会話の中で頭に浮かんだ思考や感情、またはコミュニケーションの流れそのものを言葉で表現する手法のこと。①今私たちは、どのようにコミュニケーションを進めているのか?②このコミュニケーションで、私の中にどのような心の動きが起きたのか?と相手に伝える。
・弱みの情報開示…私たちは、恥や欠点を隠さない人には好印象を抱くのに、自分が弱みをさらけ出す番になると「嫌われてしまう」と考える傾向がある。①相手を選び、②さらけ出す恥ずかしいことを見つけ、③相談の形で開示する。相手がいなければ、日記に書くのも可。
・境界線プランニング…不快な相手と適切なコミュニケーションを取るために行うワーク。自分を殺さないため、コミュニケーションにおける限界ラインを引いておくことである。①ストレス状況(ex:あの人の態度にはがまんできない)のリストアップ、②境界線を越えられたときの感情的な反応を考える、③境界線を越えられたとき、気持ちを落ち着かせるにはどうすればいいか?を考える、④相手に言うべき言葉を考える。
・ニーズ目録…自分は何を求めているかを探る。ニーズとは、私たちが心の奥に抱く、人間としての根本的な欲求のこと。「金が欲しい」「昇進したい」「家を買いたい」といった表面的なものではなく、「他者からの理解」「友人からの共感」「社会とのつながり」のように、より深いところにある欲求を意味する。①ニーズ目録を見て、②コミュニケーションのなかで嫌な気持ちになったときネガティブな感情を言語化し、③ニーズ目録の内容と照らし合わせ、④このニーズを満たすにはどうすればいいか?を考える。
3 感情が幼い
「感情が幼い」とは、感情のコントロールが苦手で情緒が安定しづらく、周囲から「緊張しがち」「空気を読まない」などと思われやすいタイプのこと。
感情コントロールの重要性は過去に何度も示されており、たとえばウォータールー大学の実験では、約1600人を集め、対人トラブルに弱い人の特徴を調べたところ、感情の制御が苦手な人ほど相手を思いやった発言ができず、問題を解決できない傾向が確認された。
●改善方法
・不快プランニング…あなたの苦手な人物や交流の場にあえて飛び込むことで、心を慣らしていく方法。
大切なのは「計画的」であること。例えばスピーチが苦手なら、家族の前でスピーチの原稿を朗読したり、仲が良い同僚の前で練習したりするなど、段階を踏むことが大切。
①苦手なコミュニケーションのピックアップ、②目標の特定、③アクションを考える、④そのアクションの不快指数を評価する、⑤不快指数が3点程度のアクションから取りかかり、身体を慣らす。
・構造チャレンジ…即興の会話力を上げるための構造をあらかじめ習得しておく。
・不安の再評価…誰かと会話をする前に不安や緊張を感じたら、次のフレーズを唱える。
①私はこの人と会話ができることに、とても興奮している。
②この会話でどんな新しいことを学べるのか、楽しみで仕方ない。
③いったいどんな新鮮な会話になるのかと思うと、待ちきれない。
・影響力プライミング…コミュニケーションの不安や緊張を改善したいときに効果を発揮する。①あなたが他人に対して影響力を持ったときの出来事の想起、②その影響力の詳述。
4 性格が悪い
「性格が悪い」人間が周囲から嫌われるのは当たり前だが、具体的には、周囲に「傲慢」「攻撃的」「お節介」などの印象を与え、そのせいで良いコミュニケーションができないタイプのことである。
こういった特性は、専門的には「人格性が低い」と呼ばれ、「敵対的で、信頼感がなく、悪意があるように見える状態」のように定義される。
○他人の話の途中で割って入る
○相手の言葉をすぐに否定する
○求められてもいないのにアドバイスをする
○批判へ敏感に反応し、相手を攻撃する
○自分は自慢するが、他者の自慢は許さない
性格が悪いことが厄介なのは、この問題を抱えた人の大半は「私はトークがうまい」「私は他人よりも魅力的だ」と考えてしまうことだ。性格が悪い人ほど聞き手の気持ちを無視して自分の主張だけをする能力が上がり、自信に満ちた話し方をするのが原因である。
実際、威圧的な話し方をする人たちは、最初だけは周囲から「有能だ」と思われたものの、3週間を過ぎた頃から「信頼できない人だ」と判断される、という研究がある。逆に、良い結果を残すリーダーは謙虚なコミュニケーションを行うタイプが多かった。
●改善方法
・人格性の構文…自分が伝えたいメッセージを、次の手順で組み立てる。
①事実の提示「あなたが【相手の行動】をすると」
②感情の表現「私は【自分の感情】だと感じます」
③要求の提案「そのため、私は【相手に求める行動】をしてほしいです」
・肯定ゴシップ…1日に最低1分だけ、その場にいない人の「良い話」を誰かにする。自分が話し終わったら、相手にも「誰かの良い話はない?」と尋ねる。
5 カリスマ性の作り方
心理学におけるカリスマとは、
・誰にでも親切で、あらゆる人を良い気分にさせられる。
・ネガティブな感情を使って、人を操作しようとはしない
人のこと。魅力の土台が十分身についた人は、さらなるコミュニケーションの技術を習得すれば、コミュニケーションの達人になれる。ただし、前述の3つのスキルが身についていない人がやったとしてもペテン師のような印象を持たれるため逆効果。かならず基礎能力を磨いてからにすること。
●カリスマ性を身につける方法
ディープトーク…ディープトークは社会心理学の言葉で、雑談では交わさないような深みのあるテーマを扱った会話のことである。たとえば、「人生の意味」「死生観」「感情的な体験」などが典型的なテーマ。
初対面のコミュニケーションでは、ほとんどの人は趣味や仕事の話題で親交を深めつつ、少しずつ深いテーマに移るだろう。まだよく知らない相手に、いきなり重いテーマを切り出す人は少ないはずだ。しかし、カリスマは違う。近年の研究によれば、カリスマ性が高い人ほど「ディープトーク」の量が多く、初対面の相手ともすぐに深いテーマで会話をはじめ、それによって自己の魅力を高めていたことが分かった。