野尻抱介のレビュー一覧

  • 太陽の簒奪者

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    太陽系規模の危機を扱いながら、「未知とどう向き合うか」を描くSFとして非常に密度が高かった。導入の時点でスケールの大きさに引き込まれ、ヴァルカン計画やビルダーをめぐる調査・対立・交渉の流れが、緊張感を切らさず続いていく。科学的なアイデアが物語の推進力になっていて、読み味はとてもスリリング。
    また、ラウルのような存在が終盤で効いてくる構成も印象的で、単なる対決では終わらない着地に作品の個性を感じた。人類側の論理と、ビルダー側の論理がすれ違いながら接続されていく過程が面白く、読み終えたあともしばらく設定を考え続けてしまった。ハードSFのスケール感、政治的な駆け引き、そしてファーストコンタクトものの不気味さと高揚感を一度に味わえる作品だった。

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    2026年05月19日
  • 太陽の簒奪者

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    地球外生命体が水星に設置した基地により太陽光線を奪われ、人類の生存を脅かされる。
    沈黙のフライバイの作者による。
    科学的描写が非常に緻密で面白い。東京沈没など世界危機の読み物が好き。地球外生命体との更新が学者がたまたま作っていた人工知能によって行われるのは偶然すぎておかしい。

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    2026年05月17日
  • 太陽の簒奪者

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    2006年、水星から出現した物質により、太陽にリングが形成された。このリングにより、日照量が激減し人類は絶滅の危機に瀕する。主人公 白石亜紀は、異星文明へのあこがれと人類救済のため宇宙艦に乗り、リングの破壊ミッションに挑む。

    太陽の簒奪者(さんだつしゃ)は2002年4月に刊行されたハードSF小説です。刊行は20年以上前なのですが、そのプロットのため非常に興味深く読めました。近年、話題になっているSF作品のアレ※1とアレ※2にそっくりじゃーんとなります。分量もちょうどよく、非常に楽しめます。

    まず「なぜリングが作られたのか?」というホワイ・ダニットが楽しめます。そして徐々に「なぜ」が解決されると、さらなる謎がやってきます。風呂敷の広げ方も程よい大きさになっているので、安心できます。風呂敷広げるだけってねー。ストーリーテリングが非常に上手く、心地よく感じました。

    ここ最近に出たアレ※1とアレ※2を読んだ方は、本書を読むと楽しいと思います。こんな素晴らしい作品が20年前に日本から出てたなんて。




    ~~以下に注釈について書きます。でもみんな分かるよね?~~


    ※1 プロジェクト・ヘイル・メアリー。これは本書のタイトルからすぐに分かる。
    ※2 三体。本書の後半は長時間かけてやってくる異星文明とのコンタクトの話。

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    2025年10月12日
  • 太陽の簒奪者

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    「トップを狙え!」が見たくなった。宇宙スケールでランデブーや攻撃に時間がかかったりする展開がたまらない。Terra Invictaというゲームでも描かれる、異星人が来るまでに地球人の意思統一で悶着するという流れも好きです。

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    2024年04月16日
  • 沈黙のフライバイ

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    宇宙開発の未来を描きつつも、重すぎず軽すぎず、絶妙なバランスで読みやすかった。火星表土の液状化とか、小惑星の地形の謎とか、実際に科学的な裏付けがあるのかは分からないけれど、こういうリアルなSFってすごいワクワクする。こういう堅実な話って最近は少ないような気がするし、すごい面白かった。好き。

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    2023年10月07日
  • ふわふわの泉

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    化学好きの女子高生が新物質を開発して事業を展開していき、スケールがどんどん大きくなっていく。SFらしくて面白い。
    ふわふわで宇宙に出てみたいものだ。

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    2023年06月25日
  • 南極点のピアピア動画

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    ネタバレ

     ボーカロイドという非現実的ながら実在するガジェットにより「初音ミク的存在が現実にいる」という空想の世界観が、現実に近いように錯覚してしまう。ある意味、現実に絶望してしまう作品。
     高次知性体との邂逅の周辺にちりばめられた恋愛エピソードは、有川浩「空の中」と似た感覚を味わった。自動化され増殖する工場、宇宙への風に乗る恋人達、特殊な環境下でのクモが生み出す予想外の構造物、潜水艦を使った鯨との追跡コミュニケーション研究、一つ一つにボーカロイド「小隅レイ」のイメージが生かされ、「あーやきゅあ」に行き着く世界は、出来すぎなくらいのユートピアである。

    ~再読~
    「外見の同一性保持」は疑心暗鬼を生まないための機能と思ってたが、可塑性があると絶対悪用されますね。あっさり自壊する性質のおかげで「肉の壁」にも「デコイ兵士」にも出来ない。もし他の有名キャラだったらと考えても『宗教・政治的バックボーンを持たず、知性を感じさせ、暴力性が低く、基本能力が歌唱のみ』って辺りが絶妙。(仮にドラえもんが選択された場合、四次元ポケットが機能しないので少なからず偽物感が生まれる) そういう意味でもやはりマジ天使だった。
    ●「ハジメテノオト」の所にetmlタグが入ってる……。

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    2023年01月11日
  • 太陽の簒奪者

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    もう、この手の本は圧倒的に好き。
    幼少のころから本好きではあったが、社会人の一時期は読書の習慣から離れていた。その後、ポツポツと復活したときに手にした一冊が、野尻さんの「沈黙のフライバイ」。「なんて面白い短編集なんだ!!」と感動して、親や友人に貸してみたが、そこまでの反響は得られず。しばらくして、「自分はSFというジャンルが人よりかなり好きなんだ(思い返せばガンダムとかも超好きだし)。」と自覚するに至る。
    前置きが長くなったが、そんなSFとの出会いの一冊をプレゼントしてくれた野尻さんの代表作。いつか読みたいと思いながらはや15年ぐらい?ついに手を取ったが、やっぱり面白かった。
    テンポよく進むストーリーの中にちりばめられたいくつもの科学トピックにページを繰る手がとまらなかった。最後、「ん、この宇宙人は結局何だったんだ」というところはやや消化不良であったことは否めないが、それはそれとして、人類や宇宙探索への未来に対する思いが否応なく掻き立てられた。

    幸い、老衰まで生きることができれば、あと30年から40年程度の余生か。
    生きているうちに地球外の知的生命体に合うのはよほどの幸運がない限り困難なのかもしれないが、月や火星への入植、太陽系における他の生物の発見ぐらいまでは見届けたいな。
    そんなことをみんなが夢見れるようになれば、世界だってもっと平和に、もっと住みやすくなるとのにね。

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    2021年04月09日
  • 南極点のピアピア動画

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    ニコニコ動画とボーカロイドを下地にした、壮大にして飛躍的なSF。
    民間ロケット、軌道エレベーター、潜水艦でのクジラとの対話、そして星間文明との交流へとスケールがどんどん広がっていくのが爽快で心地良い。

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    2021年02月06日
  • 私と月につきあって

    購入済み

    3巻読了

    この巻からアニメとは関係なく進む話。
    今から20年以上前のストーリーとは言え、中々に秀逸。
    ある程度、トンデモ話が組み込まれてるのは仕方無いとして、
    SF物としては夢のある内容で面白い。
    さて、次巻が最終巻。
    タイトルは「ロケットガール」で、大きなフォントが使われてるのはサブタイトルですので。

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    2021年01月07日
  • 天使は結果オーライ

    購入済み

    2巻読了

    とりあえず、ここまでがアニメ化された内容。
    サブタイトルをメインで出してるので解り難いけど、本作がシリーズ第2巻。
    紛らわしい事をしてると云うか、作品のタイトルすら見てもいなければ分類もまともに出来ないのがBookLiveの悪いとこ。
    作品が良くても、これでは作者にも読者にも失礼でしかない。

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    2021年01月06日
  • 女子高生、リフトオフ!

    購入済み

    ほほぅ

    原作版は原作版で面白い。
    先にロシアのソユーズが出て来ると思わなかったけど、
    それはそれで在りだとも思った。
    書かれた時代が時代だけに仕方無いけど。

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    2021年01月06日
  • 南極点のピアピア動画

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    2012年に尻Pが夢想した「ネット社会の理想の未来」って感じの小説。終始明るく読んでてワクワクする。
    だけど、終盤に実名で津田大介、どう見たってカワンゴの山上会長が出てきてからは「なんで今のネットってこうなっちまったんだろうな」と作中と現実の落差に落胆せざるをえなかった。
    夢がある話だけに、現実の夢のなさが残酷なほど浮き彫りになってしまう。この小説みたいにみんなが科学に理解を持って助け合えば、今からでもこんな社会は目指せるんだろうか。
    現実のクソさのせいで読後感は複雑だが、内容は傑作といって過言じゃないと思う。

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    2020年01月06日
  • 女子高生、リフトオフ!

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    ネタバレ

    これ、20年前の作品の復刊だったのか!後書き読むまで気づかなかった。

    だって、断熱タイルがデブリ衝突で脱落って、シャトルの事故前に書かれたとは思わないでしょ…そして、誰も不幸になっていないよなあと書こうとして気づいた。ミール…

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    2018年11月03日
  • 太陽の簒奪者

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    ああ、王道のファーストコンタクト物って久しぶりに読んだけど、まだまだ新境地があったのね。SFっていいわあ。SFが加賀くん可能性を指摘し、科学が発達したらまたSFも新たな地平が開かれるので、SFも科学も進んで欲しいところ。ところで、沈黙のフライバイ、南極点のピアピア動画 、ふわふわの泉(再刊)、そしてコレと読んだ順番がアレになってしまった(^^;

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    2018年11月04日
  • ふわふわの泉

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    前から読みたいと思っていたが再販されたので購入。これ書いた人が初音ミクと出会ってピアピア動画を描いたってのがよーくわかる。これからも野尻氏にはついていきます!

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    2018年11月04日
  • 南極点のピアピア動画

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    ネタバレ

    SFの一つの到達点。「今の日本」でSFが書かれなければならなかった理由は、この作品が生み出されなければならなかったからなんじゃないかなとか言いたくなるレベル。まあ、アキバ的思考が全宇宙標準というのはある種の人々にとってはデストピア作品にしか捉えられない可能性はあるかw潜水艦まででおわっても、普通にSFなのだが、その先の展開は予想外だったw

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    2022年08月24日
  • ふわふわの泉

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    いいな~こういったマイナス要素に着目しないSFは。
    一人の女子高生(のち社長)が世界の倫理観やら関係なしに自分のしたいようにする。
    星雲賞受賞だそうで。
    中学時代に「星虫」を読んだ時の気持ちを思い出した。

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    2021年06月04日
  • 沈黙のフライバイ

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    今自分が生きている現在。それと地続きになっているかのような空想。そこの境界線がふわっとしているSFってたまらないです。「轍の先にあるもの」がまさにそれ。たぶん、作者自身のわくわくが止まらなくて、これ書いたんだと思う。

    いや、フィクションだと気づくときは、早々に訪れるんだけどもそこまでがね。

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    2017年09月21日
  • 太陽の簒奪者

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    ネタバレ

    西暦2006年、太陽面を通過する水星から謎の細長い物体が突き出ているのが観測される。それは、未知の知性体(?)が水星上に構築したマスドライバーから吹き上げる巨大な噴泉だった。水星を原材料に宇宙空間に吹き上げられた物質はやがて太陽の周囲を取り囲む巨大なリングを形成し、地球は日照量が激減したために文明崩壊の危機に陥る。
    2006年の水星太陽面通過を正に観測していた天文学好きの女子高生・白石亜紀は、リング研究の第一人者として成長し、国連宇宙防衛軍が建造した宇宙船のクルーの一員としてリング破壊計画に参加することになる。しかし、亜紀が真に望んでいるのは、リングを建造した未知の存在とのコンタクトだった。地球人類の存続と未知の存在への憧れとの狭間で揺れながら、様々な困難に直面する亜紀がリングで発見した真実とは?そして、リングを建造した存在の思惑とは?

    直球ど真ん中、ファースト・コンタクトをテーマとしたハードSF。いかにもハードSF的な理系の描写も多く見られますが、ロジカルなところが多少わからなくても読み進めるには問題ありません。スピーディでサスペンスフルなストーリー展開にぐいぐい引っ張られて、あっという間にラストまで引き込まれます。

    【以下、ネタバレ注意!】
    タイトルから推し量って、太陽を取り巻くリングを破壊することがこの物語の最終目的なのかな、と思って読み進めたんですが、それは通過点に過ぎませんでした。
    メインのストーリーはその後、リングの目的が「太陽系に向かってレーザー航法で飛んでくる異星人の大型宇宙船を減速させるための装置」であることが判明してから、異星人とどう対峙するかを巡って混乱紛糾する地球を舞台に繰り広げられます。リング破壊の立役者としてノーベル平和賞を受賞しすっかり大物となっている亜紀は、かねてからの夢であった異星人とのコンタクトを実現させるために「リングを日照を遮らない角度で再建して異星人を友好的に迎え入れる」という提案をしますが、異星人の接近に恐怖を抱く多数派に遮られ、次第に追いつめられて行きます。そんな中、ついに異星人の船と思われる飛行体が観測されます。
    このとき、異星人の船がレーザー航法ではなく、核パルス推進航法を採っていることが判明します。その意味するところがわかったとき、鴨は鳥肌が立ちました。このサスペンスフルな感動は、ハードSFならではですね!
    ハードSFならではの、理論に根ざしたスケールの大きいビジュアルも見所の一つ。太陽を取り巻くほどの大きさでありながら、光の圧力によって太陽の重力と均衡するほど薄く柔軟なリングの圧倒的な描写。実利に徹底化して建造されたため無骨な外観でありながら、不思議と魅力的な宇宙船「ファランクス」。映像化したら最高にカッコいいだろうなと思わせる、「絵になる」描写がてんこもりです。

    ・・・と、ハードSFの側面から語ってみましたが、鴨が本作品で一番魅力的に感じたのは、主人公・亜紀の人物描写。
    確かに、他の文芸ジャンルに比べたら人物の描き方はあっさりしています。内面の感情を直接に描写することはほとんどありませんし、亜紀自身がそういう性格のキャラクターです。
    しかし、そんな淡白な筆致の行間からでも十分ににじみ出る、「地球人類の一員としての自分」と「異星人と友好関係を築きたい自分」との間で引き裂かれそうになり苦悶する亜紀の、魂の相克。彼女の願いは、結局叶わずに終わります。それでも前を向こうと決意する亜紀の姿と、更にその先を静かに描くラストシーン。この作品は、白石亜紀という一人の科学者の一代記でもあります。「人間味が感じられない」と評されることの多いハードSFというジャンルにあって、なかなか異色な作品ではないでしょうか。

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    2016年09月22日