あらすじ
アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する――静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
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Posted by ブクログ
宇宙開発の未来を描きつつも、重すぎず軽すぎず、絶妙なバランスで読みやすかった。火星表土の液状化とか、小惑星の地形の謎とか、実際に科学的な裏付けがあるのかは分からないけれど、こういうリアルなSFってすごいワクワクする。こういう堅実な話って最近は少ないような気がするし、すごい面白かった。好き。
Posted by ブクログ
今自分が生きている現在。それと地続きになっているかのような空想。そこの境界線がふわっとしているSFってたまらないです。「轍の先にあるもの」がまさにそれ。たぶん、作者自身のわくわくが止まらなくて、これ書いたんだと思う。
いや、フィクションだと気づくときは、早々に訪れるんだけどもそこまでがね。
Posted by ブクログ
これぞ本当のSFという気がした。
伊藤計劃さんのような淡々とした作風も好き。
この中で一番好きなのが「轍の先にあるもの」。
フィリップ・K・ディックの「シビュラの目」に近い作品。
主人公にとっては偶然見つけた轍のようなものが一生を決めたといっても過言ではないと思った。
彼が作家として活躍しても、轍のようなものに対する情熱は衰えず、彼にとっては人生と轍のようなものはイコールで結んでもいいようなものなのではないのか。
私にとってはそれが本に当たるのか?
「自然は容易に正体を明かさないし、回答は新たな問いを添えるものだ。この峠を越せば、きっと新たな峠が現れる。あの小さな轍の先にあるもの――それは無限の深淵だ。」
という考え方は、ある意味正しいような気がしてきた。
私たち(黄色星人=人類)がおしゃべり好きというのには何だか納得した。
何かあったらすぐにTwitterにあげたり、何もなくてもTwitterに書き込んだり、私たちは無言とか何も情報がないことに耐えられないのではないのかと思った。
生命体のいる星があると分かれば、宗教を作ったり、政府そのものも軌道上に巨大なネオンサインを掲げたり、人類の血塗られた歴史をどう伝えるかで悩んだり…。
本当に火星に移住できたら、別に帰ってこなくてもいいのではないかと考えさせられたのは「片道切符」から。
確かに二度と行く機会はないし、これで火星行きプロジェクトは最後になるんだから(←作中描写より)、子供と永久に離れ離れになろうとも永住したいと思う気持ちはわかる。
だからと言って、爆弾犯の動機としてはまずいのではないかと思うのだが…。
最後のオチは、やっぱり人間ってこんな感じだよね、それは地球でも稼いでも変わらないよね、と謎の安心があった。
「ゆりかごから墓場まで」この話は、時代も環境も異なる三人の主観で語られる。
一人目の養殖エビ業を営むタイ人男性の発想はすごいと思った。
彼本当は頭がいいのではないだろうか。
企業ができる友人を持っているだけでも、運が良かったと思う。
二人目の脱サラした日本人男性は確かに当初の目的の使われ方でスーツを使っていると思う。
でも、確かに決定的なことを忘れていたと思う。
三人目の火星に移住したインド人男性のエピソードが一番好き。
まさかタイ人男性の思い付きが火星移住にまで発展するとは思わなかった。
発想が変えるといえば「大風呂敷と蜘蛛の糸」もそれに当たると思う。
だからと言って生身で宇宙は危険だと思うのだが…。
それから、「南極点のピアピア動画」での蜘蛛の巣のエピソードとは関係がない。
最近、人工知能が小説を書いたり、囲碁に勝ったりと、SFの世界がだんだん現実になっていくような気がしている。
「2045年問題」も「2030年問題」に変わったりして…。
私の就職先は何になるのだろうか?まさか、就職氷河期が来てニートとかにならないだろうか。
でも、政府の手厚い支援のおかげで栗本薫さんの「レダ」みたいな生活ができるようになるのか…。
と、ふと考えてみたり。
ちなみに、イギリスの福祉スローガンだった、「ゆりかごから墓場まで」は英語だと「cradle to grave」らしいが、何かものすごいかっこいい。
↑ヘタリア知識で申し訳ないが。
長文駄文失礼しました。
Posted by ブクログ
日本SF大会米魂の分科会「SF小説の文章技法」で取り上げられた小説『大風呂敷と蜘蛛の糸』が収録された短編集。表題作、大風呂敷、どれも面白かった。
野尻さんの文章は本当に巧い。難しいのに、読みやすい。とても淡々としていて、するする物語が進むが、時として思わず涙が出てしまうほどに心を揺さぶられる。冗長なだけが文章ではないということを強く考えさせられる。
個人的には『轍の先にあるもの』という短編が強く心に残っている。
Posted by ブクログ
―――アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、
JAXAの野嶋と弥生は異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する―静か
なるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女
子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を
収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
初めて手を出した野尻抱介の宇宙SF短篇集。
端的に言って、捨て作品なしの傑作。
収録されている5篇のうち、古いものは15年前に書かれているにも関わらず、そ
のことを全く感じさせない。どころか、未来に向かう光のようなものを感じられる。
描かれているものを理解するために基礎的な地学の知識はいるにしても、ここま
で爽やかに宇宙へのロマンを謳ったSFを俺は知らない。
どの短篇も甲乙つけがたいけれど、「大風呂敷と蜘蛛の糸」が一番掴みやすいス
ケールから始まっていて想像が広がったかな。
「できっこないですか?」
これが爆弾になった。
Posted by ブクログ
野尻 抱介 『沈黙のフライバイ』
(2007年2月・早川文庫)
「沈黙のフライバイ」
十光年離れた赤色矮星から送られてきた無数の探査機群が太陽系を通過するイベントを描く。
探査機を操る電波を解析し「赤い小人」の生態や彼らが住む星の環境を推測する場面に胸が踊る。
最後の1ページには夢が詰まっている。
「轍の先にあるもの」
2001年に小惑星探査機から送られてきた画像に触発されて書かれた作品。
実際に生まれた疑問にフィクションをつなげて20年後の解決に導く。
作者なりの解答には説得力あり。
「片道切符」
有人火星飛行計画の宇宙船の飛行士である2組の夫婦の話。
地球から打ち上げられた後、一緒に火星まで持っていくはずの帰還船が爆破される。
片道切符しかない状態でさぁどうする?って話。
宇宙旅行中の性行為に言及した文章を初めて読んだ。
映画でも無重力下では見たことないなぁ。
「ゆりかごから墓場まで」
個々が一つの閉鎖生態系を構成するC2Gスーツ。
太陽光から電力さえ得れば完全自給自足ができる寸法である。
その発想の発端からスーツの進化を描くが、最後には太陽系の生命の起源に目が向く。
C2Gスーツ、流行らない、と思う。
「大風呂敷と蜘蛛の糸」
女子大生の広げた大風呂敷は、ホントの大風呂敷だった、って話。
でかいパラグライダーで高度80キロの中間圏界面まで行ってしまおう、という計画。
この話も最後のオチが上手い。主人公が女子大生の、超前向きなハードSF。
この作品集から伝わってくるのは、野尻抱介氏の、宇宙への果てしない憧憬と、来るべき未来への確信である。
野尻さんが見据える未来は、まさに現実化するべくして、待っていてくれているのだろう。
そう思わざるをえない作品群であった。
90点(100点満点)。
Posted by ブクログ
宇宙をテーマにした5編の短編集。
タイトルになっている「沈黙のフライバイ」はかなり好き。ファーストコンタクトモノでありながら、宇宙人は出てこない。彼らが送り込んだ探査衛星とのコンタクト。実際に発表されている研究内容を元にしているって話だから、実際あと10年、20年もすれば実現するんじゃないかしら?と思うと胸が熱くなる。
作中で探査衛星が送ってきていた画像に写っている様々な人工的と思しきオブジェクトの事が気になる。
あと、最後の1編(書き下ろしだったかしら)「大風呂敷と蜘蛛の糸」は奇抜なアイディアながらも、気持ちいいストーリー。主人公の女の子の声がなぜか脳内で坂本真綾だったw なんか、台詞の言い回しとかがボクの知っている限りの坂本真綾の声にぴったりあってしまったのだよw
Posted by ブクログ
導入部が日常的すぎて、自分でも気がつかないうちに作品世界に同調しているとでも言えばいいか。やってることはマニアックであるが、難しさを微塵も感じさせず、少しでも心得がある者であるならば、いつの間にかシンクロしている。解説者の言葉を借りれば、「最小の形容で最大のイメージを読者に与える」「あまりに達者なので気がつきにくいが、極めて喚起力の高い文体」となる。
どの作品も甲乙つけがたい。しかし、敢えてNo.1を選ぶとすれば「大風呂敷と蜘蛛の糸」読んでいて、おれも仲間に入れてくれ!と叫びそうになった。
Posted by ブクログ
すばらしい。宇宙のように静かだが、正確で重い。そして、ロマンがたっぷりと詰まっている。驚きの傑作だと思う。いやぁ、いい作者に巡り合えてよかった。
アイデアもさることながら、異星人とのコンタクトを切に願う思いがひしひしと伝わってくる「沈黙のフライバイ」、知りたいという知的好奇心がなによりも重いと思う「轍の先にあるもの」、わかる、その気持ちわかると唸ってしまう「片道切符」、そのスーツよりも生命体の発見、その感動とはるかに大きな時間的スケール感が最高の「ゆりかごから墓場まで」、少し乗り切れないものの楽しめる「大風呂敷と蜘蛛の糸」 の短編集だ。
表題作ももちろんよかったのだが、「ゆりかごから墓場まで」も負けず劣らず最高だったなぁ。
Posted by ブクログ
非常に面白く読みました。
かなりマニアックに描かれていました。
ラストで想像を膨らませつつ、ワクワクする感じが忘れられません。 素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
『退廃した未来』ではなく、『少し不思議』な世界でもなく。
テクノロジーが発達した先に実現するのではないかと思わせる、正しく『サイエンス・フィクション』な短編集です。
宇宙への憧憬、未知への挑戦、子供のような好奇心に溢れた5編の物語。
にわか宇宙熱な今時の気分にぴったりな一冊でした。
Posted by ブクログ
ハードSF短編集。どれも秀逸。「片道切符」「大風呂敷と蜘蛛の糸」がお気に入り。宇宙大好き!という下敷きあってこその内容の割に、解説にもあったように熱くなりすぎず、あくまで理性的な展開と、主人公の冷静なキャラクターが(大体どの作品の主人公にも共通している)説得力がありました。他の作品も読みます。
Posted by ブクログ
普段SFをほとんど読まないけれど、もっと早く読んでおくんだった・・・!こんなおもしろい本を放置していたなんて。特に、「沈黙のフライバイ」と「大風呂敷と蜘蛛の糸」が好きだった。内容は壮大なスケールなのに、自然とノンフィクションを読んでいるような感覚。地球の周りに広がっている宇宙の存在を感じずにはいられないし、今自分が暮らしている範囲とか悩みなんて本当にちっちゃいもんだと改めて思う。それぞれの登場人物の、探究心と行動力と熱意は、自分も頑張ろう!と背中を押してくれた感じ。中間層から望む景色って、どんなものなのだろう。
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する―静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
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野尻宇宙SFの真骨頂。短編5編。
「沈黙のフライバイ」はハードというか、実にリアルなファーストコンタクトもの。『太陽の簒奪者』の前半を思わせる、どうしようもなく彼我の文明差の大きいファーストコンタクトもの。
「轍の先にあるもの」 これまたリアルというか、まるで私小説のようなSF。作者本人も登場?
「片道切符」 火星入植について、ちょっとななめ上から観た小説。続きが読みたくなるw
「ゆりかごから墓場まで」 タイの湖から火星まで。”あるく閉鎖環境”を徹底的に駆使したあたらしい冒険譚。
「大風呂敷と蜘蛛の糸」 ふわふわの泉の泉を連想させる、明るく度胸の据わった女子大学生のユニーク過ぎる冒険。気球を使って宇宙に行く、という奇想天外なアイデアがどんどん膨らんで現実的になっていく。。。その熱いうねりのドライブ感じ。『ふわふわの泉』のノリが好きな人はきっと気に入ると思う。
Posted by ブクログ
「ピアピア」を読んだ後にこの作品と「太陽の簒奪者」を読み忘れていることに気が付きあわてて購入。
「ピアピア」が萌え要素+SFだったのに比べるとかなりハードSF寄り、でも異星人とのファーストコンタクトと宇宙旅行へのあこがれはきっちり抑えてあってすごく面白い。でも「ピアピア」から来る人にはちょっと厳しいかも。
個人的には作者らしい「大風呂敷と蜘蛛の糸」が好きだけど、「ゆりかごから墓場まで」がかなり衝撃的でした。
Posted by ブクログ
久しぶりのSF。そして短編集。
どれも非常に面白く、また一つのアイデアからストーリーが広がる話が多い。作者もネタを思いついたときはさぞ楽しかったろうと思わせる。
解説で松浦晋也氏が述べているようにハードSFなためか、ところどころ門外漢の宇宙好き(そこまで詳しくは無いので好意をもっている、程度か)である自分には理解しがたい単語が出てきたが、SFの常でもあるし、文脈から読み取れないほどではなかったのでそれほど問題にはならなかった。
文系の人が理系の人の楽しさを覗けてお話も楽しめる、そんな本ではないだろうか。
Posted by ブクログ
少しだけ先の未来や現代の宇宙開発をテーマにしたSF短編が5つ入っています。最後の「大風呂敷と蜘蛛の糸」は、女子大生が宇宙凧で成層圏に行くお話ですが、野尻作品ならではの感じで好きです。?
Posted by ブクログ
もしかすると近い将来にはファンタジーでなくなるかもしれない宇宙関連の短編集5篇。
宇宙関連の開発にも、宇宙飛行士になることもものすごい労力が必要なんだろうけども、
そういった気負いは一切感じることなく気軽に読める作品でした。
【沈黙のフライバイ】
宇宙人との交信を目指していたら、相手も同じことを考えていたようで、向こうからやってきたお話。
【轍の先にあるもの】
エロスという星の写真に写った"砂上にある蛇行した溝"に魅せられた作家が実物をその目で見るまでの話。
実際の白黒写真付き。
ラストの「自家用宇宙船を買うために探検記を書いてベストセラーにする」というのが好き。
【片道切符】
火星探査のための4人の宇宙飛行士が、火星を諦めるか否かを決断するお話。
「いけいけやっちまえ!」
【ゆりかごから墓場まで】
着れば太陽光をもとに循環してそれだけで生きていけるようになる宇宙服の話。
【大風呂敷と蜘蛛の糸】
宇宙に到達するために下駄を履かせる発想を実現する話。
凧を使ってギリギリまで上空まで上がって、そこから打ち上げるという発想が面白かった。
現実には今の所存在しない軽くて丈夫な素材を使っている点がファンタジーなのかな?
Posted by ブクログ
短編集。SF。ハードSF。
難しめの内容で地味な印象も受けたが、読み進めていくと、どの作品にも大きな希望に溢れたビジョンがある。
既読の『南極点のピアピア動画』『ふわふわの泉』も含め、著者の作品の特徴は”明るい未来”か。
特に好きな作品は以下2作品。
「片道切符」火星探査。帰ってくる必要はあるのか、というテーマらしい。解説にある通り、楽観的な決断が清々しい。好き。
「ゆりかごから墓場まで」タイの池で始まり、火星まで。閉鎖生態系をつくるスーツ。終盤はプチ『火星の人』ぽいかも。良作。
Posted by ブクログ
やっぱり表題の「沈黙のフライバイ」が好きかなー。
でも「轍の先にあるもの」のワクワク感もいい。はやぶさの動向に盛り上がって一喜一憂してた頃を思い出しました。
Posted by ブクログ
尻P先生の短編集。
尻P先生の作品の中では地味な方かなぁ、と個人的には思います。
その中でも、「沈黙のフライバイ」「大風呂敷と蜘蛛の糸」は、
実にらしい感じだなぁと思う次第です。
個人的にポイントだと感じるのは「轍の先にあるもの」の導入部。
しれっとMUSES-Cが打ち上げられていますが、2001年の作品です。
Posted by ブクログ
短編5編を収めた短編集です。
個人的には「ゆりかごから墓場まで」が一番楽しめました。宇宙服みたいなスーツの中で全てがまかなわれることで、究極のリサイクルが実現するってことですが、もし出来てもわたしゃご免です。人生つまんなさそうだし。
Posted by ブクログ
ハヤカワJAの40周年フェアから拾ってきた初めての野尻作品。夢とアイデアを科学技術と静かな執念で形にしていく登場人物達。また今度他の本も読んでみるべし。
Posted by ブクログ
野尻さん2作目。
ピアピアからだけど、エンターテイメント性が高いのに、ハードSFだな。解説で、喚起力が高い表現をするって言ったけど、寧ろその終わり方のほうが喚起力高い気がする。
基となった経験+フィクションっているのが、今暮らしている日常と地続きっていうのを感じさせて、「現実的」な夢がある。
Posted by ブクログ
・沈黙のフライバイ
エイリアンは人間の価値観では計れない。「私たち」ならそうするからと、求めるアクションを引き出すための要因が求めたリアクションを引き起こすとは限らない。
印象に残ったのはこの言葉。
「もしかして地球人って、銀河有数のおしゃべりなのかなあ」───pg.49
・轍の先にあるもの
ある探査機のボーナスミッションで得られた小惑星エロスの写真によって、ある作家がこの惑星の虜となる話。
ここに映っているのは小さな部屋ほどの世界なのだ。───pg.58
という一文に感動する。その小さな写真から様々な事実や謎が見出される。
・片道切符
爆破犯は宇宙飛行士だろと思ってたらやっぱりの展開。思い切り良すぎはしないかと思うが、夫婦同士の上長年火星を熱望して来たなら無理もないか。しかし無謀だ。
・ゆりかごから墓場まで
うーん。世知辛い。
一方は安全と人権を究極にまで優先して、一方は開発を何より優先した。どちらが正しいかなんてきっと分からないけれど、本当の開拓者となれるのは後者に違いない。
「こいつらが最初の火星入植者になるな」───pg.201
それでも人類よほど先にシアノバクテリアが到達していた。それでも、人間が良かったという言葉が前向きで良い。
・大風呂敷と蜘蛛の糸
夢があって素敵。
ところどころの、特に沈黙のフライバイにおいてサイエンス部分の説明はどうしても理解しがたかった。知識不足だ。
それでも、宇宙へひたむきに向ける眼差しを胸を夢いっぱいに膨らませて感じることの出来る短編集。
Posted by ブクログ
ハードSF短編集。個々の作品にはリアリティがあり、中にはjaxaやnasaの宇宙に対する取り組みを、作品中に取り入れたものもある。宇宙に対する夢と希望にあふれた一冊。個人的には「大風呂敷と蜘蛛の糸」の話が面白かった。女学生の突拍子も無いアイディアが、あれよあれよと形になっていくのが読んでいて気持ちよかった