宇野重規のレビュー一覧
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民主主義が危機を迎えていると言われている昨今、もう一度民主主義のお勉強を。まず、独裁制や専制と違って、変化することを前提にしている制度であること。だから、内容はどうあれ、変化を恐れてないけない。理性的な判断の前に経験が来ることがあること。頭で理解するより、経験の方を重視して意思決定を行うということだが、SNS時代・web時代で直接的な体験が失われていることを考えると、これは確かに危機かも。それから、コミュニケーションや多少の摩擦から議論が生まれまとまっていくこと。これは隣人が誰だか話からない都内では起こりにくいということを考えると、民主主義が生き残っていくのは、実は地方なのかも。
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保守主義のステレオタイプのイメージはというとネガティヴな物を想起しやすい。例えば過去に固執した態度、異なる意見を聞き捨てる排外主義。また自由な民主主義とは反対の、カリスマに統治を委ねる権威主義もイメージとしてでてくるだろう。
ただ当然前述したように上記のイメージはステレオタイプにすぎない。本書によると本流の保守主義とは、過去から連綿と続く伝統を尊重、そして急進的な変化に距離を置く立場であり、あくまでも漸進的に変化に対応していくという概念であるという。また、保守主義という概念が誕生したイギリスでは、自らが作り上げた立憲主義の伝統を尊重し、それに基づいた自由という概念を保守する。これはステレオタイプの保守主義とは相容れないことであると言えるかもしれない。
本書の3章ではアメリカにおいての保守主義の概念を説明している。それを読むことは現在の政治状況の考察において有意義な参考になるのではと思う。
代表的な一例を上げると、反知性主義という言葉をアメリカの保守主義者は決してネガティブに捉えておらず、その視点からアメリカの保守主義を見ていると、わかりやすいイメージとは異なる面を見ることが出来るかもしれない。反知性主義はエリートに敵意をむけ、その合理主義的なエリートの知性を拒否するというのがその概念の簡単な概略であるが、それは知性に対するルサンチマンから生まれてくるというわけではない。それは『「エリートの言うことがすべて正しいわけではないない。」』という健全な反骨的精神がそこにある。『地位も学歴もないけれど、生活に根ざした健全な判断力をもつ普通な人々こそが、アメリカ社会の根底にある』というアメリカ社会の基礎的な自治を担った政治的知性に感銘を受けた思想家の存在がそれを裏付けしているだろう。
アメリカの草の根の保守主義者がベトナム戦争の泥沼へと導いたケネディやジョンソン(彼をエリートとみなすのは議論があるかもしれないが)といったエリートに対して、彼らの潜在的にもつ政治的な感性から不信を抱くのも当然の帰結と言えるのではないだろうか。
このようなエリートへの不信のひとつの総決算と言えるのがトランプ政権の誕生であり、政権の原動力になっているのは当然と言えるだろう。
一部を引用した簡単な感想であるが、全体として以上のようにステレオタイプな保守主義から抜け出して、専門家の知性の裏付けのある保守主義の考えに多くの人に触れてほしいし、特に保守主義者だと自称する方には自身の信条と照らし合わせるつもりで本書の一読をお勧めする。 -
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今年の衆議院選挙ほど、日本中が選挙に熱くなった機会はなかったのではないだろうか。そんな中でも選挙に行かない若者が話題になっていたが、投票所への足が重くなるのは正直自分たちも同じだった。
今回のケースで言うと、自分を含め「票を入れたい政党/候補者がいない」という人が周りに多かった。だから投票前、生まれて初めて身内(パートナー)と真剣に話し合い、票を投じたのだった。
思えば妙なものだ。
自分が成人になっても、家族は自分たちの票の行方を教えてくれなかった。それは日本の家庭であればどこも同じみたいで、子供が外で喋ることで、相手との関係性が悪くなることを憂慮していたのだろう。
でもいざ子供が成人になって選挙に行こうとしても、周りが口を閉ざしてきたせいで政治が身近なものでなくなっている。その結果、どう判断して良いのか分からなくて選挙から遠ざかっているのではないだろうか。
政治に限らず日本を取り巻く課題を理解していくことで、若年層も自分の頭で政治に参加できる。本書にはそんな想いが込められている。
本書に収まり切らないほど、日本は数多の課題を抱えている。上記の投票率の低下もさることながら、消費税や難民の受け入れ・原発など各方面随所に問題が散らばっている。
しかしどの章も「〇〇について考える」というタイトルで統一されていて、実際何が正解なのかは書かれていない。まぁ正解があるのなら問題提起する必要もないが、(一応ジュニア書なので)答えが用意されていて当たり前の環境下にある子供たちにとっては戸惑う構成かもしれない。
一方で、各国の例や現在話し合われている解決策を踏まえることで判断材料を増やし、子供たち自身で考える癖をつける構成とも言える。今はSNSで色んな人の声が聞ける時代だから、子供たちも何かしら持論を持つようになるのではないだろうか。
自分も実際読み進めていくうちに考えを書き留めていたし、関心を引かせる効果はあると思う。
例えば、「【憲法】について考える」(P 147) 。
憲法って国によっては第二次世界戦後67回も改正されているのに対し、日本はぶっちぎりのゼロである。法律があるってのに、小学生でも覚えられるくらいの短い憲法って何のためにあるのか正直疑問だった。(海外の憲法は長文なのでそのぶん改正の余地も出てくるらしい)
だけど憲法は日本の法律のベースのようなもので、国民にとっては心の拠り所。日本国憲法は戦後アメリカによって草稿されたようなものでもあるから、「今の」日本に合致した内容でなくなってきているのかもと読んでいて感じた。
法律もそうだけど、国民で吟味しながら納得いくかたちで改正に持っていけないだろうか。
「日本は先進国」「完全民主主義」とか謳っていながら、G7の中ではジェンダーギャップ指数が最低、貧困率が最も高い。
他にもなあなあにされている問題が山積みで、「日本ヤベーな」と何度も呟いていた。若い世代にその皺寄せが来るのは何とも不本意だが、無関心でいるのはもっとヤバい。
やっぱり何とかするにはみんなで意識を変えていくしかないんよ。意識を変えれば、その視線の先には絶対投票所があるから。 -
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★目次
はじめに 第1章 「平等化」の趨勢
トクヴィルのアメリカ旅行/銃、印刷、郵便/「未来はすでにここにある」/民主化/平等化の良い面と悪い面/アメリカ自治組織/マルクスの階級闘争/想像力の変容/デカルト的になる/小説→映画→ゲーム/個人主義の孤独
第2章 ポストマンと結社
親愛なる郵便局員/郵便≒インターネット/「集権」と「分権」/福沢諭吉の構想/プラットフォームとしての政府/アメリカで内戦が起きるとすれば/アソシエーションという身分保証/フランスと結社/陰謀論者/アソシエーションは軍事化する
第3章 行政府を民主化する
選挙というバイアス/ロックの「三権分立」/中国の科挙、一七世紀のペスト/目立つ議会、隠れる行政/人は腐敗する。機械はしない/超人政治家と精密機械/官僚の歴史/官僚の素質と編集者/行政とユーザー/「官僚や公務員を人間に戻す」/ポピュリズムでもなく、権威主義でもなく
第4章 「市民」とは誰か
首相の「大統領制化」/エリート任せから参加へ/保守の融通無碍さ、左派のコレクトネス /シトワイヤンvsブルジョワ/日本の市民運動/ファンダムはアソシエーションか/消費から創作へ/推し活=贈与する消費者/相互依存するケアへ/スキルの伝達/土地所有者→ブルジョワ→賃労働者→消費者→ファンダム/オタクと左派/二人のファンダム大統領
第5章 分断を超えるプラグマティズム
リテラシーからコンピテンシーへ/ルソーの一般意志の外へ/Do it with Othersの習慣/ Do から始まる参加/「民意」から「やってみる」へ/オンラインゲームの社交性/ファンダムの贈与・投資・消費/植物を手入れする「庭師」/コギトを乗り越える集合的知性/「対話」ではなく「やり取り」
第6章 「手」の民主主義
技術論と生成AI/イデオロギーからミッションへ/ガチャからの解放/イデオロギーの歴史/保守主義、自由主義、社会主義/代議制と政党の起源/政党クラブとフランス革命/ ボーイズクラブ/裏面のポピュリスト政党/直接民主主義の可能性/分人、くじ引き/名望家→職業政治家→相場師/ファンダムの趨勢/所有と使用の距離を近くする/プラグマティズムの習慣論/手の思想
第7章 感情と時間の政治へ
「不平等だけど違っている」/革命とおにぎり/食事の風景/依存が自由の条件/シェアとは持ち寄ること/推し活にあるケア/「実験」の時間/じっくり問いを探す
聞き手をつとめて
語り手のあとがき
図版出典
文献案内 -
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とても面白かった。タイトルに民主主義が入っているから政治的なことがメインかと思いきや、ビジネスや社会参加、生産者と消費者の関係性まで、幅広い議論が行われている。知識や技術の「民主化」により、平等化が進むが、それは必ずしも平和や安定を意味せず、むしろ細かい違いに注目がいき、差別や偏見を生むことになる。同時に、それまでの権威に対する信頼失墜に繋がり、社会が不安定化する。これに変わる信頼がファンダムに集まっている。いわゆる「推し」であり、確かに一定のお作法、共通の価値観、奉仕や貢献の意識など、コミュニティを維持する要素が詰まっている。現代社会を理解するのに非常に参考になる一冊。
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トクヴィルが見たアメリカは「民主主義の実験場」。
「平等化」を促したものとして、プロテスタンティズム、銃、印刷、郵便というものを挙げている。
それまでの教育は過去から伝わる「規範」を身につけるものだったが、平等化の趨勢は、「自分で考える」ことを促していくのではないか?
「政治的集権化(政権)」は必要
「行政的集権(治権)」は不要
平等化によって孤独が起きる。なぜなら平等化が進むとちょっとした違いが気になってしまうから。
互いに平等なはずなのに残る不平等について、人々はより過敏に反応することになる。
「編集者は最初の読者だ」
アマチュアであることのプロであることが求められる
DXとはユーザー中心のこと
「行使の民主主義」とは選挙の日だけでなく、情報やデータを公開させて、それを使って有権者に問題提起やソリューションの提案まで市民が行政に提案できること。
重要なキーワードは、「透明性」、「ネットワークを活かした民主主義」、「開かれた統治」
これまでの民主主義は「承認の民主主義」であって、「行使の民主主義」がちゃんと問われてこなかった。
それによって「意思決定」と「その実施」の区別が「なし崩し」になっている。 -
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「ためになる新書」という意味では今まで読んだ中で一番と言ってもいい本。
日本政治学会の理事長も務めるフランス政治思想の第一人者、宇野重規が民主主義の視点から政治思想史の流れを過不足なくまとめた良書。
新書というジャンルは基本的に読み捨て前提で多読するものと思っているが、この本に関しては珍しく他の本で知識を得た上で読み返したいと思わされた。
特に第四章の20世紀の政治思想は思想自体が多様で掴みづらかったのでリベンジしたい。
一方で記述が教科書的なのが難点で、読み通せない程ではないが面白い本とは言いがたい。
個人的には宇野先生ご自身の、トクヴィルやルソー的なピュアな民主主義への憧憬を称揚しながら、あくまで穏健で漸進主義的な未来を説くある種「希望的観測」ともいえる態度に興味を持っていたので、著者の色の出ない本書はその点では物足りなかった。
(なお本書を読んでいて、昔の記憶ゆえ不確かだが講演で宇野先生が東浩紀に「陽キャの民主主義」と言われた、と話していたのを思い出した。
本書でも人々が地域コミュニティへの参加や対話・連帯を通じて、政治への参加を負担ではなく誇りと考えるようになればいい、と説く宇野先生の真っ直ぐさは、デジタル民主主義や「弱いつながり」を志向する氏には「陽キャ」の綺麗ごとに思えるだろうなと納得した。閑話休題)
総じて、面白い本とは思わないが、少し背伸びしてでも読んでおくべき本。
そして本書は東大で読まれた本1位、2021年新書大賞2位に選ばれたとか。
それだけ多くの人がこの本を手に取る世の中は、宇野先生の言うようにまだまだ信ずるに足るのかもしれない、なんて言うのは安易だろうか。 -
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ネタバレちょうど同著者の『民主主義とは何か』を読み終えたところで、およそ3年ぶりに再読。せっかくなのでここ数年の間に流行したAdoの『うっせぇわ』と簡単に絡めてみる。
「私が俗に言う天才です」と自分は特別であると思おうとすると同時に、「私も大概だけど」と心のどこかでは他人と何ら変わらないことを感じている。そして「ちっちゃな頃から優等生」「社会人じゃ当然のルールです」と押し付けられる理想や自己犠牲に強い不平等感を感じるのである。
「でも遊び足りない/何か足りない」と満たされない思い。それを「困っちまうのは誰かのせい」として、自分の生きづらさを外部のせいにし、「うっせぇわ」と排除しようとするのである。「何か足りない」のは社会における自分の位置や役割、他者から自分へのリスペクトなのかもしれない。
特別でありたいけれども、他者と何ら変わりのない〈私〉。不平等を感じ、不満をもつ〈私〉。そんな〈私〉時代に必要なのは、「うっせぇわ」と他者を遠ざけることではなく、むしろ対話、即ちデモクラシーなのだ。 -
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民主主義について書かれた本。
民主主義は独裁と異なり、成長していくものである。何故ならば、民主政治において、人々は主体性を持ち、責任を感じながら、意思決定をしていくことが求められるからだ。著者は民主主義について明確な定義をしていない。しかし、民主主義に関しては肯定的な意見を持っているように思われる。また、民主主義は市民が参加できるという点で、彼らの満足度を高めることもできる。当事者になることで、政治に対する責任が伴うからだ。また、民主主義では、自身の声が届き安いからだ。
個人的には、コロナ危機の話に疑問を持った。このような危機的状態の中で、全ての人が政治に関心を持つことができ、さらにそれに対して、情報を得るような余裕があるのだろうか。そして、その困難を乗り越えるだけの力が民主主義にはあるのだろうか。 -
学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か
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