保守主義とは何か
イギリスのEU離脱を考える上で、一度保守主義について勉強したいと考えて読んだ。
かねてからトクヴィルなどを読んでいたため、保守主義と私の考え方は親和性が高いと考えていたが、読んでみるとやはり親和性の高さを再確認した。
保守主義といっても実はバラバラで、フランス革命に対してや社会主
...続きを読む義に対して打ち出した保守主義と現代アメリカに存在する保守主義はかなり違うように思える。
前者の根本的な考えとしては、人間の持つ知に対する懐疑(自己の能力への不信)から、抽象的な原理に基づく未来への飛躍という近代人にありがちな幻想を排することで、歴史や伝統にいったん範を求めたうえで考える糧にするというものである。バークやエリオットなどの紹介されている保守主義者は、フランス革命や社会主義から人間の理性への自信過剰を読み取り、そのような驕りを排すように訴えたのである。バークの章で面白かった点は、偏見や迷信の再評価である。人間社会とは複雑であり、明快な抽象的原理では説明がつかないという前提から、偏見や迷信という長年はぐくまれてきた人間の精神活動に、理性を補完拡張する潜在可能性を見て取ったのである。
保守主義の議論は、外山滋比古の知識と創造性の話を彷彿とさせる。外山は知識偏重の現代社会への批判として、知識がありすぎることは逆に創造性を阻害するということを述べているが、やはり知識が全くなければ創造性そのものも危うくなる。結局、同じようなパターンに陥って終わりであろう。知識と創造性の関係は保守と改革の関係に似ている。どちらもないといけない、バランスが重要である。クリエイティビティという言葉が跋扈するが、やはり知識あってのクリエイティビティである。
保守主義のよい点は宗教を認めている点である。宗教とはバークのいう偏見や迷信であり、理性を補完する役割を持っている。絶対者の存在を設定することにより、人間は驕りを抑制することが出来る。人生哲学としても十分すぎる文句である。
保守主義は、実存主義と親和性が高いようにも思える。近代において世俗化された社会では、人間は絶対的に信奉するものを、神ではなく自らの抽象的規則に求めた。しかし、それ自身はやはり人間が作り出したものであるゆえに脆弱であり、実存主義的な言い方をすれば、伝統にアンガージュすることによって、その自由な身の上に重しを乗せて浮遊しないようにすることこそが保守主義のかんがえかたであるのであろう。