【感想・ネタバレ】民主主義とは何かのレビュー

あらすじ

トランプ大統領をはじめとする「ポピュリスト」の跋扈、旧社会主義諸国および中国など権威主義国家の台頭など、近年の世界の政治状況は、民主主義という制度の根幹を揺るがすかのような観を呈しています。日本の状況を見てみても、現行の政権が「民意」の正確な反映、すなわち「民主主義的な」政権だといわれると、頸をかしげる人も少なくないのではないでしょうか。はたして民主主義はもう時代遅れなのか? それとも、まだ活路はあるのか?
それを議論するためには、まず何よりも、民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを「正しく」知らなければならないでしょう。今では自明視されている「民主主義」という制度ですが、人が創ったものである限りそれもまた歴史的な制度として、さまざまな紆余曲折を経て現在のようなものになったのであって、決して「自然」にこのようなになったわけでではないのです。
そこで本書では、ギリシア・アテナイにおける民主主義思想の「誕生」から、現代まで、民主主義という制度・思想の誕生以来、起こった様々な矛盾、それを巡って交わされた様々な思想家達の議論の跡をたどってゆきます。その中で、民主主義という「制度」の利点と弱点が人々にどのように認識され、またどのようにその問題点を「改良」しようとしたのか、あるいはその「改革」はなぜ失敗してしまったのかを辿ることにより、民主主義の「本質」とは何なのか、そしてその未来への可能性を考えてゆきます。
またあわせて、日本の民主主義の特質、その問題点についても分析してゆきます。
民主主義という思想・制度を知るための、平易な政治思想史の教科書としても最適です。

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Posted by ブクログ

議会制、選挙、自由は、本質的に民主主義と結合した概念ではなくて、歴史の趨勢がそれらを結合させ民主主義を現在の姿に変えていった。本書は、民主主義を政治史の俎上で相対化し民主主義そのものの姿を明らかにする。

著者は民主主義をめぐる歴史において古代ギリシアを特別視していることを認めている。先史の原始的な人間集団のなかで民主主義的プロセスが自治的な合意形成に利用されたことはありえたとしながらも、古代ギリシアのポリスでは市民が民主主義的制度とその実践に自覚的に取り組み、徹底化していた点で一線を画すという。

民主主義がときに誤るとしても自己修正が可能であるというのは、プラトンの哲人政治が持続性を持たないとするポパーと整合していると思った。

このような本を読んで思うのは、歴史上ある制度が偉大な成果を残したからこれからもうまく機能するとか、今の世界は歴史上のある状況に似ているから次はこうなるはずだとか、ヒストリカルな目線だけではダメだということ。
本書のように歴史上の事象に対して帰納的態度で臨まないと、社会の事物の本質は見えてこないのだと思う。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

「ためになる新書」という意味では今まで読んだ中で一番と言ってもいい本。

日本政治学会の理事長も務めるフランス政治思想の第一人者、宇野重規が民主主義の視点から政治思想史の流れを過不足なくまとめた良書。
新書というジャンルは基本的に読み捨て前提で多読するものと思っているが、この本に関しては珍しく他の本で知識を得た上で読み返したいと思わされた。
特に第四章の20世紀の政治思想は思想自体が多様で掴みづらかったのでリベンジしたい。

一方で記述が教科書的なのが難点で、読み通せない程ではないが面白い本とは言いがたい。

個人的には宇野先生ご自身の、トクヴィルやルソー的なピュアな民主主義への憧憬を称揚しながら、あくまで穏健で漸進主義的な未来を説くある種「希望的観測」ともいえる態度に興味を持っていたので、著者の色の出ない本書はその点では物足りなかった。
(なお本書を読んでいて、昔の記憶ゆえ不確かだが講演で宇野先生が東浩紀に「陽キャの民主主義」と言われた、と話していたのを思い出した。
本書でも人々が地域コミュニティへの参加や対話・連帯を通じて、政治への参加を負担ではなく誇りと考えるようになればいい、と説く宇野先生の真っ直ぐさは、デジタル民主主義や「弱いつながり」を志向する氏には「陽キャ」の綺麗ごとに思えるだろうなと納得した。閑話休題)

総じて、面白い本とは思わないが、少し背伸びしてでも読んでおくべき本。
そして本書は東大で読まれた本1位、2021年新書大賞2位に選ばれたとか。
それだけ多くの人がこの本を手に取る世の中は、宇野先生の言うようにまだまだ信ずるに足るのかもしれない、なんて言うのは安易だろうか。

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2023年06月28日

Posted by ブクログ

民主主義について書かれた本。

民主主義は独裁と異なり、成長していくものである。何故ならば、民主政治において、人々は主体性を持ち、責任を感じながら、意思決定をしていくことが求められるからだ。著者は民主主義について明確な定義をしていない。しかし、民主主義に関しては肯定的な意見を持っているように思われる。また、民主主義は市民が参加できるという点で、彼らの満足度を高めることもできる。当事者になることで、政治に対する責任が伴うからだ。また、民主主義では、自身の声が届き安いからだ。

個人的には、コロナ危機の話に疑問を持った。このような危機的状態の中で、全ての人が政治に関心を持つことができ、さらにそれに対して、情報を得るような余裕があるのだろうか。そして、その困難を乗り越えるだけの力が民主主義にはあるのだろうか。

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2022年09月06日

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民主主義とは何か、を正面から考えまとめられた本です。結論としての「公開による透明性」「参加を通じての当事者意識」「判断に伴う責任」は、いずれも当たり前に見えてしまいますが、そこに至る様々な経緯、民主主義に対する厳しい現実と批判、解決への困難性を読むにつれ、それでもこの3つは大事にしなくてはならないものなのだ、心しました。

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2022年07月28日

Posted by ブクログ

そもそも政治にあまり興味がなかったが、あんまり政治に興味がなくてもいけないだろうと思ってこの本を読んでみた。民主主義とは何か、というタイトルから、民主主義というものについてざっくり何かが掴めるかと思ったが、この本を読んでわかったことは「難しい」ということであって、前以上に掴めなくなった。この本によってある意味自分が、ただのイメージだけで民主主義というものに満足し、あまり言葉について具体を考えなかったことを理解させられたところがある。
この本は、民主主義というものの在り方―そもそもそれが何を指しているのかについて、時代と、国、人に照らし合わせながら追っていくものである。同時に、哲学書でもある。各時代の哲学者等を取り上げて、主張した考えをざっくり知ることができる。自分は最初「時代と変遷を追う」というイメージばかりで本を読んだので、哲学の話(大抵今の流れをぶんぶん振ってしまう)のところでちょっと引っかかりうまく前に進めない&流れをつかめない、という気持ちがあったが、哲学書であると思うとストンと落ちて読めるようになった。単に流れを、特に主流を追うものというよりは、様々な考えに触れながら民主主義を考えていくものだと捉えたほうが読みやすいかと思う。

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2021年12月24日

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 「民主主義について過不足ない本を書いてみたい」という著者の思いが見事に実現した良書です。既に、2021年度の石橋湛山賞を受賞し、書評等でも高評価になっていますが首肯できる内容です(この一冊で、大学のテキストにもなるくらいコンパクトかつ親切なつくり)。政治思想史とも言え、古代ギリシャから現代までの考えを紹介の上、日本の民主主義について考察します。「結び」の20ページほどで著者の考えを述べていますが、相対する考え方を両論併記しつつも中庸の考えを展開しており、著者のバランス感覚が垣間見れます。
 
 民主主義とか日々の生活からは縁遠い印象を受けますが、この本が多くの人に読まれ、その上で政治論議が活発になることを期待したくなる1冊です。

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2021年12月15日

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言わずと知れたCOTEN RADIO
「民主主義」編のタネ本のひとつ。
本屋さんでは社会学、橋爪大三郎先生の本と迷って結局こっちにした。

それ以前にも概念としては近いものがあったものの、民主主義の源流を古代ギリシアに遡り2500年間の歴史を振り返る。民主主義についての考え方というか、つきあい方というか、何度も聴いたCOTEN RADIOのおさらいにはなるものの、やはり書籍で辿っていくのとでは感じ方が変わる。

2年前にはじめてCOTEN RADIOで民主主義編を聴いた時、民主主義の印象が世界的に変化していることに驚いた。
あの頃はようやくコロナが落ち着いてきたような時代背景で、イギリスのブレグジットの話や1期目のトランプ大統領当選のケースから語られるポピュリズムの懸念について、
「なるほどなー」
「こういうのが衆愚的って言うのかー」
と、わかった気になった覚えがある。

そのあとも何度か聴いて、今回満を持してこの本にたどり着いたわけだが、
読み終えてすぐの感想としては、
「民主主義とか考えるのムリじゃない?」
ということだった。

ポピュリズムについても、ここ最近で自分の考え方が少し変わってきたことに気づく。
それは、プラトンが批判したソクラテスの処刑について、その背景をもう少し詳しく知る機会を得たというのもあるからで、(@ゆる哲学ラジオ)そうなってくると、どの角度やどの立場から切り取るかで変わる付随する事柄や概念そのものをひとまとめで良し悪しのジャッジなんかできないな、と思った。

ルソーの一般意志みたいな話だわ。

実はもう随分長いこと、自分にとっての善悪と言うものが揺らいでしまっている感覚がある。

誰かの正義は誰かの悪で、と言葉にすると途端に陳腐になるんだけど、
正直なところ貫きたい正義や善が以前ほど明確に見えなくなってしまっているのだ。

人文知に触れる経験の中で歴史を知る機会が増えて、認知の枠が拡がりすぎたのにカバーできる想像力が足りてない。
要は自分の人間的欠陥のせいなんだが、モヤモヤするだけで自分の中にスッキリした回答を得られないのは悔しい。
とか言いながら、反面では面白くもあったりする。

おさらいの歴史的な部分も、未知だった歴史的偉人の考え方も、とても興味深く味わいながら、わたしにとっては内省したくなる気持ちを突いてくるような本だった。

ちょっとズレるけど、民主主義を考えたら自分の想像力の拙さに気づいたよっていう…、そういう感想。

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2025年09月30日

Posted by ブクログ

トランプ大統領の政治が民主主義なのかな、と思ってこの本を読みました。
国民が自分たちのこととして政治にかかわることが当たり前になることが民主主義のキホンなのに、現在の政治家たちは参加させず自分たちの思い通りになるように国民を誘導する方向で政治を進めているなぁ。リーダーにお任せ、じゃダメなんだよね。

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2025年08月18日

Posted by ブクログ

難しかったけど、民主主義の歴史や経緯がコンパクトにまとまっていて素晴らしい一冊だと思いました!また再読します!読んでて「あれ?この人のこの思想って反民主主義なんだっけ?それとも民主主義の亜種なんだっけ?」と混乱しちゃったので次は気を付けて読みます(苦笑)。

民主主義ってずっと西側諸国で支持されてる思想だと思っていたのですが、そうでもなかったというのが意外でした。ずっと共和主義(…と呼ぶのかな?)との対比の中で欠陥のある思想として語られていたとは。余談ですが、今のアメリカの民主党と共和党って、共和党の方が民主主義っほくて、民主党は共和主義っぽいイメージありますよね。

社会主義との比較とか、アジアやイスラム圏との思想の比較とか、そういう話にも興味が湧きました…が、こんなにわかりやすく書いてくれてる本、あるかなぁ…(汗)

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

民主主義って?
民主主義国である日本に生まれ育ってもなかなか答えられない。自由主義と民主主義は相容れないこともあるって?
議会制度が必ずしも民主主義ではない?
民主主義は長い間、肯定的に語られてこなかった?

身近にあるはずなのに、全然理解できていない事柄がたくさん。

アテナイの直接民主主義から歴史を追って説明し、最後に日本とこれからの民主主義に話が及ぶ。

個人的にはトクヴィルさんとミルさんの話は関心が深い。一人の偉人より、一人でも多くの当事者意識を持った集団の方がよりよく統治ができる。そんな議論もあり、民主主義が再度主流になってきたとしたら、なぜ経営は未だ独裁か少数経営なのか。それがティール組織やホラクラシー、DAOの話に繋がってくるのかもしれない。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

毎日新聞で著者のインタビュー記事があり、その内容が気になったことがきっかけで読んだ1冊。
民主主義の歴史について、高校時代の朧げな記憶が蘇りつつ、民主主義の本質に迫ることができたかなと。
自分自身の民主主義に対する理解や考え方が若干本質からズレていたことを再認識できたことも大変意義深かったと思う。
民主主義が危機に晒されているこのタイミングで読むことができてよかった。

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2025年02月23日

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面白かった。参加と責任のシステム。トクビィル、アーレント、レッシグなど、知ってる人が出てきたのが、安心して読めて良かった。ジェズスの反乱など、アメリカ法で学んだことが出てきたり、違う角度から複数回触れることで理解につながる、ということを感じれた。
細かく分けて民主主義を実践してその結果を上に上に持ち上げていくのがいいのではないか。一票の分割行使を可能にする提案を詳しく知りたい。なめらかな民主主義か。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

民主主義とは何か。に答える本。
全員参加、直接議論に理想を掲げつつも、代議制、議院制といった一見民主ではない手法を迎えて今なおあるべき姿を模索している過程であるというのが読み終えた後の所感。民主主義が市井の民に政治の知識、意識要求するものであり、現実(そのような市井が稀有である)と相反するところから矛盾を孕み続けているが、それでも自由で民主的であることを諦めない姿勢が重要だと思う。

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

評論文読書案内から。あと、先だって読んだ、高橋新書ガイドにも取り上げられていたし。昨今の情勢を鑑みると夢のようだけど、確かに以前、世界はいずれは民主化するという"常識"が存在したと記憶する。しかし現状そうはなっておらず、寧ろ遠ざかっていさえするのは、先進国のつまづきとか、独裁国が要所で示す意外な強さとか、そのあたりが前提を狂わせているからか。本書では、各時代の民主主義と、それぞれの政治思想とを合わせ見つつ、現在の状況に至った経緯を探る。その中で、民主主義にふさわしいのは抽選で、選挙はむしろ貴族政的性格が強い、という指摘は、今の日本にはまんま当てはまるのでは?と思えてしまった。

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2023年10月10日

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ネタバレ

私にはやや難解だったが、民主主義というもの、それ自体がつねに画然とした一形態として在った/在るわけではないと知り得たのは収穫だった。
ジーン・シャープの「独裁体制から民主主義へ」を読んだ後だったので、(むろんシャープは「各々の地域/歴史柄に合った民主主義が必要であると明記している)独裁体制と民主主義をたんに対立するものと解してしまいがちだ。
けれど本著は、私の本棚に寝ている「草の根のファシズム」という本のタイトルが知らず予感させる通り、独裁体制に迎合した民主主義があったことをも教えてくれた。このことは「民衆」が、自分たちの仲間を定義するとき、「自分たちに属さないものをばは外しても良い」と低きに流れたことを痛い思い出として痛感させる。
さて。私の立場としては、進化ではなく、(家父長制の害悪はおいて)人間だけでなく、地球に暮らすいきものたちにも敬意を払ったころに学ぶことが多いように思われるが、それは遠いところにあってみずからに関与していない、「遠い」思想への憧れで、現実に不満を持つ人びとが、何か一定のシステムに憧れるのと相似の関係にあるような気も、少しだけする。
人間だけが地球にありほしいままに生きている、という思考からは、どうしても距離を置きたいけれども。

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2023年04月10日

Posted by ブクログ

古代ギリシャからの民主主義の歴史をひもとき、どんな試み・失敗・改善を繰り返してきたのかを解説。民主主義にもいろいろあるということ、民主政と共和政の違いなどを学べた。国を運営する知恵を一般市民に期待するのか、選ばれた人に任せるのか、という問いが浮かぶ。

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2022年11月29日

Posted by ブクログ

コロナ禍やウクライナ侵攻、安倍元首相の銃撃事件などをきっかけに、「民主主義」について関心をもちこの本を手に取りました。
民主主義に対して抱いていた期待と不信感の由来を、この本は丁寧に説明してくれています。
まだ完成されたとは言えない現代の民主主義。制度についてだけでなく、市民一人ひとりが意識を変えていくことが大切に思えました。
同著者の『〈私〉時代のデモクラシー』を久しぶりに再読したいと思いました。

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2022年11月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

民主主義の変遷と今日においての民主主義のあり方について記された本。

正直、アテナイ(古代ギリシア)から話が始まって時系列で進むので、政治に全く触れたことのない人にとっては少々難儀な本になるかもしれない。
私は民主主義の根源はくじ引きにある(語弊ありかもしれないが、一言でまとめると)と少しアテナイ民主主義を学んでいた故、読み進めることができた。

過程を割愛し(ここが重要であり、納得しながら読み進めたのだが…)、最後の結論を述べると、

・民主主義は人間が平等である状態、弱い者を尊重した上で成り立つものだ

・民主主義は選挙だけが全てとは言い切れない側面がある

・民主主義維持のためには市民の参加が必要だ
権力の監視、自らの政策立案など

公開による透明性、参加を通じての当事者意識、判断に伴う責任、


↑自分用のメモなので、悪しからず…

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

古代から現代まで民主主義という思想がどのように具現化されてきたかが、新書というコンパクトなフォーマットにぎゅっとつまっている。語り口調は穏やかでとてもわかりやすい。
古代のテキストはあまり読んだことがないので、これを機に参考文献からいくつか読んでみたいと思った。また、本書を読みながら吉田徹『くじ引き民主主義』を思い出した。こちらも未読なので本書を手引きに読んでみたい。
それにしても、日本の状況を思い浮かべてみると独裁制に近いのではと思ってしまった。情報は破棄され、当事者意識は薄い。絶望したとて良くなることは何もないので、私も少しでも「自らの可能な範囲で、公共の任務に携わり、責任を分かちもつ」感覚を忘れずにいたい。

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2022年09月23日

Posted by ブクログ

民主主義の歴史と未来・可能性を論じる。
古代ギリシャから始まる民主主義だけど、国家のシステムとして定着するのは19世紀以降とその歴史は浅いんだね。何より民主主義を実践していくための手段には欠点も多い。代議制民主主義は正しいか? 選挙システムでいいのか?(古代ギリシャでは選挙は腐敗の元凶と考えられ、抽選システムだった)。「参加と責任」こそが民主主義の肝とする著者に同意する。現状は参加もしずらいし、自分も含めて民衆は無責任だしなぁ。もっといいシステムがきっとあるはずなんだと信じたい。

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2022年06月14日

Posted by ブクログ

トランプ、安倍、習近平・・・昨今のポピュリズム的指導者、独裁者的指導者が台頭する風潮の中、改めて自由や民主主義について考えてみたく手にとった一冊。

閉塞感のある社会経済、近隣諸国とのイライラする軋轢、見えない成長を感じると、自分の中にも、胸のすくような言葉を発する強力な指導者を望みたくなる。

方で、自分の価値観たる「嫌なことにNoと自由にいえる社会」が脅かされているとも感じる。

本書で答えが用意されている訳ではない。が古代ギリシアの「参加と責任」が今問われるべきなんだろうという結論を得ている。

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2022年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まさに、「民主主義とは何か」を考えさせられる本。政治に関する議論は、その抽象度ゆえ、どの議論を見ても、どこか認識が統一されてなく噛み合ってない印象がある。民主主義VS共産主義とか、簡単な2項対立にはできないし、ある程度幅をもった概念なので、議論においては言葉の意味について、丁寧に丁寧に認識をあわせるよう気を遣わねばいけないなと思った。

民主主義の本質は、人々が自ら政治に参加し、自分たちの問題を自分たちで解決すること。その意味で選挙や多数決は、構成要素の一部でもあるが、代表者を選ぶことだけが民主主義ではないし、少数者の意見尊重も重要、という意味ではやはり一部に過ぎない。

1人の支配  君主政  僭主政
少数の支配  貴族政  寡頭政
多数の支配  民主政  衆愚政

 後者は公共の利益ではなく私的利益に突き動かされる

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2021年12月30日

Posted by ブクログ

政治体制を知り尽くしている宇野先生が、これまで人類が採ってきた民主主義を平易に、すべからく解説した本です。
圧倒的な情報量なので全てを消化できた訳じゃないけれど、読みやすかったです。

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2021年12月11日

Posted by ブクログ

この本では、民主主義を古代ギリシアから紐解いて考えることができる。民主主義とはなにかを改めて考えさせられる本である。

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2021年11月18日

購入済み

なるほど

身近だけど難しい民主主義。原題の病巣を炙り出す識者の慧眼。民主主義を理解する一助になること請け合いである

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2021年05月02日

Posted by ブクログ

2024.12.25 前から読もうと思っていて、年末にやっと読み終えることができた。民主主義を盲目的に信奉する傾向があったが、色々と考えさせられる刺激的な内容だった。もっと考えてもっと行動しないといけないんだなぁと思う。この本が出てからの数年でも大きな(どちらかといえばマイナスの)変化が起きている。我々はサボっていると実感して反省中。

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2024年12月25日

Posted by ブクログ

チャーチル曰く「民主主義は最悪の政治形態(ただし、、、が付くが)」。民主主義がまともに機能している国なんか今やどこにもなさそうだし、民主主義なんて絵に描いた餅で、永久機関と一緒で実現不可能なんじゃね、と思ってた時に、答が載ってないかと思い購入。いろいろ勉強にはなったが、納得できる答は載ってなかった。不完全な人間にとって、民主主義は難し過ぎるんだなと再認識。いまや「民主主義=多数決=多数派の専制」みたいになってるし。宇野先生は人間の可能性を信じてらっしゃるようですが、昨今の状況を見ると、とてもそんな楽観的にはなれません。

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2023年07月24日

Posted by ブクログ

『民主主義とは何か』

今の日本で、我々に何ができるのか…
我々は何をすべきなのか…

考えさせられた。

政治が悪い、政治家が悪い、誰かが悪いではない。
今の日本の体制・システムを簡単に変えることはできない。
今、我々にできることをやること。

参加し、責任を持つこと。

今の政治を選んだのは、我々。
その結果の責任は我々にある。

自分たちの問題は自分たちで解決する。
その責任は自分たちにある。

それが民主主義なのではないだろうか。

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

以下、引用

●これらのことは、現代に通じる重要なメッセージといえるでしょう。個人が経済的・社会的に隷属した状態では、どれだけ公共的議論による政治が存在しても不十分です。人々が実質的に議論に参加できる状態をつくり出す必要があるからです。人々の経済的・社会的解放なくして民主主義はありえないのです。
民主主義が参加と責任の両方の契機から成り立つことは、現代においてもあらためて重要な意義をもってくるのではないでしょうか。
●自由な民主主義社会をつくるためには、日常的なレベルで人と協力する練習をしておいた方がいい。今日なお傾聴に値するトクヴィルの教えではないでしょうか。
●このような状況において残された選択肢は何だったのでしょうか。 ウェーバーによれば、第一の道は「指導者民主主義」です。ウェーバーは人々を魅きつける天賦の資質をカリスマと呼びましたが、いわばカリスマをもった 政治的指導者が、国民の直接選挙で選ばれることに期待したわけです。もちろん、そのようなカリスマ的指導者の下で、人民が単にその追随者となってしまう危険性はあります。が、 第2の選択肢、すなわち「指導者なき民主主義」によって、使命感のない職業政治家による単なる利害調整がダラダラ続くよりはましだとウェーバーは考えました。結果としてウェーバーの提言に基づき、新生ドイツの大統領は強大な権限をもつようになりました。が、 それは議会制との間に矛盾をもつ、「人民投票的」大統領でした。通常の行政は議会の多数派によって構成される内閣が行いますが、その一方で、緊急事態発生時には国民の権利を停止できる強大な大統領が存在することは、ヴァイマル(ワイマール)の政治体制を矛盾にみちたものにしました。ウェーバーはナチスの時代をみることなくこの世を去りました 。政治的・経済的・ 社会的混乱の続くなか、ウェーバーは、存在感を大きくする執行権を使いこなすリーダーシップをもった大統領を提案せざるをえなかったのです。そのようなウェーバーの苦悩は、現代の私たちにとっても、考えるべき重要な素材を提供しているように思われます 。
●シュミットのように極端なかたちで自由主義と民主主義を区別するのではないとしても、両者の間に緊張があることを前提に、どうすれば自由を否定すること無く、民主主義を十全に実現できるか、という問題は私たちに残されています。同様に、もし議会主義が十分に機能を果たさないとき、いかに執行権を民主的に統制するのかという問題も私たちに委ねられています。シュミットが残した思い宿題です。
●このような投票率、および代議制民主主義への信頼の低下の背景にあるものは複雑であり、ここで本格的に分析することはできません。いずれにせよ、戦後日本の民主的政治体制の有効性について、根本的な疑念が拡大していることは間違いないでしょう。日本の民主主義が危機的状況にあることは明らかです。その一方、日本の民主主義の歴史を振り返れば、深刻化する社会の諸課題に対し、政治が有効に対応し切れないとき、不満が蓄積すると同時に、新たな民主主義への胎動が加速してきたことが分かります。既成の代議制民主主義の回路が機能不全を起こす時、「横議」と「横行」への模索が再び始まるかもしれません。人々は勝手に議論を交わし、組織や国境を越えた結果を求めるでしょう。そこに新たな「公論」の可能性を見出したとき、事態が大きく動き始めるはずです。今や旧来の価値観が大きく崩れ、それがまだどれだけ微かなものであれ、「不思議な明るさ」 がみえ始めているのかもしれません。その薄明かりのなかに、新たな民主主義の姿を見定めるべきです。
●その上で、民主主義がいまだ制度化の途上にあることについても、指摘しておかなければなりません。民主主義には2500年を超える歴史があると言いましたが、古代ギリシアを別にすれば、近代において民主主義の具体的な制度化が進んだのは、この2世紀にすぎません。その制度が完成したものであるとは到底いえず、むしろ今後も試行錯誤によって制度を充実させていく必要があります。一方において、政党や政治家、あるいは代議制民主主義一般に対する不審が現在募っています。民主主義といいつつ、現実には国民の声は政治に十分反映されることがなく、職業政治家を中心とする一部の人々が密室で決定しているのではないか。社会の多様な利害を反映するとされる政党も、現実にはそれほどの多様性がなく政党の一体性を支える共通の原理など存在しないのではないか。このような疑いがポピュリズムの温床となっていることは明らかです。(中略)他方、執行権が強化されるなかで、政党や議会はそれを十分にチェックすることができず、民主主義の力が十分に及ばなくなっている点も深刻です。(中略)情報の公開、オープンデータ化を進め、市民が自ら政策提案を行うことも、執行権中心の時代に民主主義を前進させるための大きな手段です。市民は立法権を媒介とすることなしに、より直接的に執行権に対しアイデアを寄せ、同時にその活動をチェックすべきなのです。

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2022年03月06日

Posted by ブクログ

前半のギリシアから西洋までの接続は面白く読めた。後半は少し駆け足な感じがして,記述も不十分に感じた。新書なので仕方ない気もするが

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2021年12月22日

Posted by ブクログ

 古代ギリシアから民主主義の歴史を辿る。古代ギリシア時代に理想を見るのでなく、今もまだ民主主義は進歩の過程にある。ただ、今知られている中では、たぶん民主主義が最も優れた制度、あるいは精神であって、従って我々は民主主義を鍛えていくしかない。

「第一に「公開による透明性」です。古代ギリシアで成立した「政治」とは、公共の議論を通じて意思決定を行うことへのしんねんでした。力による強制でもなければ、利益による誘導でもなく、あくまで言葉を通じて説得し、納得した上で決定に従いたい。これこそが、自由な人間にとって何よりも大切であるという理念を、現代に生きる私たちもまた共にしています。そのためにも、情報の公開やオープンデータはもちろん、政策決定過程をより透明度の高いものにしていく必要があります。」

こんなことを書く学者だから、日本学術会議への任命を拒否されるのでしょうか?

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2021年08月09日

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