【感想・ネタバレ】民主主義とは何かのレビュー

あらすじ

トランプ大統領をはじめとする「ポピュリスト」の跋扈、旧社会主義諸国および中国など権威主義国家の台頭など、近年の世界の政治状況は、民主主義という制度の根幹を揺るがすかのような観を呈しています。日本の状況を見てみても、現行の政権が「民意」の正確な反映、すなわち「民主主義的な」政権だといわれると、頸をかしげる人も少なくないのではないでしょうか。はたして民主主義はもう時代遅れなのか? それとも、まだ活路はあるのか?
それを議論するためには、まず何よりも、民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを「正しく」知らなければならないでしょう。今では自明視されている「民主主義」という制度ですが、人が創ったものである限りそれもまた歴史的な制度として、さまざまな紆余曲折を経て現在のようなものになったのであって、決して「自然」にこのようなになったわけでではないのです。
そこで本書では、ギリシア・アテナイにおける民主主義思想の「誕生」から、現代まで、民主主義という制度・思想の誕生以来、起こった様々な矛盾、それを巡って交わされた様々な思想家達の議論の跡をたどってゆきます。その中で、民主主義という「制度」の利点と弱点が人々にどのように認識され、またどのようにその問題点を「改良」しようとしたのか、あるいはその「改革」はなぜ失敗してしまったのかを辿ることにより、民主主義の「本質」とは何なのか、そしてその未来への可能性を考えてゆきます。
またあわせて、日本の民主主義の特質、その問題点についても分析してゆきます。
民主主義という思想・制度を知るための、平易な政治思想史の教科書としても最適です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私にはやや難解だったが、民主主義というもの、それ自体がつねに画然とした一形態として在った/在るわけではないと知り得たのは収穫だった。
ジーン・シャープの「独裁体制から民主主義へ」を読んだ後だったので、(むろんシャープは「各々の地域/歴史柄に合った民主主義が必要であると明記している)独裁体制と民主主義をたんに対立するものと解してしまいがちだ。
けれど本著は、私の本棚に寝ている「草の根のファシズム」という本のタイトルが知らず予感させる通り、独裁体制に迎合した民主主義があったことをも教えてくれた。このことは「民衆」が、自分たちの仲間を定義するとき、「自分たちに属さないものをばは外しても良い」と低きに流れたことを痛い思い出として痛感させる。
さて。私の立場としては、進化ではなく、(家父長制の害悪はおいて)人間だけでなく、地球に暮らすいきものたちにも敬意を払ったころに学ぶことが多いように思われるが、それは遠いところにあってみずからに関与していない、「遠い」思想への憧れで、現実に不満を持つ人びとが、何か一定のシステムに憧れるのと相似の関係にあるような気も、少しだけする。
人間だけが地球にありほしいままに生きている、という思考からは、どうしても距離を置きたいけれども。

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2023年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

民主主義の変遷と今日においての民主主義のあり方について記された本。

正直、アテナイ(古代ギリシア)から話が始まって時系列で進むので、政治に全く触れたことのない人にとっては少々難儀な本になるかもしれない。
私は民主主義の根源はくじ引きにある(語弊ありかもしれないが、一言でまとめると)と少しアテナイ民主主義を学んでいた故、読み進めることができた。

過程を割愛し(ここが重要であり、納得しながら読み進めたのだが…)、最後の結論を述べると、

・民主主義は人間が平等である状態、弱い者を尊重した上で成り立つものだ

・民主主義は選挙だけが全てとは言い切れない側面がある

・民主主義維持のためには市民の参加が必要だ
権力の監視、自らの政策立案など

公開による透明性、参加を通じての当事者意識、判断に伴う責任、


↑自分用のメモなので、悪しからず…

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まさに、「民主主義とは何か」を考えさせられる本。政治に関する議論は、その抽象度ゆえ、どの議論を見ても、どこか認識が統一されてなく噛み合ってない印象がある。民主主義VS共産主義とか、簡単な2項対立にはできないし、ある程度幅をもった概念なので、議論においては言葉の意味について、丁寧に丁寧に認識をあわせるよう気を遣わねばいけないなと思った。

民主主義の本質は、人々が自ら政治に参加し、自分たちの問題を自分たちで解決すること。その意味で選挙や多数決は、構成要素の一部でもあるが、代表者を選ぶことだけが民主主義ではないし、少数者の意見尊重も重要、という意味ではやはり一部に過ぎない。

1人の支配  君主政  僭主政
少数の支配  貴族政  寡頭政
多数の支配  民主政  衆愚政

 後者は公共の利益ではなく私的利益に突き動かされる

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2021年12月30日

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