温又柔のレビュー一覧
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著者は数年前に朝日新聞の書評を担当していらっしゃった。その書評を読み好感を持っており、また時々同紙にコラムを掲載されており、今回本書を手に取るに至った。
何を気にするでもなく、『日本語』と言ったり、『母国語』と言ったり、あるいは『日本人』や『母国』、『祖国』といった言葉を使用することは、僕にとっては当たり前だが、そうでない人たちがいる。自己の出自と育った言語環境、親戚やと友人達と感覚の違い、その内心の葛藤やいかばかりか。また、その発生因が日本の統治にあることが心苦しくもある。著者の小説はまだ読んでいないが、書評を読み、コラムを読み著者に好感を持った理由がわかった気がする。
本書を読む前にNHK『バタフライエフェクト』の台湾をテーマにした放送回をみており、台湾が1895年から1945年まで(おおよそ50年だ)日清戦争による割譲地として日本統治下にあったこと、1947年から1987年まで戒厳令下にあったこと等を知っていたため、より理解がしやすかった。 -
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前回の『魯肉飯のさえずり』が母と娘の話だとすると今回は父と娘の話で、よくぞいろんな人の気持ちが分かるのね!!と思う。そんな感想怒られそう…。だけど小説家が凄いと思うのはいつもそういうところ。自分の気持ち、自分が体験したことなら色々深く分かりそうなものだけど、それ以外のことや人の気持ちをなぜその機微まで理解して書けるのか…。
台湾と日本、LGBT、歴史や経済といった話でもあり、いろいろな背景が絡み合って物語が、人物達の心が深まっていてそれが伝わってくる。
お互いを想い合っているが故に苦しいというのは究極だな!自分の気持ちを無視できないけれど、そのために相手を苦しませていることもわかって、そのことがまた苦しい。だけどそれでよくて、お互いに抱えながらいい距離感で繋がっている。家族って、親子っていいなあと改めて思う。 -
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軽やかなBGMのように淡々と物語が語られる。4遍のなかでは「被写体の幸福」に惹かれた。
日本の統治下で育った祖父が愛する日本の文化と日本語の世界。それを聞きながら育った台湾の少女が、日本に留学する。日本は好きだが、同時にいつも台湾のことも大切に思っている。日本語読みで名を呼んで欲しいと日本人の恋人に頼むと、「日本人になりたいんだね」との反応。否、そうではないと訴えるが、恋人にはこの心の機微がわからない。
かつて外国に住んでいたころは、慣れるにつれ、その国の文化や価値観に魅せられることも多かった。それを自分を育てた日本の文化や社会の慣行と比較する。一方を選択すればよいという話ではないのだが、どちらが正しいのか、自分はどちらに拠るべきかと戸惑い続ける。日本とその国の間には太い帯のような国境地帯がある。その帯の中で、空中を漂う風船のように、一方に近づき、また離れる。そしてどちら側をみても違和感が消えない。 -
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ネタバレ芥川賞とった人のエッセイかあっと思って手にとる
あとで調べたらわたしが思ってたの楊逸さんだった
中国の人でもとれるんだーっと当時思って
温さんも名前が中国系だったのでなんかごっちゃになってた
名前が中国系だとみんなおんなじになってしまうのって
これもまた問題なのやろか。
とはいえそこまで興味のないことへの認識がざっくりしてしまうのはどうしようもない。
が、これを読んで温さんは私の中で温さんになった。
のでもうざっくり認識ではない
日本語は日本人の言葉、と思っていた。
日本語は日本人だけのものじゃない、とか
日本国籍をもたず、でも日本語で育つ人がいる、とか
あんま考えたことなかった
何か境におかれた人はいろいろ考えたり感じたりする機会が
多いのだろうなあと
そうして言われなければ分からない、きずかないことの
なんと多いことか。
世界はどこまでも多様で複雑
それを求めてはいないんだろうけど、
じゃない側からの声を聞くと
なんかごめんなさい、といつも思ってしまう。
知らないでいること無関心でいることに対し
とはいえ自分に直接関係してこないと
やっぱりなんでも他人事になってしまうのは
わたしが薄情だからなのか?
いろいろ考えちゃうけど、読みやすく、おもしろかった
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国際的にビジネスをする男性が、娘が性的少数者であることがわかったことで自身のルーツを見つめ直す話。
男性は自身が受けたような差別意識を娘にも向けてしまうのだが、その考え方の描き方がとても自然でわかりやすく、自分もそのようなことを知らず知らずのうちにやっているのだろうと考えずにはいられなかった。
また、性的少数者の議論では「子どもを作るか作らないか」という議論がセットされることが多いがそこへの言及もされていた。
女性が感じる「子どもを作らなければならない」というプレッシャーはすさまじく、またその価値観を内面化は自身を傷つけるほどのものなのだろう。
自身の価値観を放棄して人(自分他人問わず)をありのまま受け入れる・幸せを願い行動することの難しさについて考えさせられる話であったが、「性的少数者は気持ち悪い」と言った総理補佐官が読んだらどのような感想を持つのだろうか。 -
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日本、中国、台湾、3つの国で生きる家族の物語。
主人公の明虎は3つの国を行き来するビジネスマン。
両親は大陸から台湾に渡ってきて、台湾に古くからいる人々の中で様々な困難の中で生きてきた。
明虎の娘瑜瑜と喜喜は日本で育った。
瑜瑜は日本の学校には馴染めず日本人以外は不正常と言って学校へ行かなくなってしまう。
そして妹喜喜の結婚式で同性の恋人がいることを告げる。
そのことを感情的に受け入れられない明虎。
理解しようとする中で両親の苦労や自分自身のことにも思いを馳せる。
瑜瑜が言った不正常と言う言葉、正常ではない、周りとは違う状況、というのがこの家族の底に流れていて、その中で一生懸命生きてきたのだろうと思った。
唯一、喜喜だけは日本の社会に適応し、今の日本の若い世代そのもののように感じた。
激動の世代を生きてきた明虎が家族とともに小籠包の食卓を囲む最後の場面に何故かホッとした。