温又柔のレビュー一覧
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ネタバレ言語とアイデンティティ、台湾と中国の緊張関係が中心的に描かれていた。。個人的に好きだったのは、登場人物が中心に抱えるものが、台湾と中国の関係という国家レベルのissueから、留学生活が深まる中で恋の問題や友情の問題、個人レベルのtroubleに流れていくところ。日本人でも外国人でも最初は地域や出身国などの差異を中心に、交流をしがちだが、仲が深まると地域性(〜人だから…)よりも個人性(〇〇さんは××)という面にピントが合ってくる。そこがよく表現されていたように思う。
国家間と個人間が溶け合いながら融合していく流れは、言語の問題が公共的かつ個人的である面を表していて美しかった。 -
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だれといても、どこにいても、自分の一番近くにいるのは自分自身。
京都の人のものの言い方をよく聞く揶揄したり酷いねという話があるが、日本中の人は皆似たようなことをしたり言ったりして、部外者自分と出自や所属が違うものをソフトに本当にソフトに悪気のないふりをして、いいつらうのだ。悪気はないふりをしているだけで悪気は大いにある。
助詞の使い方などちょっとしたことでかなりきちんと表現される嫌味悪気意地悪。この日本的なるもの。自分もやってるかなと自省する。
親子、母娘の、と本の説明にあるが、
確かに母親と娘の関係を中心に父又は夫との関係も強く書かれていて、内容には、瀧波ユカリ氏の連載中の漫画わたしたちは無 -
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「日本人でありながら日本の悪口さえ言っておけば自分の価値が信じられるような人が喜ぶ作品は、一切書かない」という言葉に突き刺された。その言葉が指し示す対象に少なからず自分は含まれているように思ったから。
日本社会に強力にはたらく単一化の力学に対して存在の複雑さと多様さを取り戻す戦い。そもそも国家、国籍、国境という概念が歪で、その概念に適さない人間が歪なわけではないということ。
自分の過去の不適切な発言が思い起こされ、また、自分が今も気づかずしてしまっている差別的言動が必ずあるだろうということに消え入りたくなる。
しかし惑う存在として存在することを肯定してくれるこのエッセイはとても温かい。 -
Posted by ブクログ
日本人の父と台湾人の母を持つ主人公が、母の言葉である「中国語」を学びに上海に留学。
日本人に見えるけれど中国語を話せる、とか、母が台湾人ならもっと上手く中国語が話せるのではないかとか、帰化した中国人の両親を持つ子どもの母語は日本語が、とか…ナニジンでナニゴが喋れるかという絶妙なややこしさを軽やかに描き出して見せているなと思った。
日本人の母と台湾人の父を持ち、日本語を話すように育てられたリーリーや、正確な?中国語を「普通語」として教えようとしている上海の漢語学校教師、関西弁と中国語を話すシュンヤ。
シュンヤが「言語と個人の関係は、もっと自由なはず」と言う、これがテーマかな。 -
Posted by ブクログ
前回の『魯肉飯のさえずり』が母と娘の話だとすると今回は父と娘の話で、よくぞいろんな人の気持ちが分かるのね!!と思う。そんな感想怒られそう…。だけど小説家が凄いと思うのはいつもそういうところ。自分の気持ち、自分が体験したことなら色々深く分かりそうなものだけど、それ以外のことや人の気持ちをなぜその機微まで理解して書けるのか…。
台湾と日本、LGBT、歴史や経済といった話でもあり、いろいろな背景が絡み合って物語が、人物達の心が深まっていてそれが伝わってくる。
お互いを想い合っているが故に苦しいというのは究極だな!自分の気持ちを無視できないけれど、そのために相手を苦しませていることもわかって、その -
Posted by ブクログ
軽やかなBGMのように淡々と物語が語られる。4遍のなかでは「被写体の幸福」に惹かれた。
日本の統治下で育った祖父が愛する日本の文化と日本語の世界。それを聞きながら育った台湾の少女が、日本に留学する。日本は好きだが、同時にいつも台湾のことも大切に思っている。日本語読みで名を呼んで欲しいと日本人の恋人に頼むと、「日本人になりたいんだね」との反応。否、そうではないと訴えるが、恋人にはこの心の機微がわからない。
かつて外国に住んでいたころは、慣れるにつれ、その国の文化や価値観に魅せられることも多かった。それを自分を育てた日本の文化や社会の慣行と比較する。一方を選択すればよいという話ではないのだが、