温又柔のレビュー一覧

  • 私のものではない国で

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    台湾人の両親のもとに台湾で生まれ、3歳で日本に移住し、ほぼ日本語の中で育った著者のエッセイや対談などをまとめた作品。偏見や歴史認識の問題、著者が幼い頃に少し見せた特別な存在であることの優越感など肩肘張らずに書かれていた。技術の進歩とともに世界がぎゅっと小さくなり人の往来もさらにハードルが低くなって日本の中にも様々な人が増えてくるだろう。多様性という言葉が死語になるくらいの変化が起こるような気もする。

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    2023年05月02日
  • 永遠年軽

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    台湾と中国と日本、3つの国の間で迷い、葛藤する主人公。
    今、中国と台湾の間は微妙だ。
    入管法についても様々な議論がある。
    今日的な問題をバックにしながら、自分は一体何者なのか、と問い続ける主人公達。
    国と国の間で悩むことのない者には中々理解できない難しいテーマだった。

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    2023年04月30日
  • 永遠年軽

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    最後の「おりこうさん」はすこぶる面白かった。
    他の二篇は、文体が気になってあまり入り込めず。
    作者独自の文体だと思えばいいのか、ネイティブでないせいなのか、いわゆる「手練れの書き手」ではないせいなのか、そこのところが今ひとつわからないのだが。

    最後の「おりこうさん」は、その文体さえも、冴えがあった。これからどんどん上手くなって行く作家なのかもしれない。なにしろ、書く題材が、他の人には無いものがあるので、この人が自在に日本語を操って、日本という国を見たことがない調理法で作品に仕上げていく日は近いように思う。

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    2023年02月25日
  • 真ん中の子どもたち

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    複数の国の親を持つ子どもたち(といっても主人公が20歳頃の話が中心だが)が、留学先で同じような境遇の仲間と出会い、自分のアイデンティティに対峙する物語。「真ん中の子どもたち」というタイトルは「子どもが真ん中」という意味合いかと思って読み始めたが、そうではなかった。「国境のこっち・あっち」ではなく、自分を「真ん中」に据えた子どもというニュアンスだろう。
    上海を舞台にした話で、要所要所に出てくる「におい」が印象的だった。

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    2023年01月21日
  • 永遠年軽

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    短編集3篇
    台湾人であることと日本人であることの自分の在り方についての思いが生き方に関わってくる。日本人には想像もできない境地だが、祖国に寄せる思いに共感した。

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    2022年12月30日
  • 永遠年軽

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    台湾をルーツにもつ女性の日常の心の葛藤を描いている。アイデンティティの確立時期の不安定な時期とも重なる心情が胸に響いた。日本人として、日本、台湾、中国の関係性を学び直しそれぞれの視点から見つめ直したいと感じた。

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    2022年12月30日
  • 私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ

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    大変面白い書き出しでしたが、途中から、狭い視野の慰めあいのようで、そうですね。って感じです。
    ただ、多様性を語る時に、自分の中の価値意識を、見直す必要があるように思いました。

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    2021年09月12日
  • 真ん中の子どもたち

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    もう少し掘り下げて欲しかったけど~3歳で台湾から日本に来た琴子は母の言葉を習いたくて上海への短期留学を決める。父は台湾の民俗研究者で日本人だ。上海へ行くと、台湾出身は出自を否定され、発音は矯正される羽目になる。同じ思いを抱えるのは、父親が台湾人の玲玲と両親が台湾出身で日本に帰化した龍舜哉だ。自分は偽日本人なのか、台湾語でも使われているアイノコというのがピンとくる。舜哉との関係はこの留学期間だけだけど、日本にいるボーイフレンドの彗は物足りない。帰国の日が近づいて二十歳の誕生日を迎える~ルーツがあちこちにある台湾に中国語を習いに来る学生達を世話するために台湾に渡る・という落ちは弱いなぁ

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    2019年09月26日
  • 空港時光

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    すらすら読めればもっと面白いのでしょうが浅学の徒の悲しさ、つっかえもっかえ読み終えた。互いに親派の多い日本と台湾だけど実は加害側と被害側であったという現実をついつい忘れがちですよね。ここにはその点はストレートに出て来ないけど、水面下に少し透けて見える気がしました。友達は以前から 是非とも訪問すべき国 だと盛んに薦めてくれるのですが、いまだに行けていません 泣。

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    2019年04月12日
  • 空港時光

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    日本と台湾、それぞれの人々と歴史、つまりそれらは人生なわけだけど、それらが交差する空港で彼らはすれ違い、出会い、視線を交わしたり言葉を交わしたりして、またそれぞれの道へと進んでゆく。というのがもうタイトルから想像できるし、実際読んでそのとおりなのでなんとなく物足りないというか、うん、そうだね。という感じ。
    年配の方々の話す言葉のなかで日本語と中国語が(台湾での、日本統治下における教育のせいで)混ざりあって表現されてくるところは興味深かった、しかもそれが嫌味なく表現されているので、余計に胸がぎゅっとした、特筆すべきはそのあたりかな・・・面白くないわけではないのだが、ずば抜けて心に残るかと言われる

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    2018年10月11日
  • 空港時光

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    表題作は(日本と台湾を行き来する)空港に集う人物たちの心象風景をスケッチした10編のショートストーリーで構成されている。

    日本統治時代から戦後の国民党支配時代、長く続いた戒厳令下の時代。大きな時代のうねりのなかで生きてきた台湾の人たち。でも、そんな歴史的背景の説明を極力省略し、普通の台湾の人たちのファミリー・ヒストリーに仕上げている。

    そこで描かれる、祖父母、父母、自身、子、世代間で異なる日本に対する意識のギャップ。さわやかでもあり、ほろにがくもあり、うしろめたくもあり。いささか複雑な思いで読み終えた。

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    2018年09月23日
  • 真ん中の子どもたち

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    作者じしんの分身と思われる主人公の天原琴子、ミーミーは、日本人の父と台湾人の母をもつ日本育ち。
    幼いころから親しんできた、しかし日本語に囲まれて育つうちにいつか遠のいてしまった母の言葉を習得したい。そう思って留学した先の中国・上海で、彼女は、ここで教え込まれる「正しい中国語」がじぶんの求める「母の言葉」ではなかったことに気づく。ここちよく自分を受け入れてくれる母語の代わりに彼女が見出したのは、ここでも「訛りのある」言葉を話す中途半端な存在として扱われる自分自身だった。
    小説は、ミーミーが同じ中国語学校に通う日本からの(必ずしも「日本人」ではない)留学生仲間――なかでも、台湾人の父親と日本人の母

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    2018年06月16日
  • 真ん中の子どもたち

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    日本人の父と台湾人の母を持ち、3歳までは台湾で過ごしていた琴子。日本では日本語を使っていたが、母の母語への興味があり、19歳の時に上海に中国語を学びに行く。上海で、「台湾人なんていない、中国人だ」「君の中国語は訛っている。台湾の訛りだ」「母親が中国人なのに中国語が下手だね」みたいな言葉を耳にし、自分とは何かがわからなくなり、思い悩む。琴子の悩みは、日本人として普通に生まれ育っていたら全く持つことのない悩み。こんな悩みを持つ人がいるんだ、と知ることができたのはよかった。

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    2018年05月12日
  • 真ん中の子どもたち

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    台湾人の母と日本人の父を持つミーミー.上海留学での学生生活の中で母国語中国語の存在意義を問い直す.青春時代の友情や恋はもちろん,厳格な教師との触れ合いなどが自分を成長させその後の進路を決める,とても中身の濃い1月の留学生活を描いている.そして何よりミーミーの父母の包み込むような愛が素敵だ.

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    2018年03月20日
  • 真ん中の子どもたち

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    芥川賞の一件で見聞きして気になっていた本。
    台湾人の母と日本人の父を持つ少女が、中国、台湾、日本のことばの狭間でアイデンティティーのゆらぎを感じながら、自分を確立していくお話。おそらく作者自身の生涯のテーマ。少なくとも私は対岸の火事とは思わず興味深く読み進めた。
    先日、シンガポールと日本人のハーフの小さな男の子がぺらぺらの鳥取弁を話していて驚いた。驚くのはこっちの勝手で、彼にしてみればふつうのこと。
    「台湾人の母を持つわりには中国語はへただね」とか、「見かけは日本人ではないのに日本語を喋れるなんてすごい」とか。何気なく私たちが普段口にしかねない「ふつう」を基準にした物言いが、当人達にとっては大

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    2018年02月07日
  • 真ん中の子どもたち

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    アメトークで光浦靖子さんが紹介しているのを見て読んでみました。
    セリフでストーリー展開していくので、読みやすい。

    ハーフや帰国子女は、自分のアイデンティティーが何か悩むことが多いと聞いたことがあったけど、この本を読んで想像できるようになった。

    グローバル化が進んで、日本人も海外に駐在する人が多くなると、「何人か」という括りではしっくりこなくなるんだろうなぁ。

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    2018年01月24日
  • 真ん中の子どもたち

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    以前読んだ『台湾生まれ 日本語育ち』の小説版?
    日本人として産まれると母語とか母国語について考える機会は少ない。

    言葉と歴史が絡み合って個人を越えた遠い過去を引きずる、
    世界にはそういう人々がたくさん存在していると気づかされる。

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    2018年01月17日
  • 来福の家

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    同級生のだれもが、日本語を話すおかあさんがいて、パスポートが日本国発行で、中国語は習うものであって…自分は日本での生活は長いのに、おかあさんの日本語は完璧ではないし、パスポートは日本国発行でないし、中国語も習わないと話せない。いろいろな葛藤が個人の中にくすぶっていて、そこを想像しながら、リービ英雄や柳美里の作品を思い出していました。

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    2016年08月12日
  • 来福の家

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    ネタバレ

    2009年すばる文学賞佳作。両親が台湾人で、3歳から日本で育った著者が書いた、ほぼ自身と同じ境遇の女性が主人公の話。日本語と台湾語と中国語が途中に入り混じり、主人公の両親、祖母の話、今の恋人との話と行ったり来たりして読みづらいところもあったけれど、根底に流れている温かさ、みたいなところがよかった。

    表題作が後半に収められているけれど、こっちは更にストーリーがなかったけれど、まあ、明るい光に満ち溢れていて、なるほど〜、言葉は音かと思いながらさーっと読んだ。

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    2013年12月02日
  • 来福の家

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    ネタバレ

     新井良二さんの装画がすてき。

     いっしょに収録された「好去好来歌」のほうが残った。
     主人公は三歳のときに台湾から日本へやってきたが、母親は日本語を話せない。
    そんななかで自分が何人かと考えてみても、日本にいれば台湾人で
    台湾へ行けば日本人になる。
     どんな居心地なのだろう。
     中国語をおりまぜながらうまく描いている。

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    2013年01月20日