地政学に興味を持ち始めてはや10年、今も本屋さんで「地政学」という単語が入った本を見ると、つい手にとってしまいます。この本もそんな一冊でした。
素晴らしい本でした、最初に「地政学」とはどんな学問かを多面的に説明した上で、地政学はどんな分野の学問と関わっているのか、そして最近のニュースの原因を理解するには「地政学」の考え方が役に立つことを説明しています。また、国毎に異なって見える戦略は、地政学に基づいて立てられていると、私には理解できました。
以下は気になったポイントです。
・地政学が最強の教養である理由、1) 世界情勢の解像度が、2) 長期未来予測の頼もしい ツール になる、3)教養が身につく、4)視座が変わる ・相手の立場に立てる(p26)
・ 地政学とは、 価値判断を一旦 横に置いて、価格的観察のアプローチで、地理的な条件に注目して、国の行動を予測する学問である。自然科学のように 研究室で実験ができるものではなく、予測の難しい 様々な人々の思いや 周辺国の行動が介入してくる国家の外交的意思決定の動向を探るものなので完璧な予測はできないが、 各国の行動の一定の方向性を探るには 有意義である。不正額は 国際関係の背後にある中長期的な国の動きを読む アプローチであり、 それに対して、国際関係論や 国際関係分析は、短期の国同士の動きに注目するアプローチである(p29)
・ アリストテレス や ダヴィンチ 同様に、あらゆる 学問分野を統合しないと世界は見えてこない。世界は学問別にはできていない。学問分野は 研究しやすいように人間が勝手に細分化しただけである(p41) 学問分野とは 、そもそも人間が研究しやすいように 勝手に分けたものである。リベラルアーツという言葉は、元々 ギリシャ・ ローマ時代の「自由7課: 文法・修辞・弁証・ 算術・ 幾何・ 天文・ 音楽」 に起源を持っている(p44)
・地政学 と言うと 基本は 、政治学+ 地理学である。その2つに加えて、 経済学・哲学・歴史学・宗教学・文化人類学などにもアプローチする必要がある。それらは世界を正しく理解しようとすれば 避けて通れない(p42)
・ 人が表面上に出している行動と深層心理は必ずしも一致しない。これは一般の人間にも当てはまる。相手を威嚇する者ほど恐怖心を強く持っている(p51)
・あらゆる 観察対象には、白も黒も同時に存在する。光と影があって立体的に物事が見える、 引力と遠心力が作用して今の場所にある。白か黒か 竹だけで割ったような見方に絶対してはいけない、 この考え方を「 オクシモロン」という(p52)
・現実的には、平和とは力の均衡状態のことを言う 普天 今回のウクライナ 戦争は、プーチン氏がウクライナにおける NATO とロシアの均衡状態が崩れたと判断して起こした(p60)
・地政学の思考法は、 地理 + 6つの要素である、気候・周辺国・民族性・産業・歴史・統治体系である(p66)
・封建制度は、 豊かな土壌・豊富な水資源・緩やかな分権的統治・ 騎馬民族の不在、という条件が揃った場所にしか生まれなかった。封建制度 が生まれて、 余剰生産と貴族が生まれた、小金持ちとその人たちが 投資に回せるお金が生まれた、 つまり 封建制度 が生まれなければ、起業家精神 を発揮できる人たちは誕生しなかった。その人たちが 農業の生産性を向上させることで、さらに儲けられることに気づいた、 彼らが資本主義の担い手になった(p74)
・ 第1位にある覇権国家は、覇権に挑戦する国、 いわゆる 第2位の国を叩き落としたい。その時に、2位の国を落としたいという共通の利益を持つ 3位の国を利用する。現在は覇権 国家 アメリカが、3位の 経済大国 日本と組んで中国を牽制している。 かつて 欧州における覇権 国家 イギリスが、その派遣に挑戦してきた ドイツを、欧州ではない 新興国 アメリカと組んで攻めたのも この例に当たる(p80)
・ 巨大で豊かな島国 アメリカは、資源と食料生産能力に恵まれている。加えて 太平洋も 大西洋 も、封鎖しようにも マラッカ海峡 や ホルムズ海峡 や台湾海峡のようなチョークポイントがなく、兵糧攻めが不可能に近い(p88)
・島国 シーパワーにとって、他国の領土を侵略し そこを統治することは、飛び地の支配に他ならない。補給も容易ではなく、文化も統治体系も違う飛び地を支配するのは容易ではない 。一度 支配したら、継続的に補給しながら飛び地に人材を派遣して統治 し続けるのは至難の技である。アメリカは 後に、ベトナム・ イラク・アフガニスタンでも ほろ苦い経験をし 学んだ。それより 交易や金融を使って、飛び地でも影響を与え続ける方が効率的である、そして徐々に時刻に有利な国際秩序を構築して システムで疑似 コントロールをする方が 理にかなっている(p90)
・日本版 シリコンバレー など 日本政府も新興企業振興の掛け声をかけるが、社会の成り立ちが違う、 日本人がアメリカ人には勝てないということではなく、社会の成り立ちが 違う。世界中からリスクを取って集まった人たちが作ったエコシステムを簡単には真似ることができない(p96)
・海を制する者が世界を 制するのは今でも常の世である。デジタルが幅をきかせる時代でも、世界の物流の95%以上は 海路を通じている、そしてインターネット上の通信の99%以上は海底ケーブルを通じて行われる(p104)
・ アメリカにとっての世界 三大 重要地域(アジア・欧州・中東)の中で、中東の順位は下がり、ウクライナ情勢で欧州、情勢でアジア、この2つの地域の重みが増している(p109)
・確率は相当 低いが、もし仮に台湾有事が起これば、ウクライナ 戦争とは インパクトが違う。 世界1位 、2位、3位の経済を巻き込む 戦い だからだ 。その意味ではやはり危機は増していると想定した方がいいだろう(p116)
・西洋と同じく 封建制度 が 生まれ、260年を超える文献的な 幕藩体制が続き、各藩による独自の競争政策で商業・工業・教育・財政が各地で培われてきた。これが やがて 日本 発展の 素地となる(p121) 日本は江戸時代末期ですでに世界第7位の人口と世界 第8位の GDP を誇っていた江戸時代後期から世界の中では結構大きな国であった(p122) 戦後 世界9位まで落ち込んだ 日本の GDP は 1984年には世界第2位まで躍進した(p126)
・ 日本で1日に消費する石油量は約400万 バーレルと言われ、30万トン級の単価が12時間に1度は日本を訪れる計算になる。逆の言い方をすると、12時間に1度の輸入が途絶えると日本社会や経済は混乱に陥ることになる(p127)
・南北に長大な日本列島は、中国本土から見て中国の海洋進出を見事にブロックする会場の万里の長城 である。海を隔てる もう一つの超大国アメリカから見ると、日本は中国の太平洋進出を抑える ちょうどいい 防波堤である。その定年の万里の長城が途切れて ぽっかり空いた場所が尖閣諸島である(p130) 中国は 台湾有事に備えるため、台湾の東側の海域= 尖閣諸島を抑えたいので、中国は尖閣諸島が欲しい(p133)
・北方4島を日本に返還してしまえばアメリカがそこに ロシアを牽制する 最前線基地を作る可能性がある。それはロシアにとって最大の脅威となる。したがって 北方領土は絶対に返還されない(p137)
・ 社会や国民性は 、チリや電工が長年にわたってもたらす環境に大きく左右される点、良いも悪いも、ベストも ワーストも簡単には定義できない。日本社会が強いリーダーシップを好まず、 立派なリーダーが現れず 危機管理に弱いのも、 自然環境がもたらした長い歴史的背景がある。世界的なリーダーを生む 国家には、それ以上に不幸な歴史もある(p156)
・ 一度 征服した領土に徹底的にこだわるのがランド パワーだ、 中国としては、もし 反発するばかり 少数民族を独立させたらどうなるか。おそらくその領土が独立国になれば、 厳しい 弾圧を続けていた自国の 敵対国 として 隣国で国境線を共有することになる。加えて 他の少数民族に与えるインパクトも大きい、反発の強い 一つを独立させてしまったらそれは連鎖するであろう。チベットが独立したらウイグル も、そしてそれに続くところもあるかもしれない 実際 ソ連 崩壊時にソ連は 多くの元 自国 領土に独立されて縮小してしまった (p167)
・騎馬民族の存在と侵略によって中国王朝は社会を成熟させることが叶わなかった。騎馬民族に対抗して統治するためにも、常に先制君主による強権的な国家運営しかできなかった(p171) 火薬・コンパス・印刷 という人類の三大発明は全て中国で生まれ、暦 作成のための 天文学も世界で最も発展していたが、封建制と それが生み出す 私有財産制度が生まれず、発明された技術を商業利用して稼ぐ 担い手が中国では現れなかった(p172)
・ 中国は 5 G で優位に立ち 世界のリチウム電池の約80%を生産する、 しかし、 バイオテクノロジー・クラウドコンピューティング・ AI では 欧米 が優位に立つという。中国は成果目標が明確な分野には強いが、そうでない分野では弱いことがわかる。量の投入で勝負の行方が見えるような分野( 電池開発・ドローン製造・高速鉄道・電気自動車など)では中国式の国家主導 イノベーション 創発が機能するが、いくら 量を投入しても勝負の 行方が簡単に見えないような分野(AI・バイオ)では機能しない(P192)
・ 北極海 ルートは 南回りルートに比べて 距離が約1.4万 km 短くなる、輸送時間の短縮はもちろん 燃料費・温室効果ガスも削減できる。加えて 天然のコールドチェーン なので 薬品や食料の輸送に適している 、 そして 極寒の北極海 ルートには 海賊がいない。日本はもちろん、韓国・中国・アジア諸国から見ると、日本の北海道、特に釧路 が北極海 ルートの就業拠点となる可能性が高いでん 数十年後にはシンガポールに代わって 釧路 がアジアのハブ港になるかもしれない(p233)
・ イスラム教で豚を食べないのは、 限られた食料で生き抜くための知恵だ。牛も ラクダ も反芻 動物で人間が食べるものは食べない。しかし 豚は雑食で人間と食べ物が競合する。歌は 食肉としての価値はあるがそれ以上に メリットが多いとは言えない、豚は短足で砂漠を移動するのに向いていない。このように イスラム教は乾燥地で生き抜く知恵を伝える目的を持っている(p254)
・インターネット よりも 世界的にインパクトを与えると言われるのが Web 3である。Web2が 情報をインターネットに載せることだったが。 Web 3は価値 をインターネットにブロックチェーンを使って載せることである。そのインパクトは 1桁も2桁も違うと言われる、それを使って国づくりをしている最先端 都市が中東のドバイである(P255)
・過去の人類の経済誌の中で 9割以上の機関、中国とインドで 世界の GDP の過半を占めてきた。この二大経済大国の中間地点にあったのが 東南アジアである。そして 長年 このに大国間の物流のチョークポイントとなってきたのが マラッカ海峡である(P290) このマラッカ海峡に 11本 、 シンガポール海峡には 22本の海底ケーブルが走っている(p291)
・人は居場所によって 思考に多大な影響を受ける。ミクロではそれを 風水 と呼び、マクロでは、地政学 がそれに近い。 居場所が 気候を決め、歴史を形成し、周辺の国を規定し、それらが 産業や食料生産まで規定する。そしてそれらは 政治体系 や外交的 手段の傾向にまで影響がある。 従って相手を知るためのロールプレイとしても、地政学 は、とても有効である(p341)
2025年11月29日読破
2025年12月3日作成