稲村文吾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ目の見えない少年が語り手&探偵役というだけで、どう物語られていくのか気になるが、読んで見ると初っ端からホームズばりの観察力を駆使した推察が繰り広げられ、面白さで読み進めることができる。
海外ミステリではあるものの、ミステリとしては非常に国内ミステリと読み心地が似ている。
それも新本格に近いケレン味。
そして新本格に感じたある種の屈折よりも、まっすぐというか純粋というか、樹形図の別のノードが進んだ先を見ているかのようだった。
ありがたいことに中国語の人名が同一ページ内でもすべてにルビが振られているのがとても助かる。
以下、真相に言及した感想としては……
・日本と中国では仕掛けの効果が異なるのでは?
主人公の少年は、現在はドイツに暮らしているが、生まれた国である中国に対して誇りを持っており、それが支えにすらなっている。
どうしてそこまでこだわるのか。自分が読んでこの部分に疑問を抱いていた。
この部分に関する「何故」が明確に描かれずに物語が進行するからだ。
中国の作家だから? アイデンティティの拠り所として、中国人であることの重要性があるのか? 書くまでもない自明のこと?
このように、海外の作家ということに理由の在り処を考えたりもした。
けれども、この「何故」をミステリという観点から考えたとき、語り手の正体にピンとくることが出来た。(人種が違うというところまでで、黒人というところまでは特定できなかったけど)
で、本題としては、この自分が気づくに至った回路は中国を母国とする人間にとってはどうなるのか?ということ。
(自分)
中国生まれであることへの主人公のこだわりの理由への疑問
↓
ミステリ的仕掛けへの疑い
ここで自分が抱いた疑問点に関して、中国を母国とする人たちは同じように疑問を抱くのだろうか?
日本人である自分からすれば、そのこだわり自体の動機が謎として目の前に立ち現れてくる。
けれども、母国の人たちにとっては、それは当然のものなのかも知れない。またはやはり同じように疑問に感じるのかも知れない。
(ちょっと容疑者X論争の笠井潔の指摘を思い出した。見えないという死角の可能性が、ある層に発生し得る点において)
そして、疑問に思わず気づけなかったとしたら、この仕掛けのもたらす効果は、きっと外国人である自分とは異なった衝撃となるのではないか?
本作、わりときわどいのでは?
・叙述トリックはひとつ?
「この小説には一つ叙述トリックが含まれている」
阿香(アーシャン)=楽楽(ローロー)
作中内で言及される叙述トリックは上記だけれど、語り手が黒人であるというのも叙述トリックであり、ここの解釈の仕方が分かっていない。
・単に面白い作品だからという理由だけではなく、これ翻訳して日本人に読ませたらどうなるんやろ?というような翻訳者の企みを感じる(良いと思う)。 -
Posted by ブクログ
一部ではあるが、犯人と自分がシンクロして眩暈を感じた。青春「百合」ミステリー。前作「元年春之祭」は、前漢時代が舞台だったが、今回は現代の高校が舞台。難しい漢字は出てこなかったが、中国の人名になじみがないので、男女の区別がつかなかった。別紙で登場人物表が挟み込まれていた。これ、しおりに代わりにもなる。
今作も若い女の子が主役。頭は切れるが、決して明るい性格ではないし、曲がったところもある。そして、百合の要素。今作は、ダークな「古典部」シリーズといった趣がある。ライトノベルならぬダークノベルか。前作もそうだったけど、この感じは嫌いではない。あと、終章は蛇足で、いらないと思った。 -
Posted by ブクログ
ほんタメのたくみさんがおすすめしていたので。
やたら主人公が中国っぽい名前だなと思っていたら、作者が中国の方だったようで、どうやら翻訳されたものらしい。
イギリスやアメリカの推理小説は読んだことがあったけれど、中国は初めてだ。世界中の本が読めて幸せだね。ちなみに翻訳ものって読みにくいのもあるけど、これは読みやすい文体だった。
連作短編集の形をとっていて、文学少女の私と数学小説の女の子、主人公のルームメイトが共通する登場人物。
フェルマーの最終定理の章が1番好きだった。途中の式が正しいか証明できなくても、結論が正しいと証明できるというのは面白かった。
推理小説のトリックがすごくて面白い!というのではなかったのだけれど、数学と絡めた推理方法や解説が今までになくてよかった。
途中、日本の小説を取り寄せるくだりがあって、吉屋信子の名前が出てきてびっくり。最近よく見るから縁があるのか読んだ方がいい気がしてきた。
でも確かに、吉屋信子って少女小説を書いていたからか本作もそれっぽい感じもするかも(?)
あと中国の地理が分からなくて、いつも日本とか異世界ものばっかり読むから新鮮で面白い〜となった。