稲村文吾のレビュー一覧
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古代(?)中国を舞台にした華文ミステリ。その時代や場所について、会話を通して数多くの説明がなされ、それが紙幅のほとんどを占める。とはいえ、嫌になって投げてしまうこともなく、すんなり読めてしまうから、そこはそんなに気にならない。もう少し中国史を勉強していればな、とは思った。
女性同士の感情の(鋭利な)矢印があっちこっちに向いていて、どの関係性も濃厚だった。肝心のミステリ要素は、トリック云々は大した問題とならず、その動機が主な争点となっているように感じた。また、取り立てて意味のないような会話が、後々生きてくる様子は爽快で、構成の上手さを見せつけられた。
一方で会話の流れや、人の行動に無理矢理 -
Posted by ブクログ
初めて読んだ中国作家のミステリ作品。紀元前の漢の時代を舞台に殺人事件を解決する。漢詩が多用されており、詳しくない人はそこで読むのを諦めてしまうかもしれないが、それは勿体無い。漢詩の部分は中国文化を楽しむエッセンスと捉え、それほど気にしないで謎解きに集中すれば良い。
東洋的なミステリ作品であり、欧米諸国の方々には理解しにくい概念もありそうだ。これを日本語で読めて理解できる幸せがあった。読者への挑戦が2つ用意されており、絶対に犯人を指摘してやると思うものの、なんとなく犯人は想像つくが動機やトリックを看破するまではいかなかった。まあ、私の実力といってしまえばそれまでなのだけど。 -
Posted by ブクログ
中国前漢時代の少女たちを描いた本格ミステリ。
かつて国の祭祀を担った名家、観一族の春の祭儀を目前にひかえて当主の妹が殺され、しかも犯人は消えたとしか思えない状況だった。観家に滞在していた豪族の娘、於陵葵は当主に頼まれて事件の解決に挑むが…
前漢というまったくなじみのない時代背景と、漢籍の蘊蓄が手強いが、少女たちが生き生きと描かれている(キャラ的にはあまり好きになれない人が多かったけど)ので読み進むことができた。古の女性にしてはみんな学があるし物事をしっかり考えていることに最初は驚いたが、教育を受けるかわりに人生を捧げなければならない使命がそれぞれにある境遇なのがわかって納得した。
トリックより