稲村文吾のレビュー一覧
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香港の作家、陳浩基の自選短篇集
ジャンル固定ではなく横断しているので記載する
各話を◎◯□△☓の順でなんとなく。
1「藍を見つめる藍」(ミステリ)□
藍(らん)は仕事が出来る真面目な男という評価だった。しかし彼には人には言えない趣味があった。1人の女性のブログを熱心に見ること、そしてアンダーグラウンドサイト内を閲覧することが趣味であった
・大事な部分が読者にはアンフェア過ぎるので僕の価値観だとミステリとしてはまったく評価出来ない。でも読み物としては大変面白かった。そういう物なのだと思う
2「サンタクロース殺し」(掌編)□
クリスマスの日、ホームレス達が集まって暖を取っていた。そこで1人がサンタクロース殺しという小話を始めた
・数行の謎部分(小話)にその他を埋め尽くす解決編。恐ろしい構成。しかも登場人物も言うが「なんだ、その話つまんな」なのだ。しかし1人のホームレスの発言で小話が別角度で急に、という内容。珍しいのはショートミステリ物はほとんどキレ味が醍醐味と思うのだけれどこの作品、そうではない。予想外の終わり。良いか悪いかでなく、本当に珍しいと思う。小話が小話のまま昇華されている
3「頭頂」(ホラー)△
僕は人の頭の上に化け物が見える。あまりに気持ち悪く、他の人は見えないようだ。僕は病院へと通った
・完全に伊藤潤二の世界だった。オチも。
日本ではよく見るタイプ…ですね
4「時は金なり」(SF)◯
僕はモテる彼女に振り向いてもらう為に金が必要だった。そこに時間を売り買いしてくれる会社を見つけ…
・世にも奇妙な物語。が、本文ラストはこのテーマ、この分量でしか書けない閃光のようなセリフだった。正直普遍的だなーと読んでいた所にガツンと頭を叩かれた気持ちになった。これを書きたかったからあえて淡々と「普通の話」を書いたのだろう。なるほどなあ……油断しました
5「習作 一」(掌編)☓
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・なんすかこれ?
6「作家デビュー殺人事件」(本ミス)□
作家になりたいなら君も1人殺してごらん、そうすると本物のミステリーが書けるよ。と編集者に言われた作家志望が自作の為に完全犯罪を現実で行う
・もっとトリックを考えるシーンに文量割いていれば良作だったかもしれない。この短さが良いのかもしれないけれど、作家志望が作家になれると望みをかけたトリック思考過程はもっと丁寧に見たかった
7「沈黙は必要だ」(掌編)△
カイジの地下労働施設のような所で働く奴隷の男の物語
・伏線が…なさすぎる…
8「今年の大晦日はひときわ寒かった」(掌編)◯
今年の大晦日は、ひときわ寒かった。けれどもぼくの心は暖まっている。
・原稿用紙換算でたった6枚。ひときわ寒い終わり方。好物です
9「カーラ星第九号事件」(SFミステリ)◎
宇宙探査船に探偵デュパパン(原文ママ)登場
・最高の問題作。僕は大好き。ただこれだけ連続で2回読みました。それは何故か。
初読時とある事情でアストロノーカが頭から離れなくてなんにも文字が入ってこなかったんです。わかるって人は親友になれると思う。知らない人はそれでいい
10「いとしのエリー」(ミステリ)◎
妻の妹と旦那がディナーに遊びに来ていた。しかし愛しの妻は上の階で死んでいるのだ
・お も し ろ い 何が面白いか書くとネタバレになるので何も書けない無念。
11「習作 ニ」(掌編)△
練習作2つ目
・一よりは楽しめた。でも商用紙に載せるようなもんでしょうかね
12「珈琲と煙草」(SF)△
3日間の記憶がない。珈琲を飲もうとコンビニに行くが冷蔵庫には煙草が入っていた
・正直読み手がミステリ読みなのかSF読みなのかでけっこう変わりそう。僕はSFとして読みましたけど平均点以下です。ミステリっぽく読めば面白い気もします。ディックの系譜
13「姉妹」(イヤミス)□
主人公の彼女の姉が死体で発見される。容疑者として疑われそうな彼女の為、主人公は死体処理に奔走する
・読後感はこの本でNO1でした
14「悪魔団殺(怪)事件」(SFミス)◯
秘密基地で怪人の死体が発見される!頭のよくない怪人たちは混乱する!!
・なんと日本人が書きそうなネタだろうか。最高。悪の組織の悲報感がたまらない
15「霊視」(ホラミス)□
深夜の公園、ホームレスの男が語る。昔、霊能力者として警察に協力していたが冤罪を起こしてしまったと
・なんか乙一の作品でこういうの読んだような気が…
16「習作 三」(掌編)□
練習作3
・ノーコメント
17「見えないX」(本格ミステリ)◯
大学生たちが教室内に潜むXは誰なのか思考合戦。虚偽の申告、コンゲーム
・人狼。普通に読めばこの本で1番質が高いと思います。至る所にある手掛かりが再読を促します
熱狂する大学生、思考読み物として大変面白い
総じて平均レベルが高かった
ミステリ、SF半々でしょうか。でもSFモノは正直いまいちなのでミステリとしてお勧めします -
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文学少女が自作した推理小説に穴がないかを、数学の天才少女に読んでもらって、数学的観点から指摘してもらうお話。
数学は高1で諦めた自分にとっては、秋槎と同様、韓采蘆の言ってることはちんぷんかんぷんでしたが、推理小説と数学の考え方がこんなに近しいものなんて目から鱗でした。
作中作の犯人当てだけでなく、作品を読んで議論している彼女たちの同時進行で事件が起こるのも良いです。
4連作ですが、どのお話も好き。
ほんタメでおすすめされて、尚且つ、たまたまフェルマーの最終定理の解説動画も見ていたので、より2番目の「フェルマー最後の事件」が分かりやすかったです。フェルマーの最終定理も読もう。
続編があれば是非読みたいです。 -
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ネタバレ厳良元警部の気づきと1本の報告で、朝陽(チャオヤン)の人生が180度変わるかも…な最後やばかったな。てか厳良以外の大人を騙し切れる朝陽怖すぎだし頭良すぎ。学年1位、満点、はすごいんだな。でも中2がここまでやれちゃう周りの環境の悪さね、(^^;; 最後の朝陽の日記読んでて、なんかおかしいな今まで読んでた小説と違うじゃん、と思ったら警察を騙す用の日記だったの衝撃だったなー!!子ども3人が張東昇の家に行ってケーキとコーラが出てきた時、薄々怪しいなと思って読んでたけど、朝陽はすぐ気づいたんだろうか、そこは気づかなかったのかな、?
普普と丁浩(耗子)が死んで終わる結末は見たくなかったけど、朝陽が今後平穏に暮らせて大きく育ってくれたらいいなと思う。多分死ぬほど大きい秘密を墓場まで持っていくんだろうけど。 -
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ネタバレ陸秋搓の本は何冊か読んでいて、どれも割りと好きだ。
けれどこの本は作者が好きだからというよりも、タイトルの美しさで手に取った。
『雪が白いとき、かつそのときに限り』
実際に雪は事件にとって重要なアイテムではあったけれど、このタイトルの意味としては、思春期の儚さと、その瞬発力・集中力の強さを表したものなのではないか。
足跡のない白い雪に残された死体。
この密室と言っていい状況の作り方は、読んでもよくわからなかった。
平凡な能力しか持たない自分への嫌悪とか焦りなども、そこまで追いつめられるものなのかとも思う。
一生を平凡に過ごす人。
人生の初期にピークを迎えてしまった人。
そうだね。
人生も半ばを過ぎれば、平凡な人だらけだ。
素晴らしい成果を出せる人なんて一握りしかいない。
最後に二人が交わす会話が哀しい。
「普通も……とても貴重なものだって。それに大事にしないと、すぐになくなってしまうものだって」
それに折り合いをつけられるのが、大人ってことなのかなあ。
でも私、子どもの頃から自分が平凡なのはわかってたけど、それによる嫌悪とか焦りは特になかったなあ。
できる人と比べられるのは嫌だったけど。
大多数の人が平凡だって、子どもの頃から知ってたわ。 -
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劉慈欣が認めた二次創作「三体X」の作者、宝樹の短編集。全7篇。
ユーモアの強い「三国献麵記」すれ違いメロドラマ系の「成都往時」など、どの話も読みやすい。
私は一話目の「穴居するものたち」が好き。おうちだいじ。→
「三国献麵記」は三国時代に詳しければ100倍楽しめたなぁ、と思う内容。吉川三国志を3巻までしか読んでない私、曹操と赤兎馬の関羽しかわからん(笑)
「成都往時」は恩田さんの「ライオンハート」が好きな人にはたまらないのではないかと。私は好き。
「最初のタイムトラベラー」は→
読み返すとじわじわくる怖さと面白さ。まさにショートショート。
全体的に恋愛風味な印象はありつつ、楽しめた一冊。 -
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表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きな抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。
「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。
ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。