稲村文吾のレビュー一覧

  • 文学少女対数学少女

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    文学少女“陸秋槎”と数学少女でミステリと数学の話を四篇。ミステリの考え方、後期クイーン的問題に対する、現実的で数学的なアプローチは読んでいてなるほどなぁと感心してしまった。話にしても日常の謎もあり、しかし殺人もあり…と読み飽きない。同作者の「雪が白いとき、かつそのときに限り」はまだ読めていないので、それも読みたい。

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    2022年01月16日
  • 文学少女対数学少女

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    ネタバレ

    ――

     Das Wesen die Detektivgeschichte liegt gerade in ihrer Freiheit.


     青春百合小説に擬態しているものの、その実体は数学×ミステリ論を元に後期クイーン的問題を中心としたミステリの不自由さに真っ向から挑んだ論文的作品。うわぁなんだこれ!
     不完全で不自由で自由なその論点は、確かに青春の証明不可能性と通じるところがあるのかもしれない。


     数学は基礎の基礎で逃げ出した自分にも、その仕組みは理解できるくらいにそれぞれの数学的要素が語られているのが凄い。数学愛もミステリ愛もなきゃできないなぁ。
     数学者というか数学愛好家という

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    2021年01月05日
  • 文学少女対数学少女

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    後期クイーン的問題と真っ向から切り結ぶメタミステリの短編集。もっとてらいのないパズラーだと思い込んでいたのだけれど、えらく屈折している。その手の議論にあまり関心のない向きには、(ミステリとしては)少し退屈だが、代わりに炸裂する百合感が興味深い。さすがに「アステリズムに花束を」への参加を「強要」したと作者本人が明言するだけのことはあるか。

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    2020年12月07日
  • 死亡通知書 暗黒者

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    三部作の第一部。
    法の裁きを逃れた犯罪者を予告した上で次々と殺していくシリアルキラー〈エウメニデス〉と、それを阻止しようと奔走する警察の専従班の対決。18年前に〈エウメニデス〉に恋人を殺された刑事・羅飛は、犯人からの挑戦状を受けとって捜査に加わることとなり‥
    面白かった。エンタメ系サスペンスでとにかくスピーディーな展開。基本的に捜査側に感情移入しているが、犯人が警察を出し抜いて犯行を重ねてゆく過程が爽快とも感じられる。単純に警察VS犯人という構図ではなく、終盤になってさまざまな思惑が交差して、第2部への期待が高まる。

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    2020年12月04日
  • 元年春之祭

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    古代中国が舞台のミステリ。
    名家で殺人事件が起こり、滞在していた利発な娘が推理することに。

    前漢時代の中国。
    かっては楚という国の狩り場があった地方。
    国の祭祀を担った名門の観一族は、今はあまり表には出ない。それでも春の祭儀の準備は怠りなかった。
    ところが当主の妹が殺され、犯人が全くわからない、ありえない状況だったのです。

    於陵葵(おりょうき)は、豪族の娘で、都から伝統ある祭祀の見学に来ていました。
    才気あふれる勝気な娘で、観一族の少女とも何かと火花を散らすが、大人たちとも対等に渡り合って論じる。
    じつは四年前にも、前当主一家が惨殺される事件があった…
    読者への挑戦状も挟んだ構成の本格ミス

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    2020年10月15日
  • 死亡通知書 暗黒者

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    2002年、省都A市でひとりのベテラン刑事が命を落とし、復讐の女神の名を冠す謎の人物〈エウメニデス〉による処刑の序曲は奏でられた。インターネットで死すべき人物の名を募り、遊戯のごとく予告殺人を繰り返す〈エウメニデス〉から挑戦を受けた刑事の羅飛(ルオ・フェイ)は、省都警察に結成された専従班とともに、さらなる犯行を食い止めるべく奔走する。それは羅飛自身の過去――18年前の警察学校生爆殺事件の底知れぬ暗黒と相対することでもあった……。

    初めて華文ミステリを読んだ。細かいところには目をつぶるとして、この推進力、ただものではありません。しかも次回作があるとは。

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    2020年10月11日
  • 死亡通知書 暗黒者

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    一気読み。人物像もしっかり描かれているので感情移入し易かった。内容もとても練り上げられれていたし、殺人方法も凝っていた。展開がスピーディーなのも相まって、緊迫感も半端なかった。映画を観てるような作品だった。犯人を逮捕出来てない、と言う終わり方で(3部作)☆4つ

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    2020年09月18日
  • 死亡通知書 暗黒者

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    中国警察vs法で裁けない悪人に制裁を加える連続殺人犯!ちょっとご都合主義なんじゃないかと思うシーンもあったけど楽しめました。個性あふれる専従班のメンバーが好きすぎる!

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    2020年09月13日
  • 死亡通知書 暗黒者

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    華文ミステリーは、登場人物の名前を漢字で、把握するのにいつも、少してこずる。読みがね!
    ストーリーは、スピード感スケール共に良かった!トリックも、良く考えられていて、楽しく読めた!

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    2020年09月02日
  • ディオゲネス変奏曲

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    7/16/2020

    私は頭が硬いんだと思う、SFは苦手。(昔は眉村卓くらいは読んだんだけど。) なので2篇くらいあったSFは字面だけ追って読んだ感じ。逆にSF好きな方にはオススメかも。他にも異なったタッチのミステリー短編満載なので、陳浩基を読んでみるのにちょうどよい一冊。それこそ3ページ程度の超短編もあったりで、器用な人なんだと思う。

    追記 9/10/2020
    感情的になりそうだったので前回↑では敢えて触れなかったけど、読み始めようとして最初に目にした 「本書を謹んで天野健太郎氏に捧ぐ」。これは強烈すぎた。ここでしばらく止まってしまった。
    RIP

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    2020年07月17日
  • ディオゲネス変奏曲

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    ミステリ短編集。だけれど、本格ミステリありSFミステリありサスペンスありホラーっぽいのあり、と読み心地はかなりバラエティに富んでいます。
    お気に入りは「カーラ星第九号事件」。SFミステリで、論理もきっちりとした固めのミステリだと思ったら。ラストで明かされる真実が!
    「頭頂」と「霊視」もホラー好きとしてはかなり好みでした。怖いけれどどこかしらユーモラスな「頭頂」、でもこんなの……見たくないなあ。「霊視」はラストでぞくりとさせられます。
    一番本格ミステリだったのは「見えないX」かな。ある意味の犯人捜しミステリだけれど、日常の謎としても最低レベルに魅力的ではないつまんない謎、だと思っていたのに。いや

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    2020年05月17日
  • 元年春之祭

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    古い埃の匂いが感じられる前漢時代が舞台のミステリ。読者への挑戦状付き!祭祀を司っていた貴族の観一族。豪族の長女の於陵葵が客人として訪れた次の日に一族の一人が小屋の中で殺害された。博覧強記の葵は侍女の小休を連れ観家三女の露申と過去の事件も含めて解決に乗り出すがやがて次の犠牲者が…。漢詩の解釈や古代中国史の薀蓄が満載でくらくらするけどそれも含めて一つの解決を指し示す手腕は見事。3人の少女が織りなす関係が現代から見ると過剰に思えるけどだからこそ結末の重さが光る。いや、現代中国人も色々過剰か。

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    2020年04月03日
  • ディオゲネス変奏曲

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    ホラー、星新一風のSF、バカミス、バリバリの謎解きと、バラエティに満ちた作品集。いろいろな楽しみ方ができるけど反面、玉石混淆、ネタありきで広がりに欠ける作品も少なくない。しかし、作者があの陳浩基となると話が違ってくる。話題の華文ミステリの旗手にして、日本の新本格を引き継ぐ注目の作家なのだ。

    著者あとがきを参照しつつ作品を読むと、彼がとても実験的にこれらの作品を仕上げていることがわかる。個人的にお薦めは、金銭で時間をやり取りできる世界を描いた「時は金なり」、後の『世界を売った男』を思わせる「珈琲と煙草」。そして何と言っても「見えないX」。これは読み返すと、作者のフェアネスがわかり、さらに面白い

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    2020年02月18日
  • 黄

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    生まれつき盲目の主人公ならではの小説。意味深なタイトル、描写があったにも関わらず気が付かなかったトリック。驚きを味わせてくれるミステリだった。

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    2020年01月22日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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    ネタバレ

     タイトルがトリックなどに関係があるのかと思って読んでいましたが、特に関係なかったですね。過去の殺人事件にまつわる女子高生と元女子高生たちの群像劇ともいえる作品かと思いましたが、それ以上に女子高生ものでした。ワイダニットが好きな私としては、この動機筋は感傷的で印象深かったですし、結末もきれいな印象でした。ところどころの描写も繊細。後半は筋を追うのを急いであまり味わえなかったので、後半部分だけでもまた読み返そうかと思っています。

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    2020年01月15日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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    虐めで雪の夜に寮から外に追い出された少女が次の日の朝、雪の密室の中死体で発見される。5年後、寮で起きた虐めをきっかけに生徒会長馮は自殺で片付けられたこの事件の真相を追い始める。そして事件をなぞったような少女の死体が発見される…。過去の事件を調べる為に虐めの首謀者達に会って傷えぐり倒す手法が大胆で日本との違いに驚く。最終的には「何故」重視で少女時代の閉塞感とかちょっとしたずれからの悲劇にしんみりする。2つの事件の謎を消去法で絞っていく過程はお手本のようなミステリ。名前何度も人物表で確認しないと判らなかったりで読みにくかったけどほんのり百合要素含め美しかった。

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    2020年01月12日
  • 黄

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    ネタバレ

    目の見えない少年が語り手&探偵役というだけで、どう物語られていくのか気になるが、読んで見ると初っ端からホームズばりの観察力を駆使した推察が繰り広げられ、面白さで読み進めることができる。
    海外ミステリではあるものの、ミステリとしては非常に国内ミステリと読み心地が似ている。
    それも新本格に近いケレン味。
    そして新本格に感じたある種の屈折よりも、まっすぐというか純粋というか、樹形図の別のノードが進んだ先を見ているかのようだった。
    ありがたいことに中国語の人名が同一ページ内でもすべてにルビが振られているのがとても助かる。




    以下、真相に言及した感想としては……





    ・日本と中国では仕掛けの

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    2020年01月05日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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     一部ではあるが、犯人と自分がシンクロして眩暈を感じた。青春「百合」ミステリー。前作「元年春之祭」は、前漢時代が舞台だったが、今回は現代の高校が舞台。難しい漢字は出てこなかったが、中国の人名になじみがないので、男女の区別がつかなかった。別紙で登場人物表が挟み込まれていた。これ、しおりに代わりにもなる。
     今作も若い女の子が主役。頭は切れるが、決して明るい性格ではないし、曲がったところもある。そして、百合の要素。今作は、ダークな「古典部」シリーズといった趣がある。ライトノベルならぬダークノベルか。前作もそうだったけど、この感じは嫌いではない。あと、終章は蛇足で、いらないと思った。

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    2019年12月02日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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    ケレン味たっぷりの青春ミステリ。密室トリックけっこう頭使う。しかし、〇〇役が〇〇だったという最大のトリックさえも霞むくらいの、青春の清冽さ。

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    2019年11月19日
  • 元年春之祭

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    前漢が舞台のミステリー小説とは初めて。なんだか興味深く読み進められるが、探偵役の子は好きになれない...

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    2019年07月03日