【感想・ネタバレ】元年春之祭のレビュー

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ネタバレ

 前漢時代という背景と生国や立場が違いが活かされた結末だと思いました。
 また、「アニメ的なキャラクター表現」と後書きに書かれている通り、於陵葵、観露申、小休における人間関係や、観若英と観江離、そして亡き観芰衣との描写、度々論を交わす於陵葵と観若英等の表現が百合を感じさせられました。



 於陵葵がもう少し心情を露わに出来ていたら、観露申との仲も拗れず、小休もあんな行動に出なかったのではないかと考えずにはいられません。しかしながら、於陵葵の不器用ながらも小休の事を思う優しさに気付いていたが故に、小休もまた、於陵葵の事を思い行動に移したのだとも思え、とてもやるせない気持ちになりました。
 小休は最後に於陵葵へと傷を作り、それが於陵葵の幸せを願っての事だと分かっているからこそ、於陵葵も無碍に出来ずに一生捉われてしまうのだと思います。そして、だからこそ、小休を喪ってしまった事に耐えられるのか不安に感じました。

 最後、於陵葵と観露申が共に旅立つ事となり、優しい観露申ならば於陵葵の辛い気持ちを少しは慰めてくれるのかなと期待しています。

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2022年05月31日

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ネタバレ

まさに一気読み。
舞台が前漢時代ということだったので、読み始めはリタイアしてしまうかとも思ったんですが、とんでもない。
ミステリーとしても、時代小説としても面白かった。
残念なのは私の漢文知識ですね。
次の作品が、いまから楽しみ(^^)

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2019年08月18日

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元年春に。学園モノも読みたい!翻訳を待つ…。
麻耶先生『隻眼の少女』三津田先生『厭魅の如き憑くもの』、未読なので読まにゃあ。

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2019年05月19日

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ネタバレ

漢詩、漢籍の教養を試されるという意味では衒学的だ。このポイントで熱狂するひとは少なからずいるだろう。
だが私が最も評価するのは、
「その時代ならではの人間心理に基づいて展開された本格ミステリ」
という点である。文句なしに星5をつけたい。

本格ミステリと言って、アガサ・クリスティの作品を挙げれば、たいていの人の異議は無いだろう。
では彼女が描き愛したビクトリア朝の世界において、本当にものを考え、煩悶し、結果として殺人という罪にすら手を染めるのは、誰か?
ほぼほぼ決まって支配階級の人間である。
執事や料理人、他の使用人階級は、現代人の我々が論理をもって考えるといかようにも怪しめるのに、犯人とはならないことが大半である。
挑発的な言い方をすれば、
「クリスティ的時代の価値観、人間観においては、使用人とは作中に人生の舞台を持たない生き物」
と定義づけることも可能であろう。

その一方、本作は前漢の時代。四書五経が当然の教養として引かれて論じられ、人々の精神的バックボーンのひとつは経。そしてもう一つは、信仰である。
この二つを損なっては、人は単にモノ言う獣も同然、形こそ人であれど、とみなされるような世界。
『この時代のひとに相応しい世界観、倫理観、そしてその年齢のひとに相応しい限界も備えた』
各キャラクターを造形し、物語を動かしていったら、チェスにおける詰みが現れてくるように、鮮やかに真相があらわれ得る。全ての論理を組み立てる素材は、まことに序盤のうちから読者に提供されており、また考えることが可能であった。

本格ミステリと言うにふさわしい、と評する理由はまさにこの点にある。

評者はエラリー・クイーンのよくやる『読者への挑戦』を、一考はしてみても、話の続きを読むこと優先で、決して正解したことがない。推理ファンとしてはまあ落第生なのだが、作者の手により明かされる真相を楽しむ、という点では、及第をもらえよう。

本作は、自身の生まれもった性別と才覚の齟齬に悩んだことのある女性には、心のささくれを撫でられる思いで読める。
実に味わい深い時代小説でもあるので、漢文は苦手と思っている人には、
「そこはすっとばして読んでも大丈夫」
とオススメしたい。

アニメ的な少女の描写について言及するレビューもある。「そういうのに慣れてる」ひとからすれば、特段の意を向けるレベルではない。
「こういう描写を多用する作者が見てたアニメ作品って……?」
そこは気になるといえば、なる。だが大陸におけるジャパニメーションの受容は、また別の文脈であろう。
『前漢時代の少女がどういう情動を覚え、どんな行動をとったと描写されるか』なんて、80-90年代のジャパニメーションのノリと同じくらい『現実感がない』。もう「そういうノリで生きてただろうキャラ」として納得するほうがいい。
『三国志演義』のたいへん豊かなバリエーション展開(注:表現を婉曲にしています)をもつ日本の漫画・アニメ・ゲーム文化を楽しめるひとが、アニメ的な少女の描写ごときで作品評価を左右するのも、理の通らない話ではないだろうか?

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2019年01月30日

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意外に読みやすく、しかも、本格ミステリーだったので星は5つ。その時代の女の子の立ち位置や家族の関わりなど理解できた。
と、それよりもやっぱり、ミステリー感が素晴らしかったので。最後まで楽しめました。

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2018年10月02日

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「忠義・忠愛とは」
ー中国の楚王は基礎を武力ではなく巫術を称え祭儀を重んじた。その命を授かる観一家に殺害異変が起きる。さらにもう一方の家族へ殺害が広がる。そこには巫女に関わる親族間での厳しい規則と躾が人を変え殺害を巻き起こすミステリー、と思いきや、犯人はさらに別人。謎を解こうとする豪族の娘葵は頭脳明晰で豊富な知識を持つ、だが人の心を読む、情に薄く人への愛情が欠ける性格がキーとなる。葵の目的は「邪教の普及」、それと「巫女の禁忌」にまつわる侍女の行動。
中国の古典、社形祭祈儀式、名称など難しい単語が多く出るが、歴史を語る論語、礼記、詩経、漢書など、兵を持って楚国を破った伍子胥、楚国の復興に心を砕いた屈原、共に2人は君主への忠愛から自殺している。屈原が実は女性だったと言う記述には驚愕だ。 

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2022年10月23日

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最近話題の華文ミステリの一作。やはり人物名が覚えにくいのがつらいところ。更には推理小説ではよくある衒学要素として、膨大な漢文が引用されているのでもう大変。正直序盤は全く入り込めなかったが、後半になると少しは慣れてきて楽しめた。ミステリとしては意外性もあり、特にホワイダニットが見もの。なかなか読むのが難儀な本だが、華文ミステリに興味があるのならぜひ手にとって欲しい。

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2021年04月11日

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古代中国が舞台のミステリ。
名家で殺人事件が起こり、滞在していた利発な娘が推理することに。

前漢時代の中国。
かっては楚という国の狩り場があった地方。
国の祭祀を担った名門の観一族は、今はあまり表には出ない。それでも春の祭儀の準備は怠りなかった。
ところが当主の妹が殺され、犯人が全くわからない、ありえない状況だったのです。

於陵葵(おりょうき)は、豪族の娘で、都から伝統ある祭祀の見学に来ていました。
才気あふれる勝気な娘で、観一族の少女とも何かと火花を散らすが、大人たちとも対等に渡り合って論じる。
じつは四年前にも、前当主一家が惨殺される事件があった…
読者への挑戦状も挟んだ構成の本格ミステリです。

作者は古典の専門家で、繰り出される漢籍や宗教論など、ついていけなくなりそうだが、本筋に影響がある部分には何とか食らいついて読みました。
中国歴史ドラマをいくつか見ているので、楚という国や屈原という人物は知っているし、漢の時代の衣装なども大体は思い浮かびます。
日本なら弥生時代という紀元前に、このような文化がすでにあるという。
一方で、ある意味ドラマで見る昔の中国の滅茶苦茶ささみたいなものも感じるけど~見ている人にしかわからないかなぁ?(笑)
わかりやすくいうなら… 暗い部分もあるが濃くて、喜怒哀楽が激しくドラマチック?

古代中国となると、中国人にはある程度まで常識でも、日本人で理解の範囲が広い人は限られるかも。
ただ、モチーフはともかく、雰囲気や筋立ては、意外と日本人になじみのある世界。
新本格派を読み込んできた作家さんなのだろうと思わせるし、ラノベやアニメの影響もありそう。
この作品で受賞後は日本に住んでいるというのには驚きましたが、そういうことだったのかと。
気鋭の中国作家の変わった味わいを楽しませてもらいました。

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2020年10月15日

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古い埃の匂いが感じられる前漢時代が舞台のミステリ。読者への挑戦状付き!祭祀を司っていた貴族の観一族。豪族の長女の於陵葵が客人として訪れた次の日に一族の一人が小屋の中で殺害された。博覧強記の葵は侍女の小休を連れ観家三女の露申と過去の事件も含めて解決に乗り出すがやがて次の犠牲者が…。漢詩の解釈や古代中国史の薀蓄が満載でくらくらするけどそれも含めて一つの解決を指し示す手腕は見事。3人の少女が織りなす関係が現代から見ると過剰に思えるけどだからこそ結末の重さが光る。いや、現代中国人も色々過剰か。

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2020年04月03日

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前漢が舞台のミステリー小説とは初めて。なんだか興味深く読み進められるが、探偵役の子は好きになれない...

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2019年07月03日

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中華歴史ミステリっていうか完全にただの百合じゃん。クライマックスでネタバラシされてからはちょっとベタすぎる感情描写だったけど、わりと淡々と事件の描写があったり、風習の話をしていた序盤から急にむちゃくちゃ喧嘩を始める女~~!からのド重い本心全部台詞で語っちゃうラストは正直アガる。葵と小休の距離感はほんとにいい。

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2019年06月06日

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中国ミステリーということで若干の不安もあったものの
そんなに違和感なくミステリーとして読めた点は良かった。

漢詩が多く出てくるのでそこで戸惑うこともあると思うけど
一番難しいのは舞台となっている前漢時代の
ものの考え方・価値観を理解することかもしれない。

自分にはそこが一番きつかった。

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2019年03月08日

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初めて中国人作家のミステリーを読んだ。漢字が多すぎてついていけないところもあったり、主人公が侍女を虐待する場面もあってなかなか共感できなかったが物語の最後で主人公の思いがあかされるところでほっとした。ほろ苦い以上の結末で、陸氏の次の作品が読みたいと思った。

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2019年02月12日

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まずごめんなさい。百合は響かなかった…
アニメ的少女の表現は好きだ。

前漢時代の歴史的背景や説明が長い。勿論必要不可欠だが。
それを超えたら…

読者への挑戦状。本格ミステリだ!!
ホワイダニット、ダイイングメッセージの扱いが素晴らしい!!

また新しい本格ミステリの時代がきたように感じた。
華文ミステリの草分け的作品になるはずだ。

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2018年10月30日

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前漢時代を舞台とした、百合満載の華文ミステリ。しかも、複数の百合が混在しており、個人的には結構強烈。論文を読んでいるような感覚にもなるが、時代背景を理解する上では欠かせない記述なのだろう。そして、この時代の閉鎖された環境の中では登場人物同士の濃い関係性が生まれるのは必然なのかもしれない。ミステリとして当然楽しめたが、何より、タイトルが格好いい。

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2021年08月15日

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推理小説ということで読み始めたが、どちらかというと中国古典の解釈や漢詩を楽しむ本であった。楚の雲夢が舞台ということで屈原に関しての記述が多く、その他古典からの引用もたくさんあり、中国の思想に関心があれば読んでいると楽しいと思う。ちょっと主人公の性格がキツくて、個人的には好きになれなかった。

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2021年06月30日

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ミステリ史上に残る前代未聞の動機とは何か?この文章に惹かれて読む。中国古典が多用されていて、前半は些か辟易しながら読み進めるうちに、後半で待望の事件解明の段に入ってからは一気に読み終える。人里離れた山中で一族のみで閉鎖的に暮らす観一族、過去に凄惨な未解決事件を抱える。そこに豪族の娘、於陵葵(おりょうき)が侍女(小休)を伴い訪れる。観一族の娘、観露申(かんろしん)と共に新たな連続殺人事件に関わっていく。中国古典の難解な文章が引用されながら、巫女という宿命を負う者達の生き様が事件の背景として暗く淀む。事件の真相が明らかになる過程は読み応えがあり。冒頭の動機へと繋がっていくが、一般人には理解が難しい。

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2021年03月22日

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 前漢時代の中国を舞台にしたミステリー。難しい漢字がたくさん出てきます。中国の歴史文化の知識が多少でもあると読みやすかも。あと百合です。これらが苦手な人にはおすすめできません。

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2019年11月09日

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華文ミステリ。過去に起こった一家惨殺事件からの導入には引き込まれましたが、中国の古典が多く引用されているのでとっつきにくく、読み進めるのがしんどくなるほど。二段階の読者への挑戦にはわくわくしましたが、動機にはすんなり納得できませんでした。

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2019年07月31日

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時代背景は前漢、武帝の時代。そこでおこった連続殺人事件。私はちょこっと中国の歴史に鼻先をつっこんでたから良かったけど、少しでも中国の歴史、文化に造詣がないときついかもです。

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2019年07月30日

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 古代(?)中国を舞台にした華文ミステリ。その時代や場所について、会話を通して数多くの説明がなされ、それが紙幅のほとんどを占める。とはいえ、嫌になって投げてしまうこともなく、すんなり読めてしまうから、そこはそんなに気にならない。もう少し中国史を勉強していればな、とは思った。
 女性同士の感情の(鋭利な)矢印があっちこっちに向いていて、どの関係性も濃厚だった。肝心のミステリ要素は、トリック云々は大した問題とならず、その動機が主な争点となっているように感じた。また、取り立てて意味のないような会話が、後々生きてくる様子は爽快で、構成の上手さを見せつけられた。
 一方で会話の流れや、人の行動に無理矢理さというか、繋りの不自然さを感じることもあった。平たく言えば、ストーリーを動かすための行動というか、葵の特異性を考慮しても、キャラの言動のところどころに違和感を抱いた。

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2019年03月27日

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動機の意外性(現代の感覚では理解できない、時代・環境の影響があり、犯人にとってのみ正常とされる異様)、衒学感など、京極夏彦の影響が無いというのが意外なほど。

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2019年03月22日

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前漢時代,地方に引っ込んだ元貴族の一家に起こる連続殺人!
2度犯人は誰だ?と読者への挑戦があり,残念ながらわからなかった.
主人と召使いの悲しいすれ違いが生んだ悲劇.動機が悲しすぎる.

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2019年03月12日

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初めて読んだ中国作家のミステリ作品。紀元前の漢の時代を舞台に殺人事件を解決する。漢詩が多用されており、詳しくない人はそこで読むのを諦めてしまうかもしれないが、それは勿体無い。漢詩の部分は中国文化を楽しむエッセンスと捉え、それほど気にしないで謎解きに集中すれば良い。

東洋的なミステリ作品であり、欧米諸国の方々には理解しにくい概念もありそうだ。これを日本語で読めて理解できる幸せがあった。読者への挑戦が2つ用意されており、絶対に犯人を指摘してやると思うものの、なんとなく犯人は想像つくが動機やトリックを看破するまではいかなかった。まあ、私の実力といってしまえばそれまでなのだけど。

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2019年01月10日

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時代背景や引用される数々の漢籍…。そこから醸し出されるこの作品の世界観が目新しい。ただ…それだけかもしれない…。

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2019年01月06日

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中国人作家による華文本格ミステリ。
日本の本格ミステリを読んで影響されたと著者あとがきに書かれているが、確かにトリックや犯人限定の論理に、日本人作家に通じる物が窺えた。読者への挑戦状が二度入るのもフェアプレイを強調していて悪くない。
でも、やはり読み難さは弱点だろう。訳者が注釈を度々入れて読者に理解しやすくさせてはいるが、漢詩や宗教の難しい表現にお手上げになってしまい、その間に伏線が張られていても読み飛ばしてしまった。
多分じっくりと読んだ人は傑作との評価をするだろう。私は出来なかったが、この作者の短編なら読んでみたいと思った。

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2018年12月02日

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中国前漢時代の少女たちを描いた本格ミステリ。
かつて国の祭祀を担った名家、観一族の春の祭儀を目前にひかえて当主の妹が殺され、しかも犯人は消えたとしか思えない状況だった。観家に滞在していた豪族の娘、於陵葵は当主に頼まれて事件の解決に挑むが…
前漢というまったくなじみのない時代背景と、漢籍の蘊蓄が手強いが、少女たちが生き生きと描かれている(キャラ的にはあまり好きになれない人が多かったけど)ので読み進むことができた。古の女性にしてはみんな学があるし物事をしっかり考えていることに最初は驚いたが、教育を受けるかわりに人生を捧げなければならない使命がそれぞれにある境遇なのがわかって納得した。
トリックよりこの時代ならではの動機と、それに至る心理が読みどころ。
それにしても男性陣の影が薄すぎる気はする。

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2018年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

国内ミステリしか読まない読者が、海外ものに手が出ない理由はこれか…というものをいろいろ味わった。男女の区別がつきにくい、そもそも名前が覚えられない、解決に、その国の文化や迷信などの理解できない心理的なものを必要とされては、読者への挑戦は無理すぎ。(解説に、詳しい予備知識は必要ありません、ご安心を。とあったが、よほど中国文化に馴染みのある人でないと無理では?)
さらに著者も若く、その感性で前漢時代を舞台に書いているので、アニメっぽいところもありで混乱。全体的に百合っぽいし。
最後に明かされる動機のあまりといえばあまりな理不尽さに敬意を表して星3つ。裏表紙に問題作の文字がなく、三津田信三、麻耶雄嵩の影響…とかあると読みますって。

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2018年09月16日

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