【感想・ネタバレ】ガーンズバック変換のレビュー

あらすじ

ネットへの視覚的なアクセスを遮断する規制が敷かれた香川県からやってきた女子高生の大阪観光サイバーパンクの表題作、百合SFアンソロジーや『異常論文』へ書き下ろしとして発表された短篇群など、『元年春之祭』著者による知性と感情を揺さぶる小説全8篇

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Posted by ブクログ

表紙のイラストで青春ものかと思って読み始めると打ちのめされる。
文献からカルチャーまで圧倒的な情報を元に広義のSFホラ話8編が展開する。
題材は、代作家、吟遊詩人、詩人、ゲームシナリオ、マジック、作家伝、近未来、百合SF*。
*百合小説とは女性同士の関係性を描く小説
ミステリで日本デビューした中国人作家で、SFは自分でハヤカワに売り込んだとのこと。

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2023年06月06日

Posted by ブクログ

北京生まれの作家、陸 秋槎(りく しゅうさ)の短篇集。一応ミステリ作家だがこれはSF短篇集
なお日本SF作家クラブの会員でもある
各短編◎◯□△☓の5段階評価で


1「サンクチュアリ」△
書籍が700部しか売れず、作家として次は無い主人公に大作家のシリーズ作のゴーストライターの依頼が舞い込む

のあらすじからは明後日の方向に向かう。まるで漁網を投げてからすくい、捕れたものを書いたような。あとがきにグレッグイーガンのような物を書きたかったがそうならなかった、とあり成る程そういう動機なのかと納得した。一応、脳科学SF…なのか?
小さくて綺麗なので簡単に掴めそうなボールと思っていたが小さすぎて潰してしまったので感慨はない、そんな印象



2「物語の歌い手」◯
貴族の娘である主人公がお忍びで抜け出した酒場で物語を歌っていた吟遊詩人に魅せられる。彼女は歌うこと、そしてもう一度吟遊詩人に会いたいと侍女のステファネットと旅に出る

驚くほど台詞がない。地の文で9割構成されており題材も手伝いファンタジー昔話を読んでいる気分になる。何よりその台詞の数の少なさは恐らく最後の展開との対比に利用、効果を発揮しており明らかにワザと。巧みな一作と思う。ミンストレルサガがお好きな方はこれだけでも読んでみては如何だろうか?40ページの量と思えないほど1人の貴族の娘の旅を読める。これは普通にファンタジーでした。リュートという楽器の音色を知っておくと脳内で広がる光景は本当に美しい。が、台詞がとにかく少ないのでドラクエのような問いかけにも思える



3「三つの演奏会用練習曲」△
三つの掌編で構成された、詩とは、文学とは

前編の物語の歌い手と根底のテーマが似通っていて、そして物語ベースにしないで書いた版というか。続けて揚げ物出てこられても胃もたれますし、既視感ありますし



4「開かれた世界から有限宇宙へ」◯
スマホゲーム会社で働く主人公が会社の偉大なプロデューサー宮沼(爆笑)に新しいオープンワールドゲームの開発で手伝ってほしいことがあると呼ばれる。それはズバリ昼夜、影を完全にリアルタイムで表現することで没入感を高める天体をシステム化して欲しいというトンデモ依頼だった

宮沼。爆笑です。ゼルダの伝説のトップ2名の名前からだと思います多分。ついでに白崎社長(笑)も出て来る。業界お仕事小説、と見せかけて理系バリバリの宇宙話の味わいも。とっても楽しい。中国人作家が「中華系クソゲー」なんてワード使う所も茶目っ気たっぷり




5「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」□
たった8枚の嘘八百論文。
これが許されるのがSFの良い所と思う




6「ハインリヒ・バナールの文学的肖像」□
架空の作家、ハインリヒバナールの伝記。

後半の加速っぷりは実に哀しい、世に何も残せなかったらあなたの伝記を作った所でこういうものだよ、と言われたような気もして。嫌われ松子の一生である




7「ガーンズバック変換」◯
ネットへの視覚的アクセスの規制条例が敷かれた香川県から女子高生がやってきた(帯より)

表題作。発想元が「香川県ネットゲーム依存症対策条例」、アニメ「電脳コイル」とのこと。女子高生が主役なので大変読みやすく、そして広範囲にSFオマージュが散りばめられていて楽しかった。SF入門的な作品ではあるけれどその分まさに電脳コイル的な範囲で収まっていて分かりやすく楽しい。にしても日本書くのうめえな




8「色のない緑」◎
ノーム・チョムスキーの有名な無意味文「Colorless green ideas sleep furiously.(緑色のない縁は激しく眠る)」をモチーフに百合感情物語が広がる

巻末に相応しいと思う。まさか色という単語から感情を呼び起こしSF的な叙情を広げるとは。本当に美しい。何か今後も似通ったテーマの際アンソロジーなどに編まれても何も不思議ではないほど抜けているので内容には触れないでおく。百合なのかどうなのかは分かれそうだけれど芯のある作品で文字から派生する受け手の余韻にも余白があると感じた。




全体的にライトなSFで肩に力入れず読める上、中国出身にも関わらず中国が舞台の作品は1つもあらず。また読んだ方は3つ目あたりで感じると思うがあらゆる方向の知識、国、描写が素直に描かれており器用な作家と受けると思う。あとがきにもある通りSF初心者とあるが、SF的なガジェットがあるだけで彼の視点は不思議なお話いかがです?といった印象。枠に囚われず描き続けて欲しいと感じた。良本でした

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2026年06月02日

Posted by ブクログ

表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きな抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけど。

「色のない緑」は、『ベストSF2020』で読んだのが最初だけど、今はその当時に比べてAIの状況がずっと進化しているから、はるかにリアルに感じられてちょっとこわいような。自動翻訳をめぐるエピソードも、また、AIが人間が知り得ないブラックボックス化するという状況もよくわかる。

ほかの短編は、中世っぽい舞台のものがあったり、ゲーム開発をネタにしたオタクっぽい作品があったりと振れ幅がすごくて、読んでいてとまどいもあるっちゃあるけど、百味ビーンズみたいな楽しさもあってよかった。

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2024年02月20日

Posted by ブクログ

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例をテーマに書かれた表題作『ガーンズバック変換』が前から気になっていて読んだ。SF作品集とされているが、SFしていたのは『開かれた世界から有限宇宙へ』『ガーンズバック変換』『色のない緑』くらいかなあと思う。

1番面白かったのは『色のない緑』。「色のない緑は猛烈に眠る」という文章がどうやったら成立するかを物語を通して伝える作品。
「色のない〜」はチョムスキーの例示した意味は成立しないが文法的にはあっている文。

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2024年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短篇集。8篇収録。
理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。

物語の歌い手
上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。

三つの演奏会用練習曲
こちらはインド。不思議な読み心地。


開かれた世界から有限宇宙へ
ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗

インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。

ガーンズバック変換
香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面白かったです。

色のない緑
人間を超えていくAI。こちらも面白かった。

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2023年11月12日

Posted by ブクログ

SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。

少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。

その中で表題作「ガーンズバック変換」は香川県のゲーム禁止条例を題材に取って少女同士の交流を瑞々しく描いた青春SFで、比較的ライトに楽しめます。この日本の少女らしさの描きかたも巧い。

そして「色のない緑」。親友の死の謎を追うミステリであり、近未来の人工知能の行く末を描いたSFであり、なにより彼女らの絆のつよさと切なさが胸を打つ、鮮やかな百合小説でした。彼女が研究を志した動機、絶望した理由、そして取った手段。すべてがひとつの存在がために帰結する、無駄のない硬質の美しさ。この短編、ものすごくただただ好みです。

また素敵な書き手さんと出会えた…という嬉しさを抱けた短編集でした。

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2023年05月20日

Posted by ブクログ

2024-04-29
思ったよりも純文寄り。意識してなのか、だんだんSF濃度が上がっていく感じ。いや、冒頭の「サンクチュアリ」もかなりか。自分には、詩歌をテーマにした2篇がよく分からなかった。美しい物語だとは思うのだけど、SF短編集への収録理由がよく分からない。
どの作品もそのまま長編に出来そうな煌めくアイデアに満ちている。そして様々な過去作への言及も心憎い。

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2024年04月29日

Posted by ブクログ

 陸秋槎さんを知ったきっかけが早川書房の「アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー」だった事もあり、再び「色のない緑」に出会う事が出来、感動しています。

 歴史や宗教、言語や文学など様々な知識が盛り込まれており読み応えのある短編集でした。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

8作品のSF短編集。読みやすい作品と読みにくい(なかなか頭に入ってこない)作品の差が大きいように感じた。私の好みの問題なのかもしれないけれど。
個人的に好きな作品は3つ。スマホゲームでシミュレーションされる物理現象を矛盾なく成立させるためにいろいろ考える「開かれた世界から有限宇宙へ」と、手品のトリックをSF的に暴く「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」、なんとも切ないSFミステリの「色のない緑」。特に「色のない緑」では、SF的ガジェットが巧みに使われていて、それがラストの切なさにつながっている。

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2023年05月25日

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