城平京のレビュー一覧
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「初めは全くの作り話だった怪異が、幾度も語られ噂となり、信じられていくことで実体を持ってしまう」――という、怪談におけるひとつの定番であるモチーフを、ただのオカルトではなくロジカルな「特殊設定ミステリ」に組み込んで昇華させてしまった驚異の一作が、城平京(しろだいら・きょう)による長編『虚構推理』です。
右目が義眼、左足に義足をつけて11歳の頃から病院に通っている岩永琴子。17歳になった5月のある日、2年前に一目惚れして以来想ってきた、同じ病院に入院する従姉の見舞いに通う大学生・桜川九郎についに声をかける。見かけるたびにいつも隣に付き添っていた年上の彼女、「サキさん」と別れたらしいという噂を看護師から聞いたからだ。琴子からの直接的なアプローチを笑いながらやんわりと受け流し、なぜ別れることになったのかと尋ねる琴子に、「川沿いの夜道を歩いていた時に恐ろしげなカッパが現れ、怯えて震える彼女を置いて逃げたから」と話した後、嘘だと笑って立ち去ろうとする九郎。しかし琴子は、その話を本当だと確信していた。彼女は幼い頃、ひょんなことで“知恵の神”となることを引き受け、この世ならざるもの――妖怪や物の怪と呼ばれるものたちから問題や揉め事の仲裁を頼まれる、神と人との中間にいる存在となっていたからだ。そして琴子は「逃げたのはあなたではなく、カッパの方ですね」と続ける――九郎が生まれた桜川家もまた、妖怪に関わる肌の粟立つような実験を続けてきた、業の深い家だった。
そして2年後、九郎と別れてから警察官となった弓原紗季が住む真倉坂市では、誹謗中傷から逃れるように真倉坂へやって来た末に、建設現場で鉄骨の下敷きになるという凄惨な死を遂げたアイドル・七瀬かりんの亡霊だと噂される、2メートル近い鉄骨を持ってドレスとリボンをまとった顔のない女の都市伝説――「鋼人七瀬」の目撃情報が広がりつつあった。
もともと2011年に講談社ノベルスから『虚構推理 鋼人七瀬』のタイトルで刊行されたもので、後にこれを原作とした片瀬茶柴によるコミカライズがスタート。いったん完結するも、そこから続編となる小説が書き下ろされ、それをまたコミカライズするというスタイルでシリーズ化されていきました。2020年にはアニメ化もされ、小説版は講談社タイガから現在も刊行が続いています。
軽妙な掛け合いとキャラクター(ぜひチャーミングな片瀬絵で脳内置換を!)の魅力はもちろんのこと、妖怪や物の怪、亡霊といった理外の存在を前提とした、ややフィクションラインの高い特殊設定が単なるけれん味ではなく、事件の背後で糸を引く人物の存在と、その動機にも深く関係していることが垣間見えてくる構成が見事です。
そして何より、人びとが願う現実や信じる妄想が生み出した強力な存在への対抗手段として、第六章「虚構争奪」で炸裂する、ネット空間の姿なき大衆を巻き込んで畳み掛けられる“合理的な虚構”の構築と対決こそが、本作の白眉。
――「だから誰かがその現実を守らなければなりません」
虚構が肥大して侵食される現実と、現実を守るための虚構……そのアイロニーに深く考えさせられつつも、周到なロジックと決着に思わず拍手喝采したくなる一冊です。 -
Posted by ブクログ
相撲に蛙に殺人事件、普通なら絡む事のないだろう3つの要素が絡み合い生まれる摩訶不思議な物語
話の内容そのものは既に小説版を読んでいた為に知っているのだけど、それでも蛙が相撲を取っているという奇妙奇天烈な光景を越えた先にある幾つもの真実にはやはり驚かされてしまうね
村の秩序を壊す存在に思えたイチゴヤドクガエル。普通の物語であれば、異邦の存在である赤い蛙を倒せばそれで終わるが本作の真骨頂はむしろイチゴヤドクガエルが倒された後にあるというのは面白いね
文季が指導する形で村の蛙を勝たせてしまった事で崩れる秩序
これを元通りの形にする最善の道はわざと相撲で負けること。でも、その道は文季の人生の秩序を崩してしまうもの。例え、村の為だろうと文季にわざと負けるなんてことは許されない
つまりこれは村の秩序と文季の秩序が真正面からぶつかる事態になってしまったというわけだね
まあ、文季はそんな殊勝な価値観で負けられないなんて思っていたわけではないのだけど
彼が考えていたのは既存の秩序を壊すこと。それによって囚われのお姫様を開放しようと考えていたわけだね
それにしたって真夏を解放する展開を意識して早い段階から真夏対策を始めていたなんてどう考えても普通じゃないね……
こうして真夏は外の世界からやって来た異邦人によって無事に救われてめでたしめでたし……とならないのが本作の面白い所
神前相撲に続く形で明かされる殺人事件の真相
それはほぼ完璧に近い形で真相を推理していた文季が実は事実を見落としていた為に真相を得られたというおかしな構図
この気付きを契機に隠されていた別の真実を明らかにしていく展開は本当に面白い!
というか、13話及び最終話で明かされた様々な事実を見るに、文季は欠けた事実を繋ぎ合わせて特に導き出す必要のない真相へ真夏や自分自身を導いていたという間の抜けた展開だったといえるのだろうね
いや、それでもあの真夏が自分を好いているだなんて、それこそ文季には導き出しようのない真実だったのだろうけど(笑)
でもそこを見落としていた、もしくは気付かないようにしていた事で文季は自分を余計に追い込んでいたわけだ
秩序を取り戻すために始まった蛙との相撲
それがいつの間にか元の秩序を脅かす行いになってしまっていた。けれど、裏の真実を知らないままに突き進んだことで別の秩序を打ち立てる可能性が生じた
相撲に愛された少年が相撲に縛られた村からお姫様を自由にしてみせた
それは一種の秩序有る物語と言えるのかもしれないね -
Posted by ブクログ
ネタバレカエルの神様(カエルに憑依した)に相撲を教えたり殺人事件の謎解きをしたりするお話。
一冊の中に色々盛り込まれているなぁと思う。
国取神話や相撲神事、相撲技などが主人公の少年から語られていて好きなジャンルなので面白く読めました。
閉鎖された村でのファンタジー物語と思いきや、ラストは恋愛ファンタジーになってた。
物語のその後、閉鎖的な村は無事イノベーションされていくのか?その後の物語も読んでみたくなります。
著者の合理的であろうとする謎解き小説、好きです。
主人公の少年は「虚構推理」の岩永琴子ちゃんを性別変えてソフトにした感じだと思いました。 -
購入済み
わかりやすい
説明は長いが(必要な説明だけど)、その分絵で補われていてわかりやすい。たまに漫画なのにズラズラと文字ばかりのものもあるが、これは1つひとつの推理に絵があって良い。
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酸いも甘いも知っている大人達がキリンの祟りについて大真面目に推論を重ねている様ってなんだかシュール……
でも、城平先生の作品ってこういうタイプが多いような気もする……
鋼人七瀬編における黒幕の六花が最初から関わっている事によってどう取り繕うと怪しく見える山中遭難事件
面白いのは話が進んでいくにつれて新しい事実が判明して事件は別の面を見せるのだけど、どの段階であろうと六花の行動が怪しく見えてしまう点
本人は「嘘をついたりはしていない」と言っているけど、それも何処までも信じて良いのやら……
事件そのものは被害者達はキリンの祟りに巻き込まれた単純なもののように見えて、丘町を含む被害者達も何らかの企みを抱えて山に分け入ったという構図が面白い
裏の真実としてはキリンに彼らは殺された。しかし、警察には何かに追い立てられたようにして死んだように見える。そこへ新たに殺害計画も明かされる
琴子はこの状況をキリンが関わらない形にしてひっくり返さないといけないわけだ
今回の事件において特徴と言えるのは琴子が事件の真相を解明できていないし、明かされた事実にも納得しきれていない点だね
これまでは妖達の力を借りることによってズルのような方法で真実を探り当てていた。その上で秩序を守るために虚構を構築した
けれど、今回はまだ真実を探り当てることが出来ていない。その理由は真実が死の瞬間に何が有ったか?ではなく、丘町達の内心はどのようなものであったか?が重要になってくるからだね。どんな妖であろうと言葉にされない心の部分を探り当てることは出来ない
だから琴子は事件の真相解明に苦労する
これは六花相手にも言えること
キリンの祟りが発生する前に既に死を経ていた六花は何かしら都合のいい未来を引き寄せたように思えるが、今の六花は表面上琴子に協力しているように見える。けれど、その内心は判らない
結局はその腹に何を抱えているのかという探り合いになる
あまりにも不明瞭な内心の問題を前にして琴子はいかに逆襲するのか、そしてその先になぜ敗北が待っているのか?
このエピソードの顛末はまるで予想できないね -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルだけ聞いたことがあったので、電子書籍版がセールになっていたタイミングでなんとなく購入。
第12回本格ミステリ大賞を受賞している通り、いわゆる「ミステリー」というジャンルに分類されるのだが、自分はこの手のジャンルには明るくない。
なので最初に驚いたのは超常的なこと、具体的には妖怪や怪異が前提となっていることであった。
超常的なものを持ち出して推理とは如何なることかと訝しく思いながら読み進めたのだが、最後にはなるほどと思わせてくれた。
特にこの小説の要となる、「虚構より生まれた現実を、虚構の推理により虚構へと戻す」という一見言葉遊びのように思える、一連の過程は全く見事であった。
ディティールもしっかりとしており、妖怪や日本の伝承と上手に絡ませて作品のクオリティを高いものに仕上げている。
大賞も納得の非常に完成された作品であった。 -
購入済み
六花さん回多め
今巻は六花さんが多くの回に登場する
書き下ろし多めで良いのだけど、前巻同様別作品収録は嵩増しなのだろうか?
また、毎度シリーズが巻跨ぐので、巻毎に完結すると嬉しいのだけど、商売上難しいだろうなあ…
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Posted by ブクログ
第一巻の頃から思っていたけど、この漫画ってコマや台詞の置き方が上手いよね。
相撲に蛙に殺人事件。それを一介の中学生が真剣に頭を悩ませる。一歩間違えればバカバカしい非リアルな空間を上手くコマ割りすることで事態の面倒さを笑えるシュールな状態に落とし込んでいるように感じられる
第2巻では蛙の問題に加えて殺人事件まで文季の頭を悩ませるネタに。ここで面白いのは殺人事件に関する推理を一般家庭内で行っていることか
一応、その中に現役刑事は含まれているものの残り二人は民間人。更に現場に出向いたり関係者に話を聞くでもなく事件の推理を進めていく
いわば安楽椅子探偵の形なんだけど、この場合は家族を亡くして新たな家庭に入ったばかりの文季を家族として受け入れる儀式的な意味合いもありそうだ
というか、かなり真面目な殺人事件と巫山戯ているとしか思えない蛙の神様の事情が『ヤドクガエル』によって結びついてしまうというのは本当に頭が痛い事態だなぁ(笑)
他にも『事件に関する重要な証言をしたのは蛙』という点を平然と受け入れてしまう刑事と元刑事とか色々なものが非日常感を醸し出しているね(笑)
殺人事件に頭を悩ませつつ蛙の相撲取りにも頭を悩ませる文季だけど、その横に居る真夏が可愛らしいね
いつもむすっとしているから表情変化は判りにくいけど、折々の服装とか文季への話し方とかに随分と豊かに感情が込められているような…
それをこれまで相撲に生きてきて、今はややこしい事態への対処に頭を占められている文季に察しろと求めるのは無理な話か?いや、それでも真夏を平然と相撲に誘ってしまうのはどうかと思いますよ(笑)
真相が明らかになっていく殺人事件、『カエル様の花嫁』。そして近づくイチゴヤドクガエルとの対決
どうやら次巻で完結してしまうようで。こちらは『虚構推理』みたいに原作の続きが描かれることはないのか。それはそれでちょっと惜しいと思えるくらいに面白い漫画なのだけれど -
Posted by ブクログ
13巻から続いて描かれた琴子と六花の過去エピソードは苛烈な印象こそ少ないものの、目に見えない部分で二人の戦いが行われており、それが後々の対立構造に繋がっていったのだろうと思わせるには充分なエピソードだった
この話があるからこそ、この14巻終盤から始まる新たなエピソードにてどのような波乱が巻き起こるのかと続きが気になってしまう
「見たのは何か」
殺人行為を見せる目的が謎なら、目撃を通報しなかった行為も謎な事件の顛末
仮説に仮説をぶつけ合わせ思索を深め真実を覆す虚構を編み上げるのは本作のお得意とする所だけど、この話においては事件解決の場面において虚構は機能していない。犯人のまともではない動機にただただ圧倒されるばかり
なら、虚構はどの場面にて使われたかと言えば、作中で言及されているように六花を測る為だったんだろうなぁ。自分の行動、推理、犯人の動機。それらを前にして六花がどう動くかを測っていた
面白いのは一方で六花も琴子を測っていたのでは無いかという疑惑
果たして目の前にいる人物は敵になった時、自分の邪魔をどのようにするのだろうかと見えない鍔迫り合いをしているかのようだった
「的を得ないで的を射よう」
大岡裁きを前フリとして利用しながらもなんてオチの酷い話なんだ(笑)
相手の良心を試しているのかと思いきや、試していたのはどれだけ高ストレス状態に耐えられるのかという一点か。
そして狙いが叶っても狙いが敵わず終わる琴子の末路が面白可笑しい
「岩永琴子の逆襲と敗北」
これはまた珍しいタイトルになっているね。敗北よりも逆襲が先に来るんだ
キリンの亡霊というなかなか聞かないフレーズ、そこに事件の中心人物として関わってくる六花
これは琴子をどのように嵌め、そして敗北に至らしめる罠となるのだろうかとワクワクしてしまう -
購入済み
いよいよって感じ
これから面白い展開が始まりそうな予感がする回でした。虚構がキーポイントとなるのですが、いまいち意味を掴めていないので、早く知りたい気持ちでいっぱいです。
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購入済み
まさに虚構推理
ヒロインはとある事情で妖怪達の相談を解決していく。彼女は全てを知っている推理は虚構となる。物語のストーリーがどのように辻褄が合っていくのかが最後に気持ちよく納得できる作品になっている。