綾里けいしのレビュー一覧
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動けるようになって最初にした事が夢の中で関わった人達に救いの余地を授ける行為である点はもう本当に小田桐って感じ
しかも、その最中の自分は激痛に苛まれ続けているとか、どういう精神性をしているんだ……
それでも小田桐は人と関わる事も生き足掻く事も辞めないのだから、ここまで来ると身勝手な彼の生き方も主義思想のレベルに達しているのではないかと思えてしまうよ
夢から脱しつつも紅い女の影響からは完全に脱せられない小田桐達がまず行うのはあざかの死に繋がりそうな予言の妨害
その為にカニバリズムと集団自殺がコラボレーションした宴に参加するなんて本作の展開はどうかしてる…。
ただ、小田桐が連想したように主催者 -
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この巻は凄かった…。異常事態はそこかしこに起こっているのに誰もそれを感じ取れない。異常に気付けぬ異常性、徐々に壊れていく小田桐の認識。そうしたズレが最高潮に高まった瞬間から始まる地獄は読んでいるこちらのメンタルまでゴリゴリと削ってくるものでしたよ……
雄介や久々津の復讐心が迸る一連の事件が終わった事であざかの前に横たわるのは退屈な日々だね。小田桐にとっては凄惨な事件から離れられる安らぎの時。けれど人の激情をこそ栄養のように啄むあざかにすれば緩やかな死を迎えているかのような日常でもある
訪れる依頼人が持ち込む事件すら退屈となれば、あざかは活動を停止してしまう。だからか、この巻は小田桐の積極的 -
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前巻にて、誰もが眉をひそめるような選択をして憎きあさとを助け出した小田桐
けれど、彼が自分の意志でその選択をしたならば、後悔が有ったとしてもあの道しか選べないなら、そこに絶望が有ったとしても彼なりの幸福に繋がっている可能性があると言えるのかな
今回はそれと似たような他者からの理解は難しくても当事者なりの幸福を追求するかのような話が目立った印象
冒頭から陰惨な行為が描かれるStoryⅠ、発作的に他者の眼球を抉る猟奇犯罪の話なんて随分とおぞましい
犯人の話を聞いてみても論理的であるようで居て決定機に破綻している。そもそも後悔しているだとかもう止めたいだとか口では言うのに、行動は全く言葉に沿っ -
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あさとを殺さないままに異界へ置き去った事でこの巻にて小田桐が意識するは罪の意識かな
多くの悲劇を生み出したあさとを殺すべきだったのではないか?異界にあさとを置き去りにしたのは酷い行為だったのではないか?
矛盾するようでいて解決を見ない小田桐の悩みはこの巻に充満している
だからか、登場した人物達も罪の意識を備えているね
小田桐が閉じられた学園で最初に向き合った事件も罪の意識が肥大化したような事件だったし、戻ってきた綾が求めたのも罪に応じて罰される事だった
小田桐は少女達の事件で何も出来なかった。綾に対して何もしないと宣言した
特に綾への台詞から小田桐は自身を断罪人にするつもりはないとの意識が読 -
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絶望に沈む小田桐にこの巻で突き付けられるのは己の過ち
あさとの指摘により罪に潰された彼はもはや立ち上がる気力もない。誰かが殺してくれるならそれで良いし、絶食による死が待つのならそれも良い
小田桐は生を捨てる事により過ちを犯した自分を罰しようとした
面白いのはその発想とて過ちだと突き付けてくる点だね
あざかは小田桐の死に意味は無いと突き付け、死を拒んだ姿勢を再考するよう促す。白雪は小田桐の過ちに意味があったと感謝し、その上で小田桐が俯き続けるなら別の誰かが犠牲になると示す
それらは小田桐が罪人であろうと立ち止まっていようと世は動き続けると脅迫してくるもの。だからこそ小田桐は自分を許すなんて理由 -
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前巻ラストにて一般的で普通な信念を示した小田桐。それは他者の幸福を願う分には害のない代物だけど、相手がどうしようもなく追い詰められていたらどうなるの?と云う方面を描いたのが今巻のエピソードかな
と云うか、今巻では小田桐の追い詰められ具合が凄まじい事になっていたね…。静香に囚われていた時でさえ、ここまででは無かった気がするよ……?
ただ、あの時との違いを見出すとするならば、被害者か加害者であるかという点かな。静香の時は完全に想像もしていなかった彼女の変容に巻き込まれたという形だった
けれど、今巻は小田桐が良かれと思ってした行動が結果的に関係者を死に至らしめている。それは終盤であさとが指摘したよ -
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ネタバレなかなか強烈なヒロインとダークな世界観のファンタジー作品。
異世界転生譚でもある。
とにかく”拷問姫”のキャラクターが強烈。
自らを”誇り高き狼にして卑しき雌豚である”と宣い、大量虐殺の咎で火刑にされることを良しとするその気高さと人に対する傍若無人さ、そして時に見せる無邪気さに否応なく魅せられる。
衣装も唆るものがあるよね^^
彼女の従者に転生させられ悪魔との戦いに巻き込まれる主人公の不運は実はすごく幸運なのじゃないかと思う。
この巻ではほとんど闘う力はない主人公だけど、この先、覚醒めいたこともあるのかな。
まあ、闘うメイドのヒナがいれば無くても大丈夫か? -
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ネタバレ私、佐山夜助は執事である。そして、仕える主、春風琴音様は大層素晴らしい方だ。どう素晴らしいかと聞かれればこの世の言葉では表せない程素晴らしい。どんな文学者の言葉をもっても表しきれないのだ。 一言でいうならば尊いのである。
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久しぶりにやばい小説を読んでしまった。ここでいうやばいは当然誉め言葉であるのだが、本当になんというか、やばい小説だった。正直、怪奇幻想読者クラブのタグを使うべきか否かを悩んだ一作であるが、裏のあらすじに(ラブコメとつくが)ミステリーと書いてあるし、謎解き要素もあるし、読んだ結果、ミステリーだったと思うのでこちらのタグをやはり使わせていただいた。 大雑把なあらすじ -
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ネタバレ何処が「問題は何もない」だ、問題しかねえ!
と冒頭から盛大にツッコミを入れてしまった。
何処の世界にご主人様の椅子に喜んでなる執事がいるか。
ここにいたんだな、びっくりだ。
夜助のツッコミ入れまくり、ツッコミどころしかない語りがテンポ良くて面白く、妙に癖になる作品。
延々聴いていられる語りだ。
「森へお帰り」が特に好き。
作中登場するたび笑ってしまった。
言動は非常に残念だけれど、ご主人様への愛は間違いない。
問題はあるけど、間違いない。
悪魔で執事だけど。
某黒い執事とはまた違ったタイプの執事様だけど。
ツッコミどころと言えば、どう見ても事件なのに、ご主人様の天使的解決法によって最終的 -
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地上で生活する地獄の王の第108子である西島俊。彼の望みはただ1つ地獄に堕ちた彼のヒーローであり守りたい相手の桜花櫻を救うこと。力のない彼は地獄に戻り第7子のネロに協力を仰ぐ。
個人的に綾里けいしはこういった暗い舞台と暗い主人公の設定の方が合っていると思う。暗い世界の中でほとんど救いもないけれど、それでもわずかな可能性にかけて足掻く主人公は魅力的だ。
そして登場人物のメインは俊、ネロ、櫻の3人の絞ったのがよかった。今回は敵であるエンドレアスを含め、ネロ以外の王の子たちの描写は必要最低限で抑え、継承戦でもそれは同様であった。どうも作者は複数人を同じ舞台に上げることが苦手な印象を何作か読んで思う。