綾里けいしのレビュー一覧
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今回は短編集らしいエピソードが並ぶ構成となったね。日常成分に溢れていて血みどろ成分が珍しく薄い
特に小田桐の日常とあざかの日常が裏表で描かれた『繭墨あざかと小田桐勤の休日』は特に短編らしさに溢れている。小田切からはあざかが休日をどのように過ごしたかは見えないし、あざかの側から小田切がどのように日々を過ごしているかを見えはしない。小田桐は穏やかに友人に囲まれた日を暮らし、あざかは凄惨な依頼人が訪れる日を過ごす。対極的な2人の休日がほんの少し交差する内容は短編だからこそ出来るものと思えたよ
この巻の収録エピソードで面白いのは小田切に成り代わろうとした男、又は小田切かと誤認させる男がそれぞれ登場す -
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あさとは変わらず目覚めず仮初の平穏が続くかに見えた小田桐の日常。けれど、彼があざかの傍に居る以上は平穏に浸り続けるなんて不可能なわけで
StoryⅠの事件は通常通りの怪異が起きつつも、別の異変が向こうから侵入してくる形となっているね
このエピソード、依頼人が持ち込んだ異変は確かに恐ろしさを備えていたものの、それ以上にあざかの部屋に潜り込んだヒルガオの存在が奇異に映ってしまう。あの家を訪れる者は依頼人か知人ばかりだったから
依頼人である岬が探していた少女が都合よくあざかの家に潜り込むなんて不可解にも程が有る。まるでその状況は誰かがシナリオを描いたかのよう
ヒルガオという異物が紛れ込みながら何事 -
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短編集だからとはいえ、ここまであざかの登場シーンが少ない巻って珍しいかも
それだけキャラクターやサイドストーリーが増えてきたと言えるのだろうけど
『白雪は「びきに」を知らない』
2巻のアフターストーリーであり、更紗と蝶尾のその後、水無瀬家の復興、白雪と兄の絆など本編で描ききれなかった諸々を補完する内容となっているのだけど、「びきに」要素がめっちゃノイズ……!
いや、良いんだけどね!大半のシーンを白い着物を纏って過ごしている白雪が布面積の少ないビキニを着用する展開のレアさを考えれば、短編だから出来る荒業と理解できる
けど、白雪が背負う水無瀬家当主の重責とか、忘れていた兄の優しさとか、シリア -
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短編集という事も有ってか、本編よりも若干ライトな印象を受けるね
それでもあざかと出逢ったばかりの頃の小田桐を描いた過去編などは彼に容赦なく地獄を突き付けるのだけど
『僕が「繭さん」と呼ぶ理由』
腹に鬼を宿してから半月しか経っていない事も有り、このEPの小田桐は芯から厭世的。おまけにあざかへの信頼も特に無いものだから彼には寄辺となる何かすら無い
そんな彼がどうしてあざかの傍で生きると決めたのか、という小田桐の根源に関わる点が描かれているね
怪異自体はホラー風味で恐ろしさは有るのだけど、実害に繋がる危険性は低い為かこの話で主題となるのはどのように怪異の正体を暴くかではなく、自分の意志でどうと -
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黒ゴスロリと唐傘で身を纏うあざか、白い着物で彩り扇子で会話する白雪というデザイン面で水と油並みに相性が悪そうなのに、その二人が空飛ぶ赤い金魚と関わる事で妙にバランスが取れているように思えるって不思議
第1巻が導入部として小田桐が自身の在り方とどう向き合うかを描いた物語だったなら、今回は彼が自身の在り方を踏まえて他者の異常とどう向き合っていくかが描かれた物語となったのかな
今回関わる事になった水無瀬の一族は能力者一族らしい集団だね
筆で描いた文字が浮き上がり動物としての実態を取り、敵に襲い掛かる
それだけなら格好良い能力者と言えなくもないけど、異能者を生み出す一族なんてまともである筈がなく -
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綾里けいし先生の作品を読むのも随分久しぶり…と思ったら、『B.A.D』シリーズ完結からもう10年も経ってるのか…。その後に読んだのも『ヴィランズテイル』くらいだし
それだけに死体描写等は随分懐かしい気持ちに成りながら読んでしまいましたよ
本作で扱われるスタァがヴァーチャル空間の歌姫というのは現代的だね
今やテレビで活躍する者ではなく、インターネット空間でアバターを用いて活動する者がスタァとして扱われたって可怪しくない時代
けれど、彼女らの姿はアバターだから視聴者に見えるその姿は仮初に過ぎず本当の肉体は別にある。現実には炎上等により引退に追い込まれる事は有っても、仮初の姿が危害に遭う事は基本 -
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黒いモヤモヤと闘い続けた母が失踪し「黒屋敷に行きなさい」という手紙が残された。冬乃ひなげしは母の手紙に従いそこを訪れる。そこには黒ずくめの鏡見夜狐がいた。
綾里けいし特有の残酷で残忍で救いのない展開、それでいてどこか美しさを感じる描写は相変わらずだ。異能もののバッドエンドやグロいものに抵抗がない人には合っている作品だと思う。
メインキャラの1人鏡見夜狐、時に少年のように無邪気で時に青年のように無関心でで時に老人のように達観した独特で毒々しい存在。現段階では彼がどういう存在なのかは明らかにされていないが、謎は謎のままでいいのだろうかと感じさせる人物だ。
もう1人のメインキャラの冬乃ひなげし、無自 -
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私が死んだら、<黒屋敷>へ行きなさい。
姿を消した母の言葉に従って、冬乃ひなげしは黒ずくめの男・鏡見夜狐と出会う。
黒ずくめの謎の探偵・鏡見と、その助手になったひなげしが、冷蔵庫の中で育つ胎児、落下する三つの首の幻など、恐ろしい怪異を解決していく幻想連作ミステリ。
初読の作家さんですが、短い文章を連ねていくような書き方が特徴的で、若干詩寄りにも感じます。
そういった文章の雰囲気もあるのかもしれませんが、悪夢のような怪異はどれもとても幻想的で美しく、幸せな解決はしないのに何だか魅了されたような気分になりました。
それぞれの事件には、テーマとなるような有名近代文学や詩が設定されていて、それ -
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人と人に似た獣・魔獣のいる世界。魔獣愛好会に好奇心から参加した上代ウヅキ。彼は顔を白い仮面で覆い、見事なハーピーを連れ、オリハルコンを手にした男ツカイ・J・マクラウドに好奇心から話しかけた。それが全ての始まりだった。
大人のライトノベルを表現したかのような作品で妖しく、謎めき、危険な雰囲気を帯びている。ミステリーではあるが誰が犯人かは分かっていて、どうやって犯人が目的を達成しているかが見所だ。だが、魔獣を使っての犯行なので推理は難しい上に犯人が罰を受けることがない。実に綾里けいしらしい後味の悪さがあり健在で読む人を選ぶ作品ではある。個人的にはウヅキのタイミングの悪さは達が悪く、違う意味での不快 -
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小田桐が七海に利用される話、小田桐が七海に利用される話パート2、B.A.D本編が始まる前に小田桐が初めて繭墨と依頼を受けた話、B.A.D本編終了後の後日談、4つの話の短編集。
1話、2話でそもそも知っていた七海の異常性と狡猾さを改めて知った。個人的には七海が好きじゃないので2話分七海絡みの話を読むのは苦痛だった。3話はB.A.D特有の怖さと気持ち悪さと後味の悪さがあって最期まで変わらない雰囲気が心地よかった。
4話は後日談、あんなに始終ワタワタしていた小田桐が菩薩のようになっていたのが感慨深い。意外と繭墨に会っている関係性になぜかホッとしてしまった。主従関係は解消されても2人には少し離れたとこ