綾里けいしのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前巻ラストにて一般的で普通な信念を示した小田桐。それは他者の幸福を願う分には害のない代物だけど、相手がどうしようもなく追い詰められていたらどうなるの?と云う方面を描いたのが今巻のエピソードかな
と云うか、今巻では小田桐の追い詰められ具合が凄まじい事になっていたね…。静香に囚われていた時でさえ、ここまででは無かった気がするよ……?
ただ、あの時との違いを見出すとするならば、被害者か加害者であるかという点かな。静香の時は完全に想像もしていなかった彼女の変容に巻き込まれたという形だった
けれど、今巻は小田桐が良かれと思ってした行動が結果的に関係者を死に至らしめている。それは終盤であさとが指摘したように小田桐のせい、つまりは加害者と言えるのかもしれない
だからこそ、これまでは怪異に巻き込まれるだけの被害者意識で居た小田桐の心を容赦なく追い詰めるわけだ
一方、それでも小田桐が絶望と向き合い続ける事になったのは彼が愚鈍なまでに諦めようとしなかったからだね
牧原の件でも彩の件でも小田桐は喉を枯らす程に絶叫して、二度と顔を挙げられない程に沈んだ
それでも彼が怪異と関わる姿勢を止められなかったのは、何も出来ない自分というのを否定する為かな…
何か行動すれば何か出来るかもしれない
その言葉に虚実は無いのだろうけど、一方で出来る何かが必ずしも良い影響であると限らないのが問題だっただけで
それにしたって日傘の件は本当に小田桐を追い詰めるものになったのだろうけど
2つの事件で協力し信頼を築いて、更には誰も言ってくれなかった温かい言葉も投げてくれた
それだけに彼が自分達の命の為に裏切ったという事実、そんな彼や灯を中途半端に助けようとした事実は余計に小田桐の心を損耗させたのだろうね
小田桐は絶望に沈み、雨香より強い鬼が現れた。幕は切って落とされた。あさとが次に何をするのかと恐ろしさが募る展開
それだけに普段と変わらずチョコレートを齧るあざかが現状をどう考えているのか気になる処 -
Posted by ブクログ
ネタバレなかなか強烈なヒロインとダークな世界観のファンタジー作品。
異世界転生譚でもある。
とにかく”拷問姫”のキャラクターが強烈。
自らを”誇り高き狼にして卑しき雌豚である”と宣い、大量虐殺の咎で火刑にされることを良しとするその気高さと人に対する傍若無人さ、そして時に見せる無邪気さに否応なく魅せられる。
衣装も唆るものがあるよね^^
彼女の従者に転生させられ悪魔との戦いに巻き込まれる主人公の不運は実はすごく幸運なのじゃないかと思う。
この巻ではほとんど闘う力はない主人公だけど、この先、覚醒めいたこともあるのかな。
まあ、闘うメイドのヒナがいれば無くても大丈夫か? -
Posted by ブクログ
ネタバレ私、佐山夜助は執事である。そして、仕える主、春風琴音様は大層素晴らしい方だ。どう素晴らしいかと聞かれればこの世の言葉では表せない程素晴らしい。どんな文学者の言葉をもっても表しきれないのだ。 一言でいうならば尊いのである。
***
久しぶりにやばい小説を読んでしまった。ここでいうやばいは当然誉め言葉であるのだが、本当になんというか、やばい小説だった。正直、怪奇幻想読者クラブのタグを使うべきか否かを悩んだ一作であるが、裏のあらすじに(ラブコメとつくが)ミステリーと書いてあるし、謎解き要素もあるし、読んだ結果、ミステリーだったと思うのでこちらのタグをやはり使わせていただいた。 大雑把なあらすじとしては、犯罪に巻き込まれやすい、あるいは犯罪を犯さんと企んでいる人間を触発する体質『犯罪被災体質』である、お嬢様春風琴音と、それを近くで支える執事、夜助の物語である。
それだけ聞くと、事件によく巻き込まれるお嬢様が執事と共に卓越した頭脳で推理をして、華麗に事件を解決する話(コナン君かな?)だと思われるだろうが、ところがどっこいだ。犯罪によく巻き込まれるのはともかくとして、彼女がするのは華麗な推理で、あなたが犯人です!ではない。事件を解決することは解決するのだが、解決……?という感じ。
解決というよりは分解しているという印象。そもそも犯人を悪人としてとらえず、説得、あるいは犯罪として取り上げられなさそうな方向に誘導して、事件なんて初めから無かったんや!!とでもいう様に超強引理論で話をまとめてしまう。第一話目からそんな感じで、ミステリーとはいったい。 完全にコメディが勝っている。
そして、このお嬢様もなかなかすごいのだが、もっとすごかったのはこのお嬢様を支えている執事、夜助だ。この執事、お嬢様を敬愛し、敬い、慕い……まあとにかくすごい。タイトルにもある様に、偏愛の極みであるが、偏愛というより変態ですよね。
その夜助の一人称視点で話が進んでいくので、何度もお嬢様について書かれており、いかに素晴らしいかというのがこれでもかという程書き上げられている。いっそここまで振り切ると、逆にすがすがしいです。夜助が語っている間も、始終様々な小説や映画や漫画からネタを引っ張ってきていて、ネタが渋滞していた。でも不思議とくどいと思わなかった。
たださすがに○○で執事ですから、と言い出した時はえっ、これなんて〇執事と思ったものである。とにかく、これは笑いながら読むミステリー?小説であることは間違いない。そのまま、コメディとネタを全部ぶっぱなしたまま終わるのかと思ったが、終わりは少しシリアスチック。それでも笑えるけど。
エピローグであるお嬢様視点からの夜助との出会いの章はちょっと胸を打たれた。 この作品は続きが出そうな終わり方だが、果たして出るだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何処が「問題は何もない」だ、問題しかねえ!
と冒頭から盛大にツッコミを入れてしまった。
何処の世界にご主人様の椅子に喜んでなる執事がいるか。
ここにいたんだな、びっくりだ。
夜助のツッコミ入れまくり、ツッコミどころしかない語りがテンポ良くて面白く、妙に癖になる作品。
延々聴いていられる語りだ。
「森へお帰り」が特に好き。
作中登場するたび笑ってしまった。
言動は非常に残念だけれど、ご主人様への愛は間違いない。
問題はあるけど、間違いない。
悪魔で執事だけど。
某黒い執事とはまた違ったタイプの執事様だけど。
ツッコミどころと言えば、どう見ても事件なのに、ご主人様の天使的解決法によって最終的には事件にすらならない点。
「いや、そうはならんやろ!」と思わなくもない展開もあるが(だってどう考えても犯罪)ご主人様にああ言われると許してしまう罠。
真実はどうあれ、それで丸く収まるならいいのだ。
もちろん、ご主人様の解釈こそが真実な場合もある(確か)
犯罪を呼び寄せてしまう体質のご主人様と、そんなご主人様を悪堕ちさせたいけど愛しすぎて残念になっている悪魔で執事。
なかなか濃い組み合わせだけれど、エピローグにあった通り、そんなご主人様に唯一付き添えるのは夜助だけ。
普通の人間では災難に巻き込まれて大変だからねえ。
つまり、お互いに互いが唯一の人なのだ。
某キャラの指摘は間違っていないと思う。
それを本当に自覚したとき、きっと夜助は爆発四散するんだろうな。
リア充爆発しろ的な意味で。
……強く生きろ夜助。 -
Posted by ブクログ
地上で生活する地獄の王の第108子である西島俊。彼の望みはただ1つ地獄に堕ちた彼のヒーローであり守りたい相手の桜花櫻を救うこと。力のない彼は地獄に戻り第7子のネロに協力を仰ぐ。
個人的に綾里けいしはこういった暗い舞台と暗い主人公の設定の方が合っていると思う。暗い世界の中でほとんど救いもないけれど、それでもわずかな可能性にかけて足掻く主人公は魅力的だ。
そして登場人物のメインは俊、ネロ、櫻の3人の絞ったのがよかった。今回は敵であるエンドレアスを含め、ネロ以外の王の子たちの描写は必要最低限で抑え、継承戦でもそれは同様であった。どうも作者は複数人を同じ舞台に上げることが苦手な印象を何作か読んで思う。舞台上に複数人キャラがいるものの主人公含め3人程度しかメインに立てない。それが第1章だけならいいが最初から最後まで同じメンバーでしか立ち回れない。なので今作の敵と敵の駒は消耗品という設定はよかったように思う。ただ、メインのはずなのにネロはただの気分屋なお姉さんであまり地獄の王の娘感がなかった。むしろエリザベートの方が思い入れがあるだけあり魅力的に書かれている。人物描写を丁寧に書けるだけあって残念だった。 -
Posted by ブクログ
ヒルガオが首を吊った原因の1つ絡繰舞姫、彼女の足を粉々のたたき折り、死ぬことを考える雄介は行方を眩ませる。主人を守れなかった飼い犬は復讐を果たして、死ぬべきだと考える久々津。2人の目的を阻止しようと動く小田桐。その小田桐に執着するように現れる紅い女。誰が自身の目的を達成できるのか。
7、8割が雄介の話でそれに付随して舞姫の話になっていて、雄介の怒りと悲しみ、過去の行いへの自責の念と自己愛を捨てきれない絶望、いろいろな感情が渦巻き、雄介に共感し応援する自分がいた。そして、独特な感性と考えを持つ舞姫に嫌気がさしていたが、彼女の覚悟と矜持に驚き、見方が変わった。
9巻はそれだけでよかったと思う。久々津が意味不明で不愉快でしかなかった。人の話は聞かない、自分の考えを曲げない、意見が通らないと人を傷つける、姫さまを免罪符にする。こじらせ男がこじらせたせいで無駄にみんなが傷ついたのは読んでいて嫌な気分になった。 -
Posted by ブクログ
ヒルガオが首を吊って死んだ。それをきっかけに壊れてしまった雄介は死の原因の一端の絡繰舞姫、繭墨あさとの殺害を試みる。舞姫とあさとを守ろうと動く小田桐だが、守る対象は所在不明、それぞれがどう考え、どう動くのか。
雄介の話だが、前作に続き舞姫が出突っ張りだ。そして、異能者は考え方がぶっ飛んでいて、もはや小田桐すらも普通ではない。なので、雄介の悲しみに共感出来し、寄り添える人がいないのが切ない。強制的に気分のスイッチを切り替えて生活する雄介は日常生活でON/OFFを繰り返す読者と感覚はそう変わらないのかもしれない。それだけに読者としては雄介の言動に共感し、心配し、この先の幸せを望む気持ちが生まれた。 -
Posted by ブクログ
白雪の話、小田桐・雄介・幸仁3人が巻き込まれる話、雄介と七海が交わる非日常の話、あさとの話、全4話の短編集。
それぞれの話が、本編に入らない部分で何をしていたのか覗くことが出来るサイドストーリーになっている。ただ、それぞれの話を読んだ後の気持ちはみんなバラバラだ。
白雪の話は物悲しさが滲み出ていて悲しさを抱える白雪を応援したいと思った。
男3人がわちゃわちゃする話は読んでいて楽しめるが、人間の悪い部分と良い部分を感じるB.A.Dらしい所も盛り込まれていた。だが、珍しく不快感のない話だ。
B.A.Dの中随一の怖さを誇るキャラは頭の中が歪んでいる。話は雄介と七海だが、七海の異常さと雄介の正常さの対比が上手く書かれていると思う。
あさとがまだ小田桐と友人だった頃にどんな日常を送っていたかと思えば、思いっきり後味の悪い話で白雪と祐仁に謝れと思うほど、嫌な1冊だと思えるくらいだ。作者の構成の仕方の罠に見事にはまった読者が多いと思う。 -
Posted by ブクログ
集団自殺事件が多発し、その裏では繭墨あさとがいた。これまでの出来事で自責の念に囚われ動きを止めた小田桐。そんな彼のために狐の挑発にあえて乗った白雪は捕らわれてしまう。自分のために動いた白雪を救うために小田桐が動き始めたが、繭墨のもとを離れたがために戻って来た彼の目の前にあったのは繭墨の死体だった。
まさか、繭墨が死ぬとは思わなかった。これまでなんのかんの言っても繭墨は無敵だと思っていたが、本当に14才の少女だとある意味感心した。そして、小田桐の悩み、葛藤する時と踏ん切りのよさとのギャップが激しい。共感出来るのに恐怖すら感じる彼が面白かった。