岸政彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
くたびれたジャズベーシストと、年増のスナックホステスの恋愛譚。
本当になんてことない話なのだけれど、妙に胸に迫るのは年が近いからか。年増のホステスと僕ほぼ同い年なんですね。
人生に対する諦めや、まだ先が有るのではないかという希望と、愛情なのか友愛なのか分からない好意。何も妨げるものは無いのに、どうしてか踏み切れない。
音楽で食べて行けているけれど、先細りは必至だし技術的にもこれ以上は見込めないというくすぶりと、誰かの心を背負う事の重さにおびえる気持ちなのでしょうか。
最後まで読んでも心の動きの深い所は書いていないので、読んで推し量るしかありません。色々考えてしまう本だし、淡く記憶に残って消えて -
Posted by ブクログ
(いま感想文用のノートに手書きで書いているのだけど、「傘」っていう漢字が全然上手に書けなくて悲しみ。)
「断片的なものの社会学」以来、それまで全然知らなかった岸政彦さんという社会学者/作家の方にすこぶる興味を持って、著作をあれこれ読み漁っている。
この小説は、おそらくカップルと思われる男女のそれぞれの視点から、彼らの出会いや日常生活が淡々と語られる。前半が男性側、後半が女性側。決して裕福ではなく、ほとんど定職にもついていないような二人。汚い部屋。塞ぎ込む彼女。日雇いの肉体労働。付き合ってすぐの頃の思い出、明るかった彼女。波打ち際。だらだらと始まってだらだらと終わる関係。自分と無関係なよう -
Posted by ブクログ
大阪の片隅で出逢った、音楽で細々と生計を立てるジャズベーシストの男と、小さなバー『ドミンゴ』でアルバイトをしている美沙。
二人の他愛のない会話文がシーンの半分ほどを占めており、鉤括弧をつかわずに羅列されるそれらはとても象徴的で、見事に独特な雰囲気をつくりあげていた。
そのなかに、"もっかいリリアンの話して。"と美沙が幾度もくりかえしねだるエピソードがある。
男が小学生だったころ、仲間はずれにされていたクラスの女の子が独り無心でリリアンの紐を編み続ける姿。その光景がむしょうに忘れられずに折に触れて思い出してしまう、という話。
言葉ではうまく説明はつかないけれど意味を持つ、男の -
Posted by ブクログ
ネタバレ「何かを激愛する、ということを久しくしていない。何かを激愛したい。それで振りまわされたり、困らせたり、たまに泣かされたりしたい」
50歳、独り暮らしの独身女性の美穂。
定職もあり貯金もあり、何不自由なく日々を平穏に暮らしている。
けれど、ふと思い出すのは11歳の頃の出来事。
近所の公民館の小さな図書室で、毎週土曜日の午後になると一人で本を読んでいたっけ。
そこで出逢った同い年の少年と共に過ごした淡い記憶は、今となっては追憶に空想が混じった曖昧なものもあるかもしれない。
けれど大人になった今もはっきり思い出すのは、二人が共に体感した"地球の終わり"。
家族も友達も猫も全てを