岸政彦のレビュー一覧

  • リリアン

    Posted by ブクログ

    くたびれたジャズベーシストと、年増のスナックホステスの恋愛譚。
    本当になんてことない話なのだけれど、妙に胸に迫るのは年が近いからか。年増のホステスと僕ほぼ同い年なんですね。
    人生に対する諦めや、まだ先が有るのではないかという希望と、愛情なのか友愛なのか分からない好意。何も妨げるものは無いのに、どうしてか踏み切れない。
    音楽で食べて行けているけれど、先細りは必至だし技術的にもこれ以上は見込めないというくすぶりと、誰かの心を背負う事の重さにおびえる気持ちなのでしょうか。
    最後まで読んでも心の動きの深い所は書いていないので、読んで推し量るしかありません。色々考えてしまう本だし、淡く記憶に残って消えて

    0
    2021年11月15日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    一人暮らしの女性が、40年前くらいの小学生だった頃を回想する話とエッセイがひとつ。
    スナック勤めの母親。でも、寂しい小学生時代とは感じられなかった。この子には図書室があった。猫もいた。母の作ってくれたカレーもあった。
    母親を早くに亡くしてしまっても、引き取ってくれた親戚の人達は良くしてくれたし、今、この歳で独身でも決して不幸ではない。
    人によって、価値が異なるということを強く感じた。
    何が幸せなのかは、自分で決めるものなんだなぁ。

    0
    2021年09月12日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    表題作の方は、小学生の会話と行動がどうにもしっくりこず、最後まで入り込めなかった。土曜日の半ドンの風景や空気感のリアリティは自分も同様の経験がありよく描かれていると思えるのだが、小学生二人の距離感と感情の細部が読み取れなかったのが残念。
    給水塔の方は小説ではなく、著者の実人生と大阪の街々との関わりを描くエッセイ。80年代から今までのが街の変遷やそれでも変わらない性格が浮かび上がる。

    0
    2021年09月12日
  • リリアン

    Posted by ブクログ

    心の隅に追いやっていた過去や、期待を抱かなくなった未来を無理せず自然にこぼすことのできる相手がいるのはいい。日々を穏やかに支え合って過ごせる関係。

    会話の中に生まれる波長、湿度が綺麗に編み込まれていて、リリアンのように長くか細く美しく連なっている。
    鉤括弧のない会話が独特で心地よさあり。

    閉園後の暗闇でのデートがとても素敵だった。
    二人の脳が一瞬繋がって溶け合う感覚。

    情景、手の動きで心に訴えてかけてくる文章。
    ドラマチックな出来事はない。心が穏やかになる小説。人生に疲れを感じ始めた人や、関西が恋しい人は好きかもしれない。

    0
    2021年09月12日
  • ビニール傘

    Posted by ブクログ

    (いま感想文用のノートに手書きで書いているのだけど、「傘」っていう漢字が全然上手に書けなくて悲しみ。)

    「断片的なものの社会学」以来、それまで全然知らなかった岸政彦さんという社会学者/作家の方にすこぶる興味を持って、著作をあれこれ読み漁っている。

     この小説は、おそらくカップルと思われる男女のそれぞれの視点から、彼らの出会いや日常生活が淡々と語られる。前半が男性側、後半が女性側。決して裕福ではなく、ほとんど定職にもついていないような二人。汚い部屋。塞ぎ込む彼女。日雇いの肉体労働。付き合ってすぐの頃の思い出、明るかった彼女。波打ち際。だらだらと始まってだらだらと終わる関係。自分と無関係なよう

    0
    2021年09月02日
  • リリアン

    Posted by ブクログ

    会話調で、急に話が飛んだり、終わったりの不思議な文体。大阪やジャズや夜の商売のやるせなさ感はよく出ている。

    0
    2021年08月27日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

    Posted by ブクログ

    社会学者4人がリレー形式で行った対談の記録。

    理論、量、質という異なる領域の専門家が対談することで、ひとことで社会学といっても、研究の対象や手法などがかなり広く、どれか1つが正しいというものでもない、ということがよくわかる。
    でも、こうした交流を通じ、より多角的な分析、理解に繋がるとよいと思う。

    0
    2021年06月26日
  • ビニール傘

    Posted by ブクログ

    繋がりが難しいが、所々既出のフレーズでリンクしている部分が面白かった。
    不思議と読んでいられた
    嬉しいときよりも、不幸な時の方がどうしようもなく2人に感じる、みたいな部分が、真理かもしれないと思った

    0
    2021年06月16日
  • リリアン

    Posted by ブクログ

    地元の大阪の土地柄というか、大阪の街が
    表現されていることろが、心に残る感じです。
    万博・北新地・西天満・南森町・大阪北港・我孫子・
    天王寺・蒲生・・・・・・
    粘着性のある土地の感覚。
    お話しの内容は、淡々と大阪の街を歩きながらながれていく感じ。

    0
    2021年05月01日
  • リリアン

    Posted by ブクログ

    大阪の片隅で出逢った、音楽で細々と生計を立てるジャズベーシストの男と、小さなバー『ドミンゴ』でアルバイトをしている美沙。
    二人の他愛のない会話文がシーンの半分ほどを占めており、鉤括弧をつかわずに羅列されるそれらはとても象徴的で、見事に独特な雰囲気をつくりあげていた。
    そのなかに、"もっかいリリアンの話して。"と美沙が幾度もくりかえしねだるエピソードがある。
    男が小学生だったころ、仲間はずれにされていたクラスの女の子が独り無心でリリアンの紐を編み続ける姿。その光景がむしょうに忘れられずに折に触れて思い出してしまう、という話。
    言葉ではうまく説明はつかないけれど意味を持つ、男の

    0
    2021年05月27日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    図書室。50代の女性の子供時代、母との貧しい暮らし、公民館図書室、仲良くなった男の子との思い出。

    と、作者本人の大阪に対する想いを書いた給水塔。
    関西に馴染みがないのでなんとなく読んだ。
    これが自分の地元だともっとしっくりくるのか?
    大学を出て、飯場を転々とは作家としては珍しい?

    0
    2021年02月25日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    ダヴィンチのプラチナ本オブジイヤーから。同コーナーで取り上げられたものは、結構積極的に読むようにしていて、それなりに当たりが多い印象を持っている。で、その中でもその年一番ってだけに、期待は大きくもなる。でもこれはダメ。少なくとも個人的には全くハズレ。今、文学モードじゃないってのも大きいのかもしらんけど、何が良いのかさっぱり。表題作の中編小説と、あと一本はエッセイが入ってるんだけど、そちらもイマイチ。大阪への思い入れの違い、って部分も大きいのかな。

    0
    2021年02月15日
  • ビニール傘

    Posted by ブクログ

    背中の月の彼が部屋を出て、ビニール傘の彼になるのか。
    大阪愛がちりばめながら、生きづらさを孤独をつながりを感じる。
    著者は社会学者。
    私は音楽家から知ったので、そちら関連も読んでみたい。

    0
    2020年11月08日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    大人になった今はもう得られない、かけがえのない大切な時間。
    現実味のないことに真剣に頭を悩ます二人が微笑ましい。

    その人を形作る過去の思い出。
    トラウマ的なことではなくこういう何でもない日々から人生を見つめるのもいいもんですね。

    0
    2020年10月08日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    子供2人の会話のテンポが良くとてもいい作品だった。
    子供の頃を思い出す、大人の女性。
    自分の母親の事、猫の事。
    そして図書室でいつも出会う男の子の事。
    その子との不思議な冒険。

    後半は作者のエッセイ。
    私の知らない大阪がいっぱい。

    0
    2020年03月31日
  • 図書室

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「何かを激愛する、ということを久しくしていない。何かを激愛したい。それで振りまわされたり、困らせたり、たまに泣かされたりしたい」

    50歳、独り暮らしの独身女性の美穂。
    定職もあり貯金もあり、何不自由なく日々を平穏に暮らしている。
    けれど、ふと思い出すのは11歳の頃の出来事。
    近所の公民館の小さな図書室で、毎週土曜日の午後になると一人で本を読んでいたっけ。
    そこで出逢った同い年の少年と共に過ごした淡い記憶は、今となっては追憶に空想が混じった曖昧なものもあるかもしれない。
    けれど大人になった今もはっきり思い出すのは、二人が共に体感した"地球の終わり"。
    家族も友達も猫も全てを

    0
    2020年02月09日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

    Posted by ブクログ

    とても興味深く読ませていただきました。
    社会学自体が馴染みがなかったが、4人の討論のわりにはよく纏まっているので、読んでいるうちに「社会学」の輪郭や直面している問題について理解ができるようになってきました。
    社会学を専攻していない素人の方でも、楽しく、また気づきを得ることができる良書だと思います。

    0
    2019年11月26日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

    Posted by ブクログ

    岸さん、北田さん、筒井さん、稲葉さんによるトークリレー本。社会学の知見がないと読み進めるのが苦しい。大学で学んでいた社会学を理解するために購入したが、より難解になった気がする。そのくらい普通の学問の深みはすごいと言うことなのかな。

    0
    2019年09月07日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

    Posted by ブクログ

    ちょっとしたきっかけで買って読むことになった本。もともと社会学がどういうものなのか分かってないのに「どこから来てどこへ行くのか」なんてどうでもいいんだけど,専門分野が異なる先生たちの対談というライブ感のおかげでそれなりに楽しく読み終えた。
    結果的には,社会学の中にいろんなジャンルがあること,ほかの経済学や心理学なんかとは違いがあること,先生もいろいろ悩んでいること,などが分かり,社会学に興味は持てた。
    せっかくだから著者の誰かの本で読みやすそうなものがあったら読んでみようかとは思うものの,まあ1年ぐらい先かなぁ。

    0
    2018年12月24日