岸政彦のレビュー一覧

  • 断片的なものの社会学
    明確なオチはない、という意味では、わかりやすい話を期待している人には訳がわからず、つまらないものに受け取れるだろう、ということがわかる(実際ここの感想もだいたい二つに分けられる)。
    これが書かれた時よりも今のほうがさらに混沌としているし、何も求められていないのを知りつつ、自分だけは認められたいという...続きを読む
  • 沖縄の生活史
    ひとりひとりのページ数はさほど多くはないが、それが100人分集まった本自体の物理的な重量と内容が手首と心にずっしり響いた。過酷な体験ばかりではなく、戦争マラリアのこと、生きるための知恵や工夫、沖縄の歴史や家族の大切な記憶。
    その時その時を必死に生きてこられた方々の証言を聞き取り共有してくださりありが...続きを読む
  • 断片的なものの社会学
    チェルノブイリの祈りでも感じたことだけど、現実のエピソードとストーリーの断片を書き留めた物語は圧倒的な存在感を放つ。脈絡も意味も善悪もなくてもその「出来事」が起きた事実、それだけで充分。そういうことを書き綴って言語化したエッセイ、世界の片隅を味わったようで読んで良かった。

    人生を捨てる賭けに勝って...続きを読む
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学
    質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。
    ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書...続きを読む
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学
    有斐閣なのでフィールドワークの教科書という位置づけであるが、研究者のインタビューの関わりがとても丁寧に具体的に書いてあるので、フィールドワークについて書かれた教科書の中で最も面白い本の一つである。
     質的調査の領域の説明をすべて網羅しているわけではないが、フィールドワークをどのようにすればいいのだろ...続きを読む
  • 大阪
    表層に見えるもの、知覚できるものがこの世のすべてではない。
    行きかう人がどういう思いなのかどういう人生を送っているのか。
    自分ではなかった可能性、大阪で生まれ育たなかった可能性、あり得た人生、未来のだれか、取るに足らない出来事。
    それら見えないモノ、存在しないモノに対してすらの敬意を感じる文章群がこ...続きを読む
  • 断片的なものの社会学
    読むのにものすごく時間がかかる本だった。
    自分の10代後半から20代の頃の断片的な記憶が頻繁に呼び起こされて読書から脱線してしまうからだ。その度に読むのをやめて、またある日初めから読み直して…を何度か繰り返してようやく今日読み終えた。

    「学生時代にこの本と出会いたかった」とか、「20代のうちに読ん...続きを読む
  • 断片的なものの社会学
    なんとも、言葉に表せないことを代弁してくれそうで、そうでない本。
    なにか、心が赦される気持ち。
    手元に置いておきたい。

    ・私たちは、何か目の見えないものに、いつも怯えて、不安がって、恐怖を感じている。
    ・差別や暴力の大きな部分は、そういう不安や恐怖から生まれてくるのだと思う。

    ・私たちのほとんど...続きを読む
  • 図書室
    2部構成の話になっている
    1部目は「図書室」というタイトル
    大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話
    特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き...続きを読む
  • 東京の生活史
    150人の人が、その人と何らかのかかわりのある人に、人生についてインタビューした記録集。2段組1,200ページのボリュームで、読むのに1年近くかかった。
    聞き手、語り手の年齢やバックグラウンド、関係性もわからないので、いつのこと、何のことを語っているのかわかりにくいところもあるが、祖母の子どもの頃だ...続きを読む
  • 大阪
    岸さんより柴崎さんよりさらにひとまわり下の世代ですが、どちらの書く大阪も、わたしはよく知っている。
    柴崎さんの書く大阪はわたしが小さな頃に憧れた世界で、岸さんの書く大阪は思春期にわたしが歩んだ現実。それでも親に連れられて、あるいは友達と行った、アセンスや大丸といった、心斎橋や難波や梅田の高揚感を覚え...続きを読む
  • 図書室
    ひとりの女性のノスタルジックな過去の追憶。ふたりの空間が可愛くて儚くて愛しくて夢を見ているような気持ちになった。
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学
    とっても面白かった、知的興奮をありがとう。
    最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。
    何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!?

    大学院に行きたい気持ちも...続きを読む
  • 大阪
    お二人とも、文章から血の匂いや生暖かい(生ぬるい)空気がまとわりついてくるような気がするエッセイ。

    楽しいことだけでなく、辛いこと、苦しいこと、綺麗事ではない、鬱屈とした読後感。けど、人の色々な重みと考えたら、悪くはないと思う。また、ハッと気付かされることもいろいろあった。

    さらに年を重ねて読ん...続きを読む
  • 図書室
    「図書室」主に会話で綴られる、あるかつての女の子の出会いと別れ、そこにあった図書室の話。私は少女の語りを男性にされると違和感を覚えてしまうタチなのだが、こちらは全く違和感なく読んだ。大阪の持つ、あのうら寂しさや切なさが胸に迫る。外向きに演出された大阪じゃないのが嬉しくて、好きだ。
    「給水塔」後半に収...続きを読む
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学
    社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。

    以下、読書メモ
    面白いの軸の話
    自分と他人
    ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ
    →バージョンアップができるか否か

    メモの重要性
    出来事のメモ(雑記メモ
    出来事から浮かんだ社会...続きを読む
  • リリアン
    年末の長期休みが始まって2〜3日後の、とうに昼夜逆転してしまった夜。
    眠れなくて同居人とハーゲンダッツを買いにコンビニに行く時に似ている。
  • 東京の生活史
    岸政彦さんが監修ということで期待して、楽しく読んだ。まさか「海をあげる」の上間陽子さんの聞き書きまで載ってるなんて… 素晴らしい。
  • 大阪
    この本は読みやすそうだと思ったこと、また、新神戸オリエンタルホテルのロビーで起こった宅見若頭射殺事件(228P)のことまで書いている男気溢れるエッセイだと思い購入しました。この事件、近くに座っていた歯科医師の方も流れ弾に当たり亡くなっています。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

    私自身、昭和63年...続きを読む
  • 図書室
    説明がつかないけどすごく好き。朴訥とした文章が好き。風景、記憶の切り取り方が私と似ている気がする。最後のあの波は良かった。のラストになんだか泣きそうになる。
    人が一生をかけて手に入れたいと願う幻のキノコみたいなものをこの人は小学生で手にしてしまった。この人は、このまま一生ひとりなんじゃないかな。