岸政彦のレビュー一覧
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質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。
ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書かれていて、教科書にありがちな無味乾燥さはない。読み物としても抜群に面白い。
あとがきに「『社会調査』である限りは、人びととのコミュニケーションの中で鍛えられ、試され、厳しく批判される」とある。この一節がこの本全体を貫く思想になっていると思う。
論文のテーマを再構築していこうとする中、非常に有意義な本であったが、それにはとどまらない、さまざまなことを考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2部構成の話になっている
1部目は「図書室」というタイトル
大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話
特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き出したいって言うことをお話しされていて、
何もないことだけど実はそれぞれの人生の背景に何かがあったり
文字の羅列の出来事からは想像もできないことが人の歴史にあったりするから
一部を一発目に読んでうーんと思ったけど、2部の「給水塔」を読むと1部をもっと違う読み方で読めると思った
2部「給水塔」めっちゃ面白い
っていうのも著者岸さんの学生時代から今に至るまでの話だから。
なんで著者の話が面白いかっていうと、
私も著者と同じく「大阪」に
「東京的なものが嫌いで、もっとアジア的なもの、もっと風変わりなもの、もっと混沌とした、危険な、自分勝手なもの」(p.117)を求めてるからだと思った
大阪をすっごい美化?してるけど
でも、1部の話って大阪の話やん?
面白くないってさっき自分言ったじゃん?
完全に見落としてた、今気づいた
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それと、岸さんがPodcastに出てたときの番組で、司会の女性が「世界っていうけど、それってその場所のローカルなんだよね、ローカルはグローバルだし、グローバルはローカル」っていうの聞いて、ちょっと感動した
他者(人にかかわらず)に変な期待抱くのやめるようになったかもしれない
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作中で紹介していた「小松左京」の「少女を憎む」気になった、sf 作家みたい 日本沈没も書いてるんや
他にも色々と解決策が思いつきました。
あとやっぱりエッセイ好きだな -
Posted by ブクログ
150人の人が、その人と何らかのかかわりのある人に、人生についてインタビューした記録集。2段組1,200ページのボリュームで、読むのに1年近くかかった。
聞き手、語り手の年齢やバックグラウンド、関係性もわからないので、いつのこと、何のことを語っているのかわかりにくいところもあるが、祖母の子どもの頃だったり、同僚の知り合う前の話しだったり、同級生の卒業してからの経験だったり、読み進めるうちに少しずつわかってくる。病気、犯罪、ビジネス的成功や失敗、離婚、貧困、戦争体験、政治、人との出会いや別れなど、話の内容は極めて雑多であり、普通に暮らしている一人一人の人生があまりにも異なること、どんな体験をしてきたにせよどれも大切なものであることに、いまさらながら気付かされた。
喫茶店かどこかで隣で話している2人の会話に思わず聞き耳を立てるような読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
とっても面白かった、知的興奮をありがとう。
最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。
何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!?
大学院に行きたい気持ちもなおさら高まった。
それからもちろん色々気づきもあった。
以下備忘録。
☆社会学=私たちとは縁のない人びとの。一見 すると不合理な行為の背後にある 「他者の合理性」を誰にでも分かる かたちで記述し、説明し、解釈すること
☆社会は、複数の、お互い矛盾する「ゲーム」で 構成されている。それらが同時に進行して いる。社会学は、自分が参加しているゲームや 社会の主流派となっているもの以外の「もう ひとつのゲーム」の存在を明らかにする。
思ったこと。「何者としてフィールドワークでふるまちか」と いう点、散かかれてるけど自分のばあい「記者」or「きょう みあって学びたい人」のどっちかを時によって自由に選 択してる。し、今までそれで不都合だった時ない。と思っている。ただP60の「フィールドにより対象との関係性 がちがった」というのは興味深い。もう少し自分でも意 識してみてもいいかも。
社会学者は、記者よりも「取材の暴力性」ということに 圧倒的に真摯に謙虚にむきあってると思う。自分ももっと ←誰の、何のための取材か」「応じてくれた人の親切 心にどう報いることができるか」をきちんと考えよう。
・データ整理から疑問がうかびあがる」「矛盾の 存在にきづく」「おもしろいところ、半年徴的な ところをピックアップし、フィールドワークの焦点 をしぼる」「その際に、データはもちろん、先行 研究の中に位置づけることで問いを見い出す」
⇒それらの作業を通して、 結論に合わせて問いを作る。
☆「人々」ではなく、「人々の対峙する世界を知る」 「人々」を知るだと、人々の視点ではなくそれを分析 する分析者の視点で考えることになってしまう。「人々の対峙する世界」を知ることは、対象者を受動的な容器としてではなく、能動的な働きかけを行う 主体としてとらえることができる。(倉敷水島地区の女フィールドワークby中野卓の例)
☆人々の行為の背景にある様々な事情、経緯、構造的 条件や制約を記述し、その行為がどのようなプロセスで 選択されたかを理解する。それは無理解が生む 「自己責任論」の解体につながる。
☆生活史法=語り手が何を語ったか」「どう語ったか」、その語りを、統計データや履史的資料などをもとに「歴史構造」の中にいちづける。そしてその社会問題についての新しい理論を作る -
Posted by ブクログ
社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。
以下、読書メモ
面白いの軸の話
自分と他人
ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ
→バージョンアップができるか否か
メモの重要性
出来事のメモ(雑記メモ
出来事から浮かんだ社会学的発想(論点メモ
日記(気分を書く
人ではなく、人の捉え方を見る
「時間的予見」の問題としての貧困
論文執筆
理論を使う
枝葉を切り落とす、一言にまとめる
調べたことを書いても論文にはならない
調べたことから何を考え、何を調べ直したのか
「他者の合理性」
枠組みを問い直し、対象を論じ直す
↕️
「自己の不合理性」
自らの行いが不合理である点を知り直し、通俗的なものの見方を問い直す
「他者の不合理性」
調べる前からわかっていることしか書かれていない
調査の暴力性
個人の生活史に耳を傾ける(語り)
テーマである社会問題の背景知識を得る(歴史と構造)
その社会問題についての新しい見方を獲得する(理論) -
Posted by ブクログ
賑やかで暖かい場所にいると、後でひとりになったときの寒さが際立つ。
舞台が大阪であることで哀愁が増す。
妻を亡くした男性が主人公の「背中の月」での独白、
「また行きたいね、あの店なんだっけと言いながら俺たちは結局、あの街にも、あの店にも、あの海にも、二度と行くことはなかった。」
に、永田和宏の
「そのうちに行こうといつも言いながら海津のさくら余呉の雪海」
という歌を思い出した。
脳内でずっと自分に、亡き妻に話しかけているような文が頭に染み込んでいくように感じた。
読み終わって自分がいる場所を確かめる。
ここでないどこかに行きたいと思う気持ち、
でもここだって一度離れればもう二度と戻れない場所になるかもしれないのだ。
そしてそのきっかけは、ドアポストに鍵を入れるというだけで引き金を引けてしまう。
波打ち際の鍵は昔誰かが落とした鍵なのか。
さまざまな人の記憶が重なり混ざり合う。
「二度とない」ことへの焦燥や恐れはいつまでも人間の共通の認識なのだろう。
誰もが、失うことはないかのように生きている。
でもそれは人間が生きている限り必ず訪れる。
喪失を喪失としてそのまま取り出して見せてくれたような物語だった。
ときどき取り出して眺めたい。
悲しみに慣れておくため。優しい自分であるため。
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Posted by ブクログ
中篇「図書室」と、エッセイ「給水塔」を収録。
どちらもとてもよかった。
私が知っている少し前の大阪が詰まっていました。
懐かしく、自分も一緒にその時代を過ごしたような楽しさ、もう2度と戻ることができないと知ってしまった寂しさ、その両方を大切に心にしまうことができる時の流れも感じ、こころが温まるような気がしました。
エッセイの中で、万博公園にある大阪国際児童文学館について書かれていることが嬉しかったです。私の人生にも大きな影響があった場所だったので、居心地の良い閲覧室や静かな研究ブースの思い出、そこがなくなってしまったこと、今は廃墟のようになっていることを書いてくださっていたことが、とても嬉しかったです。