岸政彦のレビュー一覧
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岸政彦先生の小説をまた読んだ。岸先生、生活史を研究しているだけあって綴られる話もただひたすらにそこに生きる人たちが日々の生活を営んでいて、そのなかで出会う人や些細な出来事を書いてくれている
そういう話を読んでいると特に何のおもしろみもないような自分の1日や1週間、一ヶ月がこの本に綴られている内容のように苛烈ではなないけれどおもしろいことなのかもしれないと思わせてくれる
自分がただ営む生活も小説のように大切に読まれるような、そういうものだと想ってもいいのだ。なんとか生きている自分のことをもえらいよ、よくやってるよと言いたくなってくるのだ
また「給水塔」という書下ろしエッセイも入っているのだけど、 -
Posted by ブクログ
2021年12月から「沖縄タイムス」で始まった
「沖縄の生活史」プロジェクト。それは、現代の伝承。
100名の聞き手が100名の語り手から聞いた、生活史の数々。
・はじめに 岸政彦 ・おわりに 石原昌家
100通りの沖縄生活史は、実際に体験した人々の経験と記憶。
一人につき1万字の飾らぬ言葉には20代から99歳の、
戦前・戦中の生活、戦後の沖縄が日本ではなかった時代、
沖縄復帰後と現代の、複雑で様々な思いが込められている。
日本軍の兵士、空襲、手榴弾、身近過ぎる死、捕虜、収容所、
移民と沖縄への帰還、終戦後の本土から沖縄へ帰るまでの苦難、
マラリア、ハンセン病、本土での差別、パスポート、
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質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。
ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書かれていて、教科書にありがちな無味乾燥さはない。読み物としても抜群に面白い。
あとがきに「『社会調査』である限りは、人びととのコミュニケーションの中で鍛えられ、試され、厳しく批判される」とある。この一節がこの本全体を貫く思想になっていると思う。
論文のテーマを再構築していこうとする中、非常に有意義 -
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ネタバレ2部構成の話になっている
1部目は「図書室」というタイトル
大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話
特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き出したいって言うことをお話しされていて、
何もないことだけど実はそれぞれの人生の背景に何かがあったり
文字の羅列の出来事からは想像もできないことが人の歴史にあったりするから
一部を一発目に読んでうーんと思ったけど、2部の「給水塔」を読むと1部をもっと違う読み方で読めると思った
2部「給水塔」めっ -
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150人の人が、その人と何らかのかかわりのある人に、人生についてインタビューした記録集。2段組1,200ページのボリュームで、読むのに1年近くかかった。
聞き手、語り手の年齢やバックグラウンド、関係性もわからないので、いつのこと、何のことを語っているのかわかりにくいところもあるが、祖母の子どもの頃だったり、同僚の知り合う前の話しだったり、同級生の卒業してからの経験だったり、読み進めるうちに少しずつわかってくる。病気、犯罪、ビジネス的成功や失敗、離婚、貧困、戦争体験、政治、人との出会いや別れなど、話の内容は極めて雑多であり、普通に暮らしている一人一人の人生があまりにも異なること、どんな体験をして -
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とっても面白かった、知的興奮をありがとう。
最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。
何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!?
大学院に行きたい気持ちもなおさら高まった。
それからもちろん色々気づきもあった。
以下備忘録。
☆社会学=私たちとは縁のない人びとの。一見 すると不合理な行為の背後にある 「他者の合理性」を誰にでも分かる かたちで記述し、説明し、解釈すること
☆社会は、複数の、お互い矛盾する「ゲーム」で 構成されている。それらが同時 -
Posted by ブクログ
社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。
以下、読書メモ
面白いの軸の話
自分と他人
ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ
→バージョンアップができるか否か
メモの重要性
出来事のメモ(雑記メモ
出来事から浮かんだ社会学的発想(論点メモ
日記(気分を書く
人ではなく、人の捉え方を見る
「時間的予見」の問題としての貧困
論文執筆
理論を使う
枝葉を切り落とす、一言にまとめる
調べたことを書いても論文にはならない
調べたことから何を考え、何を調べ直したのか
「他者の合理性」
枠組みを問い直し、対象を論じ直す