岸政彦のレビュー一覧

  • ビニール傘

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    『断片的なものの社会学』に出てくる人々。それぞれ1人ずつが小説の登場人物のようだったが、本書では彼等が実際に動き出す。大阪の土地勘がほとんどないにもかかわらず、景色が眼に浮かび、会話が耳で聞こえてくるような‥リアルで不思議な読後感だった。
    惜しくも芥川賞受賞を逃したことをネタにされる著者のお人柄も含め☆☆☆☆☆

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    2021年11月13日
  • ビニール傘

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    少しずつ崩れていく街、貧しい若者達の日常、淡い諦め、それらの雰囲気を言葉で表現していてすごいと思った。リアルな空気が濃い小説。

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    2026年09月09日
  • 沖縄社会論 ――周縁と暴力

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    本書は、沖縄的共同体について、世間一般のイメージするいわゆるスローライフのような沖縄ではなく、パシリという手法を用いて実像を生々しく描きだしている。

    岸先生の『生活史の方法』に始まり、打越先生の本までたどり着いた。たまたま目に留まっただけで、大したことのないきっかけだったが、読み進めて行くうちに、沖縄好きの自分にぴったりの本だと思った。縁というのは不思議なものだと思った。私は沖縄が好きだが、それはいわゆる「沖縄」なのだと反省した。まだ咀嚼しきれていないが、視界が開けた本だった。

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    2026年09月06日
  • 断片的なものの社会学

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    タイトルの通り、調査や日常など折々に触れた断片的な語りがつらつらと書かれている。今、求められているようなスピード感、白と黒で応えるような結論などではなく、見方によればとても曖昧でもやもやとするかもしれないが、それでも何か大切なものを問いかけられているように感じる(なかなか言語化できないが)。科学が加速度的に進み、社会があまりにも複雑化する中、情動的で短絡的な言説が散見される世情だからこそ、自明に思えること、規範とされていることを一歩立ち止まって問い直すことの必要性を感じた。

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    2026年09月06日
  • 断片的なものの社会学

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    ネタバレ

    この本かなり面白かった…!

    世界をみる視点や感じ方が自分に近いと感じた。
    たとえば、「無数にある小石のひとつでしかないものが、『この小石』になる不思議な瞬間」(p.20)の話とか、「たまたまあるホテルのある階のあるエレベーターに乗り込むその一瞬」(p.20)を目にした話。
    他人からしたら気にも留めない、なんてことない一瞬だけど、その当事者からするとそれが本人の人生の本流であることとか。
    しかも当事者自身も、そういった一瞬の積み重ねが人生で、それが失われる世界を知らないからその大切さに気づいていないとか。
    え、わたし本書いたっけ?と思うくらい自分と同じ思考で思わず笑ってしまった。
    自分とは無関

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    2026年06月15日
  • 断片的なものの社会学

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    ネタバレ

    本の構成そのものが断片的な感じですがなぜかすらすら読めてしまった。
    ただ書いてあることは結構ささる、打ちのめされようなことが多かった。
    自分も含めて人生は断片的なもので意味などないんだな(そして意味などないままにそこにあるということがなんか面白いな)と思った
    ただほんとにフラットに自分に意味などないと突きつけられて苦しくなってしまった。そんな強い言葉で書かれてないけど。
    冷たいまであるけどフラットな目線を少し手に入れられる本だと思う

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    いま現実にそうであるように、毎日を無事に暮らしているだけでも、それはかなり幸せな人生といえるのだが、それでも私たちの人生は、欠けたところばかり、折り合

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    2026年06月09日
  • 断片的なものの社会学

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    私が多感な時期を過ごした80年代から90年代は、アイドルがたくさんいて、トレンディドラマが流行って、海外の音楽なんかもすごく流行った時代だった。バラエティも盛んでドリフターズやひょうきん族を見て育った。今から振り返ると、随分とどんちゃん騒ぎだったなと思う。勢いがある時代だったんだなと、勢いがなくなった今の日本にいて思う。

    そういうメディアでキラキラしたもの、明るいものばかりを見て育ったから、キラキラしたもの、明るいものが良いものだと思っていたけれど、正気になって落ち着いて見回してみると、社会はこの本に書いてあるような、さりげない、ちょっとしたエピソードや、少し寂しかったり、哀しかったり、意味

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    2026年05月30日
  • 生活史の方法 ――人生を聞いて書く

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    『生活史の方法』岸政彦(ちくま新書)を読む。受動的な聞き取りを勧めている。それでいつも言われることだが、聞き取りが終わって、あとはどうするのか。最後のページにある。「質的」に研究するとはどのようなことでしょうか、そこで何が問題になるのでしょうか。どうやってわたしたちは少数事例を「一般化」できるでしょうか。そこが最も聞きたいところなのだ。

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    2026年05月25日
  • 断片的なものの社会学

    行き交いすれ違う。その時私は他人の人生に接近する。断片的な1場面は通り過ぎても尚続いていく…。他人の人生を意識し介入することはしない。だがそこに断片のかけらが確かに存在する。

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    2026年05月05日
  • 大阪

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    ネタバレ

    個人的な語りの中から、大阪の街の雰囲気がたちのぼってくる。大阪に長く住んでいた人にも、私のように何度か行っただけの人にも、その匂いのようなものが思い出されてくるはず。

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    2026年05月03日
  • 断片的なものの社会学

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    筆者も言うように、とらえどころもなく、はっきりとした答えもない、あやふやな本。エッセイ調の中にメッセージ性を感じた。人を尊重するということは人と距離を置くこと、相手をそっとすること、ほっておく、ということになってしまう。もっと人と面を向かって話して、関わってもいいのではないか、ということ。
    どの話もなにか人との関わりに纏わっていた、ただ面白かった。

    ・手のひらのスイッチ
    幸せのイメージに「一般的に」がつくと、途端にそれかそれ以外かの基準が生まれる。「私は」という主語から始めることが幸せについて大切なこと。
    何かをするのは自由でいいこと、ただそれを規範として強制してしまうとそれが嫌な人にとって

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    2026年04月29日
  • 沖縄社会論 ――周縁と暴力

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    パシリとしての参与観察を行った、打越正行さんの遺稿集。
    ちくま文庫「ヤンキーと地元」にも書かれていたご自身のフィールドワークについての説明がさらに詳細に、また解説もあり深く知ることができた。
    沖縄の社会で生きるヤンキーたちを近くで見て一緒に生活をした打越さんの迷いや落胆、辛さも感じるが、しっかりと社会学者として対峙している姿がある。

    ・沖縄の二次産業の特殊さ
    二次産業がそもそも全国比で約半分、そのなかでも製造業は全国平均21.0%に対して沖縄県は5.3%しかなく、製造業が空洞化。ヤンキーがつきやすいからだを資本とする肉体労働である二次産業は建設業になる。
    建設業につくためには、特定のしーじゃ

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    2026年04月26日
  • 大阪

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    大阪を離れたことがない私にとって、外から大阪を語る柴崎さんの、程よい距離を感じる文章が心地よかった。

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    2026年04月03日
  • 調査する人生

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    社会学者なる人が、何をしているのかあまり考えたこともなかったが、ほんの少し垣間見ることができた気がした。
    フィールドワークでみたもの、感じたものをどれだけ、リアルに語弊なく伝えられるのかをどの章でも共通して議論されていたように感じた。
    実際に部落、ホームレス、ヤンキーなど社会的に弱い立場に立たされている人たちを調査している方が多く、確かに書き方ひとつで、美談にも、いい、悪い話にも出来るような気がした。

    社会問題を改善する学問というより、人を理解する学問と考えると、社会学に少し親しみを感じました。

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    2026年03月22日
  • 沖縄社会論 ――周縁と暴力

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    分厚さにたじろいだが、字の大きさに少し安堵。
    何より内容がある意味シンプル、ある意味深かった。
    私はこの打越正行さんを知らなかったのだが、沖縄のヤンキーの実態を知るべく、
    自らパシリになりながら取材を続けた人らしい。
    一年前に亡くなって、その遺稿をまとめ出版したのがこの本ということだ。

    沖縄、米軍、公共事業、建設業、ヤンキー、暴力、中卒、就職、、、
    この辺りがつながっているということを、取材記録がこれでもかこれでもかと、
    訴えかけてくる。
    そういえばこの辺りを小説にした本を読んだばかりだった。
    沖縄。
    本土がいろいろ押し付けたものが、沖縄の若者にのしかかっている。

    そういう現実を見ずに、好

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    2026年03月18日
  • 生活史の方法 ――人生を聞いて書く

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    代官山の蔦屋書店で平積みになっていた「東京の生活史」の分厚さに圧倒されたことを思い出し、本書が新聞書評で取り上げてられ読んでみた。
    この仕事の手法を詳細に披露してくれている。

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    2026年03月03日
  • 断片的なものの社会学

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    とても良かった。
    特に「結婚式」についての文章が良かったです。
    祝われている人たちは悪くない。
    水を差したいわけでもない。
    でもその祝福の形式は、ある人たちを透明にしてしまう暴力性を孕んでいる。
    考え続けたいことだと思った。

    そしてその祝福の外側で、ちゃんと生きている人生のかけらも詰まっている。たくさんの言葉に救われた。

    全てに共感ではないけど、とても読めて良かった本です。

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    2026年02月12日
  • ビニール傘

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    街中ですれ違うおそらく一生話すことのない人たちにも、色んな事情を抱えながら生きている。何度でも読めそうな軽さが心地良い。人に優しくなりたい時に読みたくなる本。

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    2026年01月17日
  • 生活史の方法 ――人生を聞いて書く

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    今年一冊目。年末に読んだ村田紗耶香の世界99がものすごくヘビーだったので、少し軽めの読み口のものをと思い手に取った。

    著者がXにあげておられるワンちゃんとの生活の写真が穏やかでいい感じに力が抜けているのが好きで、前からこの人の本を読んでみたいなと思っていた。

    読み始めは、まだ世界99で没入していた荒涼とした世界観の中で異様なハイ状態だったのだけれど、著者の落ち着いた、そして遠慮がちに感じる声色の文体が優しく、人間を哀しいどうしようもない存在としてそのまま引き受けるような世界に少しずつ戻って来ることができた。

    本書は生活史の書き方の仔細な指南書なのだけど、生活史を書く予定がない私にも、とて

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    2026年01月04日
  • 生活史の方法 ――人生を聞いて書く

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    岸政彦「生活史の方法」(ちくま新書)
     ほぼ同時期にでた佐藤信「オーラル・ヒストリー入門」と一緒に読むと面白い。岸政彦のこの本では、市井の人へのヒヤリングから生活史を描いてきた著者の私小説的な面を含んだネタばらしとなっている。
     どうやってアポを取るか、場所はどう選ぶか、手土産はいるのか、ヒヤリングや後々の出版の同意をどうとるか、ヒヤリング中にどの程度口をはさむか、録音や録画の機材をどう選ぶかなど、体験にもとづいて記されている。
     ヒヤリング中の注意点としては、口火は切る必要があるがその後の展開は相手に任せる、一点に集中せず、積極的に受動的になること、相手が陳腐に思える一般論をしゃべっていても

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    2025年12月19日