岸政彦のレビュー一覧
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今年一冊目。年末に読んだ村田紗耶香の世界99がものすごくヘビーだったので、少し軽めの読み口のものをと思い手に取った。
著者がXにあげておられるワンちゃんとの生活の写真が穏やかでいい感じに力が抜けているのが好きで、前からこの人の本を読んでみたいなと思っていた。
読み始めは、まだ世界99で没入していた荒涼とした世界観の中で異様なハイ状態だったのだけれど、著者の落ち着いた、そして遠慮がちに感じる声色の文体が優しく、人間を哀しいどうしようもない存在としてそのまま引き受けるような世界に少しずつ戻って来ることができた。
本書は生活史の書き方の仔細な指南書なのだけど、生活史を書く予定がない私にも、とて -
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岸政彦「生活史の方法」(ちくま新書)
ほぼ同時期にでた佐藤信「オーラル・ヒストリー入門」と一緒に読むと面白い。岸政彦のこの本では、市井の人へのヒヤリングから生活史を描いてきた著者の私小説的な面を含んだネタばらしとなっている。
どうやってアポを取るか、場所はどう選ぶか、手土産はいるのか、ヒヤリングや後々の出版の同意をどうとるか、ヒヤリング中にどの程度口をはさむか、録音や録画の機材をどう選ぶかなど、体験にもとづいて記されている。
ヒヤリング中の注意点としては、口火は切る必要があるがその後の展開は相手に任せる、一点に集中せず、積極的に受動的になること、相手が陳腐に思える一般論をしゃべっていても -
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ネタバレこの本を読んで社会学の本質の一つは、『NARUTO』の名セリフ「逆だったかもしれねェ…」だと思った。この本には著者岸政彦さんが6人のフィールドワーカーとして活躍する社会学者との対談が収録されている。6人の社会学者との対談で頻繁に出てくる話題が「当事者性」。調査対象者と深く言葉をかわし合い、中には調査対象者と生活をともにするフィールドワークという手法は複数の事象に当たって法則性を探す帰納的なアプローチや膨大なデータを集めて解析を行う統計的なアプローチに比べ普遍的・合理的な解を導くにはコストパフィーマンスが悪いように思える。 しかし、調査対象の行動の一挙手一投足を生活の状況、社会構造などそこに至
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自分が大阪出身ということもあり購入
大阪で生まれ育った柴崎さんと、大人になってから大阪にやって来て気に入ってずっと暮らしている岸さんのエッセイ集
自分は、大人になって大阪から出て行った方なのでどちらかというと柴崎さんのお話に共感が持てて、育った環境も、ご実家が自営業で商店街で育った境遇は自分の境遇と同じだったので色々思い出すこともあり楽しく読めました
チャリンコで心斎橋やらアメ村に行ける距離感も、私がチャリンコで梅田へよく遊びに行った頃と重なって懐かしさを感じられたし、ホンマに色々思い出させてもらってありがたかったです
大阪、改めてええとこやな、たまには帰らんとなぁ、と再認識させてもら -
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学生時代から初めて大阪に来てなじんだという社会学者・岸氏と大阪生まれで現在は東京に住む小説家・柴崎さんのエッセイの連作集(対話ではない。)大阪という町に対する二人の思い入れ、愛情に富んでおり、「大阪」という独特の語感からの何とも言えない感覚を満喫できた。「大阪って嫌い」と言われることが多いのも、その強烈な個性的雰囲気が物語っていることも同感だ。大阪弁は意味の伝達よりも、会話を続けること自体に意味がある。そして、喋り続けることにより、自分は怪しくない人ですよー、と表現しているのだと、柴崎さんの感想には笑った。彼女の幼少期からの大阪での成長ぶりが面白く、中学時代からエレファントカシマシの公演には
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先輩からのおすすめで。
私は文学畑の人間だが、社会学とは文学の対極に位置する学問なのではないかと思っている。個々の人間の「物語」を一般化する社会学の学問対象は文字通り「社会」、社会全体がどうすればより良いものになるのかを思考する学問で、(本著で岸政彦も述べているように)そこには暴力が伴う。インタビューは一人一人の人生に土足で踏み入る行為だし、かつ研究ではそこにある些末な感情などは捨象されうる。だから私は、社会学をやるような上等な国民には下層の人間のことなんかわかりっこない、ただの数字やデータに置き換えられるだけ、といつも感情的になってしまう。文学は多くを語らない、そこがいい。文学は学問であるよ