岸政彦のレビュー一覧

  • 断片的なものの社会学
    何が正解で、何が間違っているのかではなく、そもそもそんな事考えなくていいのかなって思えるような本だった。いろんな事に意味はないし、エピソードにオチもない。何故か一気読みしてしまったが、もっとゆっくり読めばよかった
  • 断片的なものの社会学
    「とらえどころがないけどとおとい」
    読みながらそんなことを思った。
    論点というか、著者が伝えたいことをこれだ!と決めつけてしまいたい自分もいつつ、それこそが暴力的な行為である気もして、自分のフィルターで内容を纏めるんじゃなくて読みたくなったらまたこの本に帰ってこよう、そう思える本だと感じた。
  • 大阪
    大阪って街によって魅せる姿が全然違うんだよなあ。話を続けることの美学は、出会った大坂の人々からすごく感じるのでとても共感した。
  • 図書室
    中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった.「給水塔」は大阪に惚...続きを読む
  • リリアン
    まるで春の暖かく心地の良い風を頬に受けているような優しく安心する作品です。
    大阪を舞台にした都会的で洗練された情景が目に浮かび、登場人物達の大阪弁での掛け合いがとても魅力的なでした。
    ミステリーやサスペンスばかり読んでいる私にとって一度心と身体を休める事ができた1冊です。
  • 大阪
    大阪に昔一時期住んでたのもあり、昔の大阪のあの街ってこういうかんじだったのかと読んでいてしみじみ思った。読んでいると不思議と時の流れが感じられて何だかノスタルジックな気持ちに。
    とりわけ柴崎さんの青春話は内容も相まってグッとくる。
    ただ、大阪の人たちの東京に対する対抗意識話は読んでて少し虚しかった。...続きを読む
  • 断片的なものの社会学
    以前、岸先生と雨宮まみさんの、『愛と欲望の雑談』を読んで以来、ずっと読みたかった本。

    『私たち社会学者は、仕事として他人の語りを分析しなければならない。しかし、それは暴力と無縁ではいられない』

    私は社会学というのを、よく分かっていなかったし、読んだ後も、実はよく分からない。
    ただ、残ったのは、私...続きを読む
  • リリアン
    大阪弁の語りが心地よい。男女の会話、大阪弁だとどっちがしゃべってるのか読んでいると時々わからなくなる。文字にすると同じなのがいい。二人で話してると一方が話した内容を受けて一方が思い出した内容を話したりしてジャズのようだなーと思ったり。
  • 大阪
    中島らも、4時ですよ〜だ、阪神大震災、千日前、、、大阪のあの時代・あの場所を追体験しつつ、誰の人生にもある、けど普段は奥にしまっているような心の機微を思い出させてくれるエッセイです。

    社会学者・小説家の岸政彦さんと、小説家の柴崎友香さんの共著です。
    進学で大阪に移り住み以降ずっと大阪在住の岸さんと...続きを読む
  • 図書室
    社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだ...続きを読む
  • リリアン
    読書開始日:2022年6月3日
    読書終了日:2022年6月11日
    所感
    【リリアン】
    人間はなにかしていないと怖い。
    リリアンはうってつけ。
    意味のないものを生み出し続けるが、なにかをしてる感じは持てる。
    虫も、菊池も、美沙さんも、そう。
    考え始めるとなにもかも自責の念に囚われる人種。
    もちもん主人...続きを読む
  • 大阪
    読書開始日:2022年5月18日
    読書終了日2022年5月24日
    所感
    イヤホンをしている時間、携帯を見ている時間、そんな時は大概、余裕を怖がっている。
    なんで余裕が怖いんだろう。
    いつからだろう。
    余裕があると嫌なことを考えしまうから。
    だから刺激の強いもので思考を停止させようとする。
    本作品を見...続きを読む
  • リリアン
    「リリアン」は主人公の幅広い趣味が全編に渡って展開されるが、ジャズに関するものが楽しめた.というのも小生もウッドベースを持っており、身近にE♭やB♭を見ていたからだ.表題のリリアンが出てくるのはわずかだが、"虫"が編んでいたとの描写の位置付けがよくつかめなかった.「大阪の西は全部海」は大阪を徘徊する...続きを読む
  • 東京の生活史
    とにかく分厚い。カバンには入らない。家で机の上に置いて読まなくてはいけない。それが難点。
    でも、市井の人々のイキイキした話は興味深い。私が知らない東京もあるのだと改めて実感しました。
  • リリアン
    ゆっくりゆっくりと語られるなんということはないエピソード。
    最初はひとりでシュノーケルを持って海に潜る話。
    それからスナックで知り合った10こ年上の美沙さんとの付き合い、会話。
    美沙さんが好きなリリアンの話、音楽のコードの話、ふたりの昔を思い出す話。
    主人公は音楽で一応食べているけれどやめようかと悩...続きを読む
  • ビニール傘
    大阪の海沿い、大正あたりで生きる人々の、どうしようもない日々の記憶。
    こういう人たちの生活が「分かる」かどうか、見えるかどうかって、読む人自身の生い立ちに深く関わってくる気がする。
    うら寂しい読後感。滔々と流れる淀川を見に行きたくなる。
  • ビニール傘
    第156回芥川賞候補作

    よく聞くラジオ番組で何度か岸政彦さんがゲストだったり、Eテレの「100分で名著」にも講師として出演されていたので、社会学者であるということは知っていた。
    そして、大阪愛はもちろん、「人」というものに対する興味や愛情が本当に深い方なんだなぁ、とその熱量の高いトークから感じてい...続きを読む
  • リリアン
    静謐な夜中の会話劇。リリアンに纏わるエビソードは、誰もが持っているであろう子供時代の後悔したくなるエピソードだと思うのだが、多分に漏れず自分にも想起させる出来事があり、胸がえぐられる。
    大阪の土地勘があればもっと楽しめたと思う。
  • 大阪
     柴崎友香さんが育った街は、私の伯母が住んでいる。子どもの頃、数回遊びに行ったから少しだけ街の空気を憶えている。
     しかしそれは上っ面で、大阪の芯の部分は何も知らない。そこで生まれて、生活して肌に染み込んでくるものは、私にはわからない。
     街は少しずつ変わるけれど、その街が自分を作ってくれたことは変...続きを読む
  • リリアン
    コード進行とか、表題のリリアン(編み物)とか、あまり馴染みのないものが主題になってるので、やや入り込めなかったところはあるが、著者のこれまでの小説と同じく、色んなものから切り離されて大阪の街を漂うように生きる男女の姿を淡々と描く。今作はより一層、浮遊感(というか、登場人物がルーツと切り離されている感...続きを読む