岸政彦のレビュー一覧

  • 大阪

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     学生時代から初めて大阪に来てなじんだという社会学者・岸氏と大阪生まれで現在は東京に住む小説家・柴崎さんのエッセイの連作集(対話ではない。)大阪という町に対する二人の思い入れ、愛情に富んでおり、「大阪」という独特の語感からの何とも言えない感覚を満喫できた。「大阪って嫌い」と言われることが多いのも、その強烈な個性的雰囲気が物語っていることも同感だ。大阪弁は意味の伝達よりも、会話を続けること自体に意味がある。そして、喋り続けることにより、自分は怪しくない人ですよー、と表現しているのだと、柴崎さんの感想には笑った。彼女の幼少期からの大阪での成長ぶりが面白く、中学時代からエレファントカシマシの公演には

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    2025年08月09日
  • 断片的なものの社会学

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    何者でもない者達の名状し難い物語。
    筆者 岸政彦はそこに意味を見出したり、見出さなかったり、無意味性を感じたり、感じなかったりする。
    ふと考える。何者にもなれない人が圧倒的多数を占めているこの社会で個人として意味ある人生を送るにはどうしたらいいのだろうか。答えはあるのかもしれないし、ないのかもしれない。本書でも明確な答えは提示されない。
    それでも人生に絶望せず、かと言って過度な期待も持たず、ありのままを見つめよう、そう思える1冊だ。

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    2025年08月01日
  • 断片的なものの社会学

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    先輩からのおすすめで。
    私は文学畑の人間だが、社会学とは文学の対極に位置する学問なのではないかと思っている。個々の人間の「物語」を一般化する社会学の学問対象は文字通り「社会」、社会全体がどうすればより良いものになるのかを思考する学問で、(本著で岸政彦も述べているように)そこには暴力が伴う。インタビューは一人一人の人生に土足で踏み入る行為だし、かつ研究ではそこにある些末な感情などは捨象されうる。だから私は、社会学をやるような上等な国民には下層の人間のことなんかわかりっこない、ただの数字やデータに置き換えられるだけ、といつも感情的になってしまう。文学は多くを語らない、そこがいい。文学は学問であるよ

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    2025年07月30日
  • 東京の生活史

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    ようやく読み終わった。
    150人の聞き手の中には、有名な人もチラホラ。
    LGBT、外国由来の人も結構いる。それも東京だなぁ。
    聞き手のあいうえお順に並んでるって途中で気づいた。

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    2025年05月31日
  • 調査する人生

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    ネタバレ

    岸政彦がフィールドワークを行っている研究者にインタビューをして、その研究での聞き取りの苦労を明らかにしていくものである。岩波は面白くないのが普通であるが、これは他の本と違いとてもおもしろいので、学生がフィールドワークを行う時に気休めに読んでみるのもいいと思える本である。

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    2025年05月09日
  • 調査する人生

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    最近年齢のせいかプライベートで色んな人と会うことが減って、1年ぶりの再会みたいなことが多くなってきたが、この本における「調査する」ってその時の友人との会話みたいだと思った。会ってなかった時間を確認しながら、時に脱線して、色んなことを話すあの感じ。「調査する」という言葉の中には、興味とか敬意とか尊重みたいなことが含まれていて、意外と身の回りの人に対する接し方には当てはまるのかもしれない。自分は社会学者でもないし、誰かの話を聞いて論文を書くわけではないけど、そういう姿勢で色んな人と接して、学べる大人ではありたい。

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    2025年04月23日
  • 断片的なものの社会学

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    ショートエッセイ的な構成でしたが、一つ一つのストーリーが濃厚で面白かったです。社会学は難しいイメージでしたが、日常風景から展開され、人々の人生に触れた中で社会を考える、優しい本だったと思います。

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    2025年03月25日
  • 断片的なものの社会学

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    ・意味のないようなセンテンスがたびたび出てくるが、それ自体が社会の断片であるのかも
    ・マジョリティと言われている人々の語りももっと聞きたかった
    ・他者への関わり方(最終的にはその人がよければいいのでは)、人それぞれに流れている時間の違いについて、特に覚えている。

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    2025年03月23日
  • 調査する人生

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    ネタバレ

    質的社会学について。読んでいてたまにわからなくなることもあったけど、意味合いは理解できた。
    自分は統計学を大学では学んでいたので、一般化することで汲み取れきれないことが多々あることを感じていて、p183にあった何%の人は〜という表現になってしまうというのにはたしかに…となった。
    191 普遍的な法則を発見するのが目的じゃなくて、ひたすら例外を見つけていく。
    194 言葉で埋めて近づく

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    2025年02月16日
  • 大阪

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    なんとなく不思議な感じで読めた。
    いろいろな場所を歩いて感じる感覚を表しているような、散歩していてなんとなく思い浮かぶノスタルジックな感じというか。
    全体を通して後半の方が感覚が合ってきたので単発ではあまり感銘受けなかったかも。

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    2025年01月25日
  • 大阪

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    ネタバレ

    岸政彦さんの本はいつも読んでて本当に不思議な感覚に陥る感じがある
    頭の中をスーンと何か静かなものが突き抜けて流れていくような感じ
    流動的で普遍的〜連続性〜みたいな(自分で意味分かってないけど)単語が似合うような
    登場人物に親しみを持って読んでいたら急にその人が消えるからさ、なんかそこで〜普遍的〜みたいなさ…分かってないけど…

    柴田友香さんめっちゃ都会の学生生活で羨ましいんやけど…田舎って損だなあ
    こんなに文化享受できなかったし行くとこなかったし暇だから時間は長く感じたよ

    私こんな楽しそうな街一生知らないんだよなー
    大学進学のときとか就職とかなんで出なかったんだろって後悔がまた湧いてくる

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    2024年12月25日
  • リリアン

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    この人の文章は何故かひきこまれる。
    情景が浮かぶのは勿論、登場人物たちの会話の内容以上に、その人達の間の空気感や、温度、そしてザラついた感じなど、何だか質感を感じる。

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    2024年11月19日
  • 大阪

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    お二人にとってのそれぞれの「大阪」を書いている。そんなん書かれたら、僕も書きたくなる。僕はずっと大阪におる。いや、関学に入学した1年間だけは西宮におったけど。大阪は大阪弁で一括りにされるけど、場所によって言葉違うねんで。地域限定方言っちゅうのもようある。せやから言葉変われば、いろんなもんも変わるはずやし、見える風景も変わる。そやな、柴崎さんが過ごした中学生時代の話があったけど、僕が過ごした中学時代はもっと暗黒やったわ。昔は犯罪が許されてたからなぁ。知らんけど。ま、今日はこれくらいにしといたろ。

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    2024年11月10日
  • 図書室

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    ネタバレ

    読んでいて、ファンシーショップに行きたくなった。

    本好きボーイが太陽爆発を語り死の予感をさせてくるのもなんだか覚えある。

    スーパーマリオより先に
    謎ルールの遊びで「イッキニキ」という命があって負けるたびに死んでた。

    子どもなのに日々死にまみれていた。 
    命の復活も簡単だった。

    大阪の土地て、どんないい加減なところも受け入れる器がある。 
    えらいとかえらくないとかでなく、みな横並びで、高級とかでなく、安いほうがありがたられる世界。

    あの頃の自分を懐かしく思い出すと共に、
    ハラワタのような苦みのある読後感。
    でもなんだか、読み返したくなる。

    岸政彦は優しい。

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    2024年11月07日
  • 大阪

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    2人が大阪で生きていた
    もしかしたらすれ違っていたかもしれない
    そんな風に読ませてもらいました
    昔と今、何が変わったんやろ
    昔は良かったなぁ何が良かったんやろ?

    淡々と進む語り口に
    胸があっかくなって
    あー私大阪好きやったんやなぁ
    って

    毎日少しずつ読み進めて2週間ほどかけて読みました

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    2024年10月24日
  • ビニール傘

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    この現実感のないリアルさは何なのだろう。ここではないどこかだとか、細部だけ具体的な夢の様な。どこにでもある、ありふれた世界。私が見ているものは本当にあるのだろうか?

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    2024年07月23日
  • 大阪

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    大阪にまつわる2人のエッセイ。
    個人的に岸政彦さんの回が面白かった。
    大阪という都市を通して、変わっていくこと、失われてしまったものについての感慨。
    いいとも悪いとも言わず、絶妙な距離感で描かれる大阪の変遷は、筆者の青春時代とあいまって切ない。

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    2024年07月12日
  • 図書室

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    図書の後半のくだりは、涙が目に溜まりながら読み終えました。
    この方の会話の間?コミュニケーションの空気感?がすごく伝わってきていて。どの作品も関西出身の自分には合っているのか、毎回、入り込んでしまいます。

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    2024年07月11日
  • 大阪

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    知り合いでもないのに、ここまで個人的な話を聞いてもいいのかと、ドキドキしながら読んだ。それを引きずり出してしまうほど、大阪とおふたりの人生は、分かちがたく結びついているのだろうと思った。

    おふたりの作品の根底にあるものの正体がわかったようで、ファンとして読んでよかった、読んだ方がいいエッセイ。

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    2024年04月29日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

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    ネタバレ

     質的調査が、個々のケースについて理解・解釈していく方法だとして、それでは実際の調査プロセスのなかで、何をどのように具体的に理解していくのでしょうか。
     代表的な質的調査の例を挙げて考えていきましょう。P・ウィリスが1977年に出版した『ハマータウンの野郎ども』です。ウィリスは70年代に、あるイギリスの工場街(「ハマータウン」=ハンマーの街)の小さな高校で参与観察をおこないました。彼が分析の対象としたのは、その高校の主に二つのグループでした。ひとつは「ラッズ」(野郎ども)を呼ばれる不良少年たちで、もうひとつはイヤーホールズ)「耳穴っ子」)と呼ばれるガリ勉の優等生グループでした。
     ウィリスは、

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    2024年04月28日